エネルギア総合研究所
(知財)
〒730‐8701 広島市中区小町4‐33
TEL 082‐544‐2912 FAX 082‐544‐2913
http://www.energia.co.jp/eneso/chizai/houkoku.html『知的財産活動』における 女性の活躍〜 多様な人材の活躍推進 〜
本報告書は,エネルギアグループの研究・開発および
知的財産に関する活動についてご理解いただくための
情報提供のみを目的としており,いかなるコンテンツも
投資を勧める目的で掲載されてはおりません。
投資に
関するご判断は,利用者ご自身の責任において行われ
ますようお願いいたします。
本報告書記載内容のうち,当社グループの計画,方針,
戦略,事実認識など,将来に関する記述をはじめとする,
既に実現した事実以外の事項は,現在入手可能な情報
から得られた予測,想定,計画などを基礎としています。
また,既に実現した事実および一定の前提に基づいて
予測を行っており,客観的な正確性,将来の実現可能性
を保証するものではないことをご承知おきください。
本報告書に関する注意事項
この報告書について,
ご意見,
お問い合わせなどがございましたら,
お気軽に下記までお寄せください。
エネルギアグループ
知的財産報告書
2019年2月
特 集
中国電力株式会社
代表取締役 社長執行役員
知財で電力新時代を切り拓く。
活 用
人 材
保 護 創 造
エネルギアグループの
知財活動イメージ
エネルギー業界の競争環境の変化が進む
なか,
競争力強化の源泉となるものは,
保有
している企業のみがコントロールできる知的
財産であり,
それを生み出す人材と考えます。
エネルギアグループは,
ステークホルダーの
皆さまとのつながりを大切にしながら,
積極
的に知財戦略を推進するとともに,
それを
支える人材育成に取り組んでいます。・戦略的な権利化・知財リスクへの対応・創意工夫・研究・開発・知財価値の顕在化・事業活動の自由度確保・人材育成・啓発活動・競争力強化を通じた企業価値の向上・積極的な情報発信
株主・投資家の
皆さま・低廉で質の高い電気の安定供給・知財を通じた社会貢献
お客さま・地域社会・標準化への取り組み・知財を通じたアライアンス
他事業者など・外部知見の有効活用・一体的な研究・開発
研究パートナー
(メーカー・大学・研究機関等)
昨年7月西日本を襲った猛烈な豪雨は,
広範囲に
わたって長時間続き,
土砂崩れや河川の氾濫など各地
で相次ぎ発生するという,
これまで経験したことの
ない甚大な災害をもたらしました。
私たちは創業以来,
地域のライフラインを担う事業
者として
「お客さまに電気を安定してお届けする」
こと
を使命に取り組んでまいりましたが,
今回の災害を
受け,
その使命の重さを,
あらためて肝に銘じている
ところです。
また,
当社は大変厳しい経営環境にありますが,
今後,
電力販売の競争は一層の激化が予想され,
加え
て送配電部門の法的分離も控えており,
激しい変化が
続く
ことになります。
このようにエネルギー事業を取り巻く環境が大き
く変わる中で,
当社グループが注力する取り組みの
一つが知財活動です。
競争力強化の源泉となる知財の
活用を通じて,
競争力強化と企業価値向上を図ると
ともに,
地元企業の製品開発や地域活性化に貢献
する知財交流事業を展開しています。
当社は,
これからの変化の時代に柔軟・的確に対応し,競争に勝てる新しい価値を継続的に創り出して
いくために,
社員一人ひとりが資質を磨くことと併せて,多様な個性,
知見を有する社員個々の力を結集し,
組織力を高めていくための取り組みを行っています。 この多様な組織づくりにおいて,
「女性社員の活躍
推進」は,重要な取り組みの一つと考えています。
今回の報告書では,
知財活動を通じて女性が輝く
姿を特集として取り上げています。
「知的財産活動に
おける女性の活躍」
の一端をご覧いただければ幸い
です。
当社グループは,
知的財産制度の枠組みを尊重・
活用した知財戦略の取り組みを一層深化させ,
ステ
ークホルダーの皆さまのご期待に応えてまいりたいと
考えています。
その成果を知的財産報告書をはじめ
としたさまざまな活動を通じて積極的に情報発信する
とともに,
皆さまからお寄せいただく声に十分耳を
傾けてまいります。
今後とも,
一層のご理解とご支援をいただきます
よう,
よろしくお願いします。
知財活動を競争力強化の源泉として
ステークホルダーの皆さまの期待に
お応えするために
多様な人材が活躍できる
取り組みとして
01 02
電気事業を支える基盤技術と特許の関わり 16-19216
■しかく電気事業を支える基盤技術
17-19
■しかく基盤技術と特許の関わり
基盤技術は
「発電」
「送電」
など10の分野に大別され,
相互に連携することで低廉で安定した電力供給を実現
基盤技術を権利化し事業活動の自由度を確保するとともに,
保有特許を活用するためのライセンス活動も推進
保有する特許の事業への貢献を把握するという経営の観点から,
特許の価値の定量的評価を実施
研究・開発への取り組みと独自技術 20-243知財戦略の基本理念と推進体制 11-15120-21
■しかく研究・開発戦略
22-23
■しかく研究・開発の意義と独自技術
グループ企業の知財活動への取り組み ... 中電技術コンサルタント株式会社24■しかく研究・開発推進体制
事業強化に向けて特に優先度の高い分野に重点的に経営資源を配分するなど,
効果的な研究・開発を推進
価値の高い成果を生み出すため,
研究•開発の取り組みを効率的に進める規程や体制を整備
大規模設備や複雑な送配電ネットワークの運用ノウハウ・技術を基に,
ユーザー視点で独自の研究•開発を実施
共同研究,
共同開発やクロスライセンス,
標準化活動などを通じて,
外部の知見や技術を有効活用
特許分析を核としたオープン・イ
ノベーション
11-12
■しかく知財戦略の三つの基本理念13■しかくエネルギアグループの知財戦略の基本的な考え方
14-15
競争力強化の源泉は知的財産であり,
それを生み出す人材であるという考えに基づき三つの基本理念を規定
社員の約半数が発明者という裾野の広い活動や,
現業機関の社員の発明の多さが知財活動の特長
■しかく知財戦略推進体制
知財戦略推進のための支援体制や会議体を整備し,
事業戦略,
研究•開発戦略,
知財戦略を一体的に展開
事業運営のあらゆる場面で生み出されている技術・ノウハウ・アイデアなどを確実に知財化・権利化
知財戦略の推進により企業価値を向上させるため,
長期的視点で方針•目標を設定し,
段階的に展開
特許の価値の定量的評価/特許出願・登録件数・登録率の推移/発明者人口の推移 ほか
本報告書の開示項目は,
経済産業省の
「知的財産情報開示指針」
を踏まえ,
当社の取り組みの特長が最も明確になるよう,
項目の配列などを変更した構成としています。21・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
谷川 博昭
エネルギア総合研究所
(エネルギー技術グループ)
神谷 徳之
エネルギア総合研究所
(知財啓発権利化グループ)30・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大場 健太郎
中電技術コンサルタント株式会社
(事業企画部)18・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・田中 茂宏
送配電カンパニー
(配電工法・安全グループ)
VOICE
中国経済産業局 知的財産室長 インタビュー 知財の最前線で活躍する女性社員
女性発!多くの知財が生まれて
います0609-10
07-08
特集 『知的財産活動』
における
女性の活躍
〜 多様な人材の活躍推進 〜
知財リスクへの対応 29-30629-30
■しかく知財リスクに対する日常業務での対応30■しかく他者商標権侵害の防止に関する体制
コンプライアンス最優先の考え方に基づき,
特許権や商標権の侵害リスク対応を実施
リスクを回避するため,
社外に発信する広報・広告媒体の作成段階で商標リスクの有無を審査する体制を策定
CSRの取り組み 31-327EnerGia IP Activity 2018 ー知財活動の概観ー
活 動 報 告 33-34
特許の価値の定量的評価/特許出願・登録件数・登録率の推移/発明者人口の推移 ほか
商標への取り組み 27-28527-28
■しかく商標を通じたメッセージの発信28■しかく戦略的事業領域での商標活用
シンボルマーク
「EnerGia」
やテク
ノロジーブランドを,
お客さまとのコミュニケーションで積極的に活用
電気事業を中核とした幅広い事業で総合力を発揮するため,
エネルギアグループのシンボルマークを制定
知財マッチングによる地域との連携 25-26425
■しかく知財マッチングの全体像
中国地域を中心とした課題解決と発展をめざす知財マッチングの全体像26■しかく知財マッチングを出発点としたオープン・イノベーションの取り組み
研究・開発ニーズにマッチする地元企業の探索 31■しかく知財を通じた貢献活動32■しかく地域貢献の推進
熊本地震復興支援
地域の人材育成や環境技術における貢献を通じた地域貢献
03 04
『知的財産活動』
におけ
る女性の活躍
知財マッチング活動などで当社と関わりの深く,
社外で
活躍される女性に,
自らの取り組みや当社や女性に期待
することなどについてお話していただいています。
昨年の
4月に特許庁から中国経済産業局の知財室長になられた
清棲室長にお話を伺います。
中国経済産業局知的財産室では,
知的財産の普及・啓発を
目的とした様々な事業を行っております。
地域団体商標をはじめ
とする地域ブランドを盛り上げ,
地域団体商標の普及と一層の
活用を目的として,
地域ブランド同士をコラボレーションさせる
試み,
中小企業を知財の観点から支援する人材を育成する
事業,
知的財産についてわかりやすく解説した動画サイト
「もう
けの花道」
の作成事業には,
特に力を入れて取り組んでいます。
室長としては,
このような事業を円滑・効果的に実施するほか,
中小企業などを知的財産の観点から支援するさまざまな機関,
団体,
自治体の方々と連携し,
より良い関係を保っていくための
取り組みを行っています。
商標審査官の時との違いについては,
審査業務に比べ現在の
業務では,
幅広く多くの方々と接し,
さまざまな現場に出向く機会
が多いことがあげられます。
特許庁で商標の審査・審判に携わっ
ている場合は,
主に出願人・代理人の方々との書類上のやりとり
が中心ですが,
現在は,
中小企業やそれを支援する機関,
自治体
などのさまざまな方々と日々接する仕事であると実感しています。
私が着任当時に,
御社から,
本知的財産報告書についてご説
明いただいたことを今でも覚えています。
企業独自の知的財産
報告書を作成されているという話は他ではあまり聞いたことが
なく,
知財にとても力を入れられていると感じました。
電力会社
の中でも,
御社は2000年頃から知財活動に積極的で,
出願件
数も多く,
最近は地域との連携という視点で知財マッチング活
動にも力を入れられています。
マッチングイベントの会場でお会
いすることもありました。
また,
被災企業への特許の無償実施許
諾などを行うなど災害復興支援を積極的に行われており,
社会
貢献活動として大変有意義な取り組みであると考えております。
中国地域を知財面からもけん引する企業として,
これからも
地域の企業などへの知見の共有や積極的な情報発信などに
より,
地域活性化にご協力いただければと思います。
中国地域に来て感じたことは,
知的財産に関連する支援機関や,弁理士,
知財セミナーなどの参加者について,
まだまだ女性
の割合が少ないということです。
会議やセミナー参加者の8割
以上が男性ということもあります。
中国経済産業局では,
女性
活躍のためのさまざまな取り組みを行っていますが,
こと知財の
世界には,
