エネルギアグループ
知 的 財 産 報 告 書
2013年2月
社 長 メ ッ セ ー ジ ......2
要 約 ......3〜4
地域のお客さま の期待に応える取り組み ー成果とその知財化についてー......5〜17
知財戦略推進の基本理念......18〜231目 次 c o n t e n t s
※(注記)本報告書の開示項目については,経済産業省の
「知
的財産情報開示指針」
に準拠していますが,項目の
配列等については,当社の取り組みの特長が最も
明確になるよう一部変更しています。
特集Voice!
知財事務局から一言!1
中上 真一
(お客さまサービス本部) .....................28
知左ヱ門博士の知財こぼれ話!
『エネルギア総研レビュー』
とは ...........................33
開発者から一言!6
江木 和泉
(エネルギア総合研究所) .....................16
知財事務局から一言!2
藤重 英樹
(電源事業本部)
.................................29
知財事務局から一言!3
大塚 恭士
(情報通信部門)
.................................30
開発者から一言!5
山口 亮,
板倉 洋子((株)
中電工)
..................14
開発者から一言!4
二宮 盛一
(エネルギア総合研究所) ........................13
開発者から一言!3
尾山 圭二
(エネルギア総合研究所) .....................11
開発者から一言!2
布上健一郎
(流通事業本部) ....................................9
開発者から一言!1
西田 秀高
(エネルギア総合研究所)
.....................8
『テンパール工業
(株)』とは .................................12
『エネルギア・マスター』
とは
.................................101研究・開発,知財戦略推進体制......24〜262電力会社の事業モデルとそれを支える基盤技術......273研究・開発への取り組みと独自技術......28〜334特許群の事業への貢献......34〜365ライセンス活動の事業への貢献......376知財ポートフォリオに対する方針......38〜397CSRの取り組み......40〜428営業秘密管理・技術流出防止に関する方針......429リスク対応情報......43102
中国電力株式会社
取締役社長
原子力発電所の運転停止により全国的に電力需給が逼迫し,昨年の夏には,当社サービス区域内
でも昭和48年のオイルショック以来となる節電のお願いをさせていただくなど,電力の安定供給を
維持することが大変厳しい状況となりました。お客さまの節電のご協力に対し心よりお礼申し上げ
ます。当社は,引き続き,供給力の確保に全社一丸となって取り組んでまいります。 当社グループの基盤は,地域の皆さまからの信頼です。信頼獲得のためには,お客さまの声に真
摯に向き合い,地道な取り組みを積み重ねていくことよりほかありません。 今回の報告書では,お寄せいただいた
「お客さまの声」
の中からお客さまが関心を持たれているテ
ーマを選び,それらに関連する当社グループの研究・開発等の取り組みとその成果の知財化につい
て特集しました。また,社員の知財活動の取り組みへの思いも紹介しています。 当社グループを取り巻く環境はますます厳しさを増しています。そうした中で,これらの取り組
み成果や,特許を取得するといった結果だけでなく,仲間と共に知恵を出し合い技術をさらに洗練
させていくという日常業務における社員個々の取り組み姿勢が,お客さまのご期待に応え,選択さ
れる企業となるための大きな力になるものと確信しています。 一方,電気事業は極めて公益性の高い事業であり,当社は,取得した特許を排他独占的に活用し
事業の発展を目指すのではなく,その活用により我が国全体の公共の利益に繋がるような
「健全な
競争」
に貢献したいと考えています。 当社は,2011年3月の東日本大震災により大きな被害を受けた東北地域の復興支援を目的に,
2012年1月に公益財団法人東北活性化研究センターと
「包括ライセンス契約」
を締結し,当社が保有
する原則全ての特許について,被災された企業等に対して無償で実施許諾を行う権利を持っていた
だきました。その結果,同財団と被災された企業との間で,本枠組みによる実施許諾契約が締結さ
れることになったと伺っています。とても嬉しく思うとともに,さらに当社保有特許が1件でも多
く活用され,東北地域の一刻も早い復興に寄与することを心より願っています。 当社グループは,産業財産権制度の枠組みを最大限に尊重・活用するとともに,知財戦略面での
取り組みを一層深化させてまいります。今回で5回目となるこの知的財産報告書をはじめとして,
その成果を様々な活動を通じて積極的に情報発信するとともに,ステークホルダーの皆さまの声に
十分に耳を傾けてまいりたいと考えています。 今後とも,一層のご理解とご支援をいただきますよう,
よろしくお願いいたします。 2013年2月
社 長 メ ッ セ ー ジ 3要 約要 約特 集
地域のお客さま の期待に応える取り組み
−成果とその知財化について−
(5〜17頁)
1.知財戦略推進の基本理念
(18〜23頁)
3.電力会社の事業モデルとそれを支える基盤技術(27頁)
2.研究・開発,知財戦略推進体制(24〜26頁)
4.研究・開発への取り組みと独自技術(28〜33頁)
●くろまる特集では,お客さま意識調査やこれまで寄せられた多
くの
「お客さまの声」
の中から,ご意見・ご要望の多い
6つのテーマを選定し,そのテーマに関連した研究・
開発等の成果とその知財化について,事例を掲載して
います。
◆だいやまーくグループ経営5ヵ年ビジョンと知財戦略
●くろまる2008年3月,経営の基本方針としてグループ経営5ヵ年
ビジョンを策定し,2008年度以降の5年間を
「事業の基
盤である信頼と,価値創造の源泉となる人材基盤・設
備基盤を確固たるものとする期間」
と位置付けました。
●くろまる各事業本部等でのビジョンに関わる取り組みの成果を
着実に質の高い特許出願・登録に結び付けていく知財
の取り組みは,グループ経営5ヵ年ビジョンの実現を
強力に下支えしています。
◆だいやまーく 知財戦略の基本理念
●くろまる競争優位の源泉となるものは,保有している企業のみ
がコントロールできる知的財産であり,それを生み出
す人材と考えています。
●くろまる知財戦略においても,この考えをベースに次の3つの
基本理念を規定し推進しています。 知財戦略では, 創造力豊かな人材の育成を通じて知財
化が着実に前進し,その結果として企業価値が高まる
ことを目指しており,知財啓発活動を展開しています。 事業運営のあらゆる場面で知的創造が行われ,技術・
ノウハウ・アイデア等の知的資産が創出されていると
いう認識のもと,知的資産の確実な知財化に取り組ん
でいます。 コンプライアンス最優先を経営の基本として掲げてい
ます。
知財戦略の推進においても,新技術の導入時に他者権
利情報をチェックするとともに,利用している技術に
ついて積極的に特許出願を行い,他者権利の侵害リス
ク回避に努めています。
◆だいやまーく 事業戦略,研究・開発戦略,知財戦略の一体的な推進
●くろまる事業戦略,研究・開発戦略および知財戦略を三位一体
なものとして展開するため,エネルギア総合研究所長
のもと,
「研究・開発推進会議」と「知財戦略会議」の2つの会議体を設置し連携を図っています。
◆だいやまーく研究・開発推進体制
●くろまる効果的な研究・開発の実施と成果の積極的な活用に向け,
各組織の長の責務等の基本的事項を明らかにした
「研究・
開発規程」
を制定しています。
●くろまる
「研究・開発推進会議」
では,各事業本部等の部長が構
成メンバーとなり,研究・開発戦略や全社の研究・開
発計画等について,多角的な視点から審議します。
●くろまる研究・開発においては,経営企画部門が示した研究・
開発戦略に基づき,エネルギア総合研究所や各事業本
部等が具体的な研究・開発計画を策定・実施しています。
◆だいやまーく知財戦略推進体制
●くろまる知財戦略推進の基本理念およびその実現を図るための
基本的事項を明らかにした
「知財規程」
を制定しています。
●くろまる
「知財戦略会議」
では,各事業本部等の副本部長,部門
長が構成メンバーとなり,知財戦略基本方針等の審議
を行うほか,知財戦略の実施状況や知財リスクに関す
る情報等の共有化を実施しています。
●くろまる知財戦略会議には,下部機構として,当社グループで
展開する6つの事業領域ごとに部会を設置しており,
グループ内で知財情報を共有化するとともに,各部会
が自主的な目標を設定し活動を展開しています。
◆だいやまーく事業モデルとその事業特性
●くろまる電力会社の事業モデルは,
「発電所で発電した電気を送
電線や配電線を通してお客さまにお届けする。また,
お客さまに対して,ご利用形態に合わせた料金プラン
や効率的なエネルギー利用をご提案することによりお
客さまにご満足をいただく」
ことです。
●くろまる電気事業には,次の2つの大きな事業特性があります。
【電気事業の特性】
●くろまる電気は重要な社会インフラであり,長期的・安定的
に提供するという社会的な要請に応える必要がある。
●くろまる電気は貯蔵できないため,適正な電圧や周波数を維
持し効率的に提供するには高度な技術が必要である。
◆だいやまーく電力会社の技術基盤とそれを支える人材基盤
●くろまる電気の長期的・安定的な提供のために必要な技術基盤は,
「発電」,「送電」
等の10の分野に大別できます。
●くろまるこの幅広く高度な技術からなる当社の技術基盤は,自
ら考え行動するモチベーションの高い人材が,業務の
あらゆる場面で創意工夫を行い,その成果を確実に権
利化していくことで支えられています。
◆だいやまーく研究・開発戦略
●くろまるS
(安全確保)
を前提としたうえでの3E
(供給安定性,
経済性,環境保全)
の達成に向け,電気の需要,供給,
ネットワークの各方面において,電気事業への活用に
繋がる新たな価値創造に取り組んでいます。
●くろまる事業強化に向けて特に優先度の高い分野を
「重点開発分
野」
として設定し,重点的に経営資源を配分する等,効
果的な研究・開発を推進しています。
●くろまるコスト低減に向けた取り組み
●くろまる原子力発電の安全確保の取り組み
●くろまる安定供給に向けた取り組み
●くろまる省エネルギー普及・促進および再生可能エネルギー
拡大への取り組み
●くろまるお客さまへのサービス向上の取り組み
●くろまる環境問題への取り組み
今回特集でご紹介するテーマ4要 約
【重点開発分野】
●くろまる需要サイドからの電気利用最適化分野 「省エネ
(ピークカット)
・省CO2・省コスト」
の実現
に向けて,需要サイドの視点から電気利用最適化に繋
がる技術の研究・開発に取り組む。
●くろまる再生可能エネルギー普及促進分野
再生可能エネルギーが大量連系した場合でも,電力
品質さらには安定供給に影響を及ぼさない系統安定化
技術,最適な送配電ネットワーク技術等の研究・開発
に取り組む。
●くろまる石炭利用分野
今後も石炭電源の安定運転を継続するため,石炭の
クリーンコール技術
(石炭灰有効活用技術を含む)
の研
究・開発に取り組む。
●くろまる予防保全分野
計画的・効果的な更新・修繕に繋がる劣化診断技術,
機器延命化技術等の設備経年化へ適切に対応する研究・
開発に取り組む。
●くろまる石炭火力のパイオニアとして,他社に先駆けて脱硫・
脱硝装置を開発・導入
●くろまる超々臨界圧
(USC)
石炭火力発電の採用,既存設備を有
効利用した天然ガスコンバインド発電への改造,木質
バイオマスの混焼発電等を実施
●くろまる石炭ガス化複合発電
(IGCC)
や石炭ガス化燃料電池複合
発電
(IGFC)
の実現による高効率化を目指した取り組み
●くろまる海外での石炭火力の効率向上,環境負荷低減による国
際貢献
◆だいやまーく研究・開発の意義と独自技術
●くろまる大規模で複雑な設備やネットワーク等の運用で培った
独自の運用ノウハウや保修技術を基に,設備のユーザ
ーの視点から独自の研究・開発を行っています。
◆だいやまーく石炭火力発電技術
●くろまる供給安定性,経済性の観点から,
重要なベース電源と位
置付ける石炭火力発電において,
環境負荷低減に向けたクリーンコー
ル技術の開発・導入の取り組みを推進しています。
◆だいやまーく特許出願の目的
●くろまる競合他社が先に権利確保した場合,競合他社の特許技
術により事業が計画どおりに進まなくなる等の事態に
直面します。そのため,事業差止リスクの回避
(=事業
活動の自由度確保)
を,特許出願の一番重要な目的だと
考えています。
●くろまる今後,特許登録件数が着実に増加する見込みであるこ
とから,保有特許を有効活用して,
「事業収益拡大への
貢献
(他者技術導入によるコスト低減等)」についても積
極的に取り組んでいきます。
◆だいやまーく特許の価値評価
●くろまる高品質で低廉な電気を安定的にお届けするために取り
組んだ研究・開発等の成果は,主にコスト低減等経営
効率化という形で表れます。従って,実際に特許技術
が関係している主な施策における効率化額の累計額を
特許の価値として評価しています。
●くろまる2011年度における特許が関係した効率化額は,前年度
298億円から24億円増加して322億円です。
◆だいやまーくライセンス活動についての基本スタンス
●くろまるライセンス収入の獲得は,知財戦略推進の目的ではなく,
知財戦略推進の結果として達成されるものであると考
えています。そのため,ライセンス活動については,
知的財産権の本質である競合他社の事業をけん制する
力が下がっていくという点にも目配りしながら,クロ
スライセンス
(特許権等の相互許諾)
による事業強化(貢献)
を視野に入れた活動を展開したいと考えています。
◆だいやまーくオープン・イノベーションに対する考え方
●くろまる保有特許を有効活用するという観点,およびイノベー
ションに関わるコスト低減とスピードアップを図る観
点から,他社の様々なリソースを有効活用するオープン・
イノベーションの考え方を取り入れることが必要にな
っています。
●くろまるオープン・イノベーションの考え方を取り入れる際は,
前提として当社グループ側にしっかりとした知財の土台
が構築されていることが必要であり,オープン・イノベ
ーションの時代にあっても,積極的に知財戦略を推進し
ていくことが,ますます重要になると考えています。
◆だいやまーく重点課題における特許網の構築
●くろまる各組織では,中期経営計画等に掲げる諸課題から,優
位性確保の観点も考慮した上で特許網を構築する重点
課題を設定し,当該課題について集中的に特許を取得
する活動を推進しています。
◆だいやまーく特許の群管理
●くろまる一般に用いられている技術分類
(国際特許分類等)
とは
別に,社内で使用されている技術用語等を基に,既出
願特許の技術分野を網羅し,かつ関係者全員が感覚的
に認識可能な独自の技術分類を行っています。
●くろまる独自の技術分類は,出願済特許全てについて付与して
おり,群管理に利用するとともに,出願傾向
(技術分類
ごとの強み弱み)
の分析や特許網構築のテーマの選定等
において活用しています。
◆だいやまーくCSR
(Corporate Social Responsibility)
の取り組み
●くろまる知財面においては,地域社会発展への貢献という視点と,
国際的な地球温暖化対策の推進への貢献という視点を
大切にして,CSRを意識した活動を展開しています。
◆だいやまーく東日本大震災の復興支援
●くろまる東日本大震災の復興支援を目的として,公益財団法人
東北活性化研究センターとの間で,保有する原則全て
の特許権について無償で実施許諾を行う権利を付与す
る契約を締結しています。
◆だいやまーく営業秘密管理要則の制定
●くろまるノウハウ等の営業秘密に相当する情報の管理体制・方
法等を具体的に規定した
「営業秘密管理要則」
を制定し,
営業秘密を確実に管理できる仕組みを構築しています。
◆だいやまーくリスク対応の状況
●くろまるコンプライアンスを最優先するという考え方に基づいて,
