文化庁 AGENCY FOR CULTURAL AFFAIRS

第9期文化審議会第1回総会(第48回)議事録

1 日時
平成21年2月18日(水) 10時32分〜12時5分
2 場所
文部科学省 東館 3F1会議室
3 議題
  1. (1) 会長の選任
  2. (2) 文化審議会運営規則等について
  3. (3) 文化行政に関する最近の動向について
  4. (4) その他
4 出席者
青山委員,足立委員,いで委員,内田委員,佐々木委員,里中委員,清水委員,田村委員,中山委員,西原委員,野村委員,林 委員,林田委員,宮田委員,森西委員,山内委員,山脇委員
(欠席者)
田端委員,堤 委員,東倉委員
(配付資料)
  1. 第9期文化審議会委員名簿
  2. 文化審議会について
  3. 文化審議会関係法令
  4. 各分科会への委員の分属
  5. 文化審議会運営規則
  6. 文化審議会の議事の公開について
  7. 文化政策部会の設置について
  8. 文化政策部会への委員の分属
  9. 平成21年度文化庁予算(案)について
  10. 文化発信戦略に関する懇談会 報告(案)

午前10時32分 開会

しろまる小松政策課長
皆様,おはようございます。
それでは,ただいまから文化審議会第48回の総会を開催いたします。
本日はご多忙な中ご出席をいただきまして,どうもありがとうございます。
私は,文化庁の政策課長の小松でございますが,本日は第9期の文化審議会の第1回目でございまして,後ほど会長を選出していただきますが,それまでの間,私が議事を進めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議事進行につきましては,まず今申し上げましたように,会長及び会長代理を選任いただきます。その後,事務局から審議会関係法令についてご説明申し上げ,続いて文化行政に関する最近の動向といたしまして,事務局から平成21年度予算案,それから文化発信戦略に関する懇談会におけるご議論を紹介いたしまして,委員の皆様からご意見を賜りたいと存じます。
本日は,浮島文部科学大臣政務官が出席しておりますので,浮島政務官よりごあいさつを申し上げます。よろしくお願いいたします。
しろまる浮島文部科学大臣政務官
皆様,おはようございます。ただいまご紹介いただきました,文部科学大臣政務官の浮島とも子です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
また,本日は第9期の文化審議会の第1回の総会,本当に朝早くからご苦労さまでございます。また,委員の皆様にはご就任いただき,心から感謝御礼申し上げます。また今後ともよろしくお願い申し上げます。
現在,国内外とも大変厳しい状況でございますけれども,こういうときこそ私は文化・芸術の力が必要である,重要であると考えているところでございます。皆様のお手元に配付をさせていただいておりますが,大臣のほうから今回,「新しい日本の教育今こそ実行のとき!」というペーパーと,裏には「心を育む」ための5つの提案というのを今回発表させていただきました。この「心を育む」ための5つの提案の中には,3番目に,生きる基本の育成として,先人の生き方や本物の文化・芸術から学ぶということも今回盛り込ませていただいたところでもございます。
私も小さいときからバレエをやっていまして,文化や芸術については,様々なものに親しんでまいりました。現代の子ども達は,TVゲームなど手軽に楽しめるものが身近に溢れているため,国内外の優れた文学や演劇などの芸術作品に親しむ機会が少なくなっているのではないかと思います。言葉に温度があるということを伝えていくのが私たち大人の責務ではないかということを今感じているところでございますけれども,文化・芸術の振興に向けて,国家戦略として,これからもしっかりと取り組んでまいりたいと思いますので,どうか皆様の忌憚のないご意見を伺いながら,またお力添えいただきながら,これからも頑張ってまいりたいと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。本日は本当にご苦労さまでございます。
しろまる小松政策課長
続きまして,第9期文化審議会の委員の方々をご紹介させていただきます。皆様のお手元の資料で総会議事日程の下に資料1とございまして,そこに名簿がございます。名簿の順にご紹介をさせていただきます。《委員紹介》
しろまる小松政策課長
