エネルギアグループ知的財産報告書(2017年2月)


特 集
エネルギアグループ
知的財産報告書
2017年2月
知恵の輪で広げる
地域の活力
地域とともに成長する
企業グループをめざして
本報告書は,エネルギアグループの研究・開発および
知的財産に関する活動についてご理解いただくための
情報提供のみを目的としており,いかなるコンテンツも
投資を勧める目的で掲載されてはおりません。
投資に
関するご判断は,利用者ご自身の責任において行われ
ますようお願いいたします。
本報告書記載内容のうち,当社グループの計画,方針,
戦略,事実認識等,将来に関する記述をはじめとする,
既に実現した事実以外の事項は,現在入手可能な情報
から得られた予測,想定,計画等を基礎としています。
また,既に実現した事実および一定の前提に基づいて
予測を行っており,客観的な正確性,将来の実現可能性
を保証するものではないことをご承知おきください。
本報告書に関する注意事項
この報告書について,
ご意見,
お問い合わせなどがございましたら,
お気軽に下記までお寄せください。
エネルギア総合研究所
(知財啓発法務)
〒730‐8701 広島市中区小町4‐33
TEL 082‐544‐2912 FAX 082‐544‐2913
http:/ /www.energia.co.jp/eneso/tech/chizai/
〜 知財活用を通じた地域活性化への貢献 〜
ごあいさつ
中国電力株式会社
代表取締役 社長執行役員
知財で
電力新時代を
切り拓く。
活 用
人 材
保 護 創 造
エネルギアグループの
知財活動イ
メージ
エネルギー業界の競争環境の変化が進むなか,
競争優位の源泉と
なるものは,
保有している企業のみがコントロールできる知的財産で
あり,
それを産み出す人材と考えます。
エネルギアグループは,
ステーク
ホルダーの皆さまとのつながりを大切にしながら,
積極的に知財戦略を
推進するとともに,
それを支える人材育成に取り組んでいます。・低廉で質の高い電気の安定供給・知財を通じた社会貢献・競争力強化を通じた企業価値の向上・積極的な情報発信・戦略的な権利化・知財リスクへの対応・創意工夫・研究・開発・知財価値の顕在化・事業活動の自由度確保・人材育成・啓発活動
株主・投資家の
皆さま
お客さま・地域社会・外部知見の有効活用・一体的な研究・開発・標準化への取り組み・知財を通じたアライアンス
他事業者など 研究パートナー
(メーカー・大学・研究機関等)
2016年4月から電力小売全面自由
化がスタートするなど,
エネルギー事業
を取り巻く環境が大きく変わる中で,
当社グループがより一層力を入れて
いる取り組みの一つが知財活動です。
事業を通じて開発した自社技術を知的
財産として特許などの形にし,
それを
活用することで企業価値の向上につな
げていきたいと考えています。
当社グループは,
良質で低廉な電気
を安定してお届けするため,
長年にわた
って様々な課題に取り組み,
多く
の技術
を蓄積してきました。
自由化が進むエネ
ルギー業界にあって,
知財活動を推進
することは,
蓄積してきた技術を他社で
は真似のできないものとして保有し続
けることを可能にすることから,
競争力
強化に寄与するものと考えます。
日常業務のなかで,
社員一人ひとり
が仲間とともに知恵を出し合い,
お客
さまにご満足いただける質の高いサー
ビスを追求することは,
お客さまの信頼
をいただくことにつながります。
これも
当社グループの競争力の源泉になる
知財活動だと考えています。
当社グループは,
グループ経営ビジョ
ン実現のための行動計画の一つとして,「地域社会との協働・共創」
を掲げて
います。
電力システム改革が進展して
いく新たな時代においても,
私たちの
事業基盤は中国地域にあることに変わ
りはありません。
私たちならではの新
たな価値を創造し,
地域の課題解決と
発展に貢献してこそ,
お客さま,
そして
中国地域に
「なくてはならない」
と言っ
ていただけるものと思います。
各地域の行政や金融機関等と連携し,当社グループがこれまで蓄積して
きた知財を地元企業に活用していただ
く取り組みを通じて,
地域とともに成長
してまいりたいと考えています。
今回の特集では,
「知財活用を通じた
地域活性化への貢献」
という切り口で,
知財活動の取り組みをご紹介します。
「地域社会との協働・共創」
を目指した
地域密着の取り組みの一端をご覧いた
だければ幸いです。
当社グループは,
知的財産制度の枠組
みを尊重・活用した知財戦略の取り組み
を一層深化させ,
ステークホルダーの
皆さまのご期待に応えてまいりたいと
考えています。
その成果を,
知的財産報
告書をはじめとした様々な活動を通じて
積極的に情報発信するとともに,
皆さま
からお寄せいただく声に十分耳を傾けて
まいります。
今後とも,
一層のご理解とご支援を
いただきますよう,
よろしくお願いいた
します。
知財活動を競争力強化の
源泉として
知財活用を通じた
地域活性化への貢献
ステークホルダーの皆さまの
期待にお応えするために
01 02
05-12
電気事業を支える基盤技術と特許の関わり 13-16113
しかく電気事業を支える基盤技術
14-16
しかく基盤技術と特許の関わり
基盤技術は
「発電」
「送電」
など10の分野に大別され,
相互に連携することで低廉で安定した電力供給を実現
基盤技術を権利化し事業活動の自由度を確保するとともに,
保有特許を活用するためのライセンス活動も推進
保有する特許の事業への貢献を把握するという経営の観点から,
特許の価値の定量的評価を実施
研究・開発への取り組みと独自技術 17-212知財戦略の基本理念と推進体制 22-26317-18
しかく研究・開発戦略
19-20
しかく研究・開発の意義と独自技術
知左ヱ門博士の知財こぼれ話 ... 社外から評価をいただいた発明 ー 当社発明者が
「中国地方発明表彰」
を受賞! ー21しかく研究・開発推進体制
事業強化に向けて特に優先度の高い分野に重点的に経営資源を配分するなど,
効果的な研究・開発を推進
価値の高い成果を産み出すため,
研究•開発の取り組みを効率的に進める規程や体制を整備
大規模設備や複雑な送配電ネットワークの運用ノウハウ・技術を基に,
ユーザー視点で独自の研究•開発を実施
共同研究,
共同開発やクロスライセンス,
標準化活動などを通じて,
外部の知見や技術を有効活用22しかくエネルギアグループの知財戦略の基本的な考え方
23-25
しかく知財戦略の3つの基本理念26しかく知財戦略推進体制
事業運営のあらゆる場面で産み出されている技術・ノウハウ・アイデアなどを確実に知財化・権利化
知財戦略の推進により企業価値を向上させるため,
長期的視点で方針•目標を設定し,
段階的に展開
知財戦略推進のための支援体制や会議体を整備し,
事業戦略,
研究•開発戦略,
知財戦略を一体的に展開
競争優位の源泉は知的財産であり,
それを産み出す人材であるという考えに基づき3つの基本理念を規定
社員の約40%が発明者という裾野の広い活動や,
現業機関の社員の発明の多さが知財活動の特長
知財リスクへの対応 27-28427
しかく知財リスクに対する日常業務での対応28しかく他者商標権侵害の防止に関する体制
コンプライアンス最優先の考え方に基づき特許権や商標権の侵害リスク対応を実施
リスクを回避するため,
社外に発信する広報・広告媒体の作成段階で商標リスクの有無を審査する体制を策定
商標への取り組み 29-305CSRの取り組み 31-32629-30
しかく商標を通じたメッセージの発信30しかく戦略的事業領域での商標活用
シンボルマーク
「EnerGia」
やキャラクターを,
お客さまとのコミュニケーションで積極的に活用
EnerGia IP Activity 2016 ー知財活動の概観ー
活 動 報 告 33-34
特許の価値の定量的評価/特許出願・登録件数・登録率の推移/発明者人口の推移ほか
電気事業を中核とした幅広い事業で総合力を発揮するため,
エネルギアグループのシンボルマークを制定
31-32
しかく知財を通じた貢献活動32しかく地域貢献の推進
地球温暖化対策の推進や東日本大震災の復興支援など,
知財面でもCSRを意識した活動を展開
地域の人材育成や研究開発成果の紹介を通じて地域社会へ貢献
本報告書の開示項目は,
経済産業省の
「知的財産情報開示指針」
を踏まえ,
当社の取り組みの特長が最も明確になるよう,
項目の配列などを変更した構成としています。
地域とともに成長する企業グループをめざして
〜 知財活用を通じた地域活性化への貢献 〜
知恵の輪で広げる地域の活力
特 集
地域との連携
知財の活用
知財マッチングの
全体像
09-10
11-1206特別対談 07-0809・・・・・・・・・
・ 11・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ 15・・・・・18・・・・・25・・・・・28・・・・・12・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11・・・・・・・・・・・・・・・・・・09・・・・・・・・・・10・・・・・・・・・・10・・・・・・・・・・発明者から一言
長岡 鉄也
田中 隆司
金森 真悟
岡田 武
西田 秀高
網本 和也
波多野 有希子・島根県・山口県・鳥取県・岡山県
山本 明良様
公益財団法人 鳥取県産業振興機構
知的所有権センター センター長
尾本 哲朗様
国立大学法人 岡山大学
研究推進産学官連携機構 副機構長 教授09・・・・・・・・・・・
広島県 越智 大介様
公益財団法人 ひろしま産業振興機構
広島県中小企業知財支援センター 課長
藤井 利州様
島根県 商工労働部 産業振興課 企画員
矢儀 一仁様
株式会社YMFG ZONEプラニング
代表取締役社長
特許活用先企業からのメッセージ
津山 敬三様
株式会社ショウエイ 代表取締役
福井 健一様
株式会社ショウエイ
小澤 宏海様
商研テク
ノ株式会社 代表取締役社長
筒井 信一郎様
広島信用金庫 お客様サポート部 副部長
倉田 真治様
広島信用金庫 お客様サポート部 副課長
連携先からのメッセージ
VOICE
情報通信部門
エネルギア総合研究所
株式会社中電工
販売推進部門
知財マッチング主催者からのメッセージ
グループ企業から一言
社員から一言
03 04 ・知的財産交流会・マッチング調整・製品化支援・新製品開発・新規事業進出・技術高度化・製品付加価値向上
連携
支援
知財・特許実施許諾・ノウハウ提供・技術指導
エネルギア
グループ
行政・金融機関 等
地元企業
当社グループは,
これまで蓄積してきた知財を地元企業に活用していただく
取り組みを通じて,
地域とともに成長する企業グループをめざしています。
特集では,
「知財活用を通じた地域活性化への貢献」
という切り口で,
地域
密着の取り組みをご紹介します。
大企業の知的財産を中小企業に紹介し,
自社製品の開発等を支援する知財交流
事業
(川崎モデル)
が全国的に注目を集めています。
当社グループは,
行政や金融機関等と連携を取りながら,
知財交流事業の中国地域
への展開に向けた取り組みを行っています。
自治体等が主催する知財マッチング会で,
保有する特許を地元企業へ紹介し,
製品
開発等に活用していただく
ことで,
地域に少しでも貢献できるよう取り組んでいます。