広がりのスピードが遅いのかもしれません。
発明や審査などの知財関係の業務などにおいて特に男女差
はないと考えており,
女性の活躍が期待できる分野ですが,
私の
役職である知的財産室長も,
他地域の経済産業局を含め,
これ
まで女性があまり多くなかったのが現状です。
当局としては女性
の知的財産室長は初となりますので,
私自身もしっかりと職務を
果たしていきたいと思います。
御社では,
女性発明者の割合は
12%と伺いました。
ここからます
ます女性が自身の能力を発揮され
て躍進し,
中国地域全体にその
流れが広がっていくことを,
心から
期待しております。
インタビュー
中国経済産業局 知的財産室長
清 棲 保 美 様
き よ す や す み
今後,
当社に期待することについて
教えてください。
知的財産制度の普及・啓発活動など,
室長としての取り組みについて教えてください。
また,
商標審査官の時との違いは
何かありますか。
知的財産活動における女性の活躍とは
どんなイメージですか。
また,
知財活動にこれから取り組む
女性社員へのメッセージがあればお願いします。
〜 多 様な人 材の活 躍 推 進 〜
『知的財産活動』
における
女性の活躍
特 集
東日本大震災を経て,
電気事業を取り巻く経営環境は劇的に変化し,
電力小売全面自由化,
1年後に迫った
送配電部門の法的分離など,
これまでとは次元の違う
「変化の時代」
を迎えています。
これからの変化の時代に柔軟・的確に対応していくためには,
組織のメンバーの価値観,
感性,
思考方式・
ものの
見方の
「違い」
に着目し,
議論を重ね,
新しい価値を創り出していく
「多様な組織づく
り」
に取り組む必要があります。
この
「多様な組織づく
り」
において
「女性社員の活躍推進」は,重要な取り組みの一つです。
今回の特集では,
女性社員の活躍推進を知的財産活動という切り口で皆さまに広く知っていただければと思います。
知的財産活動における女性の活躍
当社における
「女性社員の活躍推進」
の位置づけ
当社の知的財産活動の最近の状況として,
発明創出活動の場面では,
女性発明者に対する社内外の表彰,
知財業務においては,
企画・戦略,
調査・分析,
渉外・法務,
権利化の分野にわたり女性社員が従事しているなど,
多くの場面で女性が活躍しています。
【発明創出活動について】 ■しかく女性社員の発明者の割合
【知財業務について】
当社はサービスレベルの向上を
めざし,
事業運営のあらゆる場面
で創意工夫・知財創出活動を展開
しています。
その結果,
女性社員の
8人に1人
(12%),技術系女性
社員では3人に1人
(32%)
という
非常に高い割合で発明者が誕生
しています。
技術系の女性
社員に対する
発明者の割合32%事務系の女性
社員に対する
発明者の割合10% 当社知財部門は部長を含めて17人いますが,
そのうち5人が女性社員です。
企画・戦略業務,
渉外・法務業務,
調査・分析
業務にそれぞれ従事しています。
研究者や発明者などの支援を行っています。
女性社員の活躍状況などについてはP9〜
P10以降に掲載しています。 女性社員全体 技術系社員
事務系社員
女性発明者100%12%77%23%
05 06
『知的財産活動』
におけ
る女性の活躍
従来,
企業の商品・サービスを利用した時に,
当該企業からポイントが付与され,
当該企業のWEBサイトにおいて,
お客さまがポイントを当該企業の商品などに交換
したり,
パートナー企業のポイント・商品などに交換したりすることを可能にするシス
テムは存在していましたが,
電力会社などがポイントを付与する企業である場合に,
パートナー企業が用意したポイント交換用のポイント・商品などに対するお客さまの
関心を高めるには不十分であるとの課題がありました。
壁面緑化設備の多くは,
土面を利用して植物を栽培するものですが,
土面が確保
できないなどの制約がある場所では,
プランタが用いられ,
潅水は培地に水道水を散水
するかけ流し方法が多く採用されています。
かけ流しを行う場合,
肥料管理が難しく,
また,
プランタごとに施肥作業を行わなければならないために,
手間を要するという
課題がありました。
地元の特産品などに交換できる
「ポイン
ト交換メニュー」と,提携企業の商品・サー
ビスなどに交換できる
「コラボレーション
メニュー」
を設け,
どちらのメニューでポイ
ントを使用するかは,
お客さまがWEBサイ
ト上で自由に選択できるものとしました。
コラボレーションメニューを選択された
場合は,
一定の期間,
ポイントの使用を
加入中のコラボレーションメニューの商品
などに限定することで,
提携企業に対する
関心を高めることを図っています。
地元のプロスポーツチーム,
スーパー,
百貨店,
家電
量販店,
金融機関などの中から選択して加入でき,
加入者限定の追加特典を受けることができる。
地元企業が生産加工した特産品や,
地元スーパーのポイント
・商品券,
生活雑貨などへポイントを交換できる。
外装容器内に液肥を含む培養液を貯留し,
その上方に段部を設けてプランタを
着脱可能に保持した二層式として,
培養液は送液ポンプによって散水パイプに
送られ,
プランタ内の培地に自動で供給される構成としました。
さらに,
培地には
土などの有機物ではなく軽石状の無機物を使用する養液栽培とすることで,
培地
に吸収されなかった培養液は,
プランタ底部の開口より外装容器内に流れ出て,
送液ポンプにより再度散水ラインに循環して供給されます。
これにより,
肥料管理が容易となり,
培養液が自動で散水されるため,
施肥
作業の手間が軽減されました。
【発明の効果・概要】
【発明の効果・概要】
女性発!多くの知財が生まれています
ポイント交換メニュー コラボレーションメニュー
省エネやオール電化のイベントでは,
お客さまにお伝えしたい情報をまとめたリーフレット
(チラシ)
をスタッ
フが手配りすることがあります。
リーフレットの用紙サイズはA4やA3とかさばり敬遠されがちなことから,
受取率
を向上させるための粗品とセットで配布する場合がありますが,
二つを同時に渡そう
とすると作業性が悪い,
封筒を別に用意し同封するとコストがかかる,
などの課題が
あり,
効率のよい方法を試行錯誤していました。
所定の手順でリー
フレットを折り込むことで,
粗品を入れるポケット
部が形成されるようにしました。
これにより,
リーフレットと粗品を同
時に来場者に配布することが可能になり,
配布効率が向上しました。
また,
粗品をポケットに入れ図柄の一部を隠して,
粗品を取り出す
と図柄全体が表示されるようにし,
「粗品の背後に何が描かれている
のか」
とリー
フレットにも興味を抱いていただけるようにしました。
費用をかけることなくリーフレットと粗品を一体で配布できると
ともに,
表紙の図柄で興味を惹き,
来場者の
「中の情報を見たい」という意欲を喚起することができます。
【発明の効果・概要】
栽培装置および栽培システム
発明
1 特許第6206617号
ポイント交換管理システム
発明
2 特許第6065140号
ポケット付PRリーフレット
発明
3 特許第5563110号
折り込み後
粗品とリーフレットを
一体にして配ると
受取率アップ!
裏面
表面
山折り
谷折り
ごあいさつ
イベント情報
など 情報3
情報2
情報1
ニュース
2018春号
表面
(装飾面)
ニュース
2018春号❶❸❹❷ニュ
ース
2018春号
ポケット部
(粗品入れ)
裏面
(情報面)
電力会社側
システム
提携企業側
システム
お客さま側
パソコン
お客さま側
パソコン
インターネット
エネルギア総合研究所
(環境技術グループ)
平成22年度発明の事業貢献に対する表彰
(社長表彰)
平成23年度広島市優良発明功績女性奨励賞
屋上緑化システム及び屋根緑化方法 特許第4364927号
■しかく知財関連表彰受賞歴
江木 和泉
発明者
屋外への設置イ
メージ
栽培槽
貯水槽
離れていることで,
培地内の水分量が
過剰にならない!
販売事業本部
(コンシューマ第一グループ)山本 加世子
発明者
鳥取支社
(総務グループ) 定久 弘枝
発明者
壁面緑化システムの
ユニットイメージ
07 08
『知的財産活動』
におけ
る女性の活躍
知財の最前線で活躍す
る女性社員
Topics ❶ Topics ❷
中電工では,
女性活躍推進法に基づき,
女性の管理職や採用数の拡大を図りつつ,
男女が共に自身の
個性や能力を十分に生かせる現場環境整備を進めるため,
行動計画を策定しました。
具体的な取り組みとして,
この計画を推進する組織
「女性活躍推進委員会」
を設置し,
気軽に女性社員が
意見交換できる場として,
「女性活躍推進ワーキンググループ
(COMON UP)」を設置し,
定期的に意見交換
を実施しています。
また,
11月28日に開催された2018年度技術成果発表会では,
同グループで活動経験の
ある社員が
「女性技術者の活躍に向けて」
というテーマで,
女性技術系社員の活躍ぶりを発表しました。
知財活動については,
屋内電気工事の設計分野で
「立体CGによるリフォーム提案システム」
を技術系
女性社員が開発していますが,
まだまだこれからと考えています。
技術系女性社員が少ない中,
今後,
自らが
従事する業務を通じて考えた知財を提案していきたいと考えています。
シスメックス株式会社,
株式会社ジェイ・エム・エス,
戸田
工業株式会社,
コベルコ建機株式会社,
および当社の知財
業務に従事している女性社員を中心に,
毎回テーマを設定し,和やかながらも活発な意見交換会や,
懇親のための
食事会を実施しています。
これにより,
同じ知財業務を担当
する社外の方の課題に対する取り組みや,
知財に対する
考え方に接することができ,
とてもよい刺激となっています。
To p i c s
知 財
私は,
知財部門の立ち上げ当初から知財業務に携わっており,
啓発,
権利化,
企画・戦略など,
さまざまな業務を担当してきました。
今は主に,
2020年4月までの実施が求められている送配電部門の法的分離に
向けて,
分社化後の知財管理体制のあり方を検討しています。
経理面やシステム
面等の課題はたくさんありますが,
関係部署の方の意見を聞きながら,
より良い
社内制度を構築したいと考えています。
分社化というタイミングでしか経験でき
ない業務であり,
とてもやりがいがあります。
他部門と連携して社内制度を構築
知財研修の開催や契約審査等の業務を経験し,
現在は知財戦略策定や体制
整備,
保有特許の維持管理といった企画・戦略業務を担当しています。
経営に貢献する知財戦略を推進するため,
目標や方針を設定する際は,
長期的に
目指す姿や取り組むべき課題を整理し,
実情に合った施策に落とし込むことが
大切だと考えています。
なかなか難しい業務ですが,
それ以上に得るところも多く,
関係部署の方と意見交換を行うなど協力しながら業務を進めています。
2年前に出産しましたが,
休職中も食事会などへ顔を出せる雰囲気なので,
不安
なく復職できました。
周囲の方々にたくさん助けてもらった分,
しっかり貢献できる
よう頑張ろうという気持ちで日々励んでいます。
経営に貢献する知財戦略を
企画・戦略 渉外・法務
調査・分析 権利化(アウトソーシング)
営業所から知財部門に異動し,
契約審査のほか,
知財研修の企画・運営,
商標
チェックの業務を行ってきました。
契約審査では,
将来的に事業で研究成果がどのように使われるかを意識し,
契約書の条文がビジネスの制約にならないような内容になっているか,
具体的に
活用場面をイメージしながら審査するよう,
気をつけています。
その中で,
技術的な
内容が理解できない場合は,
自らが調べ,
技術者に内容を確認し,
進めるように
しています。
研究開発を法務面で支える
技術・経営・知財部門が連携し,
お客さまや地域のために貢献するエネルギア
総合研究所に魅力を感じ,
当社を志望しました。
渉外・法務の業務内容は,
契約審査,