それでは,第9期文化審議会の会長及び会長代理をお選びいただきたいと思います。文化審議会の議事の公開という取り決めがございまして,人事関係につきましては非公開とさせていただいておりますので,申しわけございませんが,一般傍聴者の方はいったんご退出をお願いいたします。

(一傍般聴者退室)

(注記)会長に西原委員,会長代理に宮田委員が選ばれた。

(一般傍聴者入室)

しろまる西原会長
それでは,議事に入ります。
事務局から配付資料の確認をよろしくお願いいたします。
しろまる事務局
《配付資料の確認》
しろまる西原会長
では,本日は,本審議会の概要につきまして,事務局からまず簡単にご説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
しろまる小松政策課長
《資料2〜資料7により文化審議会の概要説明》
しろまる西原会長
ありがとうございました。ただいまのご説明につきまして,ご質問がございますか。よろしゅうございますか。
では,続きまして,ただいまご説明のありました文化政策部会でございますけれども,資料7,先ほどお示しくださいました資料7でございます。先ほどもご説明がありましたけれども,平成19年6月に設置され,資料3の5ページに,その委員につきましては会長が指名するということになっております。田村委員,堤委員,宮田委員,山内委員,山脇委員の5名の方を指名させていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
しろまる西原会長
続きまして,平成21年度の文化庁予算案につきまして,事務局よりご説明をいただきます。
しろまる小松政策課長
《資料9−1及び資料9−2により平成21年度文化庁予算案について説明》
しろまる西原会長
ありがとうございました。
ただいまのご説明につきまして,何かご質問ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
しろまる西原会長
では,次に,文化発信戦略に関する懇談会につきまして,事務局よりご説明をいただきます。
しろまる小松政策課長
《資料10により文化発信戦略に関する懇談会について説明》
しろまる西原会長
ありがとうございました。
このことに関しましては,長官のほうからも何か補足をお願いできますでしょうか。
しろまる青木文化庁長官
どうもありがとうございます。2007年2月に文化審議会で了承されまして,その後大臣に報告され,閣議決定された文化芸術振興に関する基本方針の第二次方針というのがございまして,これは2007年2月から5年間を想定して,どういうことを文化芸術振興のためにやっていくかということを文化庁が決めたものでございます。
その中に重点事項というのがありまして,その第1番目が先ほどご説明いたしましたアートマネジメント,人材養成,これはまだ継続しておりまして,今は一般的な反応を見ているところでございますが,同時に第2項に国際文化交流を推進するという項目がありまして,それに基づいてこの文化発信戦略を懇談会として立ち上げまして,それでここに今,皆様にご説明いたしました報告のようなものがまとめられたわけであります。
その背景には,現代日本文化がこれほど世界的に受容され,また注目を浴び,愛好されている時代は,かつて日本の歴史にありませんでした。それで,アニメ・漫画とかはすぐ出てくるんですが,そうではなくて,ファッションももちろん,料理や食文化も,それから先ほど書いてありました日本の伝統的な文化や工芸品ですね,それから,例えば昨年は源氏物語千年紀だったんですけれども,フランスで7年かけて大変きれいな絵巻物,挿絵を収録した源氏物語の完全訳が出まして,これが数千部完売するような現象にもなっているわけでございます。
それで,どこへ行っても日本文化についてはいろんな評判があって,いろんな質問を受けるのですが,ただ,こういうものは,アニメ・漫画はもちろん文化庁が奨励してつくったわけでありません。もちろん日本のアーティストたちが頑張ってつくったものが世界的に愛好されているわけです。また,戦後日本社会というものの背景の中で生み出された芸術でありまして,これは村上春樹の文学とか,あるいは村上隆のアートといったものが端的に表現しているわけですけれども,それをやはり欧米各国のこれまでの文化対外発信と比べますと,日本はやはりその点で非常に不備があります。せっかくこれだけの文化というものを構築しているのに,それを効果的に発信する枠組みはなかなかうまくいっていない部分があるとのご指摘もたくさんございます。
