「日本に避難できますか?」ダーニャ(安青錦)から悲痛メッセージ ウクライナ出身大関誕生の陰に...ある大学生の献身「日本で唯一、頼れるのは僕」
2025年11月26日 23時00分
◆だいやまーく連載「運命の糸・新大関・安青錦(上)」
関脇安青錦(21)=安治川=の大関昇進が正式に決まった。ウクライナ出身では初の大関昇進。安青錦はどのように戦禍を逃れて来日し、安治川部屋へと入門できたのか。運命の糸に導かれて出会った2人の話をもとに、2回に分けて連載する。
ダニーロ・ヤブグシシン、後の安青錦は2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻が始まるとすぐ、母が働くドイツ・デュッセルドルフへと逃れた。3月23日生まれで当時はまだ17歳。徴兵される可能性があり、出国禁止となる18歳直前のことだった。
戦争がなければ大学に進学し、世界大会で活躍してから入門することを思い描いていた。狂い始めた人生の歯車。それでも6歳から始めた相撲で日本の大相撲に入る夢はあきらめきれなかった。避難民として来日することを決意。関西空港に降り立ったのは4月12日だった。
関大相撲部で(山中新大さん提供)
戦争がなければ大学に進学し、世界大会で活躍してから入門することを思い描いていた。狂い始めた人生の歯車。それでも6歳から始めた相撲で日本の大相撲に入る夢はあきらめきれなかった。避難民として来日することを決意。関西空港に降り立ったのは4月12日だった。
来日がかなったのは、当時関大4年の山中新大さん(26)=現関大職員=が全てを準備して迎え入れてくれたからだった。2人の出会いは戦争が始まる3年前。山中さんがダニーロ少年にかけた「ハロー」のひと声が始まりだった。
19年10月。安青錦は堺市で開かれた、18歳以下が出場する世界ジュニア選手権の中量級(100キロ未満)に15歳で出場し、3位に入った。関大相撲部に所属していた当時1年生の山中さんは、父と会場で観戦していた。
今と同じように低い姿勢で攻める選手を見つけた父が「あのウクライナの子、強いよ」と指さした先にいたのが安青錦だった。山中さんも「強い子がいるな」と強烈な印象を受けた。山中さんが席を立ってトイレに向かうと、目の前を安青錦が通りかかった。思わず「ハロー」と声をかけた。
「世界3位になってビックリしました。ダーニャ(安青錦の愛称)に何歳って聞かれたので、ぼくは20歳だったんですけどtwentyをtwenteenと聞き間違えられて。12歳?って。向こうもビックリしてました」。それが最初の出会いだった。
日本で迎え入れてくれた山中新大さん(右)と来日したばかりの安青錦(2022年6月)
「世界3位になってビックリしました。ダーニャ(安青錦の愛称)に何歳って聞かれたので、ぼくは20歳だったんですけどtwentyをtwenteenと聞き間違えられて。12歳?って。向こうもビックリしてました」。それが最初の出会いだった。
パンフレットの名前からインスタを調べ、やりとりが始まった。侵攻が始まり、「大丈夫?」と問いかけると、しばらくたった22年3月上旬に「日本に避難できますか?」とメッセージが届いた。
「ドイツには相撲をする環境がない。日本で唯一、頼れるのはぼく。できることがあるならサポートしたかった」と山中さん。両親も賛成してくれた。山中さんの実家で寝食を共にした。安青錦は大好きな相撲の動画をずっと見ていて、「はっけよい」という音声がトイレから漏れ聞こえてきた。
「行くとこまでは行くと思っているので。大相撲界を引っ張る力士になってほしいし、なると思ってます。一番は、けがなくやってくれたらいいんですけど」
互いに「あらた」「ダーニャ」と呼び合い、しこ名の名前に「新大」を選んだ安青錦を、山中さんは兄のようなまなざしで見守っている。
<連載(下)>に続く
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