日常活動として,
「侵害リスク対応」や「商標権侵害チェ
ック」
等を実施しています。 5.特許群の事業への貢献(34〜36頁)
6.ライセンス活動の事業への貢献(37頁)
7.知財ポートフォリオに対する方針(38〜39頁)
8.CSRの取り組み(40〜42頁)
9.営業秘密管理・技術流出防止に関する方針(42頁)
10.リスク対応情報(43頁)
【石炭火力における環境問題への対応】5地域のお客さま の期待に応える取り組み
コスト低減に向けた取り組み1●くろまる 厳しい経営環境を踏まえ,グループを挙げて様々な観点から経営効率化に取り組んでいます。
効率化施策には,設備投資の削減,業務運営の効率化やITの活用による諸経費の削減等があり,そ
の成果は特許の価値として評価し,これまでの知的財産報告書において公表しています。当社グル
ープでは,更なるコスト低減を目指して最大限の努力を行っていきます。 (特許の価値評価の算定方法等は,本書35頁に掲載しています。) 地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
特 集
【事例1】取水口の施工法(特許第4807930号)
火力発電所や原子力発電所では,冷却のために,大量の海水を利用しています。海水を取り込むため,島根
原子力発電所3号機では海底に取水口を設置していますが,これまで取水口と取水トンネルとの接続工事は,取
水口の最頂部を海上に出して設置した後,取水口側から取水トンネルへ向けて海底を掘下げていました。この
工法では,海水の浸水防止や波浪に耐えるため構造物が大型となり,波浪等の天候に左右されやすく工期が長
期化していました。
そこで,あらかじめ陸上で作成した取水口ユニットを台船で運搬し海底に据付け,作業用筒を使った空気圧
入方式により海底面にドライな空間を作って海水浸水防止を確実に行い,その空間に向かって陸域から続く取
水トンネル側から堀上げる工法を考案しました。これにより,取水口構造の小型化が図れ,海域作業も削減さ
れたことにより,大幅な工期短縮とコスト低減を実現しています。
−成果とその知財化について−
当社グループでは,広く社会とのコミュニケーションを図り,事業活動等を通じて承ったご意見・
ご要望等
「お客さまの声」
に誠実に対応するとともに,業務へ反映させることにより,一層のサー
ビス向上に努めています。
今回の特集では,お客さま意識調査やこれまで寄
せられた多くの
「お客さまの声」
の中から,ご意見・
ご要望の多い主な6つのテーマを選定し,そのテー
マに関連のある研究・開発等の成果とその知財化に
ついてご紹介します。 コスト低減に向けた取り組み
原子力発電の安全確保の取り組み
安定供給に向けた取り組み
省エネルギー普及・促進および
再生可能エネルギー拡大への取り組み
お客さまへのサービス向上の取り組み
環境問題への取り組み123456
【今回特集でご紹介するテーマ】
取水口取り付け工程
空気圧入
(作業用筒)
取水トンネル側から取水口へ堀上げ
排水
(作業用筒)
取水トンネル 堀上げ
・接続工事は海底下のため,海上の天候
によらず作業が可能
・取水口側に作業空間が不要なため大型
構造物が不要
(取水口が小型化)6地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
【事例2】分散型監視制御システム(特許第4386955号)
時々刻々と変化する電力の需要に応じて,
水力発電所や変電所の運転を遠隔で監視・
制御するために,11のエリアに分けて制
御所を設置しています。
制御所の監視制御システムは,これまで,
エリアごとに各々独立運用していたため,
エリアの境目等に設置された設備の更新が
行われた場合は,関係する全ての制御所の
監視制御システムに対してデータメンテナ
ンスを実施する等,多大な作業調整やコス
トを要していました。
そこで,メンテナンスサーバを導入し,
各々の制御所が保管していたデータを一元
化するとともに,設備単位ごとに
「使用先
情報」
を作成し,データ更新等を一括実施後,関係する制御所へ更新データを配信・自動反映することで,コス
ト低減と信頼度の向上を図りました。
【事例4】光ケーブルクロージャ点検装置(特願2009‐263311) 点検対象
(光ケーブルクロージャ)
地上高約6m
モニタ部で確認
電力設備の保守・運用や保安のために,変電所間等を光ケー
ブルで結んでいます。光ケーブルを接続したり分岐するために
は,光ケーブルクロージャ
(配線用の箱)
が必要ですが,このク
ロージャは,高所に設置されており,点検を行う場合,地上か
らは底面および側面しか確認できないため,全体の点検を行う
場合には電柱に昇る必要があります。
この電柱昇降には転落等の危険が伴うほか,高所作業車を使
用する場合は,車両通行止め等の交通規制を伴い,お客さまに
ご迷惑をお掛けすることがありました。
そこで,クロージャ全体を地上から目視点検できるようにケ
ーブルの地上高を測定する器具に横転防止等の改良を行い,その上部にカメラを取り付けた点検装置を開発し
ました。本装置は,カメラの揺れを防止して安定した画像を撮影する機能も有しています。本装置の導入により,
高所作業車費用を削減できるうえ,少ない人数で安全かつ効率的に点検できるようになりました。
【事例3】配車決定装置および方法(特願2010‐23242)
電線や電柱装備品等の配電工事用資材は,物流センターで管理し,各所へ配送しています。その重量・荷姿(寸法・形状)
は多様であるため,従来,輸送に最適な車種および台数を決定する作業に多大な労力を要していました。
そこで,業務効率化の一環として,多様な物品を輸送する車種および台数を効率的に決定する装置および方
法を開発・導入しました。輸送する資材
(往路・復路)
の数量を本装置に入力することにより,重量・荷姿を自
動集計し,最適な輸送車種および台数を効率よく決定することができます。車種選定において,予め輸送先ご
とに乗り入れ可能な車種を登録することにより,輸送先の条件にあった車種を効率よく決定することができます。
駐車場DB
広島制御所 広島北制御所 益田制御所 松江制御所 倉吉制御所
津山制御所
岡山制御所
倉敷制御所
尾道制御所
DB管理装置
周南制御所
宇部制御所
系統運用IP網
本装置モニタ部に映し
出された光ケーブルク
ロージャの上部外観
本装置モニタ部に映し
出された光ケーブルク
ロージャの上部外観
資材輸送指示
配電設計
データ
輸送資材の種類・
数量を受信
受信部
配給先への車種
を算定
車種決定部
輸送資材の荷姿・
重量を算定
資材抽出部
輸送資材の重量
を合計した総重
量と荷姿を算定
算出部
総重量と荷姿に
より輸送車の車
種を算定
車種抽出部
算出された車種
の荷台に抽出さ
れた資材を配置
し,算出された
車種の荷台に配
置できない場合
は,追加する輸
送車の車種,台
数を算定する。
決定部 荷姿計算表
配車指示
車両運行
集計表
・一般材料データ
・庫入データ
(手書分)
・配給先駐車可能データ
(2t車or4t車or10t車)
車種DB
・車種最大積載データ
(積載重量,荷台)
配置DB
・車種の荷台配置データ
資材DB
・資材の荷姿
(長さ・幅)
データ
・資材重量データ
配車決定装置の概要
分散型監視制御システム
本装置による点検実施風景地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー 防波壁強化後のイメージ図
津波発生時における発電所の主要設備への浸水を防止するため,発電所構内の海側全域の防波壁を海抜15m
に強化しています。
防波壁は,既存の護岸の構造や発電所のレイアウトを考慮したうえで,耐震性,耐波性に優れた合理的な構
造としています。1,2号機北側の防波壁については,既設護岸の背後に発電所設備が配置されているため,限ら
れたスペースに設置する必要があったことから,多重鋼管杭
(3〜4重管,最大径φ2,200mm)
と鉄筋コンクリ
ート壁を一体化した構造を採用しています。また,3号機東側の防波壁については,鉄筋コンクリート製の逆T
型擁壁を,岩盤まで建て込んだ鋼管杭
(φ1,300mm)
で支持した構造を採用しています。
【事例】防波壁の強化(米国特許出願済み
〔2012年11月〕)原子力発電の安全確保の取り組み2●くろまる 資源の乏しい我が国にとって,エネルギーセキュリティー確保は変わらぬ大きな課題であり,電
力の安定供給および地球温暖化防止のためにも原子力発電は必要であると考えています。
原子力発電所の運転にあたっては,安全・安心が大前提であり,今後も島根・上関の両地点にお
いて新たな知見にも適切に対応し,皆さまに安心していただけるよう,安全確保に万全を期してい
きます。
3号機
2号機
1号機
堤防
防波壁
(海抜15m)
1,2号機鋼管杭建て込み工事の状況
(2013年内完成予定)7●くろまる 発電・ネットワーク設備の保安確保・信頼度維持が地域社会の安心の基盤となることから,中長
期的な展望に立った設備形成・保全を,計画的かつ着実に進めています。
また,電気は貯蔵できないという特性があるため,電力会社では,消費される電気の量に合わせて
発電所で電気を作り,送電線や配電線を通してお客さまにお届けしています。この電気の流れを一貫
して管理・運用することで,適正な電圧や周波数を維持し,質の高い電気を効率的にお届けしています。 地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー 安定供給に向けた取り組み3【事例1】ボイラ高温蒸気配管溶接部の統一余寿命評価法(特許第4054834号ほか)
溶接部検査箇所
発電者の発電量と需要者の電力消費量を一定の範囲内で常にバラ
ンスさせる必要があり,これが崩れると周波数が変動し,電力品質
が損なわれます。
そのため,社会の動き,気象条件等を基に,月間・週間・翌日の
需要を予想し,必要な発電量の計画
(需給計画)
を策定しています。
当日は,それらの計画に基づき,天候・発雷・需要の変動等を考慮
して,より安定的・効率的な電気をお届けしています。
この計画の策定には,新電力
(会社)
を含めた膨大な情報処理が必
要となります。短時間かつ正確に計画を策定するため,新電力から
の需要および供給を表す複数の計画を電子ファイル形式で取得し反
映する機能を開発しており,この機能を含め効率的に需給計画が策
定できるシステムを構築しています。
【事例2】需給計画管理支援システム(特許第4485467号)
エネルギア総合研究所
(発電・材料担当)
西田 秀高
基礎学力+経験値を最高レベルに向上させ,もっと進化したい!
常に最高のパフォーマンスを発揮するために,日頃から研究に必要な数学,材料力学,
英語等の基礎学力の向上や,色々な分野の人との交流による経験値の増大を心がけてい
ます。
人的交流や情報交換等を通じて経験値を増大させ,その上で基礎学力を最高レベルに
向上できれば,様々な現象を組み合わせて新しい概念を構築できると思います。例えば,
ノーベル賞受賞者の山中教授が開発されたiPS細胞も,多彩な人脈と必要な遺伝子を24
から4つに絞り込んだ確率論等の結合による卓越した研究成果だと考えています。また,自分自身を振り返
って見ても,本手法の開発は,自分なりに基礎学力を向上させ経験値を増大させた成果だと思っています。
最近,エネルギー事情から火力発電所の運転時間が増え,ボイラや蒸気タービンの経年劣化が急速に進
んでいます。しかし,本手法を使えば長寿命化を図ることができます。コスト削減と安全性を両立した本
手法が,世界標準になることが私の夢です。
Voice! 開発者から一言1
(ボイラ高温蒸気配管溶接部の統一余寿命評価法) 従来の方法では,火力発電所の蒸気配管溶接部は,その余寿命を高い精度で診
断することが困難なため,蒸気配管の計画的な補修判断が難しく,想定外の蒸気
漏洩により発電所を停止する等,電力品質に影響を及ぼすことがありました。
そこで,金属内部の損傷状況も診断上考慮することにより従来に比べ高精度に
診断できる,日本で初めてとなる溶接部全域の統一余寿命評価法を開発しました。
開発した評価法は,配管の補修時期を明確に設定できるため,計画的な補修を
通じて設備の機能維持および信頼性確保が図れるほか,長寿命化により補修コス
ト削減や効率化の推進に繋がる画期的なものです。発電設備の点検の確実な実施,
施工後の設備状態の的確な把握等で活用しています。
気象条件ほか
新電力の需給計画
他社との送受電予定
発電機運転条件
電力設備の作業予定
(発電所等での点検等)
需給計画支援システム
発電量を計画
需要予想
需給計画の策定フロー
入力項目8地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
【事例4】災害復旧支援システム(特許第4637729号)
自然災害発生時には,被害状況を速やかに把握し,被害の大きい地域に対し重点的な復旧作業要員の配置お
よび協力企業への応援要請等,被害規模に応じた復旧体制を早期に確立する必要があります。
そこで,携帯電話を利用し,被害設備状況や巡視に関する情報を現地からのデータ送信でシステムに自動登
録し,営業所で被害規模を把握する等,災害復旧を支援するシステムを導入しています。
支援システム 運用イメージ
被害設備登録
(現地)
被害規模把握
(営業所など)
携帯電話
被害設備
登録・送信
被害設備
情報
災害復旧
総合システム 災害復旧を支援
流通事業本部 尾道電力所
(発変電課)
布上
健一郎
現場目線での要望に対し皆の力を結集すれば,多大な成果が得られる! 「第59回電気科学奨励賞」
受賞者は,大半がメーカー,大学等の研究者の方々で,
内容も非常に高度かつ最先端のものが多かったように思います。
その中で私達が開発した装置は決して最先端ではありませんが,現場目線で真
に求められているものを開発したこと,また,開発の過程において,現場ならで
はの事象に対して様々な解決策を装置に盛り込んだことが,高く評価されたもの
と思っています。
必ずしも高度な専門知識がなくても,現場目線での要望を吸上げ,それに対して皆の力を結集すれ
ば,多大な成果に繋がることを示すことができたものと考えています。これからも,今回の受賞を励
みとして,現場目線と改善意識をもってさらに意欲的に業務に取り組みたいと思います。
Voice! 開発者から一言2
(遮断器一括監視装置) 電気設備に故障等が発生した場合,
設備の保護や影響範囲が広がらないよ
うに,該当の線路を電力系統から切り
離すために発電所や変電所では遮断器
を設置しています。遮断器は,このよ
うな事故時や作業時を除き頻繁には動
作しないため,長期間動作していない
状態から動作させた場合に装置内の潤
滑剤が固まり,動作不調が起きること
があります。
この不調兆候の把握には,正常時の
動作特性を記録しておき,
「正常時の
動作」と「長期間動作していない状態からの動作」
との特性を比較することが早期発見に有効ですが,これまでは,
遮断器1台ごとに監視装置を設置する必要がありました。
そこで,変電所内に複数台設置された全遮断器の動作特性を一括して測定可能な
「遮断器一括監視装置」
を開
発し,本装置1台で監視することにより効率的に不調兆候を発見できるようになりました。
装置接続例
遮断器一括監視装置
本体
電源
LANポートCB
その他
電流変化
遮断器一括監視装置
投入用
蓄電池
整流器
(直流110V)
直流電源装置 制御盤
動作
制御用CBCBCB制御用CT 投入用CT
【事例3】遮断器一括監視装置(特許第4526588号ほか)
平成23年度第59回電気科学奨励賞受賞9地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
配電線の作業では,停電区間を縮小する場合,無停電工法機
材のケーブル等を接続するために,配電線の絶縁被覆を剥ぎ取
って芯線を露出させます。作業終了後,芯線の露出部分を再度
絶縁するために,絶縁電線補修カバーを取り付けます。
これまで,この取り付け作業を間接活線工法で行う場合,通
常2人の作業者が必要でした。さらに高所作業車を使用できない
等作業環境が厳しい場所では,作業者1人で取り付け作業を行わ
ざるを得ず,負担が大きく時間も要していました。
そこで,安全かつ正確に,また1人で短時間に取り付け可能
な絶縁カバー共用取付け治具を開発し,配備しています。
エネルギア・マスターによる指導の様子
知左ヱ門博士の知財こぼれ話!