例えばフランスの日仏会館のような組織は世界100国以上に展開しています。またドイツのゲーテ・インスティテュートとか,それからもちろんブリティッシュ・カウンシルとか,そういうものは100カ国以上に展開しているのに,我が国際交流基金の事務所あるいは文化センターは全世界で21しかない。そういうことも含めまして,文化庁はやはりこういう現象を一過性のものに終わらせるのではなくて,やはり日本文化総体をいろんな形で発信していきながら世界に定着させていくという義務といいますか,任務があると思います。
そういう点で,日本の中の官庁において,日本文化について,伝統から現在まで一番知識が蓄積され,またノウハウを持っているのは文化庁以外にございませんので,この文化庁が一つ音頭をとって,こういう対外発信の戦略を練るということは,非常に重要な意味があるというふうに考えております。それで,お忙しい委員の皆様にこういう報告書をつくっていただきました。
これを効果的に実施していくためにはもちろん,先ほどございましたように,文化庁だけではもちろんできないので,交流基金とか,外務省とか,ほかの官庁,それからもちろん民間の皆様とのいろんな協力を通して世界に発信していく。それでまた,それが日本の中でも大きな発展をするという方向で何とかやれないものかと思いまして,こういう懇談会の報告書をまとめていただきました。
今後,さまざまな分野でご活躍の皆様のご協力を得て,これを具体的にいろんな形で施策としてまとめて行っていきたいと思いますので,ご支援のほどをお願い申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。

しろまる西原会長 ありがとうございました。
座長でいらっしゃいました山内委員のほうからも一言,補足がございましたら,よろしくお願いいたします。

しろまる山内委員 ありがとうございます。
今の長官ご自身のご説明で尽きているわけでございますけれども,基本的に文化発信という,文化と戦略という表現の間にいささか表現の層のようなものを感じる向きもないわけではないと思いますが,言わんとするところは,日本のすばらしい伝統から現代芸術の表現に至る,こういう成果というものをオール日本,オールジャパンとしていかに世界の人々に知ってほしいと,こういうことに尽きるわけで,そういうことに対する取り組みが無駄なく,かつ効果的に行われると,そのためには何をなすべきかと,こういう問題意識が文化発信の戦略という表現になったというふうにご理解いただきたいのです。
その際に,今,長官のご説明にもありましたけれども,従来,文化行政というのは,内政面においてはどちらかというと文化庁,そして,外政,外交面においては外務省,とりわけ広報文化交流部,また国際交流基金などがそれぞれ所管すると,こういう国内の日本の行政機構の区分のようなものが行われてきました。これは役所である以上,そうした行政的な担当というものがあるというのはやむを得ないことでもあるのですが,しかしながら,学者,とりわけ芸術家のほうの立場からすると,もう一つ,もう一歩進んで,一貫した取り組みというものが全体としてできないものだろうかと,こういう問題意識をほとんどの委員が共有していたわけです。その観点から,このような報告というものが今,最終段階に近づいた形で出されたというふうにご理解いただきたいと思います。
長官ご自身もかつて文化人類学者として大学にお勤めでいらしたときに,必ずしも文化庁,文部科学省だけではなくて,むしろそれと同等に外務省での国際シンポジウムや国際交流基金の活動などにも参加されたと。このように文化交流事業というのは,個人というものを単位にした場合,芸術家,あるいは学者,あるいはそれ以外のジャーナリストの人,さまざまな分野において,個人を介して逆に行政機構が結びついていると,そこで信頼関係とお互いの理解がなされていると,こういう面もあるわけです。
そこで,私たちはそうした個人としての営みの中で,行政的に言えば分かれているようなこういう文化行政や文化外交の発信というものを,ある意味では人間的な個人として,存在として結びつけることにお役に立ちたいという問題意識がありまして,このような報告書を結実しつつあるというふうにご理解いただきたいのです。
最後に一言だけ具体的なことを申しますと,いろいろなことで抱負はあるのですが,余りたくさんを出してもいかがなものかと思いますし,理想的に言うとフランスのように文化省的なもの,そういうことができるのが望ましいのでしょうけれども,そこまでは直ちに現実的に行くことは難しいと。そこで,できることから始めると。何と言っても我々はできることからコツコツやるという,それに徹する。その道筋がこのような報告書に出ていると,そういう精神をご理解いただければ幸いです。