ライセンス交渉,
研究活動の知財協議・
調整など,
多岐にわたります。
業務にあたる際は,
技術者とコミュニケーションを取り,
個々のニーズ・リスクを共有した上で,
的確な法務支援をするよう心掛けています。
専門的な相談内容に対応するためには幅広い知識が求められ,
日々勉強ですが,
当社の研究活動・事業活動から生まれた創意工夫を守り・活かす
「知財業務」に,やりがいと使命を感じています。
知財のプロフェッショナルをめざして
私は数少ない技術系の女性の一人です。
変電設備の点検修理や工事業務を5年
ほど経験後,
知財部門へ配属されました。
現在は調査・分析業務を担当し,
特許
出願から業界動向を探ることで,
当社の研究開発や事業の支援をしています。
調査にあたり,
まずは技術者と課題について意見交換し,
調査の目的と方向性を
決めます。
技術情報を正しく捉えるために,
認識違いがないか何度も確認しながら
進めます。
調査結果をどう読み解くかが腕の見せどころだと思います。
学ぶところも
多く,
毎日楽しく業務にあたっています。
特許情報で先を読む
知財業務を担う女性の社外交流
グループ企業の女性活躍推進への取り組み
(株式会社中電工)
私たちは株式会社アビリティ・インタービジネス・ソリューションズ
(以下AIBS)の社員です。
中国電力株式会社から知財権利化業務の一部を受託しています。 AIBSは知財に関する専門知識,
実務スキルが豊富なスタッ
フを多く有し,
全国での
受託実績があります。 現在は,
AIBS広島本社の女性社員が知財部門執務室の隣に常駐し,
発明発掘〜
権利存続にかかる社内手続および特許事務所とのやりとりを行っています。
高品質な知財事務を提供します
森本 朋美
坂本 博子
向原 由美子
高見 英恵
(2018年度入社)
疋田 麻里子
09 10
幅広く高度な技術からなる基盤技術や独自技術は,
研究・開発や業務のあらゆる場面で行われる創意
工夫の積み重ねにより創出されます。
その成果を確実に知財化し活用していくため,
エネルギアグループでは,
知財活動を積極的に推進しています。
■しかく知財戦略の三つの基本理念
エネルギーサービスを中心に,
お客さまに満足していただける質の高いサービスを安定的にお届けするという当社グループとしての
使命は,
自ら考え創意工夫を行うという意識が高まり,
それを全社員が実践することで初めて達成できるものと確信しています。
また,
コンプライアンス最優先を経営の基本として掲げており,
他者の権利を侵害することがないよう,
社員一人ひとりが常にその
ような視点を持つ必要があります。
こうした当社グループの基本的な姿勢を知財面でも大切にしており,
「創造力の豊かな人材を育成する」,「事業運営のあらゆる場面
で生み出されている知的資産を確実に知財化する」,「他者の権利を尊重する」
ことを,
知財戦略の基本理念として規定しています。 エネルギアグループ
「経営理念」
のキーワードの一つ
「創造。」
には,
エネルギーを中心とする事業を通じて快適性や利便性などの価値
を生み出し,
ご提供することで,
豊かな未来を創造していく,
そのための努力を続けることが当社グループの使命であるという想いを込め
ています。
そして,
この
「創造。」
を担う主体は
「人」
をおいて他にありません。
この認識のもと,
「人材ビジョン」
により,
「自ら考え行動」
する
人材という変化の時代に社員一人ひとりがめざすべき姿を示し,
社員はこの方向をめざして自己研鑽に努め,
会社はその成長を支援し,
育成していくこととしています。
知財面でも,
創造力豊かな人材育成の推進を通じて知財戦略が着実に前進し,
その結果として企業価値の向上が達成されるとの考え
のもと,
活発な啓発活動を展開しています。
啓発活動は,
「知財を身近に感じ,
事業運営上の成果を発明として形にする意識を醸成すること
(=自ら考え行動すること)
の意識
付け」
を大きな目的の一つとしています。
知財部門主催の研修では,
業務内容,
階層・役職,
知財リスクの内容などに応じた,
多様
なカリキュラムを用意しており,
毎年数百名の役員
・社員が受講しています。
他にも,
社内各組織やグループ企業が開催する個別
研修への講師派遣,
eラーニングなどの自己啓発用教材の提供,
実務に役立つ情報の発信など,
さまざまな方法で社員の知財
活動をサポートしています。
また,
社員の発明創出活動を表彰するため,
「知財関連表彰制度」
を設けています。
2018年度は,
年間4件以上の発明を行った
社員を対象とする
「発明創出活動に対する表彰」
では52人,
技術評価が高く,
事業に顕著な貢献をしている発明を行った社員を
対象とする
「発明の事業貢献に対する表彰」
では社長表彰1人を含む計13人を表彰しました。 「知財関連表彰制度」
については,
今年度,
見直しを実施し,
初めて特許出願
(ノウハウとして機密管理するものを含む)
をした
社員を対象とする
「発明創出活動に対する表彰」,および発明の活用に貢献にした組織を対象とする
「発明の活用貢献に対する
表彰」
を設定しました。
これにより,
発明の創出と活用をより一層促進したいと考えています。
基本理念1
創造力豊かな人材が育成され,
その創造力が十分発揮されることにより
知財戦略が推進されるとの認識に立ち,
人材育成と啓発活動を推進する。
グループ企業知財研修への講師派遣
特許出願実践セミナー 発明の事業貢献に対する表彰
(社長表彰)
当社はコンプライアンス最優先を経営の基本として掲げており,
知財戦略においても,
他者の権利を尊重することを大切にしています。
具体的には,
新技術を導入する際には,
他者の特許出願・登録情報のチェックを確実に行うこととしています。
また,
自社で利用して
いる技術については,
適切に権利化していくという取り組みを推進していますが,
この取り組みは他者権利を侵害しないという観点
でも有効に機能しています。
研究・開発を含め,
事業運営のあらゆる場面で生み出される技術・
ノウハウ・アイデアなどの知的資産を確実に知財化し,
日々の
業務をより良いものにしようとする社員の知的創造の成果を担保しています。
知財戦略推進の基本ルールである
「知財規程」
でも,
「業務の過程などで生み出された知的資産の知財化に努めること」
を社員の責務として定めています。
この理念は,
特許登録件数が着実に増加していることや,
「発明者人口」
(特許出願経験のある社員数)
が全社員の約半数に相当
するほど裾野の広い活動が展開されている,
という形で具現化されています。
営業所・発電所・電力所など現業機関の社員による発明の割合が高いこと,
また事務系社員の発明も多数あることも,
大きな
特長です。
広義のサービス業である電気事業にとって,
お客さまや地域に密着した現場での創意工夫は,
サービスの質に直結する
ため極めて大切です。
現業機関の社員や事務系社員による発明の多さは,
社員が常にサービスレベルの向上をめざして創意工夫
を重ねていることの表れだと考えています。
基本理念2
事業運営のあらゆる場面で生み出されている知的資産を知財化し,
それを活用することにより,
市場競争力の強化と企業価値の向上を図る。
基本理念3
自らの知的資産を知財化し,
それを最大限に活用すると同様,
他者の権利を尊重し,
その権利を侵害することのないよう留意する。
事例:浮桟橋式の網場
(PCT/JP2017/020854) 水力発電所の取水口には,
小枝や落葉,
流木などの塵芥の流入を阻止するために格子状のスクリーンを
設置しており,
スクリーンの上流側には,
大量の塵芥の漂着による閉塞や大きな流木の衝突による破損など
を防ぐため,
ネットにフロートを取り付けて水面に浮かべた網場が設置されています。
従来は,
船舶などを利用して網場に漂着した塵芥を除去しており,
大きな流木を除去することは容易ではないことや,
小枝などがネットに絡まるといった課題がありました。
【発明の概要・効果】
作業者が上部を歩行可能な箱状の浮体をロープで連結して係留した浮桟橋式の網場とし,
大きな流木を作業者が
浮体上から細断して除去したり,
浮体の隙間をあけて下流のスクリーンに流すことで船舶などを使用することなく,
塵芥
を容易に処理できるようになりました。
関連➡P29
関連➡P34
発 電
知財戦略の
基本理念と推進体制1知財戦略の基本理念と推進体制
スクリーン
網場
ロープ
浮体
あ ば
11 12
エネルギアグループでは,
知財戦略の取り組みの基本的方向性や目標を示す
「知財戦略基本方針」
を毎年度定め,
基本ルールで
ある
「知財規程」
に従い,
知財戦略を推進しています。
「知財規程」
により各組織の長の責務・役割,
組織として知財活動を展開する
ために必要な基本的事項を明確に示し,
研究・開発や創意工夫の成果が適切に知財化されるように図っています。
■しかく知財戦略推進体制
知財戦略の推進には,
「実施」と「支援」
という二つの側面があります。
事業本部などは日々の業務の中で創出される技術・ノウハウ・アイデアの知財化や保有特許技術の活用などの
「実施」を,知財部門はその活動が円滑に進むよう
「支援」
を担っています。
それぞれ
が役割を果たすことで,
全社一体となった知財戦略を推進しています。
知財戦略推進に関する重要事項の審議などを行う場として,
事業本部副本部長や部門長を委員とする
「知財戦略会議」
を設け,
知財戦略基本方針の審議,
知財戦略の実施状況・結果の報告,
知財リスクに関する情報の共有化などを行っています。
事業戦略,
研究・開発戦略および知財戦略を三位一体で展開するべく,
エネルギア総合研究所長のもと,
経営に深く関わるメンバー
からなる研究・開発推進会議と知財戦略会議が,
相互に連携を図っています。
知財戦略の二つの側面
知財戦略会議
事業戦略,
研究・開発戦略,
知財戦略の一体的な推進
事業本部など
知財戦略推進体制を整備し,
知財戦略を推進
■しかく知財戦略基本方針に基づく推進計画の策定
■しかく推進計画の中期経営計画への織り込みと実施
円滑な知財戦略の推進に資する環境整備
■しかく知財戦略基本方針の策定
■しかく支援体制の構築,
啓発活動の実施
エネルギア総合研究所
(知財部門)
議長:エネルギア総合研究所長
研究・開発推進会議
■しかく委員:事業本部部長,
部門部長
■しかく研究・開発戦略,
方針および
全社の研究・開発計画などを審議
知財戦略会議
■しかく委員:事業本部副本部長,
部門長
■しかく知財戦略推進に関する重要事項を審議
■しかく専門的・詳細な検討を担う
「部会」を,下部機関として設置
連 携
支 援
関連➡P24
■しかくエネルギアグループの知財戦略の基本的な考え方
基盤技術を構成する10の技術分野 ( )
内の数値は各分野の登録特許数
(2015年12月末)
エネルギー事業を取り巻く環境が大きく変わる中,
中国地域においてお客さまに選んでいただける電気事業者であり続けるとともに,
グループの強みが活かせる事業領域において,
中国地域の内外を問わず,
持続的な発展につながる挑戦を続けることが,
ますます
重要になります。
電気事業や新たな事業領域において競争に勝ち抜いていくためには,
競合他社に対する優位性をいかに構築
していくかが鍵となりますが,その競争力強化の源泉となるものは,
保有している企業のみがコントロールできる知的財産であり,それを生み出す人材と考えています。
2002年に知財の取り組みを本格化して以降,
事業運営のあらゆる場面で生み出されている技術・ノウハウ・アイデアなどを確実
に知財化・権利化し,
積極的な活用を図ることで企業価値を向上させることを基本として,
知財戦略推進のための基盤整備や着実で
戦略的な権利化の推進,
知財リスク対応を推進するとともに,
知財をグループ経営ビジョンの実現に向けた全社的取り組みを下支え
するための方策の一つと位置付け,
経営との関係性を強化しています。
企業価値の向上に貢献するという知財戦略の目的を実現するため,
その時々の課題に応じて方針や目標を設定し,