【表紙に込めた地域社会の
「知恵の輪」
イメージ】
地域の課題解決と発展をめざした
知財マッチングの全体像
地域とともに成長する企業グループをめざして
〜 知財活用を通じた地域活性化への貢献 〜
知恵の輪で広げる地域の活力
特 集
行政・金融機関 等 地 元 企 業
エネルギア
グループ
特 集 : 知恵の輪で広げる地域の活力
05 06
【平野所長】
電力小売り全面自由化という新たな
時代においても,
当社の事業基盤が中国
地域にあることに変わりありません。
私たちは,今後も電気の安定供給を守っていくこ
とはもとより,
お客さまに喜んでいただける
料金メニューやサービス等,
新たな価値を
創造し,
中国地域に
「なくてはならない」と言っていただける企業を目指しています。
知財マッチングを通じて,
地元企業のみ
なさんに当社の異なる魅力を発見していた
だければ,
私たちの地域密着にこだわった
取り組み姿勢を,
より広くご理解いただけ
るのではないかと期待しているところです。
【波留局長】
御社は,
良質で低廉な電気を安定供給
するという枠組みにとどまらず,
さまざまな
課題に取り組んでおられるわけですね。
これまで磨き上げてこられた自社技術を,
特許などの知的財産として地域の企業に
開放されるという取り組みは,
地域振興に
大きく貢献するものと思います。
また,
これまでさまざまな取り組みを行っ
てこられた知財戦略活動全体が評価され,
エネルギー業界として初めて
「知財功労賞
(経済産業大臣表彰)」を,
2011年に受賞
されたものだと思います。
御社には,
今後とも,
こうした知財を
通じた地域活性化にご尽力いただき,
地域
の企業等をさらに元気にしていただければ
と思います。
【平野所長】
当社は,
これまで知財活動に積極的に
取り組んできました。
今後は,
その成果の
活用面に力点をおいた取り組みを行って
いきたいと考えています。
その一環として,
本日お話しましたように知財活用を通じ,
中国地域の発展に向けて,
精力的に取り
組んでいきたいと思います。
本日局長からご説明いただいた地域
知財活性化行動計画の実現にむけて,
が重要であり,
それを支えるのが知財活動
なのですね。
最近では,
自治体や金融機関が軸となって,企業間の知財マッチングにつなげる
取り組みが,
地方でも行われています。
これ
に関する支援についても,
お聞かせいただ
けないでしょうか。
【波留局長】
地域企業にとって,
最も身近な地方銀行
や信用金庫等の金融機関のみなさんが,
お付き合いのある企業から知財の相談を
受けた場合に,
それに対応できる,
しかる
べき支援機関につないでいただけるように
中国経済産業局としても働きかけており
ます。
また,
金融機関のみなさんを対象と
した知財セミナーを開催し,
知財人材育成
にも力を入れております。
【平野所長】
地方創生には,
金融機関の役割にも期待
するところが大きいということですね。
取引
先企業の企業価値の向上や将来の成長
のためには,
知財戦略が重要であるとの
認識を,
金融機関の方々自身がお持ちに
なってきたのだということですね。
当社もこれまでに取得した知財の価値
を一層高めるための取り組みを進めていま
すが,
自らの競争力強化や新規事業展開へ
の活用に加え,
地元企業のみなさんに当社
の知財を活用していただく
ことにより,
地域
経済の活性化に貢献したいと考えており
ます。
その一環として,
これまで自治体や
金融機関と連携して,
鳥取県や広島県で
開催された知財マッチング会で当社の
知財を紹介し,
その中から,
実際に地元企
業と実施許諾を締結して,
製品化に向けて
進んでいる案件も生まれています。
そして,
このような取り組みを,
中国地域でさらに
展開していきたいと考えています。
【波留局長】
それは素晴らしい取り組みですね。
金融
機関のみなさんにも,
知財の意識を高めて
いただき,
今後,
地域の中小企業の方々の
知財活用につながるよう,
橋渡しをして
いただければと思います。
当社の活動がお役にたてることができれば
幸いです。
中国経済産業局をはじめ,
自治体,金融機関等と連携し,
中国地域の産業
発展,
地域活性化に当社も貢献していき
たいと考えています。
【波留局長】
知財を通して地域の活性化を図るため
には,国,自治体等の働きかけだけでは
十分ではありません。
御社のように知財戦
略を上手く展開するような企業の取り組み
が広がっていく
ことが重要だと思います。
是非,
今後とも,
地域の中小企業を元気
にしていくことにご協力いただきたいと
思います。
【平野所長】
本日は波留局長のお話をお伺いし,
地域
の活性化に向けた熱意をひしひしと感じ
ました。
私も未来を見据え,
今後とも取り
組んでいきたいと思います。
本当にありがとうございました。
【波留局長】
こちらこそありがとうございました。
特 別 対 談
知財活用 を通じた
地域活性 化への貢献
特 集 : 知恵の輪で広げる地域の活力
【平野所長】
本日は,
知的財産報告書の対談にご協力
いただき,
誠にありがとうございます。
当社
は知的財産報告書を毎年発行しておりま
すが,
今年で9回目となります。
今回の特集
では,
当社が現在取り組んでいる
「知財
活用を通じた地域活性化への貢献」
という
テーマを取り上げさせていただきました。
波留局長は,
特許庁での勤務経験も
お持ちですが,
そのご経験も踏まえながら,
地方創生に向けて特に知財面からはどの
ような政策を展開しておられるのか,
お聞
かせいただけないでしょうか。
【波留局長】
昨年9月26日の産業構造審議会知的財
産分科会での議論を経て,
知財分野での
地域・中小企業支援について
「地域知財活
性化行動計画」
が取りまとめられています。
これを受けて当局としましても,
中国
地域5県に設置の
「知財総合支援窓口」と積極的に連携し,
産業財産権のみならず,
営業秘密や農業関連についても横断的に
支援し,
地域の中小企業等を知財面からも
元気にしていきたいと考えています。
我々としては,
中小企業等を積極的に訪
問し,
企業活動における課題の把握や施策
の要望等をお聞きし,
特許料等の減免や,
海外展開に向けた外国出願の支援・海外
での侵害対策の支援等々,
個別案件に効
果的な施策を紹介したり,
今後の国の施策
に反映させていきたいと考えております。
【平野所長】
やはり地域経済の活性化のためには,
地域の産業の競争力強化やイ
ノベーション
地域密着
未来を見据えて
地方創生
経済産業省 中国経済産業局長
波留 静哉様
中国電力株式会社 取締役常務執行役員
エネルギア総合研究所長
平野 正樹
07 08
中国地域の
行政・金融機関等との連携
当社グループは,
中国地域の自治体や金融機関等と連携し,
各地域で開催される知財マッチ
ング会等への参加を積極的に行っており,
その取り組みの一例をご紹介します。
知財マッチングや当社グループの特許紹介等に関するご希望については,
ご遠慮なく下記
までお問い合わせください。
しろまるエネルギア総合研究所
(知財啓発法務)
/TEL 082‐544‐2912 FAX 082‐544‐2913
金融機関主催の
セミナーへの参加
地元金融機関において,
中小企業の自社製品開発に
よる事業展開を促進する取り組みが行われており,
エネル
ギアグループは,
金融機関と連携をとり,
保有する特許を
地元企業へ紹介し,
製品開発,
地域活性化につながる
よう取り組んでいます。
2016年2月には,
広島信用金庫主催
「オープン・イノ
ベーションセミナー」
に参加し,
当社特許から抽出した
20件について,
プレゼンテーションおよびパネル展示を
行いました。
(参加企業54社)
地方創生を実現していくためには,
まずは
「しごと」
作りが大切であると考えており,
その
ため当社は,
事業化創出に向け,
広域連携型
のマッチングを企画しています。
知財を活用した地域活性化に取り組む御
社の取り組み姿勢は,
広域連携型マッチング
を展開している当社にとって,大変共感できるもので
す。
地元企業を含め,
まさに
「三方よし」
の結果をもたら
すものと期待しています。
株式会社YMFG ZONEプラニング
代表取締役社長
くろまる株式会社YMFG ZONEプラニング (注記) 「知財活用セミナー」
で知財活用事例紹介 (2016年7,8月)
くろまる
「知財事業化ワークショッ
プ」
で技術・ 知財紹介,
活用策検討
(2016年11月)
(注記)株式会社山口フィナンシャルグループ100%出資会社
鳥取県では,
地域活性化を図るため,
大企業
の開放特許に着目し,
2015年度から知財ビジ
ネスマッチングを開催しています。
御社の知財活用による取り組みは,
中小企業
の製品化・事業化の後押しにつながる,
よい
取り組みだと思っています。
今後とも,
ニッチトップの
事業化を目指す中小企業と
の連携・支援につながる取り
組みを期待しています。
くろまる鳥取県産業振興機構 「知財ビジネスマッチング会
in とっとり」
で知財紹介 (2015年9月,
2016年7月)
御社の取り組みは,
島根県が目指す
県内企業のイ
ノベーションの促進につな
がるよい取り組みだと思っています。
新たな企業間のつながりができ,
技術
情報だけでなく,
知財
戦略,
知財経営の観点
からも,
県内企業の活
性化につながることを
期待しています。
島根県 鳥取県
くろまる21世紀出雲産業支援
センター
「出雲産業フェア」
で技術・知財紹介 (2016年11月)
くろまるまつえ産業支援センター 「ビジネスマッチング商談・ 展示会in松江」
で知財紹介 (2016年11月)
知財が重要な経営資源であることを中小企業へ周知し,
知財戦略を経営に活かす企業が多く生み出されるよう,
広島県や広島県発明協会をはじめ,
関係機関と連携した
取り組みを継続していきたいと考えています。
大企業の特許を中小企業で有効活用
する
「川崎モデル」
が注目されており,御社の先行的な取り組みが裾野を広げ,
地域への浸透とともに,
新たなイ
ノベー
ションにつながることを期待しています。
広島県
くろまる広島信用金庫 「オープンイ
ノベーション
セミナー」
で知財紹介 (2016年2月)
くろまるひろしま産業振興機構 「知財経営セミナー」で 知財紹介
(2016年11月)
セミナー案内
地域との連携
特 集 : 知恵の輪で広げる地域の活力
当社紹介特許リスト
切創防止プロテクタ
引張装置
土嚢袋
盗電防止用カバー
伐採補助具
組み合わせ式キャビネット
ナット関連技術
防草シート
冷菓及び冷菓を作る方法
ジェットバスシステム
屋上緑化システム・水耕栽培
鳥獣対策装置
毛状体自動走行ロボット
待ち時間管理技術
切断装置
ドアストッパー1112131415161718192012345678910
再生可能な炭酸飲料及び
炭酸飲料の再生方法
鍵管理システム及び
鍵管理方法
条例改正情報蓄積装置及び
条例改正通知システム
引き起こし作業用器具及び
それを用いた引き起こし方法
公益財団法人 ひろしま産業振興機構
広島県中小企業知財支援センター 課長
島根県 商工労働部
産業振興課 企画員
公益財団法人 鳥取県産業振興機構
知的所有権センター センター長 山本 明良様
岡山県
国立大学法人 岡山大学
研究推進産学官連携機構 副機構長 教授
岡山大学では,
「産から学へのプレゼンテーション」
を開催するなど,