例えば,報告書の一番最後に,文化発信に貢献した外国人などの顕彰制度について記載しております。外国でご苦労していただいて,日本について紹介していただいた人たち,それから外国で活躍している日本人による日本文化の紹介,こうした方々をどのように顕彰していくかというのは,やはりこれは政府,あるいは日本社会の責任ではないかと思うわけであります。
そういう点で,従来の文化庁長官表彰という,こういう枠を使いつつも,例えば表彰の内容,名前などについて何か工夫の余地はないだろうか,もっと魅力的なアピールができるのではないかと,こういったことも議論されたということをご報告しておきたいと思います。
そして,宮田先生が既に文化庁長官表彰の,本審議会の会長代理である宮田先生が立派な賞牌,メダルをおつくりになられましたけれども,そのようなもので国際的にこの賞を受ければ,こういう顕彰を受ければ,こういう立派な日本の芸術家による立派なメダルをいただけるのだと,このようなものもやっぱり将来的に考えて,ぜひああいうものが欲しいなという,芸術家も学者もやはり人間でありますから,そういうきれいな立派なメダルをもらえたら嬉しいなという,こういうことは何も恥ずかしくないわけでありまして,そういうようなこと一つ一つから具体的に積み重ねていったらどうかということを長官などとともに話して,委員の各自の間で議論したところであります。
少し長くなりましたが,このようなことをやっているというご報告でございます。ありがとうございました。

しろまる青木文化庁長官
クリントン長官が先日来日した際,びっくりしたのは,最初に明治神宮に行ったことです。お祓いを受けて,それからお神酒を飲んでいましたね。あれは非常に特異なことではないでしょうか。例えば他の,ヒンドゥー教とか仏教のところでそういうことを,文化遺産は別としまして,ああいうことはされないですよね。日本の信徒というものの性格をやはりアメリカはよく理解していますね。つまり,ほかの宗教と競合しないような,そういう非常に柔軟な信仰であって,人類の普遍的な信仰ですから,基本はですね。ああいうことをするというのは何かすごいなと,僕はちょっと感激して,注目しているのですが,皆様のご意見もまたどこかで聞きたいなと思っていますが,ああいうことをアメリカが始めたのは,やはり,これはかなり戦略的ですよね。明治神宮に行くとはちょっと思わなかった。ほかのことはいろいろと,もちろんオバマさんもクリントンさんも,文化,文化と言い始めましたからね。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
今回は,今期の第1回の文化審議会の会合でもございますので,ただいまの報告を受けて,あるいは冒頭に浮島政務官のほうからいただいた資料もございますし,そのこと,あるいは文化審議会のこれからのお仕事につきまして,広くご意見をお一人お一人の委員からいただきたいと存じます。と申しましても,時間が余りたくさんあるわけではございませんので,各委員におかれましては,手短にご意見をちょうだいできたらと存じます。
まず,あいうえお順ということで,青山委員からお願い申し上げます。
しろまる青山委員
ただいまの文化発信についての報告書,今,中間案だと思いますけれども,これについては前回の会議でもこの総会でいろいろな方が発言された中をも取り込んで,こういうふうに中間案がまとまったことだと思いますので,私はさらにパブリックコメントなどを経て,立派な報告書になるようにご努力いただければありがたいなというふうに思っております。
しろまる西原会長
では,足立委員。
しろまる足立委員
文化審議会委員を拝命して,初めての総会の出席でございます。今までは国語分科会の委員を務めておりました。日本というのは古い文化を持っているのですけれども,今まで日本では,文化というものに対する国際貢献という意味合いをどう持っていくのかということがまだまだ足りないのではないのかなと思っています。
私が常々思っているのは,日本の国としてODAを,これから文化のODAを私は推進すべきではないのかなという感じがしております。たくさんの国,後進国等々に,建物だとか橋だとかという,こういうODAということをもうやり尽くしてきておりますけれども,その各国に対する文化に対するODAということが大変少ないのではないのかなと。これからは,日本は文化に対するODAを進めていくべきではないのかなという,こんな感じがしておりますものですから,そういう観点でもご審議いただければというふうに思います。ありがとうございます。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