戦略的・段階的
に対応を進めています。
知財創出基盤の早期確立が求められた初期においては量的拡大を志向し,
その後,
質を重視した活動に
シフトしました。
現在は,
電力システム改革をはじめとした経営環境の大きな変化への対応として取り組む電気事業の競争力強化や域外・海外へ
の展開といった成長分野など,
事業戦略上特に重要となる分野を中心に,
事業の構想段階から市場動向や自社・他社の特許情報の
分析を行い,
その結果を踏まえた適切な特許出願により早期の事業化に貢献するなど,
より経営に密着した知財戦略を推進しています。
知財戦略の段階的推進
■しかく施策の展開の流れ
(各段階での取り組み)
2002〜2007年度
量的拡大
■しかく経営における知財戦略の
位置付けの明確化
(中期経営計画への織り込み)
■しかく知財戦略推進体制の基盤整備
■しかく特許出願の量的拡大
2008〜2012年度
質的向上
市場競争力の強化,
企業価値の向上
■しかくより戦略的な権利取得・活用の展開
(特許網構築)
■しかく活動成果の経済価値評価
(定量評価)
■しかく知財で担保される独自技術の
貢献度を社内外に発信
■しかく事業戦略の構想段階に
おける自社・他社特許分析
■しかく知財を活用した競争力強化の
実現,
成長事業の育成・支援
2013年度〜
競争力強化および
事業戦略への貢献
現在のステージ
知財戦略の基本理念と推進体制
13 14
■しかく電気事業を支える基盤技術
基盤技術を構成する10の技術分野 [ ]
内の数値は各分野の登録特許数
(2018年12月末)
電力会社の事業モデルは,
さまざまな発電方式でつくられた電気を,
送電線や配電線を通じてお客さまに安定的にお届けすること,
そして,
電気の使い方に応じてお選びいただける料金メニューを用意したり,
効率的なエネルギーの利用方法などを提案したりする
ことを通じてお客さまにご満足いただくことであり,
技術的側面においては次の特性を有しています。 こうした電気事業の特性や,
社会的要請,
お客さまから寄せられるニーズなどにお応えするために必要となる基盤技術は,
10の分野に
大別できます。
それぞれの技術が蓄積され,
緊密に連携することで,
低廉で質の高い電気を安定的にお届けすることができます。
●くろまる電気は産業や暮らしを支える重要な社会インフラであり,
長期的・安定的に電気をお届けするという社会的要請に
応えることが求められる。
●くろまる適正な電圧や周波数を維持し,
質の高い電気を効率的にお届けするために,
高度かつ広範な技術が必要となる。
燃 料
発 電
送 電
系統運用
変 電
配 電
お客さま
土木建築
全社基盤システム
新規事業など
技術分野
発電に使用する燃料
(燃料油・石炭・LNGなど)
の購買・輸送・貯蔵管理
発電所
(火力・原子力・水力・太陽光など)
の運転・保守・運用
発電所から変電所まで高い電圧で電気を届けるための送電設備の建設・保守・運用
供給区域内の電気使用状況の監視,
発電量・電気の流れの制御,
需給バランスの維持
お客さま設備に応じた電圧に変圧するための変電設備の建設・保守・運用
変電所で変圧された電気をお客さまに送るための配電設備の建設・保守・運用
お申し込み受付や検針の効率化,
お客さまニーズに即した省エネルギーなどに関する技術
発電所や変電所などにおける土木関係設備の計画・設計・施工管理および維持管理
発送電設備や各種業務を支える通信ネットワークや情報システムの構築・維持管理
新規事業領域におけるお客さまの利便性・快適性向上に資する技術
技術内容
燃料
[130件] 発電
[1,233件] 送電
[291件] 変電
[406件] 配電
[1,050件]お客さま
[254件]
土木建築
[316件]
全社基盤システム
[511件]
系統運用
[247件]
新規事業など
[363件]計:
4,801件
中電技術コンサルタント株式会社
(略称:CEC,
Chuden Engineering Consultants)は,土木,
建築,
電気・通信,
情報
および各種調査部門を擁する総合建設コンサルタントとして1965年に設立しました。
当社はこれまでに蓄積してきた多様な
技術と人材を活かし,
地域社会の皆さまのニーズに応えるべく,
「エネルギー・環境」
「維持・管理」
「防災・減災」
「ICT活用」
の4つを技術戦略の柱として位置付け,
技術開発・研究活動を推進しています。
当社では,
スマート
フォンなどに標準装備されているGPSやBluetooth®の機能を用いた位置情報により,
サーバと連携して
当該位置に応じたタイムリーな各種案内,
多言語対応・読み上げ機能を備えた汎用アプリ
「ココガイド
(商標登録第6068735号)」
を開発し,
活用シーンの拡大を図っています。
数多くある観光案内アプリと異なるのは,
案内情報をスマホアプリ側では
一切持たず,
案内情報はすべてサーバに保存し,
サーバ側の案内情報の追加・更新のみで地域や時期を限定しない"使い
勝手の良さ"にあります。
今後は災害時の避難場所の利用説明や,
外国人への観光施設案内などの地域コンテンツを充実
させ,
多様な地域サポートサービスをご提案していきます。
グループ企業の知財活動への取り組み
−中電技術コンサルタント株式会社−
新規に事業を進めるには知的財産権の理解が重要で,
事業を自由かつ有利に
進め,
他者の権利を侵害しないことが極めて大切と考えています。
社員一人
ひとりが問題意識を持ち,
主体的に行動する技術者になってもらうため,
知財
セミナーを企画・実施するなどの活動を行っています。
知財担当者から一言
VOICE
知財戦略の基本理念と推進体制
発電所でつくられた電気を,
送電線や配電線を通じてお客さまのもとにお届けする。
このためには,
発送電に関する技術に加え,
これを支えるさまざまな技術が必要となります。
長年にわたり培われてきた
これらの技術が,
安定供給に欠かせない基盤技術として,
また,
競争環境下において成長していくための
事業基盤を確立するための知的財産として,
当社の電気事業を支えています。
電気事業を支える基盤技術と
特許の関わり2位置情報と連動したスマホ案内アプリ
「ココガイド」
(多言語対応・読み上げ機能付)
中電技術コンサルタント株式会社
(事業企画部)
大場 健太郎
1名所・史跡などの観光案内,
2自然・歴史などの学習用,
3個人旅行,
修学旅行などでの案内,
4 防 災 施 設 情 報・生 活 情 報 などオ ープンデ ー タの 提 供 ,
5 過 去 のイベント動 画 の 提 供 ,
6過去の災害状況など記録情報の提供,
7多言語によるガイド支援,
障害者案内支援
利用シーン
GPS位置
情報
ガイド支援
サーバ
名所・史跡
ガイド
観光案内
GPS ビーコン
ビーコン
情報
案内エリア 案内エリア
多言語
案内
案内
読み上げ
元宇品自然観察
ガイド支援の例
コンテンツは
サーバに格納
コンテンツは端末
またはサーバに格納
外国人への
説明でもガイドが
困らない
初めての人でも
現地のことが
良くわかる
外国語コンテンツの
表示
タイムリーな
説明
15 16
特許出願の目的
■しかく基盤技術と特許の関わり
基盤技術を特許で担保することの意義
電気事業者としての使命を果たす上で不可欠な基盤技術を活用し,
長期的・安定的に電気をお届けするとともに,
将来の成長に
向けた取り組みを強化し企業価値の向上を図るためには,
基盤技術を
「自社の権利」
として確保することが重要です。
特許が有する最大の効力は
「特許権に基づく事業の差し止め」
にあり,競合他社が先に権利を確保すると,
特許技術を利用できず事業
を中止せざるを得ない,あるいは許諾を受けるための交渉で事業が長期にわたり停滞する,などの事態に直面することとなります。
基盤技術を特許で担保して
「事業活動の自由度を確保」
することは,
社会インフラを担う当社にとって非常に重要な意義を持つと
ともに,
競争力強化に資する重要な経営資源を獲得するという点においても大切であると考えています。
事例:ポリマー碍管の洗浄装置
(特願2015‐091490)
【発明の概要・効果】
事例:データ管理システム
(特願2017‐111623)
■しかく自社特許技術を事業で自由に実施 ■しかくクロスライセンス※(注記)
による他社技術の活用
■しかく他社実施によるライセンス料の獲得
※(注記)複数の企業が,
それぞれ保有する特許技術を相互に実施許諾しあうライセンス形式
自由度確保 事業収益拡大への貢献
事業の差し止め 経済的負担の発生
■しかく特許技術を実施できず事業が遅延・中止
(他社特許の実施許諾が受けられない場合)
■しかくライセンス料や損害賠償金の支払い
(他社特許技術を自社で実施する場合)
競合他社が
権利確保すると
発電所や変電所などでは,
電線の絶縁のために碍管が用いられています。
従来から磁器製の碍管が広く
使用されていますが,
近年は,
より耐汚損性が高く軽量なポリマー碍管
(エポキシ樹脂製の内管をシリコーン
ゴムで被覆)
が広まっています。
塩分の付着によるフラッシオーバー
(碍管表面での放電)
を防止するための
洗浄が必要ですが,
従来の磁器碍管の洗浄装置をポリマー碍管に用いると,
洗浄水が直接噴射されるため,
表面のシリコーン
ゴムが破損するという課題がありました。
【発明の概要・効果】
スマートメータの指示数情報に加え,
イベント情報
(配電
設備の停電・復電情報など),スマートメータの管理情報
および契約情報なども用いて,
より細かに異常を検知する
システムとしました。
配電設備だけでなく,
スマートメータ
自体や通信設備にも異常が発生する可能性があります
ので,
これらの原因をきめ細かに特定することで,
異常発生
から対応までに要する時間を大幅に短縮できます。
システム
配 電
事例:ケーブル支持具
(特許第6155410号)
電柱の建替など,
配電設備の工事を無停電工法で行う場合,
工事区間をバイパスして送電するためのバイ
パスケーブルを配電線に取り付けます。
配電設備には,
建物や樹木などとの離隔距離を確保するため,
3本の
配電線を垂直方向に並べて設置された箇所があり,
このような箇所では,
上方の配電線に取り付けたバイ
パスケーブルが下方の配電線に接触して短絡しないよう,
絶縁カバーや絶縁シートを取り付けますが,
雨天時などには短絡が
生じるおそれがあるため,
工事計画の変更などが必要となっていました。
【発明の概要・効果】
電線とバイパスケーブルが接触しないよう支持する支持具を開発しました。
電線把持部の可動部は,
固定部との間を
閉じるようコイルバネの力が作用しており,
間接活線工具でハンドルを保持して電線に押し付けると,
可動部と固定部の
間が開き,
各電線サイズの把持箇所で
電線を支持できます。
また,
ケーブル把持
部分については,
支持具本体の重量に
より生じる,
傾き
(テコの原理)
でケーブル
を把持する方法を取り入れています。
この支持具により,
電線とバイパス
ケーブルに容易に取り付けて離隔でき,
確実に接触を防止できます。
本工具を開発するにあたり,
従来の一般的な工具で採用している
「締付」
による
固定機構を排除し,
作業工程
(動作)
のワンタッチ化をめざしました。
その結果,
作業の簡素化が図れたと同時に作業者の技能レベルに関係なく安定した取り
付け性能を確保させることも可能となり,
作業効率の向上につながりました。
また,
本工具は天候に関係なく長期間電線に取り付けすることが想定される
ことから,
風や振動の影響による落下防止の性能も重要であったため,
数々の
試作,
検証と過酷な試験を繰り返し,
これまでに存在しない電線狭着部の
実用化にたどり着くことができました。
発明者から一言
発 電
電気事業を支える基盤技術と特許の関わり
VOICE
ポリマー碍管の周囲に噴射ノズルを配置し,
洗浄水を上向きに噴射して水幕を形成すること
により,
落下してくる水滴によって表面を洗浄
する構成としました。
ポリマー碍管の表面のシリ
コーンゴムには撥水性があるため,