産学のニーズ・シーズのマッチングを
進めており,
特に
「医工連携」
には力を入れています。
御社の技術・知財は,
広範囲かつ現場ニーズをもと
にしたものが多く,
また,
サイバーセキュリティなど,
興 味 深いテーマも見られます。
MOT講座での特許活用プランの
作成や共同研究の可能性など,
引き続き検討したいと思います。
くろまる金融機関と知財マッチングに向け
意見交換
(2016年7月)
くろまる岡山大学と知財活用による産学官連携に向け
意見交換
(2016年10月)
尾本 哲朗様
越智 大介様
藤井 利州様
矢儀 一仁様
山口県
VOICE
VOICE
VOICE
VOICE
VOICE
地域社会の
「知恵の輪」で,"知財"を"地財"へ。
09 10
VOICE
VOICE
VOICE
エネルギアグループは,
中国地域を事業基盤とする企業市民として,
各地域の自治体や地元企業等とも連携し,
知財マッチングを通じて地域の
課題解決と発展に貢献したいと考えています。
ここでは,
当社グループ特許
を地元企業等へライセンスし,
製品開発に活用された事例を紹介します。BOOK地域情報,
経済情報の発信を通じた
地域活性化への貢献
地域振興関係の冊子として,
「碧い風」,「地域再発見ブックス」
など地域資源の価値向上を目的
とした情報紙の発行,
「中国地域白書」,「広島東洋カープの経済効果」
など地域に関わるテーマに
ついての調査分析の実施などを通じ,
地域の活性化に役立つ情報を幅広く発信しています。
また,
公益社団法人中国地方総合研究センターと連携し,
地域の抱える多様な課題について,
適宜共同で調査研究を行っています。
その成果については,
必要に応じて中国経済連合会へも情
報提供し,
地域活性化への取り組みを支援しています。
伐採用切断具
特許活用先企業からのメッセージ 特許活用先企業からのメッセージ
知財マッチング主催者からのメッセージ
知財の活用
「碧い風」
「地域再発見ブックス」
特長
メッシュ状の電極を円筒形にし,
水素水を効率よく生成
樹 木 電 極
試作機
電解水素水生成装置
電極全周にわたって,
水素水を効率よく生成
特 集 : 知恵の輪で広げる地域の活力
伐採作業の労力を低減する
「伐採用切断具」
(特許第4832172号)
製品例
(風呂用)
水素水を効率よく生成する
「電解水素水生成装置」
(特許第5688104号/第5688105号)
以前から,
自社製品の設計・製作を検討していましたが,
どのようなものが世の中に
役に立つのかわからず,
検討だけで終わっていました。
今回の知財セミナーに参加し,
そのきっかけを見つけることができ,
大変感謝して
います。
「伐採用切断具」
を何とか製品化につなげていきたいと考えています。
自社製品を開発してみたいと考えている中小企業は多いと思います。
御社の知財活用の
取り組みは,
その希望を形に変えていける素晴らしい取り組みだと思います。
装置の製作にあたっては,
円筒形の電極の製作に苦労しましたが,
電極メーカーと
一緒に試行錯誤しながら完成させました。
御社の特許を活用させていただいたことで,
お客さまからの信頼感アップにつながって
います。
知財を活用した商品開発は,
中小企業には非常に有益だと思います。
是非この取り
組みを継続してほしいと思います。
今回開催しましたオープン・イ
ノベーションセミナーでは,
20件の特許をご紹介いただき
ありがとうございました。
「伐採用切断具」
のようなマッチング事例が一件でも増えて
くれば,
イノベーションを起こすきっかけになると思います。
御社が蓄積された知財の活用は,
地域経済の活性化につながる,
大変有意義な取り
組みであると考えています。
引き続き,
活用が期待できる特許をご紹介いただき,
地域の中核となる企業として,
今後の取り組みに期待しています。
株式会社ショウエイ
代表取締役 津山 敬三様
(左)
福井 健一様
(右)
商研テク
ノ株式会社
代表取締役社長 小澤 宏海様
広島信用金庫 お客様サポート部
副部長 筒井 信一郎様
(右)
副課長 倉田 真治様
(左)
高所の樹木も
安定して切断が可能
軽量で山間部等への
持ち運びが容易
コンパクトで持ち運びが容易。
飲料用や風呂用に活用
特長1活 用 事 例 2
活 用 事 例
ロープを交互に引っ張り
刃体を操作
刃 体
正極
(内側)
負極
(外側)
操作用
ロープ
本体
刃体
地域の知恵とノウハウを結集 して,
地域のためになる新たな価値 の創出を!
11 12
しかく電気事業を支える基盤技術
電気事業を支える基盤技術と
特許の関わり1基盤技術を構成する10の技術分野 [ ]
内の数値は各分野の登録特許数
(2016年12月末)
特許出願の目的
電力会社の事業モデルは,
さまざまな発電方式でつくられた電気を,
送電線や配電線を通じてお客さまに安定的にお届けすること,
そして,
電気の使い方に応じてお選びいただける料金メニューを用意したり,
効率的なエネルギーの利用方法などを提案したりする
ことを通じてお客さまにご満足いただくことであり,
技術的側面においては次の特性を有しています。
しかく基盤技術と特許の関わり
基盤技術を特許で担保することの意義
電気事業者としての使命を果たす上で不可欠な基盤技術を活用し,
長期的・安定的に電気をお届けするとともに,
将来の成長に
向けた取り組みを強化し企業価値の向上を図るためには,
基盤技術を
「自社の権利」
として確保することが重要です。
特許が有する最大の効力は
「特許権に基づく事業の差し止め」
にあり,競合他社が先に権利を確保すると,
特許技術を利用できず事業
を中止せざるを得ない,あるいは許諾を受けるための交渉で事業が長期にわたり停滞する,などの事態に直面することとなります。
基盤技術を特許で担保して
「事業活動の自由度を確保」
することは,
社会インフラを担う当社にとって非常に重要な意義を持つと
ともに,
競争力強化に資する重要な経営資源を獲得するという点においても大切であると考えています。
発電所でつくられた電気を,
送電線や配電線を通じてお客さまのもとにお届けする。
このためには,
発送電に
関する技術に加え,
これを支えるさまざまな技術が必要となります。
長年にわたり培われてきたこれらの技術が,安定供給に欠かせない基盤技術として,
また,
競争環境下において成長していくための事業基盤を確立す
るための知的財産として,
当社の電気事業を支えています。 こうした電気事業の特性や,
社会的要請,
お客さまから寄せられるニーズなどにお応えするために必要となる基盤技術は,
10の分野に
大別できます。
それぞれの技術が蓄積され,
緊密に連携することで,
低廉で質の高い電気を安定的にお届けすることができます。
くろまる電気は産業や暮らしを支える重要な社会インフラであり,
長期的・安定的に電気をお届けするという社会的要請に
応えることが求められる。
くろまる適正な電圧や周波数を維持し,
質の高い電気を効率的にお届けするために,
高度かつ広範な技術が必要となる。
電気事業を支える基盤技術と特許の関わり
事例:送電鉄塔の塗装用塗料
(PCT/JP2014/058380)
【発明の概要・効果】
燃 料
発 電
送 電
系統運用
変 電
配 電
お客さま
土木建築
全社基盤システム
新規事業等
技術分野
発電に使用する燃料
(燃料油・石炭・LNG等)
の購買・輸送・貯蔵管理
発電所
(火力・原子力・水力・太陽光等)
の運転・保守・運用
発電所から変電所まで高い電圧で電気を届けるための送電設備の建設・保守・運用
供給区域内の電気使用状況の監視,
発電量・電気の流れの制御,
需給バランスの維持
お客さま設備に応じた電圧に変圧するための変電設備の建設・保守・運用
変電所で変圧された電気をお客さまに送るための配電設備の建設・保守・運用
お申し込み受付や検針の効率化,
お客さまニーズに即した省エネルギー等に関する技術
発電所や変電所等における土木関係設備の計画・設計・施工管理および維持管理
発送電設備や各種業務を支える通信ネットワークや情報システムの構築・維持管理
新規事業領域におけるお客さまの利便性・快適性向上に資する技術
技術内容
しかく自社特許技術を事業で自由に実施 しかくクロスライセンス(注記)
による他社技術の活用
しかく他社実施によるライセンス料の獲得
燃料
[139件] 発電
[1,162件] 送電
[266件] 変電
[399件] 配電
[1,017件]お客さま
[233件]
土木建築
[318件]
全社基盤システム
[488件]
系統運用
[236件]
新規事業等
[306件]
(注記)複数の企業が,
それぞれ保有する特許技術を相互に実施許諾しあうライセンス形式計:
4,564件
自由度確保 事業収益拡大への貢献
事業の差し止め 経済的負担の発生
しかく特許技術を実施できず事業が遅延・中止
(他社特許の実施許諾が受けられない場合)
しかくライセンス料や損害賠償金の支払い
(他社特許技術を自社で実施する場合)
競合他社が権利確保すると
架空送電線を支持する送電鉄塔の鉄製の骨組みには,
防錆対策として亜鉛めっきを施していますが,
長期
にわたり風雨等にさらされると表面の亜鉛めっきが減耗し,
錆が発生すると強度が低下してしまいます。
その
ため,
亜鉛めっきが消失する前に鉄塔部材へ防錆塗装を施し健全性を維持しています。
耐久性の高い塗料
の使用により塗替周期を延伸化することができますが,
塗装時には送電を停止する必要があること,
鉄塔は山間部に
多いため大きな機材が使用できず人力での作業となるなどの理由から,
施工日数が長くなる従来の長期耐用塗料は,
実際には使用することが難しいという課題がありました。
送電鉄塔用塗料の要求性能には,
「耐候性」
「可とう性
(曲げてもひび割れしない)」「付着性」
「耐水性」
「防錆性」
等がありますが,
全ての性能を高いレベルで満足できる塗料はないため,
お互いの弱点を補い合うよう下塗り,
上塗り
で特性の異なる塗料を組み合わせることで,
従来と同等以上の耐久性能を保持しながら短い日数で施工できる
塗料を開発しました。
従来の長期耐用塗料は3層重ね塗りの場合,
施工日数3日で想定耐用年数20年でしたが,
本発明
の塗料では,
2層重ね塗りで施工日数2日,
想定耐用年数25年以上とすることができ,
設備改修コストの低減に貢献して
います。
送電鉄塔 塗装作業の様子
送 電
関連➡P33
13 14
事業上の重点課題における特許網の構築
中期経営計画で掲げる各種目標や重点実施項目などから,
優位性確保の観点を加味して重点課題を設定し,
重点課題の属する技術
領域について集中的に特許を取得
(特許網を構築)
する活動を推進しています。
特許網構築の例として
「間接活線工法・機材の開発」
があります。
配電工事を行う際,
電線の通電部分に直接触れず,
安全距離を
保ったうえで絶縁棒や先端工具を使用して作業を行う工法で,
停電を伴わないことから全国的に採用が進んでいます。
当社におい
ても間接活線工法に用いる工具・機材の開発に積極的に取り組み,
その成果を適切に権利化しています。
特許技術を自社で積極的に実施するとともに,
蓄積した特許に内在する新しい価値を見出し活用することで,
事業に貢献していく
ための活動にも取り組んでおり,
クロスライセンスや標準化技術への組み込みによる技術開発や資材調達コストの低減,
他社との
アライアンス構築,
新たな事業展開などさまざまな方策の検討を進めています。
また,
公共の利益につながる
「健全な競争」
を促進する観点から,
公益に資する技術の普及・浸透を図るための技術ライセンスなど
も行っています。
一方で,
ライセンス料などの金銭的利益のみを追求すると,
知的財産権の本質である競合他社をけん制する力が次第に下がると
いう弊害があります。
ライセンス活動における収入の獲得は,
知財戦略を推進した結果として達成されるものであるとの考えに基づき,
ライセンスにより自社の技術優位性が相対的に低下することのないよう,
目配りをしながら取り組んでいます。
電気事業を支える基盤技術と特許の関わり
事例:金属柱劣化判定装置
(特許第3973603号他)
しかく間接活線工法による作業風景
参考:クロスライセンスと事業規模
しかく間接活線工法・機材の特許出願状況
(注記)商用検索システムを用いて全文検索
「間接活線」
で抽出
特許技術とライセンス活動
基盤技術を特許で担保することで事業活動の自由度を確保し,
その結果得られた利益は特許が下支えしているものですが,
その効果
を財務の観点から捉えることは困難です。
一方で,
経営の観点からは,
保有する特許が事業へどのように貢献しているかを適切に把握する必要があります。
このため,
2007年度
以降,
特許の価値を定量的に評価する取り組みを進めています。
高品質で低廉な電気を安定的にお届けするために取り組んだ研究・開発や創意工夫の成果は,
定量面では効率化によるコスト低減と
いう形で効果を発揮します。
このため,
特許技術が用いられた施策のうち,
主なもののコスト低減額を算定し,
その累計金額を基に
「特許
の価値の定量的評価額」
を算定しています
(2015年度の評価結果は巻末に掲載)。特許の価値の定量的評価
お客さまへ電気をお届けする配電線には,
主にコンクリート柱が使用されていますが,
山間部では,
運搬が
容易で,
現地組立が可能な金属柱を設置することがあります。
金属柱は,
長期間経つと設置箇所の地中の
状況によっては地中部分が腐食することがあるため,
掘削して点検する必要がありました。
【発明の概要・効果】
金属柱の地上露出部分に取り付けた探触子から超音波を入射させ,
地中部からの反射波の波形により,
腐食の
程度を
「健全
(にじゅうまる)」から
「重度腐食(╳)」までの4段階
(にじゅうまる,
しろまる,
しろさんかく,╳)で判定する装置を開発しました。
この装置により,
金属柱地中部の劣化の程度を掘削することなく,
点検者によるブレのない客観的な評価ができるようになりました。
また,
腐食の進行程度を踏まえた適切な電柱建替時期の判断が可能となり,
設備改修コストの低減にも貢献します。
配 電
事例:検証作業支援システム
(特許第5848317号) 当社では,
電気料金の計算・ご請求等を行う大規模な情報システムを構築しており,
そのシステムの開発時
には,
お客さまにご請求等を行う前に,
処理内容が正しいことを確認する検証作業が欠かせません。
検証作業を確実に行うための膨大な数の検証手順書に対し,
検証漏れや手順誤りがないかを人間系で
チェックする必要があり,
多大なコストがかかっていました。
【発明の概要・効果】
検証漏れや手順誤りのチェックと検証作業を
支援する各種資料の作成を自動化する
「検証作業
支援システム」
を考案しました。
本システムにより,
作業効率化によるコスト低減だけでなく,
システム
と人間系両方のチェックをすることで,
より確実な
検証作業が実施できるようになりました。
劣化判定の様子 測定イメージ 判定結果しろまるの例
2006年度 出願件数
(取り組み開始時) 2016年12月末 出願件数
工具・機材
工法
中国電力 電力他社計(注記)1054969730906234
事業規模a 特許件数c 事業規模b 特許件数d
A社 B社
A社特許1,000件をB社にライセンス
B社特許100件をA社にライセンス
10 1,000件
1 100件
対等な条件でライセンス可能
=パワーバランスが保たれている
特許技術集積度c/a100特許技術集積度d/b100しかく特許を利用する側は,特許権者に対価としてライセンス
料を支払いますが,相互に特許の利用を許諾するクロス
ライセンスの場合,両者のライセンス料が一致すると,
支払額は相殺されて0円となります。
対等な条件でクロス
ライセンスすることを
「パワーバランスを保つ」
と言います。
しかくパワーバランスの指標は特許件数 事業規模=
「特許
技術集積度」
として表されます。
しかく左図の例のように事業規模が相手先の10倍の企業は,
相手先の10倍の特許を保有していてはじめて
「特許
技術集積度」
が相手先と等しくなります。
全社基盤
システム
関連➡P33
VOICE
当社の情報システムは,
電気料金計算などお客さま
に直結した処理をしており,
高品質なシステム開発を
要求されています。
今回の発明は,
情報システムの
品質向上や開発効率化に大きく貢献していると自負
しております。
今後も,
日々改善の観点を忘れず,
業務に取り組んでいきたいと思っております。
発明者から一言 情報通信部門
(営業システムグループ)
長岡 鉄也
(前列左)
田中 隆司
(後列左)
金森 真悟
(後列右)
岡田 武
(前列右)
情報通信部門
(ネットワーク営業システムグループ)
人間系での
チェック 人間系での
チェック
従来
システムでの
チェック
各 検 証
手 順 書
チェ
ック
結 果
リ ス ト
各 検 証
項 目
一 覧
検証作業
取り纏め
資 料
各 検 証
手 順 書
チェ
ック
結 果
リ ス ト
各 検 証
項 目
一 覧
検証作業
取り纏め
資 料
検証作業
支 援
システム
検証作業支援システム
探傷器
劣化部
金属柱
反射波
反射波
探触子
超音波
探触子
15 16
しかく研究・開発戦略
研究・開発への取り組みと
独自技術2 研究・開発においては,S(安全確保)
を大前提として3E
(供給安定性,
経済性,
環境保全)
を同時達成するため,
電気の
需要・供給・送配電ネットワークの各
領域で,
新たな価値創造に取り組んで
います。
その中でも,
事業強化に向けて特に
優先度の高い分野を
「重点開発分野」
として経営資源を重点的に配分する
など,
効果的に研究・開発を推進して
います。 「省エネルギー
(ピークカット),省CO2,
省コスト」
の実現
に向けて,
需要サイドの視点からエネルギー利用最適化
につながる技術の研究・開発に取り組む。
再生可能エネルギーが大量連系した場合でも,
電力品質
や安定供給に影響を及ぼさない系統安定化技術,
最適な
送配電ネットワーク技術等の研究・開発に取り組む。
技術開発の進展,
地球環境問題や低コスト化などの社会的要請へ対応していくためには,
基盤技術を常に
より良いものに磨き上げ,
新たな技術を創出していかなければなりません。
当社では,
これからの電気事業を
支えるための研究・開発に積極的に取り組み,
その成果を競争優位の源泉となる
「独自技術」
として積み重ね
ています。
研究・開発への取り組みと独自技術
重点開発分野
需要サイドからのエネルギー利用最適化分野
スマートコミュニティ構築に
向けた研究
研究・開発
テーマ例
隠岐ハイブリッ
ド蓄電池
システム技術実証事業
研究・開発
テーマ例
石炭灰固化物の沿岸域・淡水域への
応用に関する研究
研究・開発
テーマ例
火力発電所のボイラ配管溶接部に
対する帯鋼等補強技術に関する研究
研究・開発
テーマ例
今後も石炭電源の安定運転を継続するため,
石炭の
クリーンコール技術
(石炭灰有効活用技術を含む)
の研究・開発に取り組む。
石炭利用分野
電源・ネットワーク設備の経年化が進む中で,
将来にわ
たり安定供給を継続するため,
計画的かつ効果的な更新・修繕につながる劣化診断技術や機器延命化技術など,
設備
経年化へ適切に対応する技術の研究・開発に取り組む。
予防保全分野
再生可能エネルギー普及促進分野
(注記)1 高温やボイド
(空洞)
の進行等により金属組織に生じる変形・割れ等の損傷
事例:火力発電所のボイラ配管溶接部に対する帯鋼等補強技術
(特許第5425860号ほか)
【発明の概要・効果】
高温高圧の蒸気を扱う火力発電所のボイラ配管は,
運転と起動停止による熱膨張に伴う
「曲げ力」
「内圧」
により,
溶接部に劣化症状が発生しやすく,
劣化が進行すると損傷が顕在化し,
蒸気漏れや破損が生じて
しまいます。
新規に配管を製作し,
切断・接合作業による大規模な取替工事で対応していますが,
安定供給・補修コスト削減
のため,
現地で簡易に延命化可能な補修工事が求められています。
配管の周囲に帯状のシート状部材など
(以下,
帯鋼(注記)
という)
を多重に巻き付け,
外周から締め付ける補強方法を
開発しました。
溶接部に耐熱性素材を塗付した上から帯鋼を螺旋状に巻き付けることで,
溶接部の外周面に対して
隙間なく帯鋼を巻き付けることが可能となり,
隙間に起因する応力の集中を抑制でき,
十分な補強効果を得られる
ようにしています。
また,
この帯鋼を配管の直管部・管曲部の双方に対し,
強度を保ち螺旋状に巻き付ける装置も
開発しました。
本工法により,
設備の信頼性向上による計画的な設備保全が可能となり,
より一層の電気の安定供給に貢献して
います。
また,
故障停止による補修費用の削減にもつながっています。
供給安定性
Energy security Economic growth
経済性
Environmental
conservation
環境保全
ネットワーク
「供給面」
「需要面」
の変化に柔軟に対応
供給面
発電の一層の高効率・低炭素化
(ベストミックス)
需要サイドを重視した
効率化と省エネ
需要面
Safety
安全確保
(注記)ステンレス繊維が編み込まれたステンレスクロスやその外周に巻き付けられたワイヤで構成され,
ボイラ蒸気配管が昇温する際,
帯鋼とボイラ蒸気配管の
内圧と引張力による圧縮力により,
膨張しようとする高温中空部材に対して帯鋼が高温中空部材を径内方向に圧縮しようとする力が発生し補強される。
ボイラ配管
帯鋼による
補強作業の様子
復水器
発電機
蒸気
給水
バンカ
微粉炭機
発電機
中圧
タービン
高圧
タービン
低圧
タービン
出張中に新幹線の窓から外を眺めていた時,
鉄橋の柱を鉄鋼で
巻いて補強している工事をたまたま目にし,
20年前から考えていた
方法がピンとひらめきました。
配管やエルボのクリープ損傷に対する
補強方法を考え続けていましたが,
補強には必ず溶接が必要という
固定観念があり,
溶接すれば,
熱処理や検査など非常に手間がかかる
と思い半ばあきらめていました。
20年来の執念が実って,
大変うれしく
思っています。
発明者から一言
しかく火力発電設備
エネルギア総合研究所
(技術)
西田 秀高
VOICE
発 電
17 18
研究・開発への取り組みと独自技術
しかく研究・開発の意義と独自技術
石炭火力のパイオニアとして,
他電力に先駆けて技術開発を行うとともに最先端の技術を導入するなど,
石炭火力発電を通じて
常に時代の要請に応えてきました。
供給安定性・経済性に優れる石炭を将来にわたって活用していくため,
高効率化やクリーン化の
取り組みを推進しています。
石炭は,
他の化石燃料に比べて,
資源量が豊富で地域偏在性が少なく,
価格も低位で安定していることから,