では,いで委員。
しろまるいで委員
私も今回初めて文化審議会の委員に加えていただいたのですが,多分,著作権の分科会に振られているということは,私も権利者の一人としていろんな意見を言えということだろうと思いますので,それをわきまえて,これから参加させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
内田委員,よろしくお願いします。
しろまる内田委員
先程来伺っておりまして,特に私は専門が発達心理学でございますけれども,子供のメディアの開発とか,おもちゃの開発などにも携わってきた者から申しますと,やはり子供たちを取り巻く環境の中にある本物の芸術・文化に触れるということが,やがてその子たちが大人になったときに,それが絵の色彩になったり,あるいはいろいろ暮らし方のセンスにつながったりというふうなことがございます。そういう意味で,やはり本物を本当に隅々,日本の子供たちに触れさせるというような機会を意識してつくっていくというようなところに,もし発言の機会がありましたら,そのような子供の教育という面から,私もここの会で何かお役に立つようなことがあればというふうに願っております。よろしくお願いいたします。
しろまる西原会長
ありがとうございます。
佐々木委員,お願いします。
しろまる佐々木委員
私も今回初めて参加をさせていただくことになりました。先程来のお話を聞いておりまして,これからの日本の文化・芸術,やはり基本のところでどういうふうに理解をしていくかというところが一番重要だと思いますが,文化・芸術を理解して,さらにそれを継承していくという人材の問題ですね。これはやはり,先ほど内田委員が言われておりましたように,子供をターゲットにして非常に注意深く育てていかなければいけないだろうというふうに思います。今,最近のさまざまな文化庁がやられていること,あるいは文科省がやられていること,子供に対して,学校教育の中で文化・芸術をどういうふうに教えていくかということがよく取り上げられております。私は,これをぜひカリキュラム化をするという,きちんと確実に教えていくという,それが必要ではないかなというふうに思っております。
特にやはり日本の文化は,伝統文化から現代文化までというふうに非常に幅広いわけですから,その中で特に歴史というものをきちんと教えていくという,芸術の歴史をカリキュラムの中で定着させていくということが私は一番重要なのではないかなというふうに,最近は感じております。
それからもう一点,私は今,博物館というところで仕事をしているわけでございますが,よくこれは感じることですけれども,何か企画をして,そして展覧会をして人に来ていただくというときに,きちんと発信をして,こういうものを我々はやっていますよということを発信していくことは非常に重要ですが,同時に来ていただいた人が,ああ,よかったなと言って口コミで伝えてくださる。これが実は非常に大きな効果を持つわけです。
そういうことを考えますと,やはり海外の発信ということも,海外でいいものをきちんと,いろんなことを開催していくということは非常に重要なことですが,同時に海外から見える観光客に対して,どういうふうにきちんと対応していくかと。こういう人たちが非常に感動してくれれば,まさにその口コミが非常に大きな効果を持っていくだろうというふうに思っております。これは私の今置かれている立場から考えましても,そういう外国の観光客,観光で来てくださる人に日本の文化,伝統文化というものをどういうふうに感動を与えて,感動してもらって帰っていただくかということに腐心をしているというところでございます。一言,ごあいさつがわりに発言させていただきました。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
里中委員,お願いいたします。
しろまる里中委員
先ほどお話がありましたように,このご時世にもかかわらず,文化庁予算額が削られないというのは大変喜ばしいことですが,もともとのレベルが低いものですから,もう少し,減らされなくてよかったじゃなくて,実は文化力こそが国の力になると信じておりますので,各省庁と連携をとりながら,文化というのはすべての分野と切り離せないものですから,効果的なお金の使い方ということで,もう少し予算がとれるように,いろいろと頑張っていただきたいと思います。