表面に付着
した水滴が流れ落ちる過程で,
汚れを落とすこと
ができます。
この発明により,
シリコーンゴムにダメージを
与えることなく,
効果的に洗浄できるようになり
ました。
送配電カンパニー
(配電工法・安全グループ)
田中 茂宏
配電設備の故障は,
巡視や,
お客さまや検針員からの申し出により検知していますが,
配電設備や付随する
通信設備は広範囲であるため,
巡視には膨大なコストがかかり,
人手による検知にも限界があります。
スマートメータの指示数情報
(使用量データ)
を用いて,
故障を検知するシステムが提案されていますが,
単に使用量の計測ができないという欠測情報のみを判断材料としているため,
原因を適切に判定して対応
できないという課題がありました。
取り付け状況
バイパスケーブル
電線
関接活線
工具
ケーブル支持具 電線把持部詳細
ハンドル
ロックバー
ケーブル把持部
固定部
可動部
電線
把持解除レバーを
引いて取り外し
バネの
作用方向
バネの
作用方向
回転軸
把持解除レバー
電線把持部
が い か ん
洗浄水
水滴の落下
ポリマー碍管
水幕
水幕
噴射ノズルHES(データ収集通信装置)MDMS(メータデータ管理装置)
現地調査指示
(通信設備)
スマートメータ
指示数情報
異常管理
イベント情報
指示数情報
イベント情報
スマートメータ
管理情報
契約情報
異常判定
機能
業務管理装置
現地調査指示
(配電設備)
現地調査へ
現地調査へ
計器取替指示
(スマートメータ)
17 18
事業上の重点課題における特許網の構築
中期経営計画で掲げる各種目標や重点実施項目などから,
優位性確保の観点を加味して重点課題を設定し,
重点課題の属する技術
領域について集中的に特許を取得
(特許網を構築)
する活動を推進しています。
特許網構築の例として
「間接活線工法・機材の開発」
があります。
配電工事を行う際,
電線の通電部分に直接触れず,
安全距離を
保ったうえで絶縁棒や先端工具を使用して作業を行う工法で,
停電を伴わないことから全国的に採用が進んでいます。
当社において
も間接活線工法に用いる工具・機材の開発に積極的に取り組み,
その成果を適切に権利化しています。
特許技術を自社で積極的に実施するとともに,
蓄積した特許に内在する新しい価値を見出し活用することで,
事業に貢献していく
ための活動にも取り組んでおり,
クロスライセンスや標準化技術への組み込みによる技術開発や資材調達コストの低減,
他社との
アライアンス構築,
新たな事業展開などさまざまな方策の検討を進めています。
また,
公共の利益につながる
「健全な競争」
を促進する観点から,
公益に資する技術の普及・浸透を図るための技術ライセンスなど
も行っています。
一方で,
ライセンス料などの金銭的利益のみを追求すると,
知的財産権の本質である競合他社をけん制する力が次第に下がると
いう弊害があります。
ライセンス活動における収入の獲得は,
知財戦略を推進した結果として達成されるものであるとの考えに基づき,
ライセンスにより自社の技術優位性が相対的に低下することのないよう,
目配りをしながら取り組んでいます。
■しかく間接活線工法による作業風景
参考:クロスライセンスと事業規模
■しかく間接活線工法・機材の特許出願状況
※(注記)商用検索システムを用いて全文検索
「間接活線」
で抽出
特許技術とライセンス活動
基盤技術を特許で担保することで事業活動の自由度を確保し,
その結果得られた利益は特許が下支えしているものですが,
その効果
を財務の観点から捉えることは困難です。
一方で,
経営の観点からは,
保有する特許が事業へどのように貢献しているかを適切に把握する必要があります。
このため,
2007年度
以降,
特許の価値を定量的に評価する取り組みを進めています。
高品質で低廉な電気を安定的にお届けするために取り組んだ研究・開発や創意工夫の成果は,
定量面では効率化によるコスト低減と
いう形で効果を発揮します。
このため,
特許技術が用いられた施策のうち,
主なもののコスト低減額を算定し,
その累計金額を基に
「特許
の価値の定量的評価額」
を算定しています
(2017年度の評価結果は巻末に掲載)。特許の価値の定量的評価
2006年度 出願件数
(取り組み開始時) 2018年12月末 出願件数
工具・機材
工法
中国電力 電力他社計※(注記)1094973130916254
事業規模a 特許件数c 事業規模b 特許件数d
A社 B社
A社特許1,000件を
B社にライセンス
B社特許100件を
A社にライセンス
10 1,000件
1 100件
特許技術集積度c/a100特許技術集積度d/b100■しかく特許を利用する側は,特許権者に対価としてライセンス料を支払いますが,
相互に特許の利用を許諾するクロスライセンスの場合,両者のライセンス
料が一致すると,支払額は相殺されて0円となります。
対等な条件でクロス
ライセンスすることを
「パワーバランスを保つ」
と言います。
■しかくこのパワーバランスは,
特許ごとの価値や件数だけでなく,
事業規模も考
慮されます。
仮にクロスライセンス対象のすべての特許の価値を同一と
した場合,
パワーバランスの指標は特許件数 事業規模=
「特許技術集
積度」
として表されます。
■しかく左図の例のように事業規模が相手先の10倍の企業は,相手先の10倍の特
許を保有していてはじめて
「特許技術集積度」
が相手先と等しくなります。
関連➡P33
■しかく研究・開発戦略
研究・開発においては,S(安全確保)
を大前提として3E
(供給安定性,
経済性,
環境保全)
を同時達成するため,
電気の
需要・供給・送配電ネットワークの各
領域で,
新たな価値創造に取り組んで
います。
その中でも,
事業強化に向けて特に
優先度の高い分野を
「重点開発分野」
として経営資源を重点的に配分する
など,
効果的に研究・開発を推進して
います。
需要サイドの視点から新ビジネス,
サービスを創出する
ため,
エネルギー利用最適化につながる需要制御技術など
の研究・開発に取り組む。
再生可能エネルギーが大量連系した場合でも,
電力品質
や安定供給に影響を及ぼさない系統安定化技術,
最適な
送配電ネットワーク技術などの研究・開発に取り組む。
重点開発分野
需要サイドからのエネルギー利用最適化分野
スマートコミュニティ構築に
向けた研究
研究・開発
テーマ例
隠岐ハイブリッ
ド蓄電池
システム技術実証事業
研究・開発
テーマ例
石炭灰固化物の沿岸域・淡水域への
応用に関する研究
研究・開発
テーマ例
蒸気タービン車室・弁き裂補修技術に関する研究
研究・開発
テーマ例
今後も石炭電源の安定運転を継続するため,
石炭の
クリーンコール技術
(石炭灰有効活用技術を含む)
の研究・開発に取り組む。
石炭利用分野
電源・ネットワーク設備は,
経年化が確実に進んでおり,
将来にわたり安定供給を継続するため,
計画的・効果的な
更新・修繕につながる劣化診断技術,
機器延命化技術など
の設備経年化へ適切に対応する研究・開発に取り組む。
予防保全分野
再生可能エネルギー普及促進分野
供給安定性
Energy security Economic growth
経済性
Environmental
conservation
環境保全
ネットワーク
「供給面」
「需要面」
の変化に柔軟に対応
供給面
発電の一層の高効率・低炭素化
(ベストミックス)
需要サイドを重視した
効率化と省エネ
需要面
Safety
安全確保
電気事業を支える基盤技術と特許の関わり
対等な条件
でライセンス
可能
パ ワ ー
バ ランス が
保たれている
技術開発の進展,
地球環境問題や低コスト化などの社会的要請へ対応していくためには,
基盤技術を
常により良いものに磨き上げ,
新たな技術を創出していかなければなりません。
当社では,
これからの
電気事業を支えるための研究・開発に積極的に取り組み,
その成果を競争力強化の源泉となる
「独自技術」
として積み重ねています。
研究・開発への取り組みと
独自技術319 20
事例:石炭火力発電所におけるアンモニアの混焼方法
(特許第6332578号)
【発明の概要・効果】
当社水島発電所
(岡山県倉敷市)
の既設ボイラにおいて,
さまざまな条件でアンモニアと微粉炭を混焼させ,
窒素
酸化物の発生状況を検証しました※(注記)。その結果,
アンモニアの微粉炭との混焼率を0.8%以上とすることにより,
窒素
酸化物の発生が抑えられることを確認できました。
また,
混焼に用いるバーナにおいて,
アンモニア噴射ノズルを微粉炭噴射ノズルを中心とする円周上に配置し,
この円
の接線方向にアンモニアを噴射する構造としました。
これより,
微粉炭火炎の周囲をアンモニア火炎が螺旋状の軌跡を
描く
ようになり,
燃焼距離が長くなることで燃焼時間を長く確保でき,
不完全燃焼を抑制できるようになります。
※(注記)内閣府総合科学技術・イノベーション会議の
「戦略的イノベーション創造プログラム
(SIP)」のうち,
「エネルギーキャリア」
に関する委託研究課題 「アンモニア直接燃焼」
の一環であり,
国立研究開発法人科学技術振興機構
(JST)
からの受託により実施。
エネルギア総合研究所
(エネルギー技術グループ)
谷川 博昭
この研究に伴う特許は現在5件あります。
知財部門ならびに弁理士など関係者
のご協力により,
約半年と最速のスピードで特許を取得できました。
この紙面を
借りて感謝申し上げます。
出願の際には,
出願書類にどのように発明の内容を記載
するかなど,
簡易発明届や,
研究資料を元に,
弁理士と十分検討しました。
また,
研究の内容は,
報道発表もすることができました。
わずか約0.8%の
混焼率ではありますが,
事業用発電設備では初めての試験であり,
水素関連
の方たちの注目を今でも浴びています。
試験画像はインターネットでも参照
できますので,
ぜひご覧ください。
発明者から一言
■しかく研究・開発の意義と独自技術
石炭火力のパイオニアとして,
他電力に先駆けて技術開発を行うとともに最先端の技術を導入するなど,
石炭火力発電を通じて
常に時代の要請に応えてきました。
供給安定性・経済性に優れる石炭を将来にわたって活用していくため,
高効率化やクリーン化の
取り組みを推進しています。
石炭は,
他の化石燃料に比べて,
資源量が豊富で地域偏在性が少なく,
価格も低位で安定していることから,
エネルギー自給率が
8%程度と低い我が国にとって重要なエネルギーであり,
当社としても,
石炭火力を重要なベースロード電源の一つとして位置付け
ています。
一方で,
石炭は他の化石燃料に比べ,
CO2排出量が相対的に多いという課題があるため,
三隅発電所への超々臨界圧
(USC)
石炭火力発電※(注記)1
の採用や,
次世代の高効率石炭火力発電技術
「石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC※(注記)2)」
の基盤技術である
「酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素吹IGCC※(注記)3)」
の実証事業など,
CO2排出量削減を図るクリーンコール技術の開発・導入に向けた
取り組みを推進しています。
大規模な発電設備や複雑な送配電ネットワークを用いて事業を行う中で,
グループ一体となって効率的な設備運用ノウハウや
保修技術を蓄積するとともに,
設備ユーザーの視点で独自の研究・開発を行っています。
また,
業務の中で発想したアイデアや設備運用ノウハウを,
ものづくりの視点で研究・開発を行うメーカーにフィードバックし,
より
効率的な設備にするために共同で研究・開発に取り組むこともあります。
当社,
グループ企業,
メーカーそれぞれが持っている技術を
融合させることで,
より高いレベルの研究・開発成果が得られています。
石炭火力の高効率化
※(注記)1 蒸気を高温
(600°C級)・高圧
(24.5MPa)
にしてタービンを回す発電方式で,
熱効率が高くCO2排出量を削減可能。
※(注記)2 石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC)
IGFC:Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle, IGCCに燃料電池を組み合わせて発電効率をさらに向上させる技術。 ※(注記)3 酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素吹IGCC)IGCC:
Integrated Coal Gasification Combined Cycle,
酸素を用いて石炭をガス化し,
水素と一酸化炭素を主成分とする生成ガスを製造し,
ガスタービンと蒸気タービンにより複合発電する技術。
実証試験を進める中央制御室
実証事業スケジュール
本プロジェク
トは,
経済
産 業 省 補 助 事 業
(2012〜2015年度)
および国立研究開発
法人新エネルギー・
産業技術総合開発機構(NEDO)
助成事業
(2016年度〜)
として
実施し
ています。
事例:酸素吹石炭ガス化複合発電技術の実証研究
(大崎クールジェンプロジェクト)
当社は,
電源開発株式会社と共同で大崎クールジェン株式会社を設立し,
究極の高効率発電技術である
酸素吹石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC)
とCO2分離・回収を組み合わせた革新的低炭素石炭火力発電
の実現をめざす
「大崎クールジェンプロジェクト」
を大崎発電所構内で進めています。
このプロジェクトは,
実証
試験を3つの段階に分けており,
第1段階としてIGFCの基盤技術である酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素吹IGCC)
実証を
2017年3月に開始しました。
第2段階では,
第1段階の設備にCO2分離・回収装置を追設するCO2分離・回収型IGCC実証を
計画しており,
建設工事を進めています。
さらに第3段階として,
第2段階の設備に燃料電池を組み合わせたCO2分離・回収型
IGFC実証を計画しています。
従来,
火力発電所などでは,
石炭や天然ガスなどの化石燃料を燃焼させて発電を行っていますが,
地球温暖化
の原因となる二酸化炭素が発生するため,
二酸化炭素を発生しない燃料として,
アンモニアの利用が提案されて
います。
他の化石燃料とアンモニアを混焼することにより,
二酸化炭素の発生量を削減することが期待できます。
しかし,
アンモニアを燃焼させると,
アンモニア成分中に含まれる窒素分が酸素と結び付き,
有害な窒素酸化物が発生する
懸念があることや,
他の燃料と比べてアンモニアの燃焼速度は小さく,
火炎が長くなることから,
従来の同軸バーナを用いて,
他の燃料と同様に水平に噴射して燃焼させると,
不完全燃焼が生じるという課題がありました。
石炭ガス化設備
設計・製作・据付 実証試験
実証試験
実証試験
第1段階
第2段階
第3段階
設計・製作・据付
設計・製作・据付
年度 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素吹IGCC)
石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC)
の概要
CO2分離・回収型IGCC
CO2分離・回収型IGFC
第1段階 第2段階
ガス化時の排熱・ガスタービンの排熱を利用
して水蒸気を発生させタービンを回す
排熱回収ボイラ
酸素
ガス化炉
蒸気 水素
蒸気タービン
発電機
燃料電池
ガスタービン
空気圧縮機
酸素製造
装置
石炭
一酸化炭素,
水素
第3段階
石炭をガス化して可燃性ガス
(水素,一酸化炭素など)
に変換
ガス化で発生した可燃性ガスを
燃焼してガスタービンを回す
発生した一酸化炭素を水蒸気と反応させ,
CO2と水素に変換した後,
CO2を回収CO2発 電ヘッダーアキュームレータ
脱硝装置へ
微粉炭
ボイラ
アンモニア供給
戻り配管
発 電
研究・開発への取り組みと独自技術
VOICE
気化器
アンモニアタンク
液化アンモニアを
気化させる装置
液化アンモニアの
貯蔵タンク
(脱硝用として既設)
気化したアンモニアを
一定圧力で蓄えておく装置
■しかく混焼設備の構成 ■しかく混焼バーナ
各使用先にアンモニアを
分配する装置
追加系統
(混焼用)
アンモニアの
噴射方向
アンモニアの
噴射方向
微粉炭ノズル
21 22
外部リソースの有効活用
積極的に研究・開発に取り組み,
独自技術を適切に権利化していくことは,
重要な取り組みの一つですが,
技術やビジネスモデル
が急速に変化する環境下では,
他社の技術を効果的に導入するオープン・イノベーションの考え方も求められます。
当社においても,
外部知見を活用するための共同研究や共同開発,
蓄積した独自技術や特許を活用するためのクロスライセンス
や標準化活動などに取り組んでおり,
これらを通じて,
研究・開発の効率が高まる,
必要な特許が導入しやすくなる,
など事業への
貢献が期待されます。 こうした取り組みを有効に機能させるためには,
質・量を兼ね備え外部に対して価値を持つ特許ポートフォリオを構築すると
ともに,
それを管理・分析する仕組みを整えることが必要となることから,
オープン・イノベーションの時代にあってこそ,
その利点
を最大限活用するために,
知財戦略を積極的に推進していくことが重要だと考えています。
当社では,
2017年10月に,
研究開発成果や保有知財の実用化・事業化推進のために,
技術開発動向の調査,
ビジネスモデルの
検討,
アライアンス企業の発掘に向けたオープン・イノベーションの推進などに取り組む専任組織「事業支援グループ」
をエネルギア
総合研究所内に設置し体制を強化しました。
当社のオープン・イノベーションの取り組みの特徴は,
検討の初期段階において必ず特許調査・分析を行う点です。
具体的には,
目的に併せて,
大きく二つのパターンで調査分析を行います。
一つめのパターンは,
「自社の抱える技術的な課題
(ニーズ)
を解決して
くれる技術
(シーズ)
を探す」
ための,
いわゆる"探査型"の分析です。
もう一つのパターンは,
「自社の保有する技術
(シーズ)
を活用して
くれる分野や企業を探す」
ための,
いわゆる"売込型"の分析です。
いずれの分析においても,
テキスト解析ソフトを用いて短時間に
大量の特許文献をマクロ的な視点で分析することから始めます。
ある程度の業界の状況が把握できた後に,
詳細にスポットを当てて
ターゲットとなる企業や技術分野を細かく見ていくことになります。
特許分析を重視する理由は,
オープン・イ
ノベーションを進めていくにあたって,
お互いに保有する技術・知財・ノウハウを尊重し合える
企業・機関・大学と協業できるかどうかが鍵だと考えているためです。
特許技術を保有している企業の多くはライセンサー・ライセンシー
のいずれの立場についても経験が豊富であることから,
どちらか一方の当事者が極めて有利・不利な関係ではなく,
将来にわたって
安定的な協業関係を構築できる可能性が高いと考えています。
■しかく研究・開発推進体制
価値の高い研究・開発成果を生み出すためには,
研究・開発の計画段階で,
その目的・目標や,
どのように事業で活用していくかを
明確に定めて,
効果的に取り組みを進める必要があります。
このため,
研究・開発に関する各組織の長の責務や役割,
計画・実施・
評価および成果の活用に関する基本的事項などを
「研究・開発規程」
として制定し,
関係箇所の合意形成を図っています。
経営企画部門が研究・開発戦略を示し,
これに基づき,
総括箇所であるエネルギア総合研究所が,
実施や成果活用を担う事業本部
などと連携して,
具体的な研究・開発計画を策定・実施する枠組みとなっています。
また,
研究・開発の目的や目標レベル・開発期間などの評価・調整,
社内の組織間連携,
知財部門との事前協議の徹底などに取り
組んでおり,
これらを通じて,
適切な計画策定や成果の確実な活用および知財の権利化を図っています。
研究・開発推進会議では,
研究・開発戦略や研究・開発計画などを審議しています。
会議は事業本部などの部長からなり,
研究実施
箇所や実用化箇所などが一体となって,
多角的な視点から活発な議論を交わしています。
研究・開発に関する役割分担
研究・開発推進会議
近年取り組んでいる研究・開発の概要や成果などについて,
『エネルギア総研レビュー』
で公表しています。
最近の主な研究成果
研究テーマ
エネルギア総研レビュー掲載箇所 http://www.energia.co.jp/eneso/tech/review/index.html
研究・開発戦略の提示
経営企画部門
研究・開発計画の策定・実施
事業本部など
連 携 支 援
エネルギア総合研究所
石炭灰造粒物を用いた東京・日本橋川における水辺環境改善効果の検証について
酸化亜鉛形避雷器の劣化調査
低温脱硝触媒の開発について
エネルギア総合研究所太陽光発電装置の経年変化について
ボイラチューブ余寿命診断手法に関する研究
アンモニアの発電利用に関する事業性評価
塩害対策への石炭灰
(フライアッシュ)
の適用性について
マイクロ波無線中継所の耐雷性能評価技術に関する研究
第54号
(2018年Vol.4)〃〃
第53号
(2018年Vol.3)〃第52号
(2018年Vol.2)〃第51号
(2018年Vol.1)〃〃
エネルギア総研レビュー掲載号
関連➡P14
特許分析を核としたオープン・イノベーション
研究・開発への取り組みと独自技術
権利継続 審査中 出願のみ
取り下げ 拒絶 失効
当社特許
母集団
他社特許
母集団
アンモニアの発電利用に関する事業性評価
第2報 微粉炭燃焼におけるアンモニアの混焼率増加に向けて
隠岐諸島ハイブリッド蓄電池システム実証事業
〜再エネ発電実績に基づく余剰電力対策の有効性の検討〜
■しかく特許分析の事例・技術分野E・主要企業K・技術分野D・主要企業L・技術分野C・主要企業P・技術分野C・主要企業Q・技術分野A・主要企業Z・技術分野D・主要企業M・技術分野F・主要企業W・技術分野B・主要企業X・技術分野A・主要企業Y・技術分野D・主要企業N1992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013201420152016可搬型地絡センサ
(※(注記))
標定方法
(※(注記))・速度補正
標定方法・子局故障時
標定方法・複数サージ発生時
地中ケーブルの標定方法・磁界or光電流センサ利用
伝搬速度補正
(※(注記))
共振周波数利用
他社に対して当社技術を提案する場合には,
特許分析を行い,相手先企業の保有する特許
と類似性の高い当社特許
(図中の破線部分)
を抽出。272829205 513131279 9
5 2 222
2 2 222
2 2 2 222222221 1 111 11111111 11 1111 11 11111111111111 1111
1 1 1 1
1 1 1 1111111 1 111444444 33333333特許文献に記載された技術用語を解析し
類似度によっていくつかの集まりに分類
23 24
エネルギアグループは,
中国地域を事業基盤とする企業市民として,
これまで蓄積してきた知財を地元企業など
に活用していただく取り組みを,
行政や金融機関などと連携して進めています。
本取り組みを通じて,
地域とともに
成長する企業グループをめざします。
知財マッチングによる
地域との連携4■しかく知財マッチングの全体像
当社グループは,
中国地域を中心に,
自治体や金融機関など
が開催する知財マッチング会などへ積極的に参加しています。
また,
最近では中国地域だけではなく,
他の地域でのマッチング
会への参加を契機に,
新たな企業とのオープン・イ
ノベーション
に関する取り組みも進めています。