エネルギー自給率が6%(原子力を国産エネルギーに含めない場合は5%)
程度と低い我が国にとって重要なエネルギーであり,
当社としても,
石炭火力
を重要なベースロード電源の一つとして位置付けています。
一方で,
石炭は他の化石燃料に比べ,
CO2排出量が相対的に多いという課題があるため,
三隅発電所への超々臨界圧
(USC)
石炭火力発電(注記)1
の採用や,
次世代の高効率石炭火力発電技術
「石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC(注記)2)」
の基盤技術である
「酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素吹IGCC(注記)3)」
の実証事業など,
CO2排出量削減を図るクリーンコール技術の開発・導入に向けた
取り組みを推進しています。
大規模な発電設備や複雑な送配電ネットワークを用いて事業を行う中で,
グループ一体となって効率的な設備運用ノウハウや
保修技術を蓄積するとともに,
設備ユーザーの視点で独自の研究・開発を行っています。
また,
業務の中で発想したアイデアや設備運用ノウハウを,
ものづくりの視点で研究・開発を行うメーカーにフィードバックし,
より
効率的な設備にするために共同で研究・開発に取り組むこともあります。
当社,
グループ企業,
メーカーそれぞれが持っている技術を
融合させることで,
より高いレベルの研究・開発成果が得られています。
外部リソースの有効活用
石炭火力の高効率化
積極的に研究・開発に取り組み,
独自技術を適切に権利化していくことは,
重要な取り組みの一つですが,
技術やビジネスモデル
が急速に変化する環境下では,
他社の技術を効果的に導入するオープン・イ
ノベーションの考え方も求められます。
当社においても,
外部知見を活用するための共同研究や共同開発,
蓄積した独自技術や特許を活用するためのクロスライセンス
や標準化活動などに取り組んでおり,
これらを通じて,
研究・開発の効率が高まる,
必要な特許が導入しやすくなる,
など事業への
貢献が期待されます。 こうした取り組みを有効に機能させるためには,
質・量を兼ね備え外部に対して価値を持つ特許ポートフォリオを構築すると
ともに,
それを管理・分析する仕組みを整えることが必要となることから,
オープン・イノベーションの時代にあってこそ,
その利点
を最大限活用するために,
知財戦略を積極的に推進していくことが重要だと考えています。
(注記)1 蒸気を高温
(600°C級)・高圧
(24.5MPa)
にしてタービンを回す発電方式で,
熱効率が高くCO2排出量を削減可能。
(注記)2 石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC)
IGFC:Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle, IGCCに燃料電池を組み合わせて発電効率をさらに向上させる技術。 (注記)3 酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素吹IGCC)IGCC:
Integrated Coal Gasification Combined Cycle,
酸素を用いて石炭をガス化し,
水素と一酸化炭素を主成分とする生成ガスを製造し,
ガスタービンと蒸気タービンにより複合発電する技術。
実証試験設備の全景
実証事業スケジュール
本プロジェク
トは,
経済
産 業 省 補 助 事 業
(2012〜2015年度)
および国立研究開発
法人新エネルギー・
産業技術総合開発機構(NEDO)
助成事業
(2016年度〜)
として
実施し
ています。
事例:酸素吹石炭ガス化複合発電技術の実証研究
(大崎クールジェンプロジェクト)
当社は,
電源開発株式会社と共同で大崎クールジェン株式会社を設立し,
究極の高効率発電技術である
酸素吹石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC)
とCO2分離・回収を組み合わせた革新的低炭素石炭火力発電
の実現を目指す
「大崎クールジェンプロジェクト」
を大崎発電所構内で進めています。
このプロジェクトは,
実証
試験を3つの段階に分けており,
第1段階としてIGFCの基盤技術である酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素吹IGCC)
実証を
2017年3月から開始します。
第2段階では,
第1段階の設備にCO2分離・回収装置を追設するCO2分離・回収型IGCC実証を
計画しており,
設備の詳細設計に向けた準備を進めています。
さらに第3段階として,
第2段階の設備に燃料電池を組み合わせた
CO2分離・回収型IGFC実証を計画しています。
石炭ガス化設備
設計・製作・据付 実証試験
実証試験
実証試験
第1段階
第2段階
第3段階
設計・製作・据付
設計・製作・据付
年度 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素吹IGCC)
石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC)
の概要
CO2分離・回収型IGCC
CO2分離・回収型IGFC
第1段階 第2段階
ガス化時の排熱・ガスタービンの排熱を利用
して水蒸気を発生させタービンを回す
排熱回収ボイラ
酸素
ガス化炉
蒸気 水素
蒸気タービン
発電機
燃料電池
ガスタービン
空気圧縮機
酸素製造
装置
石炭
一酸化炭素,
水素
第3段階
石炭をガス化して可燃性ガス
(水素,一酸化炭素等)
に変換
ガス化で発生した可燃性ガスを
燃焼してガスタービンを回す
発生した一酸化炭素を水蒸気と反応させ,
CO2と水素に変換した後,
CO2を回収CO2 公益社団法人発明協会が行う
「地方発明表彰」は,日本全国を8地方
(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・
九州)
に分け,
各地方ごとに,
実施されている優れた発明,
考案または意匠を生み出した技術者・研究
開発者を顕彰するものです。
このうちの
「中国地方発明表彰」で,当社発明者が2012年度から5年連続で表彰を受け,
計16名が受賞者となりました。
2015年度には,
発明の有用性・事業への貢献の大きさから,
発明者本人だけではなく,
実施者として当社社長も表彰を受け
ました。
これらの受賞は,
当社の知財の取り組み成果である発明が,
事業活動に活用され,国・
地域の経済社会の発展に貢献して
いると評価いただいたものと受け止めています。
社外から評価をいただいた発明
ー 当社発明者が
「中国地方発明表彰」
を受賞! ー
「中国地方発明表彰」
を受賞した発明
知左ヱ門博士の
知財こぼれ話
発明名称
(特許登録番号)
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
広島県発明
協会会長賞
発明奨励賞
発明奨励賞
日本弁理士会
会長奨励賞
実施功績賞
発明奨励賞3名5名4名1名
当社社長3名制御盤の切り替え工法
(特許第4256876号)
電気集塵システム及び電気集塵方法
(特許第5159856号)
取水口の施工法
(特許第4807930号)
曲げ加工で生じる金属組織配管
余寿命評価法
(特許第5355832号)
遮断器一括監視装置
(特許第4413270号)
賞名
年度 受賞者数他
発 電
19 20
しかくエネルギアグループの知財戦略の基本的な考え方
知財戦略の基本理念と
推進体制3基盤技術を構成する10の技術分野 ( )
内の数値は各分野の登録特許数
(2015年12月末)
電力小売りの全面自由化を迎え,中国地域においてお客さまに選んでいただける電気事業者であり続けるとともに,
グループの強み
が活かせる事業領域において,
中国地域の内外を問わず,
持続的な発展につながる挑戦を続けることが,
ますます重要になります。
電気事業や新たな事業領域において競争に勝ち抜いていくためには,
競合他社に対する優位性をいかに構築していくかが鍵となり
ますが,その競争優位の源泉となるものは,
保有している企業のみがコントロールできる知的財産であり,
それを産み出す人材と考え
ています。
2002年に知財の取り組みを本格化して以降,
事業運営のあらゆる場面で産み出されている技術・ノウハウ・アイデアなどを確実
に知財化・権利化し,
積極的な活用を図ることで企業価値を向上させることを基本として,
知財戦略推進のための基盤整備や着実で
戦略的な権利化の推進,
知財リスク対応を推進するとともに,
知財をグループ経営ビジョンの実現に向けた全社的取り組みを下支
えするための方策の一つと位置付け,
経営との関係性を強化しています。
企業価値の向上に貢献するという知財戦略の目的を実現するため,
その時々の課題に応じて方針や目標を設定し,
戦略的・段階的
に対応を進めています。
知財創出基盤の早期確立が求められた初期においては量的拡大を志向し,
その後,
質を重視した活動に
シフトしました。
現在は,
電力システム改革をはじめとした経営環境の大きな変化への対応として取り組む電気事業の競争力強化や域外・海外へ
の展開といった成長分野など,
事業戦略上特に重要となる分野を中心に,
事業の構想段階から市場動向や自社・他社の特許情報の
分析を行い,
その結果を踏まえた適切な特許出願により早期の事業化に貢献するなど,
より経営に密着した知財戦略を推進しています。
幅広く高度な技術からなる基盤技術や独自技術は,
研究・開発や業務のあらゆる場面で行われる創意工夫
の積み重ねにより創出されます。
その成果を確実に知財化し活用していくため,
エネルギアグループでは,
知財
活動を積極的に推進しています。
知財戦略の段階的推進
しかく施策の展開の流れ
(各段階での取り組み)
2002〜2007年度
量的拡大
しかく経営における知財戦略の
位置付けの明確化
(中期経営計画への織り込み)
しかく知財戦略推進体制の基盤整備
しかく特許出願の量的拡大
2008〜2012年度
質的向上
市場競争力の強化,
企業価値の向上
しかくより戦略的な権利取得・活用の展開
(特許網構築)
しかく活動成果の経済価値評価
(定量評価)
しかく知財で担保される独自技術の
貢献度を社内外に発信
しかく事業戦略の構想段階に
おける自社・他社特許分析
しかく知財を活用した競争力強化の
実現,
成長事業の育成・支援
2013年度〜
競争力強化および
事業戦略への貢献
現在のステージ
研究・開発への取り組みと独自技術
しかく研究・開発推進体制
価値の高い研究・開発成果を産み出すためには,
研究・開発の計画段階で,
その目的・目標や,
どのように事業で活用していくかを
明確に定めて,
効果的に取り組みを進める必要があります。
このため,
研究・開発に関する各組織の長の責務や役割,
計画・実施・
評価および成果の活用に関する基本的事項などを
「研究・開発規程」
として制定し,
関係箇所の合意形成を図っています。
経営企画部門が研究・開発戦略を示し,
これに基づき,
総括箇所であるエネルギア総合研究所
(研究管理部門)が,実施や成果
活用を担う事業本部等と連携して,
具体的な研究・開発計画を策定・実施する枠組みとなっています。
また,