ただ,お金はあればいいというものでなくて,その使い方が問題ですので,効果的に使うためには,やっぱり日本人一人一人,日本人と言わなくても,この国で生きる人すべての基礎教養の力がないと文化を理解できないと思うんですね。基礎教養を育むためにも,こちらにありました「心を育む」ための5つの提案とありますけれども,先人の生き方や本物の文化・芸術から学ぶとなっておりますが,本物に触れてもそれを理解するまず基礎教養,これを育てなければいけませんので,やっぱり文化庁の政策というのは,当然ながら,文部科学省と連携しなければいけない。
ですから,学校教育の中で,もちろん学力とか先端の科学に結びつく,そういう教育も大切ですけれども,基礎教養を育むということがテストの点数に結びつかないものですから,これまでどうしても低く見られてきた。でも,テストの点数に結びつかないということと,国民全体の基礎教養とか融通のきく力というんですか,そういうのはやっぱり違うと思いますので,文部科学省の教育面と連携しながら,文化力を育てていくための取り組みにもっと力を入れていただきたいと思いますし,文化政策というのは,すべての面とかかわっておりますので,科学技術とか,そういうことともかかわっておりますので,何かといいますと,文化庁は,最初に申し上げましたが,予算が少ないという,どうしてこんなに予算が少ないのかということを昔から皆さんおっしゃっているわけですけれども,どうしていつまでも庁なのかということも,皆さん感じておられると思うんですね。国のスリム化ということで,なかなか省に格上げというのは難しいかもしれませんが,長い目で見て,そういうことも視野に入れて文化庁の皆さんには頑張っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
清水委員,お願いいたします。
しろまる清水委員
私も新任でして,多少戸惑っておりますけれども,日本の古い文化に関しては多少なりとも見識はあるつもりですけれども,新しい文化に関しては余りよく知らないということがあります。私どもの大学にも,実はアニメーション学科とかマンガ学科という新しい学科ができておりまして,そういう先生方は非常に活発に活動していらっしゃいますので,そういう先生方と少し交流をとりながら,これから少し見識を深めていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
しろまる西原会長
ありがとうございます。
田村委員,よろしくお願いします。
しろまる田村委員
私もぜひ文化庁から文化省へということをまずお願いしたいと思います。これはなかなか難しいというふうに腰が引けるのではなくて,ぜひそれを目指すということを皆様で共有するということがすごく大切ではないかと思っております。
私自身は東京生まれ東京育ちなのですが,今静岡県に仕事を持っております。つくづく感じますのは,地方と東京の差ということを感じております。格差,格差というのは文化格差ではないかと。実は静岡県の県民所得は全国で3位だそうでございますので,文化格差というものをつくづく感じております。
この「心を育む」ための5つの提案とございますけれども,雑駁に子供に本物に触れさせるというのではなくて,日本の隅々の子供たちにそういうチャンスが与えられるように,ぜひ目配りをしていただきたいと思います。地方に今仕事を持っている者の務めとして,そのことをぜひお願いしたいと思います。この「心を育む」ための5つの提案とございますけれども,雑駁に子供に本物に触れさせるというのではなくて,日本の隅々の子供たちにそういうチャンスが与えられるように,ぜひ目配りをしていただきたいと思います。地方に今仕事を持っている者の務めとして,そのことをぜひお願いしたいと思います。
しろまる西原会長
続きまして,中山委員,お願いします。
しろまる中山委員
2点ございます。まず1点は,2月3日の大臣のペーパーでございますけれども,ここに述べられております7つの項目,これは大事なことであって,全然異論はないのですけれども,ここにぜひ著作権の問題についても言及をしていただきたいと思います。