お客さまからの信頼を得るため,
技術・技能を確実に継承する取り組みを行なっています!
『豊富な経験と高い技術・技能の証: エネルギア・マスター 』
とは...
エネルギア・マスターの
シンボルマーク
(上)は 中国電力(株)の登録商標です。 (商標登録番号
第5382014号) 2010年度から,電力設備の運転,保守,建設等の技術分野における技術・
技能継承への取り組みの一つとして,
「高度技術・技能者認定制度」
を導入
しました。
この制度に基づき,経験豊富で高い技能を保有す
る社員を
「エネルギア・マスター」
に認定し,社員の
技術・技能の向上や継承に取り組んでいます。 「エネルギア・マスター」
は,シンボルマークを作業
服等に貼り付け,常時表示した状態で業務を行います。
【事例6】絶縁カバー共用取付け治具〔(株)
中電工,大東電材
(株)〕(特願2009‐81065) 平成24年度第57回澁澤賞受賞
【事例5】間接活線工法・機材の開発(特許第3709104号ほか)
配電設備の改修作業等を行う際には,停電範囲を最小とするため,配電線に電気を流したまま
(活線)
で行う
場合があります。感電を防ぐため,従来,作業者がゴム手袋等を身につけ電線を直接触る直接活線工法により
実施していましたが,近年では,操作棒
(間接活線工具)
を用いて配電線から離れた位置で作業を行う間接活線
工法の適用に取り組むとともに,この工法の更なる安全性・作業性向上に向け,積極的に技術開発を行ってい
ます。
特許化された開発成果の一例
間接活線工法による作業風景
間接工法用
シートはさみ 防護管
脱着装置
従来作業状況
絶縁カバー共用取付け治具 10地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
省エネルギー普及・促進および再生可能エネルギー拡大への取り組み4●くろまる 省エネルギー・節電対策の強化が図られる中,
「省エネルギー・省CO2・省コスト化」
に関するお客
さまニーズに沿った高効率機器の推奨や電気の効率的な利用方法のPR等,エネルギーの効率的利用
の拡大に向けた取り組みを着実に進めています。
【事例1】省エネルギー診断ツール(特許第4498203号ほか)
【事例2】含水性バイオマスの高温高圧ガス化技術(特許第4719864号ほか)
開発者から一言3
(含水性バイオマスの高温高圧ガス化技術) エネルギア総合研究所
(再生可能エネルギー利用技術担当)
尾山 圭二
未利用資源の利用拡大で,資源開発と地球温暖化対策を同時に達成する! 「バイオマス」
はその発生分布が広範囲であり,中でも
「含水性バイオマス」
は水
分が多く運搬等が非常に困難ということから,原料収集の段階で大変苦労してい
ますが,
「含水性バイオマス」
は,資源の乏しい我が国にとって未利用エネルギー
である廃棄物系資源の利用拡大という観点や,地球温暖化対策という観点から更
なる普及拡大が必要な技術であると確信して研究・開発に取り組んでいます。
Voice!
含水性バイオマス
(家畜排泄物や食品残渣等)
気液分離器
灰分 CH4+H2+CO2
排水
高温高圧ガス化反応器
(22.1MPa,374°C以上)
高温高圧ガス化フロー
パイロッ
ト試験装置
お客さまの省エネルギー・環境負荷低減等のニーズにお応えするため,お客さま設備のエネルギー消費状況
を計測・分析し,運用改善や高効率システムの提案を行っています。通常お客さまが使用される,蒸気・ガス・
燃料は計量器の指示数を検針することで管理されています。しかし,その計量器では,省エネルギー診断サー
ビスに必要な単位時間ごとの消費量の推移
は把握できませんでした。
そこで,省エネルギー診断サービスに必
要となるお客さま設備のエネルギー消費量
を計測し,記録する装置を開発しました。
開発した装置は,レーザー光またはデジ
タルカメラにより計量器の指示数を連続的
に記録することを可能にしました。また,
装置の取り付け・撤去にあたっては,お客
さま設備を停止することなく作業可能です。 「バイオマス」
は,家畜排泄物や生ゴミ,木くず等の動植物から生まれた再生可能な有機性資源です。当社では,
「バイオマス」
のうち含水率が70%以上のものを
「含水性バイオマス」
と定義付け,高温高圧ガス化技術の研究
対象としています。 「含水性バイオマス」
の多くは,家畜排泄物や食品残渣等であり,これまで水分が多い原料はエネルギー利用
に適さないと言われてきましたが,この
「含水性バイオマス」
を有用なエネルギーへ変換する高温高圧ガス化技
術は,再生可能エネルギーの有効活用上,大変有望な技術です。
最新の研究では,焼酎残渣の高温高圧ガス化技術への適用性を,
パイロット試験装置により検証しています。 11レーザー,超音波方式
デジタルカメラ方式
●くろまるレーザー光を指示計の針が
通過するポイントにあて,
反射強度の違いにより,時
間あたりの回転数を計測し
ます。
●くろまる各種液体の配管内流量を超
音波で計測します。 レーザーセンサー 超音波流量計
センサー
レーザーアンプ
(4台)
シーケンサー
メモリーカード超音波流量
表示部
メータの数字をカメラで撮影し,画像認識
技術により,数値を読み取ります。地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー 【事例3】ジャトロファ油を使用した発電技術(特願2009‐87073号ほか)
知左ヱ門博士の知財こぼれ話!
屋内配線用ブレーカの専門メーカーとして新時代を担う技術を深め,
新商品開発で常にパイオニアとして業界をリードしてきた企業です! 『テンパール工業
(株)』とは...
昭和29年,
「屋内配線用ブレ
ーカ」
の発明により,発明協
会50周年記念発明賞を受賞
(特許第187654号)
テンパール工業
(株)
(広島市)
は,昭和26年,屋内配線用ブレーカ
(商品名:テンパール
スイッチ)
の製造・販売を業とする西美電気工業
(株)
として設立され,昭和37年にグルー
プ企業となりました。
テンパールスイッチの商品名は,当時の電気工作物規程に定められたブレーカの具備す
べき
「テン」(10)の条件をすべて満足していることと,バイメタル形の屋内配線用ブレー
カは温度
(TEMPERATURE)
で動作することから,頭文字をとり
「テン」
(TEM)
とし,また「テン」
の条件のそれぞれに有している優れた内容を宝石である真珠
「パール」
(PEARL)
になぞらえ,この2つをつないだ
「テンパール
(TEMPEARL)」から名付けられました。昭
和40年には,社名もその名称を冠したテンパール工業
(株)
に変更しています。
同社は,創業当初から屋内配線用ブレーカの分野における研究開発型の企業であり,昭和29年には,発明協会50周年記念
発明賞を,平成22年には知財功労賞
(特許庁長官賞)
を受賞しました。また,電気設備に関する日本最大級の総合展示会
「電設
工業展
(平成24年からJECA FAIR)」の製品コンクールにおいても,平成11年から14年間連続で表彰を受けています。
同社の技術開発への取り組み姿勢は,中小企業における知的財産経営の
「定着モデル」
として高く評価されており,
『中
小企業支援 知的財産経営プランニングブック
(平成23年3月:特許庁)
P58,P80』
で紹介されています。
化石燃料価格高騰を含むエネルギー問題の情勢変化を踏まえ,再生可能エネルギーの利用拡大に向けた取り
組みが必要となっています。
再生可能エネルギーのうち
「バイ
オマス」
であるジャトロファ油
(食用
に適さない南米原産の植物ジャトロ
ファの油)
を寒冷時期の日本国内で
発電用に使用するため,燃料温度の
低下防止対策を施して試験運転を実
施し,日本においても適用可能であ
ることを確認しました。
【事例4】新型住宅用分電盤 パールテクト
〔テンパール工業
(株)〕(特願2010‐278774ほか) JECA FAIR 2012 第60回電設工業展 環境大臣賞受賞
高機能の一例EV(電気自動車)
・PHEV
(プラグインハイブリッド自動車)
への対応
新型住宅用分電盤の機能
住宅用分電盤には,安全・安心といった基本性能だけではなく,太陽光発電や電気自動車等への対応,および
住宅のエネルギー管理
(HEMS機能)
等,お客さまの多様なニーズにお応えする電気のコントロールセンターとし
て,高度な役割が求められています。さらに,施工時における省資源化や施工性の向上についても期待されてい
ます。
このようなニーズにお応えするため,分電盤の構造,主幹
ブレーカ,分岐ブレーカ等あらゆる部分を見直し,機能を拡
充させるとともに省資源等にも貢献する住宅用分電盤の開発
を行っています。
EV・PHEV普通充電回路では,
連続して大きな容量の電流が流れ
るため,専用回路が必要です。
「パールテクト」
は,テンパール工業
(株)
の登録商標です。
(商標登録番号 第5526985号)
[省施工]
・部品の共通化により施
工現場で扉の有無等の
仕様変更が容易
[デザイン]
・シンプルでスタイリッシュなデザ
インであらゆる壁面にフィット
[高機能]
・HEMS機能
小電流計測用小型高性
能CT内蔵
・ピークカット機能
電気の使い過ぎを制御
・EV・PHEV対応
・太陽光発電対応 等
ジャトロファ油,種子
実証試験装置
(内部) 燃料タンク
燃料温度の低下防止対策12地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
お客さまへのサービス向上の取り組み5●くろまる お客さまの多様なニーズにお応えすることを基本に,良質でご満足いただける商品・サービスの
提供等,お客さま本位を徹底した事業活動を推進しています。
【事例1】カスタマーセンターシステム(特許第4553211号ほか)
カスタマーセンターでは,お客さまからの各種
お申し出を受け付けています。
カスタマーセンターシステムは,電話・来社・
メール・FAX等,異なるルートによるお客さまか
らのお申し出情報等の受付履歴・対応履歴を一元
的に管理するシステムです。
また,各営業所で個別管理していた停電に関す
る情報を統合するシステム等,他にも関連する発
明が複数あり,これらの発明はカスタマーセンタ
ーシステムに実際に搭載され,スムーズなお客さ
ま対応に役立っています。
開発者から一言4
(カスタマーセンターシステム) エネルギア総合研究所
(知財権利化担当)
二宮 盛一
知財活動は,社員にとって自己実現の大きなチャンス!
カスタマーセンターシステムは,大規模で構造も複雑だった上に,開発期間も同規
模のシステムに比べ半分以下だったため非常に大きなプレッシャーを感じていましたが,
完成後,自分の頭の中だけにあった画面や色々なプログラム等が現実にトラブル無く
動作した時は,本当にホッとしました。さらに,オペレータの方から,
「こんな機能が
欲しかった」
とか,
「断然使いやすくなったね」
という声を聞いた時は最高でしたね!
知財創出の場として,企業は大変恵まれた環境だと思います。個人では利用し難い
機器を利用できますし専門家の意見も十分聞くことができます。また,自分が考えた発明を現実に開発で
きるため,社員の反応をユーザーの生の声として聞くこともできます。そう考えると,知財活動は社員に
とって自己実現の大きなチャンスだと捉えることもできますよね。
Voice!
【事例2】終雷通報システムおよび終雷通報方法(特許第4526471号)
落雷の観測・予測情報によ
り発雷初期通報が発生し
通報を受け取った後、
通報時間帯内に雷が観測されなくなったケース
9時 10時 11時 12時 13時
エリア内観測
通報
発雷初期通報
発雷初期通報が成功した後に、雷が観測されなくなった時間が終雷
通報確認時間
(60分)
を超えた場
合に終雷通報される。 落雷が発生すると,電力供給に支障をきたし、工場の生産ラインやコンピュータシステム等が停止する恐れがあ
るため,補助電源
(バックアップ電源)
の確保や生産計画の変更等の雷対策が必要となる場合があります。当社では
落雷予測・把握を行っており,この情報を雷対策が必要なお客さまに提供しています。
お客さまにおける雷対策の開始は,当社からの雷発生の連絡により判断が可能ですが,雷の終息情報については
情報提供を行っていなかったため,雷対策解除の判断が困難でした。そこで,お客さまの指定されるエリア内に雷
が観測・予測されなくなった場合に,お客さまご指定の電話
番号へ自動的に雷の終息を通報するシステムを開発しました。
本システムでは,お客さまの要望や予防措置の内容等に応
じて,雷が観測・予測されなくなった時から実際に通報する
までの時間を任意の時間間隔に設定することができます。例
えば,高い安全性を確保したいお客さまに対しては通報まで
の時間間隔を長く設定できる等,柔軟かつ適切な雷対策が可
能となります。
お客さま
カスタマー
センターシステムを
活用した
迅速・確実な
業務連携
高度かつ
均質な
お客さま対応
営業所
電話 来社
FAX インター
ネットメール・お客さま基本情報・お客さま対応履歴・FAQ・お客さまの声・停電情報 等
一元管理
カスタマーセンター
【岡山・広島】
カスタマーセンターシステムを活用したお客さま対応フロー
終雷通報確認時間を60分としている場合の通報パターン 13地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
【事例3】Web遠隔監視システム〔(株)
中電工〕
(特許第4959312号)
開発者から一言5
(立体CGによるリフォーム提案システム) (株)
中電工 山口 亮,板倉 洋子
快適な生活・事業環境を提案する高付加価値のサービスを開発!
《快適生活提案室
『く・る・る』
とは》
本ソフトは,お客さまニーズに基づく高付加価値のサービスとして開発し,
主に快適生活提案室
『く・る・る』
での提案業務に活用しています。
現場写真を基に
「photo planview
(フォトプランビュー)」で作成した平面図
を,立体CGソフトに取り込み,CGイメージを作成します。CGイメージを
使用することで,従来の専門的な設計図だけでは難しかったリフォーム後の
イメージが浮かびやすく,臨場感があるとお客さまから大変好評をいただい
ています。システムキッチン等の水廻りはもちろん,建物の屋内外を問わず幅広くご提案可能です。
Voice!
【事例4】立体CGによるリフォーム提案システム
「photo planview
(フォ
トプランビュー)」 〔
(株)
中電工〕
(特許第4809746号)
ライフスタイルやライフステージの変化に応じて,より快適な生活のためのリフォームに対するニーズは高ま
っています。しかし,一戸建て住宅におけるリフォーム工事では現況の建築図面がないことが多く,室内の採寸
のためにお客さま宅を何度も訪問する必要がありました。
そこで,お客さま宅の室内をデジタルカメラで撮影し,その画像から平面図の作成や細部の採寸を行うことが
できるソフトを,ソフトキューブ
(株)
の技術を基に開発しました。
このソフトを使用することで,室内の採寸に時間をかけずに平面図を作成することができ,お客さまから写真を
メール等で送信していただくだけでも,
図面を作成してリフォームの提案を行う
ことができるようになりました。また,
お客さま宅を立体CG化し,設備・色等
を自由に変更することで,どんな空間に
変わるかリフォーム後の様子をよりイメ
ージしやすくなりました。
板倉さん
山口さん
平面図作成フロー
住まいの工事に特化した
(株)
中電工のお客さまセンターです。お客さまに気軽に立ち寄って聞いてほしい...
『聞く』,映像による提案を見てほしい...
『見る』
,快適な住まいへのイメージや思いを創ってほしい...
『創る』
という思いから,名
づけられました。
快適生活提案室
『く・る・る』
:住所 広島県広島市西区上天満町1番15号 TEL(082)
503‐0613
『く・る・る』は,(株)
中電工の登録商標です。
(商標登録番号
第5214948号ほか)
「photo planview」は,(株)
中電工の登録商標です。
(商標登録番号 第5181618号)
写真撮影・画像取り込み
歪み補正
3次元空間軸の指定
壁面・建具面の指定
基準寸法の指定
建具データベースの指定
平面図の出力
高圧受電のお客さまは,受電設備や発電機等の電気設備を保有しており,その運転状態を監視しています。
電気設備が遠隔地にある場合や夜間等で不在の場合でも,
故障等の緊急時には対応する必要があるため,事業所にい
なくても状況を把握する必要がありました。
そこで,パソコンやスマートフォンで監視・制御できる
Web型の遠隔監視制御装置を開発しました。インターネ
ットVPNを採用しているため,システム構築が非常に安
価であり,システムの拡張や機能強化が柔軟にできます。
また,緊急性の高い監視情報を優先してオペレータ等に
伝達する機能を備え,迅速な設備管理ができます。
Web遠隔監視システムの構成
お客さま 設備1
お客さま 設備2
監視センター
モバイルPC
スマートフォン・携帯電話
※(注記)スマートフォン上での
設備操作も可能です
デジタルカメラ画像
平面図
現場で写真
を写すだけ!14地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
環境問題への取り組み6●くろまる 地球温暖化等環境問題への取り組みとして,クリーンコール技術等の研究・開発を行い火力発電
所から排出されるCO2の低減を目指します。また,石炭灰等廃棄物の有効活用製品や屋上緑化システ
ム等の開発を通じて,循環型社会の形成に寄与します。
【事例1】石炭ガス化に関する技術開発
(特願2011ー92606ほか)
供給安定性,経済性に優れる石炭火力を将来にわたって活用していくため,
「高効率化」と「クリーン化」
に資する
技術開発として,究極の高効率発電技術である石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC)
の実現を目指しています。また,
IGFCの基盤技術となる酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素吹IGCC)
では,従来の石炭火力では利用が困難であった亜
瀝青炭等の低品位炭にも適合するという燃料調達面での優位性も有しています。
第1段階として酸素吹IGCCの実証を行った後,第2段階では当該設備にCO2分離・回収設備を追設して実証試験
を行います。さらに,第3段階として燃料電池を組み込み,最適なIGFCシステムの実証を行います。
実証試験スケジュール
実証試験システムの概要 実証試験設備配置図
【事例2】屋上緑化システム(特許第4343048号ほか)
培養液循環ポンプ
栽培槽
培養液タンク
屋上緑化システムの実証試験装置 実証試験装置の概要
従来の屋上緑化では,ビルの屋上に貯水槽等が設置されている場合,緑化できる場所が制限される等問題があ
りました。
そのため,建物の屋上面をつる性植物で覆う屋上緑化システムを開発しました。
このシステムは,建物の屋上に支柱を立て,その上につる性植物
(ヘデラを採用)
を植生・繁茂させて屋上全体
を覆い緑化するもので,つる性植物の栽培方法を養液循環式の水耕栽培方式としたことにより,軽量化が図れる
とともに夏場の水切れによる栽培植物の枯死等のトラブルを防ぐことができます。 15地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
地球温暖化の防止に向け,CO2排出量削減はあらゆる産業において重要課題となっています。建設材料である
コンクリートは,セメントの製造過程で大量のCO2が発生するため,このCO2排出量削減が望まれています。
そこで,鹿島建設
(株)
および電気化学工業
(株)
と共同で,CO2排出量を実質ゼロ以下にできる世界で初めての
コンクリート
「CO2‐SUICOM」
を開発しました。
「CO2‐SUICOM」
は,CO2排出量を実質ゼロ以下にできること
に加え,石炭灰の有効利用拡大に寄与し,さらに火力発電所のCO2排出抑制にも繋がる画期的な環境配慮型コン
クリートです。
※(注記)1:CO2‐SUICOM:CO2‐Storage Under Infrastructure by COncrete Materials
CO2‐SUICOM
(シーオーツースイコム)
は,鹿島建設
(株)
,電気化学工業
(株)
と当社の登録商標です。
(商標登録番号
第5485935号)
※(注記)2:リデュース・リユース・リサイクル推進協議会
行政・消費者・産業界等が連携してリサイクルを推進することを目的に,平成3年9月に
「リサイクル推進協議会」
として設立。平成14年6月に,これから
の資源・廃棄物問題を解決するためにはリサイクルのみならず,3Rを通じた循環型社会の構築が必要であるとの認識を踏まえ,
「リデュース・リユース・
リサイクル推進協議会」
と改称し,3R推進のための啓発・普及活動を実施しています。
【事例3】環境配慮型コンクリート
「CO2‐SUICOM」
※(注記)1(特許第4822373号) 平成24年度リデュース・リユース・リサイクル推進協議会※(注記)2
会長賞受賞
福山太陽光発電所
環境配慮型コンクリート
「CO2‐SUICOM」
は,従来製品と同等
の品質を確保できることから,本技術を用いた舗装ブロック等を,
福山太陽光発電所
(当社初のメガソーラー発電所,2011年12
月に営業開始,最大出力は3,000kW)に採用しています。
舗装ブロック
変電所敷地・境界ブロック・フェンス基礎ブロック
PR施設・舗装ブロック・フェンス基礎ブロック
開発者から一言6
(屋上緑化システム) エネルギア総合研究所
(環境技術担当)
江木 和泉
職場における良いコミュニケーションが閃きを生む!
分析結果が予想と違って何日も悩みこんだりと,研究業務には独特の苦労もあ
るのですが,当担当は明るく楽しく仕事をするのが信条で悩みながらもみんなで
ワイワイ楽しく取り組んでいます。特にマネージャーが前向きに取り組める雰囲
気を作ってくれており,どんな話題でもしっかり話を聞いてくれるので,若手の
私たちも前向きに取り組みやすいですね。
研究も知財活動も同じだと思いますが,良い発想は会議の場からはなかなか生ま
れてきません。普段の
「思い込み」
から一歩踏み出すアイデアが,何気ない会話の中からポッ!と閃く...。
こんな自由な雰囲気での前向きな会話が効果的だと感じています。そういう意味でも,職場の雰囲気
というのは,とっても大切だと思います。実は生産性も上がるのかもしれませんね。
Voice!
CO2‐SUICOMの開発コンセプト
福山太陽光発電所PR施設に設置した環境配慮型コンクリート16地域のお客さまの期待に応える取り組みー成果とその知財化についてー
【事例4】Hiビーズ
(特許第3695968号ほか) 平成20年度リデュース・リユース・リサイクル推進協議会会長賞受賞
環境問題への積極的な取り組みの一環として,2012年度末までに,排出する廃棄物の再資源化率を99%以上
に高め,
「廃棄物ゼロ・エミッション※(注記)」の実現を目指しています。このうち,廃棄物発生量の69%
(2011年度実績)を占める石炭灰を新たな土木材料として有効活用する技術の開発に取り組んでいます。
Hiビーズは,石炭灰,水,セメント等を混合し
10mm程度の大きさに造粒した海砂の代替材で,
護岸工事や水質・底質改善等幅広い活用が期待さ
れています。その効果は,環境省の平成22年度環
境技術実証事業により,第三者機関によっても実
証済です。
また,Hiビ‐ズを詰めた柱や溝を干潟に設置し,
干潟泥内の水の循環を促し,酸素の供給量を増や
すことで干潟の泥質改善が可能です。2004年度
から,広島大学・国土交通省太田川河川事務所と
の連携のもと,広島市内を流れる旧太田川および
天満川で実証試験を実施しています。
※(注記)ゼロ・エミッション
ある企業から排出される廃棄物を別の企業の原料とし
て使う等して,トータルで廃棄物をゼロに近づけてい
く活動
【事例5】干潟造成用薄層撤き出し装置および工法
〔中国高圧コンクリート工業
(株)〕(特許第4693489号)
荒廃した干潟の復元や海底の底質改善のために海底に砂を撒いていますが,従来工法では,薄く撒くことができず,ま
た均一にするために砂をならす作業が必要でした。そこで,砂を一定量ずつ排出できる薄層撒き出し装置および工法を開
発しました。本装置を台船に設置し,台船の移動速度とベルトコンベアの回転速度を調整することで,撒き出す砂の厚さ
を調整することが可能となりました。薄く撒くことにより,アサリ等の底生生物にもやさしく,軟弱層への砂の潜り込み
も少ないため使用する砂の量も少なくすることが可能な工法です。
Hiビーズ覆砂によ
り珪藻類が繁茂
薄層撤き出し装置を搭載した台船
海砂代替材Hiビーズ
石炭灰活用商品等購入者
石炭灰有効活用事業 石灰石粉末等製造・販売事業
火 力 発 電 所
お 客 さ ま
石炭灰
技術提案 販売・技術指導 販売
石灰石原石購入
石膏
(ゼネコン・建材会社・生コン会社・二次製品製造工場
ほか)
(官公庁など)
工事発注者
●くろまる石炭灰活用商品の製造・販売
●くろまる石炭灰有効活用のコンサルティング
●くろまる石灰石粉末の製造・販売
●くろまる石膏活用商品の製造・販売 17知財戦略推進の基本理念
知財戦略推進の基本理念1[グループ経営5ヵ年ビジョン]
人と技術の力で
事業本部等
『創造』
新たな価値を 設備ビジョン
人材育成ビジョン
研究・開発戦略
各事業本部方針 等
質の高い特許出願 特許登録
『信頼』
皆さまから
社会の発展に貢献
『成長』
継続的に
取り組み成果
特 許
営業
秘密
実用
新案
知財で下支え
一般電気事業者間を含めたエネルギー競争環境の激化が進むなか,競争優位の源泉となるものは,
保有している企業のみがコントロールできる知的財産であり,それを生み出す人材と考えています。
当社グループはエネルギーサービスを中心にお客さまに満足していただける質の高いサービスを安
定的にお届けすることがグループとしての変わらぬ使命と考えており,この使命は,社員全員が自ら
考え創意工夫を行うという意識が高まり,それを実践することで初めて達成できるものと確信して
います。
知財戦略においても
「創造力の豊かな人材を育成する」
こと,および創造力が豊かでモチベーション
の高い人材が
「事業運営のあらゆる場面で生み出されている技術・ノウハウ・アイデア等を確実に
知財化していく」
ということを基本理念として規定しています。
また,コンプライアンス最優先を経営の基本として掲げており,このことは知財戦略の推進におい
ても大切にしているところで,他者権利の侵害回避も基本理念の柱のひとつとして位置付けています。
創造力豊かな人材が育成され,その創造力が十分発揮されることにより
知財戦略が推進されるとの認識に立ち,人材育成と啓発活動を推進する。 123事業運営のあらゆる場面で生み出されている知的資産を知財化し,
それを活用することにより,市場競争力の強化と企業価値の向上を図る。
自らの知的資産を知財化し,それを最大限に活用すると同様,
他者の権利を尊重し,その権利を侵害することのないよう留意する。 基本理念 2008年3月に経営の基本方針として策定されたグループ経営5ヵ年ビジョンでは,目指すべき企業グ
ループ像を,
「人と技術の力で新たな価値を
『創造』
し,継続的に
『成長』
していくことで,皆さまから
『信頼』
され,社会の発展に貢献する」
と掲げ,2008年度以降の5年間を
「事業の基盤である信頼と,
価値創造の源泉となる人材基盤・設備基盤を確固たるものとする期間」
と位置付けています。
各事業本部等のグループ経営5ヵ年ビジョンに関わる取り組みの成果を着実に質の高い特許出願・
登録に結び付けていくという
知財の取り組みはグループ経
営5ヵ年ビジョンの実現を強
力に下支えしています。
グループ経営5ヵ年ビジョンと知財戦略
知財戦略推進の基本理念18知財戦略推進の基本理念 基本理念(1)について
参 考 デ ー タ
弁理士
国家試験 [知的財産管理技能検定2級]
3名
108名
※(注記)2012年11月30日現在
将来の安定供給や競争力・業務品質を支える人材面での経営基盤の強化の必要性に鑑み,人材育成
に関する経営の方向性を明らかにした人材育成ビジョンを2008年7月に策定しました。人材育成ビジョ
ンでは,人材育成が目指すものとして
「会社の発展と社員の成長をともに実現する」
こととしています。
知財戦略においても人材育成については当初から意識的な取り組みを行ってきたところで,基本理念(1)に掲げているとおり,創造力豊かな人材育成の推進を通じて知財戦略が着実に前進し,その結果とし
て会社の発展
(=企業価値の向上)
が実現されるものと位置付けて活発な知財啓発活動を展開しています。
具体的には,知財部門が主催して行う研修としてこれまでに延べ8,500名あまりの役員・社員を対象に,
各種講演会や階層別集合研修を実施してきました。研修カリキュラムは毎年見直しを行っており,
2010年度には事務系社員のための発明創出講座を新たに開始しました。集合研修以外にも,eラーニン
グ,動画教材による研修等社員が自発的に学ぶためのメニューの提供,イントラネットホームページ
での情報提供,社内メルマガの配信等様々な方法を組み合わせて知財啓発活動を行っています。これ
らに加え,社内各組織やグループ企業の主催で,知財部門が講師を派遣して行う形の研修会も行って
います。2012年度には,営業所16箇所・発電所2箇所・電力所1箇所・本社部門2箇所・グループ企
業2社で実施しています。
また,人材育成ビジョンでは重点実施事項として「『自ら考え行動する』
社員の育成」
を推進すること
としています。業務運営のあらゆる場面で工夫・改善を行い,その成果を権利化する知財戦略の取り
組みはまさに
『自ら考え行動する』
ことそのものと言えます。このため知財啓発活動においては,
「知財
を身近に感じ,あらゆる業務運営上の成果を発明として形にする意識を醸成すること
(=自ら考え
行動すること)
の意識付け」
を大きな目的として活動を実施しています。
[各 種 研 修 会 受 講 者]
[知財関連有資格者数]
経営層
ミドル層
全社員
対 象
講演会 ※(注記)1
講演会・研修会 ※(注記)1
講演会※(注記)2
各種集合研修会 ※(注記)3
eラーニング※(注記)4
動画教材※(注記)5
実施施策68 341 ― 2,675 ― ―
3,084
2004年度45 411 ― 1,747 ― ―
2,203
2005年度― ― ― 284 953 ―
1,237
2006年度― ― ― 307
1,097
1,135
2,539
2007年度― ― 200 430 972 1,893
3,495
2008年度113 872 416 7,117
7,178
8,282
23,978
合計
※(注記)1 2006年度以降は主としてイントラネットホームページやメールマガジン等による情報提供に移行
※(注記)2 社内研究発表会のプログラムの一部として臨時的に実施
※(注記)3 知財を身近に感じ,あらゆる業務運営上の成果を発明として形にする力を養成するための研修,より戦略的な権利取得・活用を担う知財キーパーソン
の育成を図る研修,日常業務に潜む知財リスクの回避を学ぶ研修等を実施
※(注記)4 知財の基礎知識を学べる内容。入門者向け集合研修の代替として活用
※(注記)5 中級者以上向けの内容。職場会議等で活用できるようイントラネットホームページで動画配信
(名) 合 計 ― ― 216 334
1,067
1,594
3,211
2009年度― ― ― 442
1,061
1,062
2,565― ― ― 484
1,028
1,398
2,910
2010年度 2011年度
(見込み)― 120 ― 414
1,000
1,200
2,734
2012年度19知財戦略推進の基本理念
研究・開発を含め事業運営のあらゆる場面で社員による知的創造が行われ,技術・ノウハウ・アイ
デアといった知的資産が生み出されているという認識のもと,知的資産を漏れなく知的財産の取得
につなげていくこととしています。
知的資産の知財化が確実に行われるよう,社員の責務として
「業務の過程等で生み出された知的資産
の知財化に努めること」
を知財規程の中で定めています。
基本理念(2)は,これまでの活動の中で特許出願件数が急速に増加しただけでなく,発明者人口
(特許出願を行ったことのある社員数)
が当社社員の約40%に相当するほどに裾野の広い活動が展開
されるという形で具現化されています。事務系社員による発明もかなりの件数に上っており,こ
れは特許分類上ビジネスモデルに分類される出願が2011年度までの累計で953件と,高いレベルにあ
ることにも表れています。ちなみに,既に登録になったビジネスモデル特許は275件
(2012年12月末
現在)
に達しており,登録率も58.6%
(2009〜2011年度の3年平均)
とビジネスモデル特許としては非
常に高いレベルにあります。
また,営業所・発電所・電力所等現業機関の社員による発明の割合が高いのも当社の特長です。
電気事業というのは,広い意味でサービス業なので,お客さまや地域に密着した現場での創意工夫は,
サービスレベルの向上という点でも極めて大切であり,現業機関の社員による発明の多さは,サービス
レベルの向上を目指して,社員が常に創意工夫を重ねていることの表れだと考えています。ここに
当社グループの知財に関する取り組みの最大の特長が表われています。
社員の知財創出活動等を顕彰する
「知財関連表彰制度」
を2009年度から始めており,2つの表彰制度
を定めています。年間4件以上の発明を行った社員を対象とする
「発明の創出活動に対する表彰」
につ
いては,受賞者が年々増え続け,2012年度は過去最多の社員100名に対して,事業所等の長から表彰状
等を授与しています。また,技術評価が高く,事業に顕著な貢献をしている発明を行った社員を対象
とする
「発明の事業貢献に対する表彰」
については,2012年度はパテントエキスパート表彰として社員
4名に対して,エネルギア総合研究所長から表彰状等を授与しています。
【事例1】防巣具の取付構造及び防巣具の取り付け方法(特許第4761961号)
間接活線工法に対応した開閉器用防巣具取付金物の開発により,安全性・作業性が向上!
●くろまる 電柱上部の腕金※(注記)1
にカラス等が巣を作ることがあり,それが停電原因
の一つとなっています。営巣を防止するため,腕金の上部に防巣具を取
り付けていますが,開閉器※(注記)2
が設置されている箇所では,間接活線工法
での取り付け作業が困難でした。
※(注記)1 電柱に電線や機器等を設置するための金物
※(注記)2 お客さまへ電気をお届けする高圧配電線の途中に設置している機器で,電気の入切を行うスイッチ
●くろまる 開閉器用防巣具取付金物を開発し,開閉器を固定する腕金にこれを取
り付けることで,間接活線工法により防巣具を容易に取り付けることが
できるようになり,安全性・作業性が向上しました。
現場での課題
特許技術の内容および効果
営巣の状態
開閉器用防巣具取付金物を
用いて防巣具を取り付け
開閉器用防巣具
取付金物
基本理念(2)について
現場ニーズから生まれた特許事例20知財戦略推進の基本理念
【事例2】制御盤の切り替え工法(特許第4256876号) 平成24年度中国地方発明表彰 広島県発明協会会長賞受賞
変電所における制御盤の切り替え時の工法を開発し,
大幅なコスト削減を実現!
●くろまる 従来の制御盤切り替え方法では,切り替え作業日に旧ケーブルを切
り離し,新ケーブルを接続する作業を数日にわたって実施しており,
切り替え日ごとに制御所システムのデータメンテナンスに係る運用コ
ストが発生しています。
●くろまる 制御盤に接続する旧ケーブルの端子を丸型からY字型に加工したう
えで,中継盤を経由して新旧制御盤を並列接続し同時運転できる状態
としておき,新旧制御盤全ての配線完了後に一回のデータメンテナン
スで切り替えする工法を開発し,大幅な運用コスト削減を実現しました。
(ケーブルの端子を丸型からY字型に加工できる器具は別途特許出願済み)
【事例3】熱交換器の配管の補修方法(特許第4841649号)
配管を切断する長さを工夫することにより,多数の配管を再利用可能に!
●くろまる 発電所では,熱交換によって排ガスから蒸気を発生させる装置として排熱回収ボイラが設置され,複数の配
管が接続されていますが,経年劣化等で奥部の配管を取り替える場合は,作業スペースの確保等のため手前側
の健全な配管も切断しています。
切断した配管は補修等に再利用していますが,適宜な長さで切断していたため切断後の配管の長さがバラつ
き,再利用に適したものは多くはありませんでした。
現場での課題
●くろまる 切断作業において,奥側から手前側に向かって切断する部分の長さが長くなるように切断することで,補修
作業等で再利用できる配管の数を増やすことが可能となりました。
特許技術の内容および効果
現場での課題
特許技術の内容および効果
監視箇所
旧ケーブルの
端子を加工新設制御盤既設制御盤屋外機器
中継端子
中継端子
旧ケーブルの端子
をY字型に加工す
ることで,旧ケー
ブルの撤去時にビ
スをゆるめるだけ
で容易に切り離し
が可能に
市販の特殊工具を
加工
作業の流れ
(1配管切断→2仕上げ→3配管取り付け) 熱交換器の交換作業
取り替え箇所
作業スペース
新管を取り付け
既設管を再利用
配管切断後
の状態
配管取り付け
後の状態
制御盤切り替え工法の概要
ケーブル端子加工用器具
取り替え箇所 奥 手前
作業スペース
1配管切断
3配管
取り付け
2仕上げ 21知財戦略推進の基本理念
参 考 40020022006008001,000
1,20002003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
[特許の出願状況/当社グループの特許出願件数実績]
[当社発明者人口推移]
初めて特許出願を行った社員
発明者人口
(累計)
出願年度 388 3882003411 7992004670 1,4692005481
1,9502006358
2,3082007374
2,682200805001,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
(名) 1,400
(件) (年度) 348
3,0302009350
3,814153 3,967
2011 2012
(11月末) 434
3,464201079920041,46920051,95020062,30820072,68220083,030
2009 2011 2012
(11月末) 3,814 3,96720103,4643882003
2012見込み
(年度) [特許出願件数の推移
(公開日ベース)]10002005
上期
2005
下期
2006
上期
2006
下期
2007
上期
2007
下期
2008
上期
2008
下期
2009
上期
2009
下期
2010
上期
2010
下期
2011
上期
2011
下期
2012
上期 2003004005006007007980
(年度) (件) 417
ガス上位
2社平均
電力上位
3社平均
(当社を除く)
中国電力
※(注記)商用検索システムを用いて集計したデータ
※(注記)電力上位3社,ガス上位2社は登録件数上位の会社を示す 22
基本理念(3)について
[特許登録件数の推移
(登録日ベース)]※(注記)商用検索システムを用いて集計したデータ
※(注記)電力上位3社,ガス上位2社は登録件数上位の会社を示す 55506065757080(%)
2007 2009 2010
2008 2011
2006 (年度) (年度) 0200100300400500600
(件) 1244972005
上期
2005
下期
2006
上期
2006
下期
2007
上期
2007
下期
2008
上期
2008
下期
2009
下期
2010
上期
2009
上期
2010
下期
2011
上期
2011
下期
2012
上期 72ガス上位
2社平均
電力上位
3社平均
(当社を除く)
中国電力
ガス上位
2社平均
電力上位
3社平均
(当社を除く)
中国電力
[特許登録率の推移]
※(注記)特許登録率=
(特許査定+特許審決)/(特許査定+特許審決+拒絶査定)
※(注記)当社が商用検索システムを用いて集計したデータ
※(注記)電力上位3社,ガス上位2社は登録件数上位の会社を示す コンプライアンス最優先を経営の基本として掲げています。コンプライアンス最優先は,知財戦
略の推進にあたっても大切にしていることであり,基本理念(3)に他者の権利を侵害しないよう留意
することを規定しています。
電気事業の場合,製品が電気という目に見えないものであることから,仮に発送電等の過程で他者
の権利を侵害するということがあったとしても,そのことが直接には当該他者の目に触れ難いという
ことがあります。しかし,例えそうであっても他者の権利を侵害しないということをコンプライアン
スの観点から最も大切なことと考え,新技術を導入する際等には,他者の特許出願・登録情報のチェ
ックを確実に行うこととしています。
また,利用している技術については,他者が権利化を行う前に,自社の知財として積極的に権利化
していくという取り組みを推進しています。この取り組みは他者権利の侵害リスク回避対策として
も有効です。 知財戦略推進の基本理念23研究・開発,知財戦略推進体制
研究・開発,知財戦略推進体制2 事業戦略,研究・開発戦略および知財戦略を三位一体なものとして展開することを目指して,エネ
ルギア総合研究所長のもと
「研究・開発推進会議」と「知財戦略会議」
を設置しています。
議長:エネルギア総合研究所長
「研究・開発推進会議」
●くろまる委員:事業本部部長,部門部長
●くろまる研究・開発戦略,方針および全社の
研究・開発計画などを審議
「知財戦略会議」
●くろまる委員:事業本部副本部長,部門長
●くろまる知財戦略推進に関する重要事項を審議
●くろまる下部機構として知財戦略推進部会を
設置
連携
「知財戦略推進部会
(6部会)」・グループ内の知財情報の共有化
・権利化推進活動の実施
営 業 所 等
発 電 所 等
電 力 所 等
会長・社長
副社長
常務取締役
取 締 役 会
お客さまサービス本部
電 源 事 業 本 部
流 通 事 業 本 部
情 報 通 信 部 門
エネルギア総合研究所
経 営 企 画 部 門
経 営 会 議
効果的な研究・開発の実施と成果の積極的な活用を目指し,研究・開発に関する役割・責任ならび
に計画,実施,評価および成果の活用に関する基本的事項を明らかにした
「研究・開発規程」を制定し
ています。
●くろまる経営企画部門長の責務 「経営企画部門長は,研究・開発戦略を立案し,全社的な観点から研究・開発の目指すべき方向を明
らかにする」 (1)各組織の長の責務
組織概要図
事業戦略,研究・開発戦略,知財戦略の一体的な推進
研究・開発推進体制24研究・開発,知財戦略推進体制知財戦略推進体制
知財戦略推進の基本理念およびその実現を図るための基本的事項を明らかにした
「知財規程」を制定しています。
●くろまるエネルギア総合研究所長の責務 「エネルギア総合研究所長は,全社の研究・開発計画を総括し,これらの円滑な実施に努める」
●くろまる事業本部等の長の責務 「事業本部等の長は,事業本部等における研究・開発計画を実施・管理し,得られた成果を積極的に
活用する」
経営企画部門
エネルギア
総合研究所
各事業本部等
連携 支援
研究・開発計画
(研究・開発戦略)(2)研究・開発推進会議
研究・開発推進会議では,研究・開発戦略および研究・開発計画等を審議しており,事業本部また
は部門の部長で構成されたメンバーにより,多角的な視点から活発な議論を交わしています。
研究・開発においては,経営企画部門が示した研究・開発戦略に基づき,エネルギア総合研究所や
各事業本部等が具体的な研究・開発計画を策定・実施しており,こうした枠組みの中で,研究・開発
に対する第三者評価等を取り入れています。また,エネルギア総合研究所が中心となって,多種多様
な研究・開発における目標レベルや開発期間等の評価・調整,社内における組織間連携および知財部
門との事前協議の徹底等に取り組んでおり,より適切な計画策定と成果の確実な活用や知財の権利化
を目指しています。 (1)各組織の長の責務
知財規程では,知財戦略の推進にあたって各事業本部等の長の責務と知財部門の長であるエネルギ
ア総合研究所長の責務について次のとおり規定しています。
●くろまる各事業本部等の長の責務 「事業本部等の知財戦略推進の責任者として,知財戦略推進体制を整備し,知財戦略を推進する」
●くろまるエネルギア総合研究所長の責務 「各事業本部等の知財戦略が円滑に推進されるよう,支援体制の構築等,必要な環境整備を行う」 25本社の各事業本部等およびエネルギア総合研究所
(技術グループ,経済グループ)
(知財戦略基本方針を受けて推進計画を決定し,中期経営計画に織り込み・実施)
エネルギア総合研究所
(知財グループ)
・知財戦略基本方針を策定
・必要な環境整備
(支援体制の構築や啓発活動の実施) 支 援(2)知財戦略会議
知財戦略会議は,知財戦略推進に関する重要事項の審議等を行う場であり,知財戦略基本方針の審議,
知財戦略の実施状況・結果の報告,特許分析,知財リスクに関する情報の共有化等を実施しています。
知財戦略会議は2003年8月の設置以降,これまでの開催回数は40回を超えました。
知財戦略会議には,その下部機構として
「知財戦略推進部会」
を設置するとともに,当社の各事業本
部等と各グループ企業には知財提案等を組織的に推進するための要員として
「知財推進担当者」
を配置
しています。
知財戦略推進部会は,電気事業も含めて,当社グループで展開する事業領域ごとに設置された6つ
の部会からなっています。グループ企業もメンバーになっており,各部会が自主的な目標を設定し,
活動を展開しています。各部会には部会長を設置し,部会長は,事業本部の副本部長または部門長が
務めます。また部会長は,知財戦略会議のメンバーでもあり,部会の活動実績を知財戦略会議で報告
しなくてはならないという仕組みとなっています。この仕組みが,各事業本部等が積極的に自分たち
で考え,結果を出していくという知財戦略推進のサイクルにつながっています。
企画・総括グループ
知 財 グ ル ー プ
技 術 グ ル ー プ
経 済 グ ル ー プ
エネルギア総合研究所
エネルギア総合研究所というひとつの研究組織の中に,企画・総括グループ
(全社の研究管理,所内
の方針の策定と広報)
,知財グループ
(知財戦略の基本方針を策定)
,技術グループ
(技術関係の研究・
開発を実施)
,経済グループ
(社会・経済・産業関係の研究を実施)
という4つのグループがあります。
このため,1研究・開発と知財戦略の連携,
2研究・開発を通じた地域貢献活動の推進,
3技術研究と経済研究のコラボレーション等
の有機的な取り組みが容易に行われることが
組織体制として整備・担保されています。 研究・開発,知財戦略推進体制
当社の研究・開発,知財戦略推進体制のユニークな特質2627
事業モデルとその事業特性電力会社の事業モデルとそれを支える基盤技術 電力会社の事業モデルを一言で言うと,
「水力,火力,原子力等の発電所で生ま
れた電気を送電線や配電線を通してお客さまに安定的にお届けする。また,お
客さまに対して様々なご利用形態に合わせた料金プランをご用意したり,効率的な
エネルギー利用をご提案することを通じてお客さまにご満足いただく」
ということ
になります。
事 業
モデル
事業特性としては,第一に
「電気は重要な社会インフラであり,長期的・安定的に
お届けするという社会的要請に応える必要がある」
ということと,第二に
「電気は貯
蔵できないという特性をもつことから,適正な電圧や周波数を維持し,質の高い電
気を効率的にお届けするには高度な技術が必要である」
ということが挙げられます。
事業特性
電力会社の事業モデルとそれを支える基盤技術3 上記の事業特性から,電気事業の長期的・安定的な継続性担保のために必須となる基盤技術は下図
のとおり
「燃料」,「発電」,「送電」,「系統運用」,「変電」,「配電」,「お客さま」,「土木建築」,「全社基
盤システム」,「新規事業」の10の分野に大別できます。
幅広く高度な技術から成る当社の技術基盤は,自ら考え行動するモチベーションの高い人材が業務
のあらゆる場面で創意工夫を行いその成果を確実に権利化していく人材基盤によって支えられています。
電力会社の技術基盤とそれを支える人材基盤
技 術 基 盤
人材基盤
(自ら考え行動するモチベーションの高い人材)
発 電 お客さま
変 電
燃 料
系 統 運 用
全社基盤システム
(情報通信等)
土 木 建 築
配電
送電
下支え
新規事業等28研究・開発への取り組みと独自技術●くろまる需要サイドからの電気利用最適化分野
「省エネルギー
(ピークカット)
・省CO2・省コスト」
の実現に向けて,需要サイドの視点から電気利用最適化に繋が
る技術の研究・開発に取り組む。
●くろまる再生可能エネルギー普及促進分野
再生可能エネルギーが大量連系した場合でも,電力品質さらには安定供給に影響を及ぼさない系統安定化技術,最
適な送配電ネットワーク技術等の研究・開発に取り組む。
●くろまる石炭利用分野
今後も石炭電源の安定運転を継続するため,石炭のクリーンコール技術
(石炭灰有効活用技術を含む)
の研究・開発
に取り組む。
●くろまる予防保全分野
当社の電源・ネットワーク設備は,経年化が確実に進んでおり,将来にわたり安定供給を継続するため,計画的・
効果的な設備の更新・修繕に繋がる劣化診断技術,機器延命化技術等の設備経年化へ適切に対応する研究・開発に
取り組む。
重点開発分野
研究・開発への取り組みと独自技術4 研究・開発においては,S
(安全確保)
を前提としたうえでの3E
(供給安定性,
経済性,環境保全)
の達成に向け,電気
の需要,供給,ネットワークの各方面に
おいて,電気事業への活用に繋がる新た
な価値創造に取り組んでいます。その中
で,事業強化に向けて特に優先度の高い
分野を
「重点開発分野」
として設定し,重
点的に経営資源を配分する等して,効果
的な研究・開発を推進しています。
知財事務局から一言!1
お客さまサービス本部 周南営業所
(企画総括課)
中上 真一
営業所の知財活動をサポートしてくれたキーマン5名に感謝!
当営業所の独自の取り組みとして,所内に横断的な知財WGを作り,組織をま
たがる課題解決を目指すとともに,知財活動の裾野を広げる活動を行っています。
ここで頼りになるのが,出願経験が豊富なキーマン5名
(出願件数の上位5名の社員)です。弁理士へのポイントを押さえた説明や,指摘事項に対しロジカルに視点
を変えてアイデアを見つめ直すといった思考方法等,彼らが持つスキルは,出願
経験の少ない社員にとって大変参考になります。
これまで,知財化に関する思考プロセスや出願ノウハウの殆どは個人に留まり,
所内全体で共有されることはなかったのですが,活動の成果もあり,徐々に営業所内での情報共有の
輪が広がっています。もちろん,このキーマン5名の活躍は,きちんと営業所内でPRしています。
Voice!
供給安定性
Energy security
経済性
Economic growthネットワーク
「供給面」
「需要面」
の変化に柔軟に対応
環境保全
Environmental
conservation
安全確保 Safety
供給面
発電の一層の
効率化・低炭素化
需要面
需要サイ
ドを重視した
効率化と省エネ
ベストミックス
研究・開発戦略研究・開発への取り組みと独自技術
大規模で複雑な設備やネットワークを用いて事業を行う中で,グループ一体となって独自の運用ノ
ウハウや保修技術を蓄積し,その集合として幅広い技術基盤を保有しています。その基盤の上で,設
備のユーザーの視点から独自の研究・開発を行っています。
また,当社グループが発想したアイデアや設備運用の中で得たノウハウを
「ものづくり」
の視点で研
究・開発を行っているメーカーにフィードバックすることで,より効率的な設備にするための研究・
開発をメーカーと共同で行うこともあります。当社およびグループ企業とメーカーがそれぞれ持って
いる技術を融合させることによって一層高いレベルの研究・開発成果が得られます。
●くろまる火力発電所の排ガスから窒素酸化物
(NOx)
を除去する排煙脱硝装置の脱硝触媒を洗浄・再利用する方
法を開発しました。
●くろまるメーカー推奨による取り替えでは一定期間ごとに非常に高価な脱硝触媒を新品に交換する必要がありま
したが,脱硝触媒を洗浄・再利用することで取り替えコストの削減を実現しました。
脱硝触媒
【事例1】脱硝触媒の再生技術
(特許第4578048号ほか)
石炭火力発電所の排煙脱硝装置
脱硝触媒の洗浄作業
知財事務局から一言!2
電源事業本部
(企画担当) 藤重 英樹
知的財産は,競争優位の源泉としてますます重要度が高まる!
Voice!
研究・開発の意義と独自技術
一昨年度の震災以降,取り巻く環境は大きく変わりました。原子力発電所では安
全対策の一段の向上が求められ,火力発電所では過負荷の運転や運転頻度の増加等
過去には無かった運用を行っています。このような環境変化の中,現場では供給力
の確保といった点から,新たな創意工夫に鋭意取り組んでいます。
新たな創意工夫の一つ一つは当社の大切な財産ですので,権利化等を通じてこれ
らの財産を最大限に活用するための知財活動は,非常に重要であると考えています。
今後,電力自由化の進展で競争が拡大すると,知的財産は競争優位の源泉として
ますます重要度が高まります。電源事業本部の知財事務局では,現場での創意工夫が少しでも競争優
位に繋がるよう知財活動を全力で支援します。 29研究・開発への取り組みと独自技術 電力会社と特別高圧で受電されるお客さまとの間には,電力設備の保護,監視および制御等のための電
力保安用電話回線を敷設しなければなりません。
これまで,この電力保安用電話回線は,お客さまと電力会社との間に敷設した専用のメタルケーブル(銅
線)で構成されており,通話中に発生する雑音や落雷時等に生じる異常電流による電気機器の故障等,多
くの問題がありました。
これらの問題を解決するため,既に敷設されている自動検針システム用光ファイバを利用した,光電話
中継器を開発しました。停電時にも通話可能という従来の電話機が持つ利点や使い勝手はそのままに,通
話品質は格段に向上しました。また,光電話中継器本体はコンパクトなサイズ
(×ばつ奥行き300mm)
なので,既存の配電盤内に設置可能です。
【事例2】光電話中継器及び通話システム
(特許第4462907号)
知財事務局から一言!3
情報通信部門
(企画担当)
大塚
恭士
知財活動の定着は人材育成から!
自部門における独自の知財研修を10年継続!
情報通信部門の知財事務局として,知財の創出支援等を行っていますが,特に
重要視しているのは人材育成です。社員研修にはかなりの力を入れており,当部
門に転入してきた社員,新任ライン管理職,それから各担当の窓口担当者を対象に,
我々事務局が講師となり,10年近く当部門独自の研修を行っています。
社員研修は,知識の提供だけではなく,社員との円滑なコミュニケーションの
醸成にも役立っており,今では,斬新なアイデアを提案する社員や着眼点が鋭い
社員とのやり取りを通じて知財事務局の方が刺激を受けることも多いですね。こ
れまでの研修の効果が発揮されつつあると思います。何事も真の定着には相応の時間が必要ですし,
やはり最後は人だなと思います。
Voice!