研究・開発の目的や目標レベル・開発期間などの評価・調整,
社内の組織間連携,
知財部門との事前協議の徹底などに取り
組んでおり,
これらを通じて,
適切な計画策定や成果の確実な活用および知財の権利化を図っています。
研究・開発推進会議では,
研究・開発戦略や研究・開発計画などを審議しています。
会議は事業本部や部門の部長からなり,
研究
実施箇所や実用化箇所などが一体となって,
多角的な視点から活発な議論を交わしています。
研究・開発に関する役割分担
研究・開発推進会議
近年取り組んでいる研究・開発の概要や成果などについて,
『エネルギア総研レビュー』
で公表しています。
最近の主な研究成果
研究テーマ
エネルギア総研レビュー掲載箇所 http://www.energia.co.jp/eneso/tech/review/index.html
研究・開発戦略の提示
経営企画部門
研究・開発計画の策定・実施
事業本部等
連 携 支 援
エネルギア総合研究所
(研究管理部門)
隠岐諸島ハイブリッド蓄電池システム実証事業〜余剰電力対策に関する基礎検討〜
ボイラ配管補強技術による長寿命化
バットレスダムの常時微動計測による振動特性評価について
食品廃棄物の超臨界水ガス化による再生可能熱の創生
ガス遮断器サンプリング劣化調査について
配電線路のPV出力変動に起因するSVR間のハンチング防止に関する基礎検討
汎用CFD技術による水力発電所取水構造物周辺の流況再現
蒸気タービン鋳鋼経年材の脆化特性
人工地絡試験装置の開発について
第46号
(2016年Vol.4)〃第45号
(2016年Vol.3)〃〃
第44号
(2016年Vol.2)〃〃
第43号
(2016年Vol.1)
エネルギア総研レビュー掲載号
関連➡P26
21 22
当社はコンプライアンス最優先を経営の基本として掲げており,
知財戦略においても,
他者の権利を尊重することを大切にしています。
具体的には,
新技術を導入する際には,
他者の特許出願・登録情報のチェックを確実に行うこととしています。
また,
自社で利用して
いる技術については,
適切に権利化していくという取り組みを推進していますが,
この取り組みは他者権利を侵害しないという観点
でも有効に機能しています。
しかく知財戦略の3つの基本理念
エネルギーサービスを中心に,
お客さまに満足していただける質の高いサービスを安定的にお届けするという当社グループとしての
使命は,
自ら考え創意工夫を行うという意識が高まり,
それを全社員が実践することで初めて達成できるものと確信しています。
また,
コンプライアンス最優先を経営の基本として掲げており,
他者の権利を侵害することがないよう,
社員一人ひとりが常にその
ような視点を持つ必要があります。
こうした当社グループの基本的な姿勢を知財面でも大切にしており,
「創造力の豊かな人材を育成する」,「事業運営のあらゆる場面
で産み出されている知的資産を確実に知財化する」,「他者の権利を尊重する」
ことを,
知財戦略の基本理念として規定しています。 エネルギアグループ
「経営理念」
のキーワードの一つ
「創造。」
には,
エネルギーを中心とする事業を通じて快適性や利便性などの価値
を産み出し,
ご提供することで,
豊かな未来を創造していく,
そのための努力を続けることが当社グループの使命であるという想いを込め
ています。
そして,
この
「創造。」
を担う主体は
「人」
をおいて他にありません。
この認識のもと,
「人材ビジョン」
により,
「自ら考え行動」
する
人材という変化の時代に社員一人ひとりがめざすべき姿を示し,
社員はこの方向をめざして自己研鑽に努め,
会社はその成長を支援し,
育成していくこととしています。
知財面でも,
創造力豊かな人材育成の推進を通じて知財戦略が着実に前進し,
その結果として企業価値の向上が達成されるとの考え
のもと,
活発な啓発活動を展開しています。
啓発活動は,
「知財を身近に感じ,
事業運営上の成果を発明として形にする意識を醸成すること
(=自ら考え行動すること)
の意識
付け」
を大きな目的の一つとしています。
知財部門主催の研修では,
業務内容,
階層・役職,
知財リスクの内容などに応じた,
多様
なカリキュラムを用意しており,
毎年数百名の役員
・社員が受講しています。
他にも,
社内各組織やグループ企業が開催する個別
研修への講師派遣,
eラーニングなどの自己啓発用教材の提供,
実務に役立つ情報の発信など,
さまざまな方法で社員の知財
活動をサポートしています。
また,
社員の発明創出活動を表彰するため,
「知財関連表彰
制度」
を設けています。
2016年度は,
年間4件以上の発明を
行った社員を対象とする
「発明創出活動に対する表彰」
では
48名,
技術評価が高く,
事業に顕著な貢献をしている発明
を行った社員を対象とする
「発明の事業貢献に対する表彰」
では6名が表彰されました。
知財戦略の基本理念と推進体制
研究・開発を含め,
事業運営のあらゆる場面で産み出される技術・
ノウハウ・アイデアなどの知的資産を確実に知財化し,
日々の
業務をより良いものにしようとする社員の知的創造の成果を担保しています。
知財戦略推進の基本ルールである
「知財規程」
でも,
「業務の過程等で産み出された知的資産の知財化に努めること」
を社員の責務として定めています。
この理念は,
特許登録件数が着実に増加していることや,
「発明者人口」
(特許出願経験のある社員数)
が全社員の約半数に相当
するほど裾野の広い活動が展開されている,
という形で具現化されています。
営業所・発電所・電力所など現業機関の社員による発明の割合が高いこと,
また事務系社員の発明も多数あることも,
大きな
特長です。
広義のサービス業である電気事業にとって,
お客さまや地域に密着した現場での創意工夫は,
サービスの質に直結する
ため極めて大切です。
現業機関の社員や事務系社員による発明の多さは,
社員が常にサービスレベルの向上を目指して創意工夫
を重ねていることの表れだと考えています。
基本理念(1)創造力豊かな人材が育成され,
その創造力が十分発揮されることにより
知財戦略が推進されるとの認識に立ち,
人材育成と啓発活動を推進する。
基本理念(2)事業運営のあらゆる場面で産み出されている知的資産を知財化し,
それを活用することにより,
市場競争力の強化と企業価値の向上を図る。
基本理念(3)自らの知的資産を知財化し,
それを最大限に活用すると同様,
他者の権利を尊重し,
その権利を侵害することのないよう留意する。
特許情報の読み方・検索セミナーの様子 岡山営業所の知財研修への講師派遣
「発明の事業貢献に対する表彰」
受賞者
事例:石炭搬送装置
(特願2014‐219014)
石炭火力発電所では,
燃料の石炭を,
給炭機から自重落下により給炭管
(ミルシュート部)
を経由し,
微粉
炭機
(ミル)
で石炭を燃えやすい細かい粉にして,
ボイラヘ石炭を供給しています。
ミルシュート部が,
傾斜して
配置されている場合,
石炭中に含まれる水分や湿気等により,
石炭が付着・堆積し,
閉塞することがあり,
閉塞
すると燃料が供給されなくなるため,
発電出力を抑制する必要があります。
石炭の付着を防止するため,
ミルシュート部に
チェーン駆動式の付着炭掻き出し装置
(スクレーパー)
を設けていますが,
チェーン駆動部に石炭が噛み込む,
チェーンが
外れるといった不調が多く発生すると,
スクレーパー修理の都度,
ミルを停止する必要があるため,
発電出力を抑制しなけ
ればなりません。
【発明の概要・効果】
給炭管内の搬送手段を,
自重落下方式からスクリュー
フィーダ方式
(回転軸を中心
に回転しながら螺旋状のスクリューにより石炭搬送)
にしま
した。
これにより石炭に水分
を含んでいても,
給炭管内部
の付着・堆積による閉塞が
防止でき,
安定した石炭搬送
が可能となりました。
関連➡P27
関連➡P34
改良した給炭管
給炭機・給炭管と微粉炭機
給炭機
給炭管
(ミルシュート)
微粉炭機
(ミル)
排炭機
ボイラへ
発 電
給炭機
ミル
石炭
石炭
23 24
知財戦略の基本理念と推進体制
株式会社中電工は,
幅広い分野で急激に進む技術革新や,
お客さまニーズの多様化にお応えすることを使命と捉え,
エネルギー・情報通信・環境技術などの技術開発・知財活動に取り組んでいます。
住宅やマンション,
ホテルなどの電気設備工事の竣工検査では,
商用電源を用いて,
コンセントの電圧,
極性,
接地など
の電気配線に誤りがないことを確認していたため,
受電後でないと検査ができませんでした。
加えて,
接地極付コンセント
ではN
(ニュートラル)−E(アース)
結線が誤っていることの確認はできても,
断線していないかどうかの確認ができない点
などが課題となっていました。
開発したコンセント極性試験器は,
試験電源に単三電池を利用することで商用電源を不要とした送信器と,
結線状態
の判定を行う受信器から成り,
コンセントの誤結線と断線の判定が可能となっています。
本装置はコンセント結線の
判定をランプで表示し,
同時に誤結線や断線時にブザーで知らせることにより,
確実で効率の良い確認作業が可能で
す。
試験電源に低電圧の電池を用いることで感電の危険性が低く,
また,
本製品を誤って通電中
(100V)
のコンセントに
使用した場合でも保護回路が働くので,
安全に使用することができます。
さらに,
受電前の検査が可能となることから,
電気設備工事における作業の平準化も図ることができます。 本装置は,
「JECA FAIR 2016〜第64回電設工業展〜」
の特別催事として開催された
「第55回製品コンクール」
において,
「一般社団法人日本電設工業協会奨励賞」
を受賞しています。
エネルギアグループでは,
知財戦略の取り組みの基本的方向性や目標を示す
「知財戦略基本方針」
を毎年度定め,
基本ルールで
ある
「知財規程」
に従い,
知財戦略を推進しています。
「知財規程」
により各組織の長の責務・役割,
組織として知財活動を展開する
ために必要な基本的事項を明確に示し,
研究・開発や創意工夫の成果が適切に知財化されるように図っています。
しかく知財戦略推進体制
知財戦略の推進には,
「実施」と「支援」
という2つの側面があります。
事業本部等は日々の業務の中で創出される技術・ノウハウ・ア
イデアの知財化や保有特許技術の活用などの
「実施」を,知財部門はその活動が円滑に進むよう
「支援」
を担っています。
それぞれが
役割を果たすことで,
全社一体となった知財戦略を推進しています。
知財戦略推進に関する重要事項の審議などを行う場として,
事業本部副本部長や部門長を委員とする
「知財戦略会議」
を設け,
知財戦略基本方針の審議,
知財戦略の実施状況・結果の報告,
知財リスクに関する情報の共有化などを行っています。
事業戦略,
研究・開発戦略および知財戦略を三位一体で展開するべく,
エネルギア総合研究所長のもと,
経営に深く関わるメンバー
からなる研究・開発推進会議と知財戦略会議が,
相互に連携を図っています。
知財戦略の2つの側面
知財戦略会議
事業戦略,
研究・開発戦略,
知財戦略の一体的な推進
事業本部等
知財戦略推進体制を整備し,
知財戦略を推進
しかく知財戦略基本方針に基づく推進計画の策定
しかく推進計画の中期経営計画への織り込みと実施
円滑な知財戦略の推進に資する環境整備
しかく知財戦略基本方針の策定
しかく支援体制の構築,
啓発活動の実施
エネルギア総合研究所
(知財部門)
議長:エネルギア総合研究所長
研究・開発推進会議
しかく委員:事業本部部長,
部門部長
しかく研究・開発戦略,
方針および
全社の研究・開発計画などを審議
知財戦略会議
しかく委員:事業本部副本部長,
部門長
しかく知財戦略推進に関する重要事項を審議
しかく専門的・詳細な検討を担う
「部会」を,下部機関として設置
連 携
支 援
【発明の概要・効果】
関連➡P21
事例:コンセント極性試験器
コンセント極性試験器(左:
受信器,右:
送信器) 新方式の正誤判定 判定表示例
(N−E逆接続の場合)
当社の企業理念である
「総合設備エンジニア
リング企業としてお客さまのために高度な価値
を付加した生活・事業環境を創出することにより,
社会の発展に貢献する」
を実現できるよう,
日々
の研究開発に取り組んでいます。
グループ企業から一言
株式会社中電工
技術センター
網本 和也
VOICEE E従来方式
N‐E逆接続の判定が困難N(ー) N
(ー)L(+) L(+)100V100V0V 100V0V100V
(正) (誤)E E新方式
N‐E逆接続の判定が容易
各極間電圧が異なることを
利用し、
多様な判定が可能N(ー) N
(ー)L(+) L(+)+3V
+1.5V +1.5V
‐1.5V
(正) (誤)
グループ企業の知財活動への取り組み
―株式会社中電工―
25 26
しかく知財リスクに対する日常業務での対応
知財リスクへの対応4権利取得機会喪失リスク回避のための取り組み事例
日常業務や研究・開発において当社が実施・検討している技術内容と他者特許を対比し,
侵害の有無を検討する
「特許権侵害
リスク対応」や,広告物やイベントなどで使用する媒体について,
他者商標権の侵害の有無や回避方策を検討する
「商標権侵害
チェック」
などを日常的に実施しています。 また,
権利確保面では,
共同研究などの成果を自社の権利として適切に確保するための契約書チェックを行う
「知財関連契約
審査」や,社外に公開予定の論文・技術資料などに未出願の内容が含まれ,
公開により特許を取得できなくなることを防止するため
のチェックを行う
「知財性確認」
などの仕組みを整え,
日常業務として実施しています。 なお,
現時点において当社の経営に重大な影響を与える知的財産関連の訴訟案件はありません。
社外に発信する広報・広告媒体は,
他者商標権侵害のリスクを回避するため,
作成段階で商標リスクの有無を審査する体制を
整備しています。 事前審査で懸念されるリスクが発見された場合は,
対象となるネーミング等の表現を変更する対応をとり,
商標権侵害リスクを
未然に防止しています。 知財規程の基本理念の一つである
「他者の権利の尊重」,およびコンプライアンス最優先という考え方
に基づいて,
知財リスクを回避するための取り組みを積極的に推進しています。 知財リスクへの対応
当社は,
業務運営のあらゆる場面で産み出されているアイデアなど知的資産を,
知財化することを基本としています。
このアイデアなどを特許出願前に社外へ公表してしまうと,
特許権を取得できなくなってしまいます。
このため,
アイデア
などの秘密保持が重要であり,
知財規程においても
「発明に関する事項について,
原則として,
その発明の出願が公開(注記)
されるまでは,
他に漏洩してはならない」
と定めています。 こうした権利取得機会喪失を防止する必要から,
社外へ開示・公表する技術資料の内容を事前にチェックし,
公表
しても問題ないか確認する取り組みとして,
「知財性確認」
を行っています。
(注記)特許庁は,
出願の1年6カ月経過後に公開
エネルギア総合研究所
(知財部門) 技術主管箇所
2権利取得機会喪失リスク回避の
観点から,
内容をチェック
3確認結果の通知
4通知された確認結果を踏まえ,
開示・公表内容を検討
他者権利侵害リスクに関する教育の取り組み事例
日常の技術開発や,
営業活動,
広報活動などでは,
知財リスクが潜在する場合が多々あります。
これらの知財リスクは,知財部門への事前の相談や審査依頼によって取り除いていく作業を行っています。
この作業の過程で,
同様な
事例が反復的に生じ得ると判断した案件は,
具体的な事例をデフォルメしたケースを元に対応方法やその考え方
の是非を問う問題と解説を
「ケーススタディ」
として作成しています。
「ケーススタディ」
では,
個別具体的な業務に
潜在する知財リスクを事前に察知するための基本的知識や,
適切に類似案件の対応をするための応用力を身に
つけることを狙いにしています。
当社・
グループ会社の社員が活用できるように,
年に数回社内ホームページに公開
しています。
【他社権利侵害リスクに関する教育】
【研究成果等の社外発表前の知財性確認】
〈問題編〉
実際の事例をデフォルメして対応方法や
考え方の是非を選択式で問う
しかく他者商標権侵害の防止に関する体制
VOICE
販売推進部門では,
電化の訴求など,
当社が主催するイベント広告の作成時には,
他者の
商標権の侵害を防止する観点から,
事前に知財の商標審査を受けることをルール化しています。 また,
当社は,
住宅の販売・建築・リフォーム会社,
建築設計事務所,
工務店,
電機メーカー,
家電量販店等のサブユーザーが主催するイベントに当社が協力する際の広告についても,
サブユーザーの了解を得たうえで商標調査を行うようにしています。
これは,
当社に関連する
記載内容が他者の商標権に抵触することを防止する目的と併せて,
サブユーザーに関連する
記載内容も
「ダブルチェック」
をさせていただく目的を持っています。
サブユーザーは,
当社が電化を推奨していく
うえでの大切なパートナーです。
今後もWIN−
WINの関係を構築するため,
販売促進に関する支援に加え,
商標調査を行うことも大切な
パートナーに対する協力であると考えています。
販売推進部門
(コンシューマー第二グループ)
波多野 有希子
社員から一言
しかく
「知財性確認」
の流れ
技術主管箇所が
社外への開示・公表を
検討している技術資料1「知財性確認」
の依頼
〈解説編〉
各選択肢のポイントを対話形式で解説
27 28
商標への取り組み
シンボルマークの防護標章登録
キャラクターを通じた
お客さま接点の構築
しかく戦略的事業領域での商標活用
戦略的事業領域を結ぶグループシンボルマーク 「エネルギアの国の仲間たち」
は創立50周年を機
に誕生したキャラクターです。
当社の理念や目標を
視覚的に表現したもので,
あらゆるコミュニケーション
活動の核となるものです。
キャラクターの一層の浸透を図ることで,
当社へ
の親近感を抱いていただけるよう,
ホームページを
はじめ,
さまざまなイベントなどにおいて活用して
います。
企業におけるキャラクターの存在は,
商品や事業
のPRなど企業のイメージ向上に大きな影響を与
えるものです。
商標登録することで安定的かつ積極
的に使用でき,
キャラクターの活躍の範囲が大きく
広がり,
その効果も高まるものと考えます。
シンボルマークに蓄積されたお客さまからの信頼を適切に保護するため,
「防護標章」
の登録を受けており,
エネルギー関連の事業
において,
他者が防護標章と同一商標を使用することを制限する点で,
通常の登録商標よりも広く保護されています。
防護標章として登録されるためには,
その商標が著名であることが要件となりますが,
シンボルマークをさまざまな媒体で積極的に
使用したことで,
お客さまやお取引先さまなどに広く知られていると認められました。
これにより,
シンボルマークと混同の可能性がある商標が登録されることや,
お客さまが商品やサービスの提供主体を混同することで,
不利益を被るような他者の商標の使用を防ぐことができます。
エネルギアグループは,
電気事業を中核に幅広い事業からなっています。
各社の役割を明確にしたうえで,
その特性・特長を活かし
多様なニーズにお応えすることで,
より多くのお客さまに選んでいただくため,
戦略的事業領域を定め,
トータルソリューション事業を
展開しています。
グループとしての一体感の醸成やイメージの向上を図るとともに,
営業面でのグループ総合力の発揮をねらいとして,
創立50周年事
業では,
当社シンボルマークを基調とするエネルギアグループのシンボルマークも制定しました。
電力小売りの全面自由化後の競争環境においては,
「地域で選ばれ,
地域をこえて成長する企業グループ」
として,
「中国電力グループ」
イコール
「エネルギア」
として認知いただき,
お客さまの期待に応えられるように進んでいきます。
しかく商標を通じたメッセージの発信
商標への取り組み5 当社のシンボルマークは,
1991年1月に制定されました。
当時の電気事業を取り巻く情勢は,
世界的なエネルギー問題,
地球規模
の環境問題,
規制緩和による競争激化など,
21世紀を前に大きな変化を迎えていました。
このような状況の中,
社員の意識改革や
社内の活性化,
地域の皆さまに信頼され親しまれる企業イメージの構築を目指すことを,
企業理念とシンボルマークによって明確
にしました。
企業理念は,
キーコンセプトと経営理念で構成されています。
キーコンセプトの
「ENERGIA」は,「エネルギー」
の語源であるラテン
語に由来し,
「エネルギーがもたらすあたらしく,
あかるく,
あたたかい活力ある社会」
であり,
その社会の実現に向けて努力していく,
という当社の姿勢を表すものです。
電力小売りの全面自由化を迎えるにあたり,
こうした当社グループの原点を再認識すると同時に,
今後の事業環境変化も展望し,
「グループとして将来にわたり大切にしていきたい思い」
を込め,
2016年,
エネルギアグループの新たな企業理念として掲げることに
しました。
これらの想いをシンボルマークに込め,
お客さまをはじめ私たちと関わりある皆さまとエネルギアグループをつなぐ目印として,
これからも積極的に活用し,
みなさまの信頼を高めていきます。
特許権とならび重要な知的財産権に商標権があります。
商標は,
商品・
サービスの品質や信頼の証であり,
エネルギアグループとお客さまを結ぶ大切な知的財産であると認識しています。
シンボルマークやキャラクターを商標として適切に権利化し保護することで,
安定的に使用できるようにする
とともに,
お客さまに安心して商品やサービスをお選びいただけるようにしています。
シンボルマークは,
「E」
を強調したダイナミックな
「EnerGia」
のロゴタイプと,
エネルギーの動きや成長する力を一体化した
造形に躍動感を伴う赤
(ウォームレッド)
と安定感を象徴する青
(ジェントルブルー)
で彩色し,
それを中国電力や中国地方
さらに地球を表したCリングで囲んだデザインで構成されており,
エネルギーを通じて,
お客さま
・地域・環境に貢献して
いこうとする中国電力の企業理念を表現しています。
シンボルマークが持つ意味合い
シンボルマークと企業理念
キーコンセプト
商標登録第4597077号
シンボルマーク
商標登録第3104821号
グループシンボルマーク 戦略的事業領域
電気事業および
電気事業サポート
総合エネルギー
供給事業
環境調和
創生事業
ビジネス・生活支援事業
情報通信事業
29 30
しかく知財を通じた貢献活動
CSRの取り組み6 地球温暖化対策として,
非化石エネルギーの利用拡大や化石エネルギーの効率的利用などに取り組んでいますが,
