環境省 Ministry of the Environment

法令・告示・通達

大気汚染防止法に基づく窒素酸化物の排出基準の改定について

公布日:昭和54年08月02日
環大規177号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事・政令市市長あて
昭和54年8月2日付けをもつて、大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和54年総理府令第37号。以下「改正府令」という。)が制定公布された。
改正府令の内容は、固定発生源から排出される窒素酸化物の排出規制の拡充等である。その考え方、改正府令の要点、留意すべき事項等は次のとおりであるので、法令の施行に遺憾なきを期されたい。

第1 今回の改正の背景

固定発生源に対する全国一律の窒素酸化物排出規制については、昭和48年8月に大型施設を対象とする第1次規制を、昭和50年12月に対象施設の拡大等を内容とする第2次規制を、また昭和52年6月に対象施設の拡大及び排出基準の強化を内容とする第3次規制をそれぞれ行つてきた。
これらの規制措置により窒素酸化物の排出量が比較的大きいばい煙発生施設を中心に順次排出基準の設定・強化が行われてきたところであるが、今回の改正においては、従来規制対象となつていないばい煙発生施設の中にも環境濃度への寄与が無視し得ないものがあること、大気汚染防止のために払われるばい煙排出者の努力は基本的には公平であるべきこと等の理由から窒素酸化物を排出するほとんどのばい煙発生施設について窒素酸化物の排出基準を設定することとした。
改正府令に基づく窒素酸化物の排出基準については、これが全国一律の排出規制であることにかんがみ基本的には低NOx燃焼技術で対応できる値とした。
なお、固定発生源に対する全国一律の窒素酸化物排出規制は当面今回の改正をもつて終了するものとする。

第2 改正の内容

1 改正府令の要点

  1. (1) 大気汚染防止法第3条第1項の規定に基づき、窒素酸化物の排出基準を改定した(大気汚染防止法施行規則第5条第2号及び別表第3の2の改正)。
  2. (2) 施行期日及び経過措置
    1. ア 改正府令は、昭和54年8月10日から施行することとした(改正府令附則第1項)。
    2. イ 今回の改正により排出基準が新たに設定され、又は改定された既設の施設に係る排出基準は昭和57年8月9日まで適用しないこととした(改正府令附則第2項)。ただし、今回設定された排出基準のうち排出ガス量5,000Nm3/h未満の既設の小型ボイラーに係るものについては、昭和59年8月9日まで適用しないこととした(改正府令附則第7項第5号)。

2 規制対象施設の拡大等

今回の改正により窒素酸化物の排出基準が改定されたが、その内容は次のとおりである。

  1. (1) 次のばい煙発生施設を新たに規制対象とし、排出基準を設定した。
    大気汚染防止法施行令(以下「令」という。)別表第1の2の項に掲げるガス発生炉、加熱炉、3の項に掲げる煆焼炉、焙焼炉、4の項に掲げる溶鉱炉、5の項に掲げる金属溶解炉、8の項に掲げる触媒再生塔、8の2の項に掲げる燃焼炉、9の項に掲げる窯業炉、10の項に掲げる反応炉・直火炉、11の項に掲げる乾燥炉、14の項に掲げる銅・鉛・亜鉛製錬用施設、18の項に掲げる活性炭製造用反応炉、21の項に掲げる燐等製造用焼成炉・溶解炉、23の項に掲げるトリポリ燐酸ナトリウム製造用乾燥炉・焼成炉、24の項に掲げる鉛の二次製錬用等溶解炉、25の項に掲げる鉛蓄電池製造用溶解炉、26の項に掲げる鉛系顔料製造用溶解炉・反射炉・反応炉
  2. (2) 次のばい煙発生施設のうち、小規模のものを新たに規制対象とし、排出基準を設定した。
    令別表第1の3の項に掲げる焼結炉・アルミナ製造用煆焼炉、13の項に掲げる廃棄物焼却炉
  3. (3) 次のばい煙発生施設のうち一部の既設の施設に係る排出基準を改定した。
    令別表第1の1の項に掲げるボイラー、6の項に掲げる金属加熱炉、7の項に掲げる石油加熱炉

3 排出基準の改定に当たつて留意した事項

  1. (1) 排出ガス中の残存酸素濃度が極めて高い施設については、窒素酸化物濃度を換算するに当たつて、誤差が無視しえなくなるので換算方法を改定した(改正府令別表第3の2の備考)。
  2. (2) 次に掲げるばい煙発生施設の中には、窒素酸化物濃度の変動が著しいものがあるので、それぞれ次に掲げる平均化時間を参考として排出基準を設定した。
施設名
平均化時間
光学ガラス製造用溶融炉
24〜48時間
合成スピネル製造用キルン
20時間
板ガラス及びガラス繊維製造用溶融炉
24時間
電気ガラス製造用溶融炉
16時間
その他のガラス製造用溶融炉
8時間
アルミナか焼炉
24時間
焼結アルミナ焼成キルン
18時間
合成ムライト製造用キルン
15時間
シヤモツト製造用キルン
20時間
マグネシヤクリンカ製造用焼成炉
22時間
耐火レンガ製造用焼成炉
12時間
石灰焼成炉
8時間
焼結炉(ペレツト焼成炉を含む)
8時間
金属加熱炉(連続式に限る)
3時間
  1. (3) 令別表第1の10の項に掲げる反応炉のうちカーボンブラツク製造用燃焼装置については原料カツト時の窒素酸化物濃度は加味せずに排出基準を設定した。

第3 留意すべき事項

  1. 1 廃棄物焼却炉においては、保安上又は公害防止上やむを得ず一時的に有害な廃棄物を焼却処理する場合があるが、このような場合にあつては、昭和46年8月25日付の本職通達(環大企第5号)第4の2の(3)の趣旨に留意されたい。
  2. 2 改正府令別表第3の2の26の項に掲げる「ニトロ化合物、アミノ化合物若しくはシアノ化合物若しくはこれらの誘導体を製造し、若しくは使用する工程から排出される廃棄物」には、これらの工程において生じる汚水等を処理する際に排出される廃棄物も含まれ、また当該廃棄物にはガス状のものも含まれるので、この点留意されたい。
  3. 3 第2の3の(2)に掲げる施設における窒素酸化物の量の測定に当たつては、非常に長期間の試料採取が必要と考えられるが、このような場合にあつては、昭和46年8月25日付の本職通達(環大企第5号)第4の2の(1)の趣旨にのつとり、1工程を適切に代表するような期間を選定して試料採取を行つても差し支えないのでこの点留意されたい。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /