本日、法人としての当社および当社社員が、東京労働局から労働基準法違反の容疑で書類送検されました。
被疑事実の詳細についてはまだ正確に把握できておりませんが、当社はこの事態を厳粛に受け止めており、関係者の方々をはじめ社会の皆様に多大なご心配とご迷惑をお掛けしましたことを、心よりお詫び申し上げます。当社は、今後も当局の調査に全面的に協力してまいる所存です。
当社は、過去に東京本社(2015年8月)および支社(関西支社2014年6月、中部支社2010年9月)が所轄労働基準監督署から受けた労働基準法違反等の是正勧告を踏まえ、さまざまな対処施策を講じてまいりました。しかし、その取り組みの途上において、前途ある社員(高橋まつりさん、当時24歳)が命を絶つ事態が発生(2015年12月25日)し、本年9月30日に労災認定がなされました。
あらためて、高橋まつりさんのご冥福を深くお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆さまには心よりお詫び申し上げます。
以下に、当社の現状認識、今後の労働環境改革、社内処分についてお知らせします。
1.現状認識
(1)これまでの経緯
2015年 4月 1日 高橋まつりさん、電通入社。
7月 1日 ダイレクトマーケティング・ビジネス局 デジタル・アカウント部配属。
新入社員として先輩社員のサポート業務に従事。
10月〜 試用期間が終わり、急激に業務量が増加。
11月〜 業務量を軽減。
12月25日 高橋まつりさんがお亡くなりになりました。
2016年 9月30日 労働基準監督署が労災認定。
10月14日 東京労働局が電通本社に立ち入り調査。
10月24日 電通、午後10時〜翌朝5時の全館消灯、私事在館禁止等の施策を開始。
11月 1日 電通、「電通労働環境改革本部」を発足。
11月 7日 各地の労働局が労働基準法違反容疑で本社と3支社を家宅捜索。
12月25日 高橋まつりさん一周忌。当社社長がご実家に弔問。
(2)高橋まつりさんが亡くなられた件について
本件について、内部調査に加え、外部専門家の視点から事実関係を検証するべく法律事務所による調査も行いました。
その結果、高橋さんは、2015年10月から急激に業務量が増大し、12月にかけて長時間労働の状態にあり、それに加えて、仕事への責任感や職場での人間関係等が高橋さんにとって強い心理的ストレスとなっており、そのような心理的ストレスが自殺の原因となった可能性は否定できないとの報告を受けております。
また当社は、高橋さんが新入社員であった点を考慮すれば、パワハラとの指摘も否定できない、行き過ぎた指導がなされていたことを認識しております。新入社員である彼女に対して、内に秘めた心情や不安を思いやる想像力や十分なサポートが足りなかったと深く反省しております。
なお、調査を行った外部法律事務所からは、一部に行き過ぎた指導や適切とは言えない言動が見受けられたものの、法的に不法行為に該当する行為は認められなかった旨の報告を受けております。
(3)当社の長時間残業について
当社の月間平均時間外労働時間(法定外)は、2013年が平均34.3時間、2014年は同33.2時間、2015年は同28.9時間でした。月間残業(法定外)80時間超過に相当する社員の平均数は、2013年に357人、2014年に304人、2015年には132人でした。
その後、さまざまな取り組みにより、2016年(1-11月)においては、月間平均時間外労働時間(法定外)は25.2時間、月間残業(法定外)80時間超過に相当する社員は114人と減少しておりますが、依然として特定の部署や社員に業務負荷がかかる状況が続いています。
原因としては、「過剰なクオリティ志向」「過剰な現場主義」「強すぎる上下関係」など、当社独自の企業風土が大きな影響を与えていると考えております。
(4)三六協定違反と不適切な勤務登録について
2015年4月以降、三六協定違反ゼロに取り組んできた結果、三六協定の月次違反件数は、月間平均で2013年に1,573件、2014年に1,473件、2015年に465件、2016年に1.4件と、大きく減少しております。
ただし、社員の入退館の状況を確認したところ、終業と退館に1時間以上の乖離があった件数の月間平均は、2013年が5,626件(マネジメント職以外の社員が1カ月に1.0回相当)、2014年が6,716件(同1.2回相当)、2015年が8,222件(同1.5回相当)と増加傾向にあることが分かりました。その後、長時間の在館は心身に負荷がかかることに鑑み、終業後は早めに帰宅することを促すなどした結果、2016年は4,705件(1カ月に0.9回相当)となっております。
当社では、入退館の時刻と自己申告の始業終業時刻に乖離が生じることがあれば、その事由を社員が登録申告し、上長が承認することで乖離時間を私事在館として容認してきました。この点については、本年10月中旬に先般の労災認定を踏まえ、特に私的情報収集や自己啓発については認識を改めることにいたしました。具体的には、社内飲食やサークル活動等、明らかに業務とは異なるものは一部容認するものの、それ以外の私事在館は原則禁止とし、業務上必要な情報収集や自己啓発は業務として勤務登録する運用に変更しております。
従来は時間外勤務をした際には必ず登録するという指導を徹底し、不適切な勤務登録(過少申告)を発生させないことを重視してきましたが、結果として、三六協定違反が出てしまったことにつきましては、三六協定を順守するというコンプライアンスの意識が希薄であったこと、またその結果として長時間労働を容認していたことを、深く反省しております。
今後は三六協定の違反をゼロとし、加えて勤務登録の過少申告がないように徹底してまいります。
2.当社が進める抜本的な労働環境改革について
当社は、高橋まつりさんのような出来事が二度と起こらないようにするため、経営の優先順位において「社員」を第一に置くこと、すなわち「社員一人ひとりを見守ること」が何よりも大切であると位置づけます。すべての社員が、心身ともに健康に働くことのできる環境、多様な価値観に応じた多様な働き方を通じて、自己の成長を実現できる環境、これこそが、当社の持続的な成長にとって最も重要なことであると認識を改め、またそのような労働環境を実現することが、当社が社会に対して果たすべき役割と責任であると認識し、この労働環境改革を進めてまいります。
本年11月1日に発足させた「電通労働環境改革本部」を中心に、労働環境の改善と長時間労働の撲滅に向け、実効性をあげていけるよう全力で取り組んでまいります。2017年1月からは、過重労働問題の根本的な解決に向けて、新たに任命した専従執行役員を中心に、法令順守の徹底と実効性のある再発防止策を推進していきます。喫緊の課題を「業務量の適正化」「組織運営のあり方と各種制度の見直し」「企業文化の再定義」にあると捉え、さまざまな施策の検討とその具体化を進めており、すでにいくつもの施策に着手しております。さらに、各局に人材マネジメントを担当するマネジメント職(HRM担当局長補)を新たに配置することで、局員のタイムマネジメントや健康管理、ハラスメントの防止、業務アサインの適正化やキャリア開発支援等、人材マネジメントを総合的かつきめ細やかに行ってまいります。
また、その進捗と実効性について、外部有識者による監督委員会を設け、検証を継続してまいります。
3.社内処分について
当社は、一連の問題についての責任を明確にするため、2017年1月開催予定の取締役会において執行役員の処分を行います。また、その他関係社員についても、社内規則に則り厳正な処分を行います。