知財マッチングやオープン・イノベーションなどに関するお問い合わせは,
ご遠慮なく下記
までご連絡ください。
■しかく知財マッチングを出発点としたオープン・イノベーションへの取り組み❻❻❺❺❹❹❷❷ ❸❸❶❶ 知財マッチングは,
当社特許を地元をはじめとした各企業に活用していただくことをめざした取り組みですが,
逆に,
当社の研究・
開発ニーズを広く発信し,
当該ニーズにマッチする技術シーズを持った企業を探索するオープン
・イノベーションの取り組みも
2017年度から開始しています。
知財マッチング会においては,
さまざまな企業と面談の機会がありますが,
これまでにお付き合いの無かった企業や組織との出会
いをきっかけに,
協業に向けた検討を重ねています。
当社に無い技術を探し出して導入することや,
当社の保有する技術や事業フィール
ドを使って新たな価値を創り出していくことをめざした取り組みですが,
お互いに保有する技術・知財・ノウハウを尊重し合える素晴ら
しいパートナー企業と巡り逢えるかどうかがすべての始まりです。
中国地域では,
山口県の有限会社ちふりや工業様,
岡山県のダイヤ工業株式会社様をはじめとし,
その他の地域では茨城県の株式
会社アート科学様,
和歌山県のノーリツプレシジョン株式会社様など,
当社技術や事業フィールドを題材として,
新たな価値を創造
していくために,
双方向の協業関係を構築していきます。
エネルギア総合研究所
(事業支援グループ)
TEL 082‐544‐2917・知的財産交流会・マッチング調整・製品化支援・新製品開発・新規事業進出・技術高度化・製品付加価値向上
連携
支援
知財・特許実施許諾・ノウハウ提供・技術指導
エネルギア
グループ
行政・金融機関 など
地元企業 など
知財マッチングによる地域との連携
株式会社アート科学様
ダイヤ工業株式会社様
有限会社ちふりや工業様 ノーリツプレシジョン株式会社様
「知財広め隊セミナーin島根」で当社知財および研究成果を紹介。
(2018年7月)
日本弁理士会,
日本弁理士会中国支部主催
❶島根県
「平成29年度 ひろしん 知財活用
ビジネス交流会」
で知財を紹介。
(2018年2月)
広島信用金庫主催
❷広島県
「岡山開放特許ビジネスマッチング関係機関説明会」で金融機関に当社知財を紹介。
(2018年7月)
岡山リサーチパークインキュベーションセンター主催
❸岡山県
「筑波知的財産研究会」で4社の中小企業と個別面談。
(2018年6月)
筑波銀行主催
❻茨城県
「せとしん知財活用ビジネス
マッチング交流会」で当社知財を紹介。
(2018年5月)
瀬戸信用金庫主催
「知財ビジネス
マッチングセミナー」で当社知財を紹介。
(2018年9月)
愛知県豊田市主催
❺愛知県
「知財マッチングinかがわ」で当社知財および研究成果を紹介。
(2018年2月・10月)
かがわ産業支援財団主催
❹香川県
25 26
シンボルマークの防護標章登録
テク
ノロジーブランドを通じたお客さま接点の構築
■しかく戦略的事業領域での商標活用
戦略的事業領域を結ぶグループシンボルマーク
当社では,
近年注目が高まっているオフィス緑化を快適に実現する循環
式栽培槽システムを開発しました。
本システムは,
培養液の循環により排水
を不要とし,
また培地槽と培養液槽を分離することで過剰給水を防ぐと
ともに,
無機培地を採用することによりクリーンで培養液の交換も不要と
なるなどの技術を搭載しています。
緑を快適に保つ技術をわかりやすくお客さまに認知いただくために,
テク
ノロジーブランド「e・
ver」
を制定しました。
世の中には,
さまざまな商品・
サービスがひしめいていますが,
技術の
高度化・複雑化に伴い,
技術のもたらす価値が情報としてお客さまに
伝わりにく
くなっています。
テク
ノロジーブランドを通じて,
エネルギアグループの技術が,
お客さまの
生活やビジネス環境にもたらす価値の根拠を,
わかりやすく
「見える化」し,エネルギアグループの商品・サービスを安心して選択いただけるよう情報
発信を行っていきます。
シンボルマークに蓄積されたお客さまからの信頼を適切に保護するため,
「防護標章」
の登録を受けており,
エネルギー関連の事業
において,
他者が防護標章と同一商標を使用することを制限する点で,
通常の登録商標よりも広く保護されています。
防護標章として登録されるためには,
その商標が著名であることが要件となりますが,
シンボルマークをさまざまな媒体で積極的に
使用したことで,
お客さまやお取引先さまなどに広く知られていると認められました。
これにより,
シンボルマークと混同の可能性がある商標が登録されることや,
お客さまが商品やサービスの提供主体を混同することで,
不利益を被るような他者の商標の使用を防ぐことができます。
エネルギアグループは,
電気事業を中核に幅広い事業からなっています。
各社の役割を明確にしたうえで,
その特性・特長を活かし
多様なニーズにお応えすることで,
より多くのお客さまに選んでいただくため,
戦略的事業領域を定め,
トータルソリューション事業を
展開しています。
グループとしての一体感の醸成やイメージの向上を図るとともに,
営業面でのグループ総合力の発揮をねらいとして,
創立50周年
事業では,
当社シンボルマークを基調とするエネルギアグループのシンボルマークも制定しました。
電力小売りの全面自由化後の競争環境においては,
「地域で選ばれ,
地域をこえて成長する企業グループ」
として,
「中国電力グループ」
イコール
「エネルギア」
として認知いただき,
お客さまの期待に応えられるように進んでいきます。
■しかく商標を通じたメッセージの発信
当社のシンボルマークは,
1991年1月に制定されました。
当時の電気事業を取り巻く情勢は,
世界的なエネルギー問題,
地球規模
の環境問題,
規制緩和による競争激化など,
21世紀を前に大きな変化を迎えていました。
このような状況の中,
社員の意識改革や
社内の活性化,
地域の皆さまに信頼され親しまれる企業イメージの構築をめざすことを,
企業理念とシンボルマークによって明確
にしました。
企業理念は,
キーコンセプトと経営理念で構成されています。
キーコンセプトの
「ENERGIA」は,「エネルギー」
の語源であるラテン
語に由来し,
「エネルギーがもたらすあたらしく,
あかるく,
あたたかい活力ある社会」
であり,
その社会の実現に向けて努力していく,
という当社の姿勢を表すものです。
電力小売りの全面自由化を迎えるにあたり,
こうした当社グループの原点を再認識すると同時に,
今後の事業環境変化も展望し,
「グループとして将来にわたり大切にしていきたい思い」
を込め,
2016年,
エネルギアグループの新たな企業理念として掲げることに
しました。
これらの想いをシンボルマークに込め,
お客さまをはじめ私たちと関わりある皆さまとエネルギアグループをつなぐ目印として,
これからも積極的に活用し,
皆さまの信頼を高めていきます。
シンボルマークは,
「E」
を強調したダイナミックな
「EnerGia」
のロゴタイプと,
エネルギーの動きや成長する力を一体化した
造形に躍動感を伴う赤
(ウォームレッド)
と安定感を象徴する青
(ジェントルブルー)
で彩色し,
それを中国電力や中国地方
さらに地球を表したCリングで囲んだデザインで構成されており,
エネルギーを通じて,
お客さま
・地域・環境に貢献して
いこうとする中国電力の企業理念を表現しています。
シンボルマークが持つ意味合い
シンボルマークと企業理念
キーコンセプト シンボルマーク
商標登録第3104821号
グループシンボルマーク 戦略的事業領域
電気事業および
電気事業サポート
総合エネルギー
供給事業
環境調和
創生事業
ビジネス・生活支援事業
情報通信事業
商標への取り組み
特許権と並ぶ重要な知的財産権に商標権があります。
商標は,
企業や,
商品・
サービスに関して,
エネルギア
グループとお客さまを結び,
お客さまからの信頼の証となる大切な知的財産であると認識しています。
企業のシンボルマークから,
良質な商品・
サービスを支える技術の名称まで,
商標権として適切に権利化し
保護することで,
安定的に使用できるようにするとともに,
お客さまに安心してエネルギアグループの商品や
サービスをお選びいただけるようにしています。
商標への取り組み5テクノロジー
ブランド
コ ン セ プ トe・ver【イーバー】
商願2018‐058048ほか
Electric
(電気)・ever
(ずっと,常に)
養液循環式の技術が提供する価値
「ずっと緑を保つ技術」
27 28
■しかく知財リスクに対する日常業務での対応
知財リスク対応の取り組み事例
日常業務や研究・開発において当社が実施・検討している技術内容と他者特許を対比し,
侵害の有無を検討する
「特許権侵害
リスク対応」や,広告物やイベントなどで使用する媒体について,
他者商標権の侵害の有無や回避方策を検討する
「商標権侵害
チェック」
などを日常的に実施しています。 また,
権利確保面では,
共同研究などの成果を自社の権利として適切に確保するための契約書チェックを行う
「知財関連契約
審査」や,社外に公開予定の論文・技術資料などに未出願の内容が含まれ,
公開により特許を取得できなくなることを防止するため
のチェックを行う
「知財性確認」
などの仕組みを整え,
日常業務として実施しています。 なお,
現時点において当社の経営に重大な影響を与える知的財産関連の訴訟案件はありません。
社外に発信する広報・広告媒体は,
他者商標権侵害のリスクを回避するため,
作成段階で商標リスクの有無を審査する体制を
整備しています。 事前審査で懸念されるリスクが発見された場合は,
対象となるネーミングなどの表現を変更する対応をとり,
商標権侵害リスク
を未然に防止しています。 当社グループの事業に関わりが深い技術分野について,
特許情報に動きがあれば自動で配信するシステム
「SDI」を活用し,
事業本部などの知財事務局と知財部門が連携して,
知財リスク管理を行っています。
●くろまる当社グループの事業活動に関係する他者の特許や技術動向を把握し,
他者特許権を侵害する疑いがあるなどの
問題事案を早期・効率的に発見
●くろまる特定技術や他者技術開発などの動向
(関心テーマ)
を中長期にわたり追跡し,
他者特許権侵害の可能性がある場合
には技術戦略や研究・開発の方向性を見直し
【SDI※(注記)
機能を活用した他社特許の監視】
■しかく他者商標権侵害の防止に関する体制
他者特許を侵害するつもりはなく,
自ら考えた発明を使用していた場合であっても,
これは
当社オリジナルの発明であり,
他者特許の存在を知らなかったという主張は認められず,
権利
侵害となります。
また,
自社の知財を無断で他者に使用されるなど,
さまざまな形の知財リスク
が存在します。
知財リスクを回避するためには,
日ごろからどのようなリスクが存在するのかを
把握し対応策を考えることが必要です。
社員から一言
権利取得機会喪失リスク回避のための取り組み事例
当社は,
業務運営のあらゆる場面で生み出されているアイデアなど知的資産を,
知財化することを基本としています。
このアイデアなどを特許出願前に社外へ公表してしまうと,
特許権を取得できなくなってしまいます。
このため,
アイデア
などの秘密保持が重要であり,
知財規程においても
「発明に関する事項について,
原則として,
その発明の出願が公開※(注記)
されるまでは,
他に漏洩してはならない」
と定めています。 こうした権利取得機会喪失を防止する必要から,
社外へ開示・公表する技術資料の内容を事前にチェックし,
公表
しても問題ないか確認する取り組みとして,
「知財性確認」
を行っています。
※(注記)特許庁は,
出願の1年6カ月経過後に公開
エネルギア総合研究所
(知財部門)
2権利取得機会喪失リスク回避の
観点から,
内容をチェック
3確認結果の通知
4通知された確認結果を踏まえ,
開示・公表内容を検討