そこで蓄積した
技術を,
地球規模での環境負荷低減に向けた取り組みにも活用しています。
自社技術の流出防止に留意した上で,
海外への技術支援
を積極的に展開していきます。 エネルギアグループは,
CSRの取り組みの方向性と役員・社員の行動の根底に置く
べき原則を定めた
「エネルギア
グルー
プCSR行動憲章」
のもと,
社会から信頼され,
選択される企業グルー
プとなることを目指し,
グルー
プ一体となった
CSRの取り組みを推進しています。
また,
環境経営を推進しており,
2015年12月には,
経営環境の変化と従来からの
取り組みを踏まえ,
新たに
「中国電力グルー
プ環境行動計画」
を策定し,
環境に配慮した取り組みを推進しています。
知財面からも,
海外への技術支援を通じた地球規模の環境負荷低減への取り組みや東日本大震災の復興支援,
地域の人材育成への協力など,
CSRの取り組みを展開しています。
火力発電ノウハウを活用した国際貢献
2016年3月,
オランダの当社100%子会社を通じて,
マレーシア電力公社(注記)
と三井物産株式会社がヌグリ・スンビラン州
にて建設中の超々臨界圧
(USC)
石炭火力発電事業
(100万k×ばつ2基)
へ間接的に出資参画しました。
現地には社員
3名を派遣しており,
国内での石炭火力発電所の建設管理や運営で培ってきた実績,
経験および環境技術を,
マレー
シアにおいて最大限に活用することで,
同国における電力の安定供給ならびに低炭素社会の実現に貢献したいと
考えています。
(注記)マレー半島の発送配電を担うマレーシア最大の電力事業者。
1マレーシアにおける石炭火力発電事業
2015年9月,
ウズベキスタン共和国におけるガスタービンコンバインドサイクル発電
(GTCC)
の研修施設整備
に係るコンサルタント業務を,
グループ企業の株式会社パワー・エンジニアリング・アンド・トレーニングサービス他
と共同で国際協力機構
(JICA)
から受注しました。
本事業ではトレーニングセンターの施設更新に伴う研修カリ
キュラム策定,
テキストの整備,
研修機材の検討,
現地講師の育成などを支援しています。
2ウズベキスタンにおける研修施設整備に関するコンサルタント業務
2008年以降,
中国の大手電力会社3社と覚書を締結し,
新たな知見や課題解決のヒントを得ることを目的に技術
交流を実施しています。
これまでに超々臨界圧発電技術
(USC)
や脱硝装置といった環境技術を中心に情報交換・
技術交流を進めています。
3中国の電力会社との技術交流
国際的な地球温暖化対策の推進
マレーシアでの発電所の建設工事風景 ウズベキスタンの発電所でのヒアリング 中国の発電所への視察
CSRの取り組み
東日本大震災の復興支援
地域の人材育成への協力
しかく地域貢献の推進
「中国電力グループ研究開発成果展示会」
の開催
地域社会への貢献という観点から,
地元企業を対象とした知財研修活動への協力や,
高校生や大学生に向けた科学技術に関する
教育活動についても積極的に取り組んでいます。
近年の取り組みとして,
一般社団法人広島県発明協会が主催するセミナーへの
講師派遣など運営への協力や,
一般社団法人日本知的財産協会が行う研修会や講演会等への参画・協力,
インターンシップ実習生
の受け入れなどがあります。
また,
次世代層への環境エネルギー教育として
「わくわくEスクール」
を開催しています。
同スクールでは,
地域の小学校の社会見学
を受け入れ,
環境エネルギー学習を支援しています。
太陽光発電,
電気自動車,
雷インパルス電圧発生装置などの施設見学や理科実験
に加えて特許庁制作の知財ビデオによる
「小学生向け知財学習」
を取り入れ,
見学後
「発明を守る特許の大切さがわかりました」と自筆の感想文が寄せられるなど,
高い評価をいただいています。
東日本大震災の復興支援を目的として,
公益財団法人東北活性化研究センターとの間で,
当社が保有する原則全ての特許について,
地元企業に対して無償で実施許諾を行う権利を付与する
「包括ライセンス契約」
を締結しています。
知財活動の取り組み成果である特許権が,
東日本大震災の復興支援に何らかの形でお役に立てればとの考えによるものであり,
原則として保有する全ての特許が通常実施権の許諾対象となります。 第一号,
第二号案件については,
同センターとの実施許諾契約の締結を経て,
事業化に向けた取り組みが進められています。
また,
第三号案件についても,
特許の特長を活かした事業展開が可能な地元企業とのマッチングが進められています。
今後も,
保有特許を活用した本枠組みによる支援を推進し,
東北地域の復興に貢献していきます。 当社グループにとって,
地域社会と地域企業の経済的・技術的発展
は大切であり,
低廉で良質な電気を安定してお届けするために,
将来
を見据えた活用度の高い研究開発に取り組んでいます。
その成果と
ノウハウを広く地域のみなさまにお知らせするため,
「中国電力グループ研究開発成果展示会」
を開催しています。
今年度は,
エネルギー産業の低コスト化,
再生可能エネルギー
利用や環境技術,
省エネルギー関連の製品や解析ツール,
安全関連
設備や装置など,
産業活動や生活に役立つ研究開発の取り組みに
ついて実物とパネルの展示を行い,
研究開発者が来場者にわかり
やすく説明しました。
インターンシップ実習生の業務体験
展示会の様子
支給
待ち
施設見学
(電気自動車)
しかく
「中国電力グループ研究開発成果展示会2016」
: 2016年12月13日,
14日
(2日間)
: 中国電力本社ビル 1階西ホール
: 中国電力株式会社
: グループ企業等7社・団体
日 時
会 場
主 催
協力企業
31 32
ー 知財活動の概観 ー
しかく2015年度の算定結果(注記)
EnerGia IP Activity 2016
活動報告
電気の安定供給,
競争力強化,
環境保全などに資する技術の研究•開発により新たな価値創造に取り組むとともに,
業務運営の
あらゆる場面で産み出される知的資産を知財として認識・活用し,
企業価値を向上していくことがグループ存立の基盤と考え,
戦略的
かつ効率的な権利取得・活用を進めています。
また,
海外事業の展開状況を踏まえ,
海外においても独自技術を適切に使用できるよう
確実な権利化を図っています。
こうした知財活動を通じて創出された知的財産(IP:lntellectual Property)の実績は以下のとおりです。1:
特許技術が導入・適用された施策のうち,
一定額以上のコスト低減効果が発生した件数。2:
技術を特許出願することで事業活動の自由度を確保できていることの金額効果。3:
対象技術が特許で担保されていることで当社のみがメリッ
トを享受できている金額効果。
2に特許技術の寄与度や特許の強さなどを加味して算定したもの。4:
クロスライセンスの対価となり得る特許技術の金額効果。
自社が対価性のある特許を保有していれば支払額が相殺されることから,
他社技術導入の原資として特許の金銭的側面
を評価したもので,
相手先企業との事業規模比により算出される係数Aの値により変動。 しかく下塗り,
上塗りで特性の異なる塗料を組み合わせることで,
従来と同等以上の耐久性能を保持しながら短い日数で施工できる
塗料を開発。
(施工日数3日で想定耐用年数20年→施工日数2日で想定耐用年数25年以上)
しかく本塗料の開発により,
設備改修コストが減少。
【評価対象特許の概要】
送電鉄塔の塗装用塗料
(P14掲載事例)
特許の価値の定量的評価
特許の定量的評価のステップ
ステップ1
評価年数
2015年度(I)2014年度(II)(IーII)
152件
143件9件398億円
366億円
32億円
155億円
154億円
1億円
(×ばつA)
(×ばつA)ー1施策件数
2特許技術が関係した
コスト低減額
3特許の価値の
定量的評価額(α)4他社技術導入原資
獲得額
(×ばつA)
ステップ2 ステップ3
特許が関係した
コスト低減額(注記)(a)特許技術が寄与した
コスト低減額(注記)(b)特許の価値の
定量的評価額(注記)(c)(b=a×ばつ特許技術の寄与度(注記))(注記)本事例では100%
(c=×ばつ排他独占性(注記))(注記)本事例では73%
その他の
効率化額
(注記)当該年度時点で存続している特許を対象に毎年度再評価
(洗い替え)
を実施
特許出願件数の推移
(公開日ベース)
海外への出願件数
(有効分)
35カ国518件
(登録件数:150件)
知財関連試験有資格者数
しかく弁理士・・・・・・・
4名 しかく知的財産管理技能士(2級)・・・・・・・ 136名 しかく知的財産管理技能士(3級)・・・・・・・ 21名
発明者人口の推移(注記)
特許登録率の推移
特許登録件数の推移
(登録日ベース)
発明の排他独占性評価(注記)・・・・・・・・・・・・・ 73%
(15点満点で11点の評価)
しかく権利化状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3点
しかく権利としての強さ・・・・・・・・・・・・・・・・
5点
しかく代替技術に対する優位性・・・・・
3点
(注記)特許庁
「特許評価指標
(技術移転版)」をベースに,
当社の事業内容に合う評価項目を採用
(注記)計画額
(将来発生が見込まれる
低減額)
も含む
発電所管理・メンテナンス技術
再生可能エネルギー
関連技術
非接触給電
技術
電力需給
調整技術
送配電設備管理・メンテナンス技術
石炭ガス化
技術
その他187531476066221938586
2012 2013 2014 2015 2016(年)(%)0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,0003333,667
4,000 4,291 4,477 4,762291186285202
2012 2013 2014 2015 2016
(年)
(名)0204060801004742245002002012 2013 2014 2015 2016(年)
(件)4006008001,000
中国電力 電力上位3社平均 ガス上位2社平均
中国電力 電力上位3社平均 ガス上位2社平均 経験者 新規発明者02004006008001,000
1,200435219502012 2013 2014 2015 2016(年)
(件)
中国電力 電力上位3社平均 ガス上位2社平均
(注記)特許出願経験のある社員数
(2003年度からの累計)
[参考:当社社員数9,524名
(2016年3月31日現在)]12104175110
PCT出願
(移行前)1261権利化状況
2権利として
の強さ
3代替技術に
対する優位性
しかく排他独占性評価表
5点 4点 3点 2点 1点
無効審判後も
権利維持
非常に強い
(基本発明)
代替技術なし
権利成立
(無効審判請求なし)
強い
(基本発明に準ずる)
拒絶査定を受け
審判継続中
(特許性あり)
弱い
(中程度の改良発明)
拒絶査定を受け
審判継続中
(特許性に疑問)
非常に弱い
(小幅な改良発明)
代替技術より
技術的に劣位
ー ー
権利未成立で
特許性の判断が困難
中程度
(大幅な改良発明)
代替技術より
技術的に優位
33 34

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