接続部
(電話機と接続する)光電話中継器光電話中継器
光電変換部
(電気信号⇔光信号)
呼出音生成部
(受信者への呼出音を
生成し,発信者への呼
出確認を生成する。)
入力部
出力部光ファイバ信号
電力供給 お客さま 電力会社
モジュラ
ジャック
分岐回路 制御部
電源部30石炭火力発電技術研究・開発への取り組みと独自技術
●くろまる1974年 水島発電所2号機で湿式排煙脱硫装置設置(石油火力でわが国初)
●くろまる1979年 下松発電所2号機に全量排煙脱硝装置設置(石油火力で世界初)
●くろまる1980年 下関発電所1号機に高ダスト方式排煙脱硝装置設置(石炭火力で世界初)
●くろまる1994年 液柱塔方式排煙脱硫装置を開発,
下関発電所1号機に設置
[当社の先進的な火力発電技術開発・導入の例
(主として大気汚染対策)](1)
石炭火力の位置付け
石炭は,他の化石燃料に比べて,資源量が豊富で地域偏在性が少なく,価格も低位で安定しており,
供給安定性,経済性の観点から,エネルギー自給率が4%程度と低い我が国にとって,重要なエネル
ギーであると認識しています。当社としては,石炭火力についても,重要なベース電源として位置付
けています。
一方,石炭は他の化石燃料に比べてCO2排出量が相対的に多いという課題があるため,低CO2化を図
るクリーンコール技術の開発・導入に向けた取り組みを推進しています。 (2)石炭火力における環境問題への対応
石炭火力のパイオニアとして,他社に先駆け脱硫・脱硝装置を開発・導入することにより,大気汚
染等の環境問題に対応してきました。
近年では,温室効果ガスによる地球温暖化への対応として,三隅発電所への超々臨界圧
(USC)
石炭
火力発電※(注記)1
の採用,経年石炭火力であった水島発電所1号機を有効利用した天然ガスコンバインドサイ
クル発電※(注記)2
への改造等,高効率発電技術を開発・導入してきました。
また,石炭火力へのバイオマス混焼によるCO2排出量の削減等に取り組んでいるほか,中・長期的に
は石炭ガス化複合発電
(IGCC)
の導入による高効率化を図るとともに,さらには,次世代の高効率石炭
火力発電技術である石炭ガス化燃料電池複合発電
(IGFC)
の実現を目指しています。
※(注記)1 超々臨界圧
(USC)
石炭火力発電
石炭を燃焼させて作る蒸気を,従来よりもさらに高温
(600°C級)
・高圧
(24.5MPa)
にして発電する方式であり,熱効率が高いため,従来に比べて燃料使
用量が少なく,CO2排出量の削減を図ることができます。
※(注記)2 コンバインドサイクル発電方式
燃焼ガスの力でガスタービンを回し,さらに,その排熱を回収してボイラで発生させた蒸気により蒸気タービンを回し発電する複合発電方式
1木質バイオマス混焼発電の推進
(特許第4056752号ほか) バイオマス発電の仕組み
(三隅発電所)
石炭
環境対策設備
ボイラ
微粉炭機:新設範囲
バイオマス
計量器
(トラックスケール)
貯蔵サイロ
2004年度から下関発電所および新小野田発電所において,
石炭と木質バイオマスの混焼発電実証試験を実施し,2007年
8月から新小野田発電所において本格実施しています。2011
年度は1,492万kWhの発電を行い,CO2排出量を約1.2万t‐
CO2削減しました。
2009年度からは,経済産業省の補助事業である
「林地残材
バイオマス石炭混焼発電実証事業」
の交付決定を受け,林地残
材バイオマス供給設備を新小野田発電所
(増設)
および三隅発電所(新設)
に設置し,2011年2月より実証試験を行っています。 31研究・開発への取り組みと独自技術2クリーンコール技術による石炭の高度利用(3)クリーンコール技術を活用した国際貢献
※(注記)1 華能集団公司の持株発電会社で,華能集団公司の傘下の電力有限公司の中で最大の発電設備
(火力発電所27箇所)
を所有。1994年設立
※(注記)2 中国最大手の石炭会社である神華集団有限責任公司傘下の発電会社。国華電力分公司は,中国の5大発電集団に次ぐ発電規模であり,21カ所
(59基)
の石
炭火力発電所を所有。1999年設立
※(注記)3 ポーランド国東部を拠点とする同国最大の発電,配電会社。2007年設立
※(注記)4 ポーランド国東部を拠点とする同国第2の発電,配電会社。2006年設立
「林地残材バイオマス石炭混焼発電実証事業」
の概要
項 目 新小野田発電所
(50万k×ばつ2基) 三隅発電所
(100万k×ばつ1基)
約3.5万t/年
約2.9万t‐CO2/年
約3,500万kWh/年
使用量約3万t/年
約2.3万t‐CO2/年
約3,200万kWh/年
バイオマス使用量 CO2削減効果
(見込み量)
バイオマス発電電力量
事業スケジュール
2009年11月〜2011年2月
2011年
2月〜2012年度
2013年度〜
:実証設備計画・設置
:実証試験
:本格運用
海外での取り組み事例
長年培ってきたクリーンコール技術を活用し,2009年から中華人民共和国の華能国際電力股
(グー
フン)
有限公司※(注記)1との間で,2011年からは神華能源股 有限公司国華電力分公司※(注記)2との間で USC石炭火
力発電所の運用・保守等に関する技術協力を行っています。また,2010年にポーランド国の電力会社
PGE社※(注記)3およびタウロン社※(注記)4とそれぞれ協力協定を締結し,日本の高効率石炭火力発電技術を活用し
た新規プロジェクトの案件形成および技術交流等に取り組んでいます。
こうした取り組みを通じて,海外での石炭火力の効率向上,環境負荷低減に貢献していきたいと考
えています。
石炭火力の高効率化に向けて,USCでは耐高温高圧材料の開発による蒸気温度および圧力向上,IGCCでは高
温ガスタービン技術の開発によるタービン入口ガス温度の向上が求められています。
これまでも高効率発電技術の開発・導入を進めてきましたが,引き続き,積極的な技術開発に取り組み,石炭
資源の節約と環境負荷
低減に貢献していきた
いと考えています。
中国 ポーランド国
石炭火力発電所の省エネルギー・環境問題
改善等
(華能国際電力,国華電力)
高効率石炭火力発電所の新設プロジェクトの
案件形成調査
華能国際電力との技術交流
高効率石炭火力発電の技術開発ロードマップ
現地調査打合せの様子
微粉炭
燃焼
超臨界圧(SC)38%
1300°C
IGCC43〜44%MCFC(溶融炭酸塩形燃料電池)SOFC(固体酸化物形燃料電池)
1500°C
IGCC46〜48%IGFC〉55%数値は送電端効率
(高位発熱量ベース)
1700°CIGCC超々臨界圧
(USC)
39〜41%
先進的超々臨界圧
(A‐USC)
46〜48%
石炭ガス化
高温型
燃料電池32最近の主な研究成果
エネルギア総合研究所における研究成果や研究の進捗等は,
『エネルギア総研レビュー』
で詳細をお
伝えしています。以下の研究成果の概要は,
『エネルギア総研レビュー』
の掲載号をご覧ください。 (『エネルギア総研レビュー』
の概要については,当頁下段の知財こぼれ話をご覧ください。)
環境技術
分野 研究テーマ 掲載号
蓄電池利用技術 コスト低減,
安定供給技術
情報通信技術
遮断器一括監視装置の開発
大容量LED照明の実用化に関する研究
落雷の電荷量評価手法に関する研究
バイオマス液体燃料の国内適用に関する基礎研究
高温高圧ガス化技術における焼酎残渣のガス化原料適用性評価
屋上緑化システムの工場屋根への応用研究
石炭灰を原料とした人工ゼオライトの排水浄化機能に関する研究
揮発性有機化合物の処理技術に関する研究
循環ろ過方式によるトラフグ養殖実証試験
非食用系植物油脂の燃料化基礎技術の研究開発
屋上緑化システムに関する実用化研究
TSS法を用いたCO2回収システムの高効率化研究
待ち時間短縮システムの開発〜診察順序の最適化〜
待ち時間予測システムの開発
電気自動車用充電インフラ設置手法に関する研究
2012 Vol.1(No.27)
2010 Vol.4(No.22)
2010 Vol.3(No.21)
2012 Vol.4(No.30)
2012 Vol.3(No.29)
2012 Vol.1(No.27)
2011 Vol.4(No.26)
2011 Vol.4(No.26)
2011 Vol.1(No.23)
2011 Vol.1(No.23)
2010 Vol.4(No.22)
2010 Vol.3(No.21)
2012 Vol.1(No.27)
2011 Vol.3(No.25)
2010 Vol.3(No.21)研究・開発への取り組みと独自技術
知左ヱ門博士の知財こぼれ話!
エネルギア総合研究所から,技術・経済・知財等
多彩な視点の情報を発信しています!
『エネルギア総研レビュー』
とは...
・中国地域経済白書〔2012 Vol.4
(No.30)
掲載〕
・2012・2013年度の全国・中国地域の経済見通し
(2012年夏季)
〔2012 Vol.3
(No.29)
掲載〕
・シェールガス革命とその影響
〔2012 Vol.2
(No.28)
掲載〕等 ・知財啓発活動の取り組み
〔2012 Vol.1
(No.27)
掲載〕等
『エネルギア総研レビュー』
は,エネルギア総合研究所の発足以降,研究成果等をと
りまとめて年4回発行する情報誌であり,2005年8月の創刊以降,これまで31回発
行しています。
ホームページアドレス:http://www.energia.co.jp/eneso/tech/review/index.html 《経済情報の一例》
《知財情報の一例》
エネルギア総研レビューに関する問い合わせ 中国電力
(株)
エネルギア総合研究所 TEL(082)
420ー0700
エネルギア総合研究所は,2005年6月,それまでの経済研究センターと技術研究
センターを統合して設立されました。統合のねらいは,経済と技術の相乗効果を発揮
し新しいテーマへの挑戦や成果の拡大を図るとともに,お客さまや地域社会のニーズ
に密着した研究・開発や情報提供を一層進めていくことです。
統合前は
「技研ニュース」と「技研時報」
の2つの刊行物により研究成果や研究の進捗等をお伝えしてきまし
たが,統合を契機に新しく発刊した
『エネルギア総研レビュー』
では,上記表の技術研究成果に加え,経済
情報や知財情報も含めた研究に関する様々な内容を,冊子やホームページで皆さまに情報発信しています。 33特許群の事業への貢献特許群の事業への貢献5 特許の最大の効力は特許権に基づいた事業の差止めにあります。つまり,競合他社が先に権利確保
すると,競合他社の特許技術により事業ができない,あるいは事業が遅延し計画どおりに物事が進ま
ないという事態に直面することになります。事業差止リスクを回避すること,つまり,事業活動の自
由度を確保することが知財戦略の取り組みにおいて一番重要なことと考えています。ここでの
「事業活
動の自由度確保」
には,既に実施している事業だけでなく,海外事業を含む将来的な事業展開に備えて
必要な特許を確保しておくことも含みます。
特許出願の目的には,
「事業活動の自由度確保」
以外に,
「事業収益拡大への貢献
(ライセンス収入獲得,
他社技術導入による技術開発コストの低減,特許の効果による顧客獲得等)」ということもあります。
当社では,まず
「自由度確保」
を主眼に活動を展開していますが,今後は特許登録件数も着実に増加し
ていく見込みであることから,保有する特許を有効活用して
「事業収益拡大への貢献」
にも取り組んで
いきたいと考えています。
自由度確保
他社特許技術で事業が
できない
(遅延も含む) 差止めを受ける
他社特許技術を自社で実施する場合
ライセンス料・損害賠償を支払い
ライセンス料等支払い
事業収益拡大への貢献
特許出願の目的
競合他社が権利確保すると
クロスライセンスによって
他社技術を活用
他社実施でライセンス料を獲得
自社特許技術で事業を
自由に実施
●くろまる特許を利用する側は,特許権者に対価としてラ
イセンス料を支払いますが,相互に特許の利用を
許諾するクロスライセンスの場合,両者のライセ
ンス料が一致すると,支払額は相殺されて0円と
なります。対等な条件でクロスライセンスするこ
とを
「パワーバランスを保つ」
と言います。
●くろまるパワーバランスの指標は
特許件数÷事業規模=
「特許技術集積度」
として表
されます。
●くろまるこの式から明らかなとおり,右図の例のように
事業規模が相手先の10倍の企業は,相手先の
10倍の特許を保有していてはじめて
「特許技術
集積度」
が相手先と等しくなります。 10事業規模a
A社特許1,000件をB社にライセンス
B社特許100件をA社にライセンス
特許件数c
1,000件
事業規模b 特許件数d
1 100件
A社 B社
特許技術集積度c/a100特許技術集積度d/b100対等な条件でライセンス可能
=パワーバランスが保たれている
[ 参考 ]クロスライセンスと事業規模
特許出願の目的34特許の価値評価特許群の事業への貢献
2007年度から特許が生み出した金額効果の定量的評価に取り組んでいます。 高品質で低廉な電
気を安定的にお届けすることを目的に取り組んだ様々な創意工夫や研究・開発に取り組んだ成果は,
主にコスト低減等の経営効率化という形で効果を発揮します。従って,実際に特許技術が関係し
ている主な施策の累計金額を算定し,その効率化額を特許の価値として評価しています。算定は
毎年度洗い替えを行っており,特許が関係した効率化額で見ると,2011年度は322億円となってい
ます。
特許が関係した効率化額は,新技術を特許出願していることにより事業自由度を確保できている金額効
果であり,2011年度は,2010年度から24億円増加して322億円となっています。
特許の定量的評価額は,特許が関係した効率化額に特許の強さ等を加味して算定しています。これは,
新技術が特許で担保されていることにより当社のみが享受できている金額効果であり,2011年度は,
2010年度から18億円増加して,135億円となっています。特許の強さ等の評価項目は,2000年に特
許庁が公表した
「特許評価指標
(技術移転版)」をベースにしています。
×ばつAは,特許の定量的評価額に相手先企業との事業規模比を乗じたもので,クロスライセン
スによって相手先企業から技術導入できる金額
(=他社技術導入原資獲得額)
を示しています。
2011年度の算定結果
特許出願の効果:特許価値評価
※(注記)A 対象企業との事業規模比
特許が関係した
効率化額
評価年度
322億円 135億円 (×ばつA) 特許の定量的評価額(α)他社技術導入 原資獲得額
(×ばつA※(注記))298億円 117億円 (×ばつA) 24億円
2011年度(1)
2010年度(2)
(1−2) 施策件数
113件
113件
±0件 18億円 ―
【価値評価施策の一例】
価値評価施策
取水口の施工法
分散型監視制御システム
配車決定装置および方法
光ケーブルクロージャ点検装置
需給計画管理支援システム
遮断器一括監視装置
災害復旧支援システム
省エネルギー診断ツール
カスタマーセンターシステム
制御盤の切り替え工法
脱硝触媒の再生技術
本書掲載頁5頁6頁6頁6頁8頁9頁9頁11頁
13頁
21頁
29頁35[評価対象特許の概要]
●くろまる島根原子力発電所3号機建設工事に採用
●くろまる海域での作業を削減した工法により,大幅な工期短縮と工事費
低減を実現
―取水口の施工法
(5頁参照)
の事例―ステップ11効率化額aの算定
(工期:2006年度〜2009年度) ステップ22発明による効率化額bの算定 ステップ33特許の定量的評価額cの算定
効率化額a=特許が関係した効率化額
特許の寄与度 100%発明の排他独占性評価
※(注記)67%・権利化状況
(4点) ・権利と
しての強さ
(3点) ・代替技術に対する優位性
(3点) (15点満点で10点の評価)
取水口ユニッ
トの据付
(島根3号) [ 参考 ]特許の価値評価のステップ
※(注記)他者による実施を
けん制で
きる強さの評価
従来工法
による
工事額
特許技術を
含む新工法に
よる工事額
従来工法
による
工事額
特許技術を
含む新工法に
よる工事額
工事費低減額
2006年度 2009年度〜 2006年度効率化額
2007年度効率化額
2008年度効率化額
2009年度効率化額
特許が寄与した
効率化額b
(b=a×ばつ100%)
特許の定量的価値
評価額c
(c=×ばつ67%)
その他の効率化額
工事費低減額 特許群の事業への貢献36ライセンス活動についての基本スタンス
オープン・イノベーションに対する考え方6 ライセンス収入の獲得は特許出願の目的のひとつであり,そのことの意義を否定するものではあり
ません。しかし,ライセンス収入の獲得はあくまで知財の活用策のひとつにすぎず,知財戦略推進
の目的ではなく,知財戦略推進の結果として達成されるものであると考えています。
ライセンスアウトするということは他社にマーケットへの参入を許すことに繋がります。この
ため直接的な費用対効果にばかり着目して知的財産権が単独で生み出すライセンス料等の具体的な金
銭的利益だけを追求していくと,知的財産権の本質である競合他社の事業をけん制する力がだんだ
んと下がっていくという弊害があります。ライセンス活動の事業貢献を考える際には,この点にも目
配りをしながら検討していくことが必要です。
今後は,保有特許の有効活用という観点から,十分な目配りを行いながら単純なライセンス収入の
増大というよりは,クロスライセンスによる事業強化
(貢献)
という方向性を視野に入れた活動を展開
したいと考えています。
ライセンス活動の事業への貢献
これまで以上に戦略的な権利取得・活用を進めることを目指す運用力強化・戦略展開ステージの知
財活動を展開しています。運用力強化・戦略展開ステージでは,登録済み特許の有効活用ということ
でクロスライセンスの活用が課題となってくることから,また,昨今の大変厳しい経済情勢の中で
イノベーションに関わるコストを下げるとともにスピードアップを図る観点からも,他社の様々な
リソースを有効に活用していくオープン・イノベーションの考え方を取り入れていくことが必要になっ
ています。
このオープン・イノベーションの考え方を取り入れる際は,前提としてまず当社グループの側に
しっかりとした特許ポートフォリオとそれを管理する仕組みが必要になると考えています。きちんと
した知財の土台がなければ,必要な特許を有利な条件でライセンスインすることができませんし,
ライセンスアウトしても差し支えない特許はどれかという適切な判断ができないのではないかと思
います。従って,オープン・イノベーションの時代にあっても引き続き知財戦略を積極的に推進し
ていくことがますます重要と考えています。 ライセンス活動の事業への貢献37重点課題における特許網の構築知財ポートフォリオに対する方針7 知財ポートフォリオに対する方針
中国電力 電力他社計
中国電力 電力他社計
中期経営計画や重点取り組み事項に掲げる諸課題等から,社外的な有用性
(優位性確保にどう役立つ
のか)
の観点も加味しながら特許網を構築する重点課題を設定し,当該課題について集中的に特許を取
得する活動を推進しています。
特許網構築の例として
「間接活線工法・機材の開発」
(10頁参照)
があります。間接活線工法とは,配
電工事を行う際に絶縁棒や先端工具を使用し,電線の通電部分に直接触れず,安全距離を保った上で
作業を行う工法であり,配電工事において全国的に直接活線から間接活線に工法が移行する流れにあ
る中で,工具・工法・機材の開発に前広に取り組み,開発成果の知財化を推進しています。
[間接活線工法・機材の開発]
取組開始時
(2006年度)
出願件数
工具・機材
工法 67343
52 20
2012年
12月末
出願件数
工具・機材
工法 49306 4※(注記)他社分は,商用検索システムを用いて
全文検索
「間接活線」
で抽出した件数 38特許の群管理
[登録特許の内訳]
[技術分類]
技術分類 技 術 内 容
発電に使用する燃料
(原油,石炭,LNG等)
の購買・輸送・貯蔵管理に関する技術
火力発電所・原子力発電所・水力発電所の運転・メンテナンスに関する技術
発電所で作られた電気を,消費地近くの変電所まで高い電圧で送る設備等の建設・管理・運用に関す
る技術
絶えず変化する電気の使用状況を監視しながら,24時間体制で発電量や電気の流れをコントロールし,
常に需給バランスが保てるように運用する技術
変電所で変圧された電気をお客さまにお届けする配電設備の建設・保守・運用に関する技術
個人・法人のお客さまからの電気の需給契約などの受付や検針に関する技術,お客さまのニーズに対
応した省エネルギー・節電等に関する技術
水力・火力・原子力発電所や変電所等の土木関係設備の計画・設計・施工管理および維持管理に関す
る技術
電力の安定供給に重要な役割を果たす通信ネットワークや情報システム等,電力会社の基幹インフラ
について,最適なシステムの構築・維持管理に関する技術
お客さま設備に応じた電圧に変換するための設備等の建設・管理・運用に関する技術
燃料
発電
送電
系統運用
変電
配電
お客さま
土木建築
全社基盤システム
(情報通信等)
情報通信事業やビジネス・生活支援事業等,グループの強みを活かした新規事業において,お客さま
の利便性や快適性の向上等に資する技術
新規事業等
発 電 お客さま
変 電
燃 料
系 統 運 用
全社基盤システム
(情報通信等)
土 木 建 築 新規事業等
配電
送電
一般に用いられているIPC
(国際特許分類)
等の技術分類は,当社グループの出願分野と1対1で
対応していない等,技術部門,知財部門とも使いにくい面がありました。このため,社内で使用さ
れている技術用語等から既出願特許の技術分野を網羅し,かつ関係者全員が感覚的に認識可能な独
自の技術分類の構築を行いました。
現在,出願済特許全てについて,この技術分類を付与するとともに,データベースによる群管理
が行われており,出願傾向
(技術分類ごとの強み弱み)
の分析や特許網構築のテーマの選定等での活
用が図られています。2012年11月末現在の当社登録特許
(2,357件)
のプロセスごとの内訳は以下の図
の通りです。 8570512419338515730683204115知財ポートフォリオに対する方針39CSR(Corporate Social Responsibility)
の取り組み
積極的な地域貢献活動の推進CSRの取り組み
CSRの取り組み8 2006年3月,CSRの取り組みの方向性と事業活動や全ての役員・社員の行動の根底に置くべき原則
を定めた
「エネルギアグループCSR行動憲章」
を制定しました。その中で,当社グループの基本的な
使命は,電気事業を中心としたグループ事業を通じて,社会の一員としての責務を果たし,社会の持
続的な発展に貢献していくことであると宣言しています。
知財面においては,地域社会発展への貢献という視点と国際的な地球温暖化対策の推進への貢
献という視点を大切にしてCSRを意識した活動を展開しています。
具体的な取り組みとしては,積極的な地域貢献活動の推進,地域の人材育成への協力,地域の研究
助成・産業活性化支援,国際的な地球温暖化対策の推進,東日本大震災の復興支援への協力があります。
研究成果の社外での一層の活用を目指し,まず
「知っていただく」
ことを目的として積極的な広報活
動に取り組んでいます。
この取り組みのひとつとして,エネルギア総合研究所では,電気事業に関する研究・開発事例と研
究設備および成果展示物を様々な機会を通じ,年間5,000名を超える皆さまにご覧いただいています。
エコ・イノベーションメッセ2012
広島中央サイエンスパーク施設公開
また,地域の産業振興への協力という観点から,地元企業の活用が想定される特許について,公
益財団法人ひろしま産業振興機構が取りまとめを行っている開放特許として,2012年度は80件の特
許を広く一般に利用可能としています。
【主な広報活動】
●くろまる広島中央サイエンスパーク施設公開(東広島市)
●くろまる広島中央サイエンスパーク研究公開フォーラム出展(東広島市)
●くろまるエコ・イノベーションメッセ2012出展(広島市)
●くろまるひがしひろしま環境フェア2012出展(東広島市)
●くろまるびわ湖環境ビジネスメッセ2012出展(滋賀県長浜市)
●くろまるエコテクノ2012出展(福岡県北九州市)
●くろまるセンサエキスポジャパン2012出展(東京都江東区)
●くろまる中国電力グループ研究開発成果展示会(広島市)
●くろまるエネルギア総合研究所施設見学対応(東広島市)40地域の人材育成への協力
地域の研究助成,産業活性化支援
中国地域の研究助成,産業活性化支援等を行っている
「公益財団法人中国電力技術研究財団」,「公益
財団法人ちゅうごく産業創造センター」,「公益社団法人中国地方総合研究センター」,「社団法人中国地
域ニュービジネス協議会」,「中国生産性本部」
等に対して,人的・資金的な支援を継続的に行っています。
地域社会への貢献という主旨で,地元企業を対象とした知財研修活動への協力や,高校生等次世代
層に向けた科学技術に関する教育活動についても積極的に取り組んでいます。
具体的には,一般社団法人広島県発明協会が主催するセミナー
「知的財産管理技能検定3級対策講座」
へ当社弁理士3名を講師派遣するほか,広島市立広島工業高等学校へ社員2名が出向き,知財授業を
させていただいています。
そのほか,次世代層への環境エネルギー教育
「わくわくEスクール」
を開催しています。同スクールで
は,研究施設の見学・理科実験に加えて特許庁制作の知財ビデオによる「小学生向け知財学習」を取
り入れ,見学後「発明を守る特許の大切さがわかりました」等の自筆の感想文が寄せられる等,好評
をいただいています。
そのほか,児童が普段接することのできない研究者や専門家の知識・経験を聞く授業を通じて,夢
や希望の実現に努力する態度を育てることを目的として東広島市教育委員会が実施する
「夢・感動推進
事業」
の特別授業に,講師を派遣しています。
さらに,専門性の高い学生を対象とする教育支援として,インターンシップでの実習生受け入れや,
大学・短大・高専での講義を行なっています。講義では,電力系統・高電圧・放電・発電等の電気工
学分野と経済・金融・ビジネス等の経済学分野を受け持っており,電気工学分野については,電力設
備の見学も交えて行なっています。 夢・感動推進事業の授業風景 小学生向けわくわくEスクール
業務を体験する実習生 研究所を見学する大学生 CSRの取り組み41国際的な地球温暖化対策の推進
東日本大震災の復興支援
営業秘密管理要則の制定
地球温暖化という課題に積極的に取り組んでいます。これまで国内における地球温暖化への対応の
柱として非化石エネルギー等の利用拡大と電力供給設備の効率の向上を推進してきました。そこで得
られた技術的な蓄積を活用して国際的な取り組みにも着実に成果を上げてきています。
自社の独自技術の流出防止にも留意しつつ,今後も海外におけるCO2削減対策の先進的な技術開発・
技術協力を積極的に展開し地球温暖化対策に貢献していく考えです。
2012年1月,東日本大震災の復興支援を目的として,公益財団法人東北活性化研究センターとの間で,
保有する原則全ての特許について無償で実施許諾を行う権利を付与する
「包括ライセンス契約」
を締結
しました。
本契約は,これまでの取り組み成果である特許権が,東日本大震災の復興支援に何らかの形でお役
に立てればとの考えから締結したものであり,原則として保有する全ての特許が通常実施権の許諾対
象となります。
このたび,同財団と被災された企業との間で,本枠組みの第一号案件となる実施許諾契約が締結さ
れることになったと伺っています。当社保有特許が1件でも多く活用され,東北地域の一刻も早い復
興に寄与することを心より願っています。 9 営業秘密管理要則を制定し,営業秘密を確実に管理できる仕組みを構築しています。
営業秘密管理要則には,営業秘密が不正に持ち出された場合に不正取得者への使用差止等法律上の
保護が受けられる管理体制の整備を目的として,ノウハウ等の営業秘密に相当する情報の管理体制・
方法等を具体的に定めています。
営業秘密管理・技術流出防止に関する方針CSRの取り組み営業秘密管理・技術流出防止に関する方針4210 知財規程の基本理念のひとつとして
「他者の権利の尊重」
を掲げ,コンプライアンスを最優先す
るという考え方に基づいて,日常活動として,当社が実施
(検討)
している内容と他者特許を対比
し侵害の有無を検討する
「侵害リスク対応」
や,他者商標権の侵害回避および当社商標権の適切な
確保について検討する
「商標権侵害チェック」
等を実施しています。
また,権利確保といった面についても,共同研究や委託研究の成果
(特許)
の権利を確保するた
め契約書のチェックを行う
「知財関連契約審査」
や,社外に公開予定の論文・技術資料等に,未出
願の内容が含まれ公開により特許を取得できなくなることを防止するためのチェックを行う
「知財
性確認」
についても,知財活動における日常的業務として実施しています。
なお,現時点で知的財産関連の訴訟案件はありません。
リスク対応情報
リスク対応の状況(1)知財リスクに対する日常業務での対応
社外向け商品やサービスの名称を商標として適切に使用するため,知財部門では,商標調査や
商標出願を行っています。商標調査では,同一または類似の他者商標がないことを確認します。
そのうえで,主管箇所がその商標を長期間あるいは広範囲に使用する場合は,商標出願により適
切な権利確保を行います。 (2)商標管理
当社の上記のシンボルマークは,防護標章として登録されています。
防護標章とは,登録商標が著名である場合,類似とはならない商品・サービスの間でも需要者が出
所を混同してしまうことがあるため,防護標章として登録することにより著名商標の権利者を保護し
ようとする制度です。
防護標章として登録されるためには,その商標が著名であることが要件となりますが,当社が本シ
ンボルマークを広告,看板,パンフレット,チラシ等に積極的に活用したことにより,広く需要者に
認識されていると判断されました。
防護標章の登録により,需要者の混同をきたすような他者による類似商標登録の阻止や,権利侵害
への迅速な対応が可能になる等のメリットがあります。
当社はこれからも,本シンボルマークを積極的に活用していきます。 (3)シンボルマーク
の防護標章の登録
(2011年2月25日)
※(注記)
※(注記)シンボルマーク
本シンボルマークは,
「E」
を強調したダイナミックな
「ENERGIA」
のロゴタイプと,エネルギーの動きや成長する力を一体化した造形に躍動感を伴う赤(ウォームレッド)
と安定感を象徴する青
(ジェントルブルー)
で彩色し,それを中国電力や中国地方さらに地球を表したCリングで囲んだデザインで
構成されています。
あたらしく,あかるく,あたたかい活力のある社会
「エネルギア」
の実現,さらにエネルギーを通じて,お客さま・地域・環境に貢献していこうとす
る中国電力の企業理念を表現しています。リスク対応情報43
2013年2月発行
本報告書は,エネルギアグループの研究・開発お
よび知的財産に関する活動についてご理解いただく
ための情報提供のみを目的としており,いかなるコ
ンテンツも投資を勧める目的で掲載されてはおりま
せん。投資に関するご判断は,利用者ご自身の責任
において行われますようお願いいたします。
本報告書記載内容のうち,当社グループの計画,
方針,戦略,事実認識等,将来に関する記述をはじ
めとする,既に実現した事実以外の事項は,現在入
手可能な情報から得られた予測,想定,計画等を基
礎としています。また,既に実現した事実および一
定の前提に基づいて予測を行っており,客観的な正
確性,将来の実現可能性を保証するものではないこ
とをご承知おきください。
本報告書に関する注意事項
〒730ー8701 広島県広島市中区小町4ー33
この報告書について,
ご意見,
お問い合わせ等がございましたら,
お気軽に
「中国電力株式会社 エネルギア総合研究所 知財企画法務担当」
まで
お寄せください。 TEL
(082)
544ー2912 FAX
(082)
544ー2913
http://www.energia.co.jp/HP