【研究成果などの社外発表前の知財性確認】
■しかく
「知財性確認」
の流れ
技術主管箇所が
社外への開示・公表を
検討している技術資料1「知財性確認」
の依頼
技術主管箇所
※(注記)Selective Dissemination of Information
(情報の選択的配信)
■しかく他者特許監視の目的
知財リスクへの対応
VOICE
エネルギア総合研究所
(知財啓発権利化グループ)
神谷 徳之
指定した条件
(出願人,
技術分類,
キーワードなど)
に合致する特許
公報を抽出してメール配信
特許公報を
発行の都度
蓄積
必要により主管
に 技 術 内 容 を
確認依頼
新たに発行された
特許公報
新特許情報検索システム
(知財部門で管理)
各事業本部などの
知財事務局
各主管
知財規程の基本理念の一つである
「他者の権利の尊重」,および
「コンプライアンス最優先」
という考え方
に基づいて,
知財リスクを回避するための取り組みを積極的に推進しています。 知財リスクへの対応629 30
1省エネ
・長寿命なLEDの光を利用することで,
薬品を使う
ことなく海洋生物の付着を防止する技術
(PCT/JP2012/070700ほか)
2排気ガス中の窒素酸化物
(NOx)
を除去し,
浄化する技術
(PCT/JP2016/076870ほか)
○しろまる2013年11月,
WIPOが事務局となって設立され,
環境技術/ニーズのデータベースと環境技術移転を促進する組織
のネットワークからなる。
○しろまる運用開始以降,
データベースには100ヵ国以上で2,600件を超える環境技術やニーズが登録されており,
「WIPO
GREENネットワーク」
には世界170ヵ国で6,000以上の個人や組織が参加している。
WIPO GREENの概要
■しかく知財を通じた貢献活動
2016年4月に発生した熊本地震からの早期復興に特許の活用を通じて貢献することを目的として,
2017年9月に,
九州経済産業局,一般社団法人熊本県工業連合会および九州電力株式会社と
「熊本地震復興支援事業に関する連携協定書」
を締結しました。
本事業は九州経済産業局の支援のもと,
事務局である熊本県工業連合会が設置する
「被災企業認定委員会」
の認定に基づき,
地震により直接的・間接的に被害を受けられた熊本県の企業に対して九州電力株式会社と当社が,
各々が保有する原則すべて
の特許について,
無償で実施許諾を行うものです。
熊本地震復興支援
地域の人材育成への協力
■しかく地域貢献の推進
環境技術における貢献(WIPO GREENへの参加)
地域社会への貢献という観点から,
地元企業を対象とした知財研修活動への協力や,
高校生や大学生に向けた科学技術に関する
教育活動についても積極的に取り組んでいます。
近年の取り組みとして,
一般社団法人広島県発明協会が主催するセミナーへの
講師派遣など運営への協力や,
一般社団法人日本知的財産協会が行う研修会や講演会などへの参画・協力,
インターンシップ実習生
の受け入れなどがあります。
また,
次世代層への環境エネルギー教育として
「わくわくE‐スクール」
を開催しています。
同スクールでは,
地域の小学校の社会見
学を受け入れ,
環境エネルギー学習を支援しています。
太陽光発電,
電気自動車,
雷インパルス電圧発生装置などの施設見学や理科実
験に加えて特許庁制作の知財ビデオによる
「小学生向け知財学習」
を取り入れ,
見学後
「発明を守る特許の大切さがわかりました」
と自筆の感想文が寄せられるなど,
高い評価をいただいています。
当社は,
2018年4月,
当社の保有する環境技術を広く普及させ,
環境保全に貢献することをめざし,
世界知的所有権機関
(WIPO)
が運営する環境関連技術・ノウハウのグローバルな普及を促進する枠組みである
「WIPO GREEN」
の環境技術データベースに当社
の保有する環境技術を登録しました。
今後も,
自社の研究開発を通じて得られる環境技術について,
世界で広く活用していただけるよう,
「WIPO GREEN」
への参加
を通じた情報発信と海外企業との技術交流を積極的に進めて
いきます。
大学生を対象とした科学技術に関する教育活動 施設見学
(太陽光発電システム)
知財ビジネスマッチング in 熊本 株式会社KIYORAきくち様への実施許諾
CSRの取り組み
エネルギアグループは,
CSRの取り組みの方向性と役員・社員の行動の根底に置くべき原則を定めた
「エネルギアグループCSR行動憲章」
のもと,
社会から信頼され,
選択される企業グループとなることを
めざし,
グループ一体となったCSRの取り組みを推進しています。
知財面からも,
熊本地震復興支援を目的とした特許使用に関する事業,
地域の人材育成への協力など,
CSRの取り組みを展開しています。
CSRの取り組み7 2018年1月には本事業の一環として,
特許庁・
九州経済産業局主催の
『巡回特許庁 in 九州』
の中で開催された
「知財ビジネス
マッチング in 熊本」
に参加し,
地元企業へ特許技術の紹介を行いました。
2018年11月には,
熊本県菊池市の天然水を活かした炭酸氷や水素水の製造・販売を手掛ける被災企業・株式会社KIYORA
きくち様
(熊本県菊池市)
に対し,
当社特許
「水素含有水生成電極
及び水素含有水生成装置
(特許
第5688104号)」ほか6件の実施
許諾を行いました。
今後も,
熊本県で開催される
知財マッチングイベントなどに参加し,当社特許技術に関する情報
提供・活用の促進を行っていくこと
としています。
熊本地震復興支援事業のスキーム
中国電力
地元被災企業
熊本県工業連合会
被災企業認定委員会
九州経済産業局
(本事業の周知・普及啓発を実施)
1特許情報提供
2特許情報紹介
3実施許諾の申請
4認定
5無償実施許諾契約
5無償実施許諾契約
九州電力
今年度WIPO GREENへ登録した環境技術
技術提供側
法人,
大学など
環境技術を登録
技術導入側
法人,
大学など
必要な環境技術を検索
環境技術
データベースWIPO環境技術移転サポートの
ためのネットワーク
技術情報
契約情報
国際機関,
国家機関,
現地コンサルティング組織など
(ニーズ調査,
マッチメイキング,
ビジネス化などについての支援)
国際機関,
国家機関,
現地コンサルティング組織など
(ニーズ調査,
マッチメイキング,
ビジネス化などについての支援)
ニーズ情報
31 32
■しかく2017年度の算定結果
(当該年度時点で存続している特許を対象に毎年度再評価
(洗い替え)
を実施) 電気の安定供給,
競争力強化,
環境保全などに資する技術の研究•開発により新たな価値創造に取り組むとともに,
業務運営の
あらゆる場面で生み出される知的資産を知財として認識・活用し,
企業価値を向上していくことがグループ存立の基盤と考え,
戦略的
かつ効率的な権利取得・活用を進めています。
こうした知財活動を通じて創出された知的財産
(IP:lntellectual Property)
の実績は以下の通りです。1:
特許技術が導入・適用された施策のうち,
一定額以上のコスト低減効果が発生した件数。2:
技術を特許出願することで事業活動の自由度を確保できていることの金額効果。3:
対象技術が特許で担保されていることで当社のみがメリッ
トを享受できている金額効果。
2に特許技術の寄与度や特許の強さなどを加味して算定したもの。4:
クロスライセンスの対価となり得る特許技術の金額効果。
自社が対価性のある特許を保有していれば支払額が相殺されることから,
他社技術導入の原資として特許の金銭的側面
を評価したもので,
相手先企業との事業規模比により算出される係数Aの値により変動。 ■しかくスマートメータの指示数情報に加え,
イベント情報
(配電設備の停電・復電情報など),スマートメータの管理情報および契約情報を
用いて,
より細かに異常を感知するシステムを発明。
■しかく本システムにより,
異常の発生から対応までに要する時間を大幅に短縮。
【評価対象特許の概要】
データ管理システム
(P18掲載事例)
特許の価値の定量的評価
特許の定量的評価のステップ
ステップ1
評価年数
2017年度(I)2016年度(II)(IーII)
179件
166件
13件
458億円
404億円
54億円
164億円
159億円
5億円
(×ばつA)
(×ばつA)ー1施策件数
2特許技術が関係した
コスト低減額
3特許の価値の
定量的評価額(α)4他社技術導入原資
獲得額
(×ばつA) ステップ2 ステップ3
特許が関係した
コスト低減額※(注記)(a)特許技術が寄与した
コスト低減額(b)特許の価値の
定量的評価額(c)(b=a×ばつ特許技術の寄与度※(注記))※(注記)本事例では100%
(c=×ばつ排他独占性※(注記))※(注記)本事例では60%
その他の
効率化額
発明の排他独占性評価※(注記)・・・・・・・・・・・・・ 60%
(15点満点で9点の評価)
■しかく権利化状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3点
■しかく権利としての強さ・・・・・・・・・・・・・・・・
3点
■しかく代替技術に対する優位性・・・・・
3点
※(注記)特許庁
「特許評価指標
(技術移転版)」をベースに,
当社の事業内容に合う評価項目を採用
※(注記)計画額
(将来発生が見込まれる
低減額)
も含む
1権利化状況
2権利として
の強さ
3代替技術に
対する優位性
■しかく排他独占性評価表
5点 4点 3点 2点 1点
無効審判後も
権利維持
非常に強い
(基本発明)
代替技術なし
権利成立
(無効審判請求なし)
強い
(基本発明に準ずる)
拒絶査定を受け
審判継続中
(特許性あり)
弱い
(中程度の改良発明)
拒絶査定を受け
審判継続中
(特許性に疑問)
非常に弱い
(小幅な改良発明)
代替技術より
技術的に劣位
ー ー
権利未成立で
特許性の判断が困難
中程度
(大幅な改良発明)
代替技術より
技術的に優位
知財規程の基本理念の一つである
「他者の権利の尊重」,および
「コンプライアンス最優先」
という考え方
に基づいて,
知財リスクを回避するための取り組みを積極的に推進しています。 活動報告 EnerGia IP Activity 2018 ー 知財活動の概観 ー
特許出願件数の推移
(公開日ベース)
海外への出願件数
(有効分)
22カ国
(登録件数:94件)
知財関連試験有資格者数
■しかく弁理士・・・・・・・
4人 ■しかく知的財産管理技能士
(2級)・・・・・・・ 135人 ■しかく知的財産管理技能士
(3級)・・・・・・・ 22人
発明者人口の推移※(注記)
特許登録率の推移
特許登録件数の推移
(登録日ベース)6310966PCT出願
(移行前)1072014 2015 2016 2017 2018(年)
(件)
中国電力 電力上位3社平均 ガス上位2社平均020040060080090379259
2014 2015 2016 2017 2018(年)
(件)
中国電力 電力上位3社平均 ガス上位2社平均020040060080034111204
2014 2015 2016 2017 2018(年)
(件)0%40%20%60%80%100%80%96%88%4,291 4,477 4,762 4,964 5,051186285
202 87 11002,000
1,000
(人)
3,000
4,000
5,000
6,000
経験者 新規発明者
※(注記)特許出願経験のある社員数
(2003年度からの累計)
[参考:当社社員数9,169人
(2018年3月31日現在)]2014 2015 2016 2017 2018
(年)
4,477
4,762
4,964 5,051 5,161
発電所管理・メンテナンス技術
再生可能エネルギー
関連技術
非接触給電
技術
送配電設備管理・メンテナンス技術
石炭ガス化
技術
電力需給
調整技術
その他85120202627193中国電力 電力上位3社平均 ガス上位2社平均
33 34