といいますのは,一昔前ならこれでいいと思うのですけれども,この情報化時代,デジタル化時代におきまして,著作権法の持っている地位が飛躍的に増大しております。そして,現在日本のコンテンツビジネスの成長率というのは,世界の平均と比べてかなり,相当程度,落ちております。このままでまいりますと,日本のコンテンツの世界におけるプレゼンスは,もう間違いなく低下してまいります。そのための制度的インフラとして著作権制度は極めて重要でございますので,ぜひ言及をお願いしたいと思います。このペーパーはもう出されていますので,これはしようがないのですが,この次にこういう機会がございましたら一つお願いいたします。
それから,第2点は,既に述べられておりますけれども,予算でございます。私は毎年この審議会の第1回で申し上げているのですけれども,この予算は丸が一つ違うんじゃないかという感じがしております。文化立国とか,あるいは文化で産業を興すということは盛んに言われております。この審議会でも立派な議論がなされておりますけれども,1,000億の予算では竹やりで戦に行けというのに等しいと思っております。これは先進国と比べますと格段に違うわけであります。もう一つ例を挙げれば,戦艦大和みたいな,燃料なしで出撃せよと言っているに等しいわけであります。
これでは,とても文化で産業なんか興すことはできないし,先ほど言いましたように,日本のコンテンツビジネスは世界における地位がどんどん低下していくという状況になりかねないわけです。現実問題としては0.3%の増加ということで,これは文化庁の事務方のご努力というのは大変なものだと思います。このご時世,大変努力されたと思いますけれども,2億数千万というお金は,これは六本木の金持ちのお小遣い程度なんですね。この程度ふやしても,実際どのぐらい文化の発展に役立つか,極めて疑問。丸を1個ふやすと毎年言っていますけれども,そんなことをほえたって無駄なことはわかっていますけれども,しかしこの審議会でそういう意見があったと,あるいは強かったということをぜひ記憶にとどめておいていただきたいと思います。
以上でございます。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
野村委員,お願いいたします。
しろまる野村委員
日本は最近,数年ぐらい前からアジアの国で法整備支援というのをやっていまして,法制度の近代化を支援するということですけれども,日本は明治時代に主としてヨーロッパの法制度を入れたわけです。日本の成功例をアジアの国に学んでもらうということでやっているわけですけれども,具体的にカンボジア,ベトナムで民法の制定とか改正にかかわっております。これは文化発信というわけではないのですが,法律というものも文化の上に乗っかっておりまして,ヨーロッパではリーガル・カルチャーとか,あるいはCulture Juridiqueという表現もありますけれども,広い意味で学問の海外発信ということでやっております。例えばカンボジアで民法典の条文を我々が直接書いて,それをクメール語に翻訳するんですけれども,しばしば翻訳不可能と言われて,日本語のほうで考え直すということをやっています。明治のころは主としてフランス語,あるいはドイツ語を日本語に翻訳するというときに,新しい言葉をどんどんつくってきたわけですね。これは恐らく漢字の持っている造語能力だと思います。ベトナムは本来,漢字文化圏ですが,かなり以前から漢字は全く使われておりませんで,アルファベットをもとにした表音文字が使われていて,こちらのほうもなかなか新しい言葉をつくりにくい状況になっているんですね。
そうして考えてみると,明治の日本人は非常に偉かったと思うんですけれども,現代なかなかそこまで漢字の能力はないのではないかと思います。漢字の持つ能力というのをこれからは非常に大切にしていかないといけないんじゃないかというふうに思っております。
それからもう一つは,著作権分科会に分属しておりますけれども,かつては著作権審議会という別の審議会だったんですけれども,文化審議会の一分科会というふうになってから10年近くなります。最近は非常に文化を振興するために,著作権の改正によって文化を振興するという考えがかなり分科会でも目立っているように思います。もちろん著作権制度というのは文化の下を支えているインフラとして非常に重要なもので,文化の振興の妨げになってはいけないというのはそのとおりですが,逆に余り著作権制度だけで文化の振興が進んでいくと思われては,ちょっとまずいのではないかと最近感じているところであります。そういった観点から,文化審議会でも,著作権の分科会でも権利者と利用者の調整を図っていきたいと考えております。 以上でございます。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
林委員,お願いいたします。
しろまる林委員
大勢の先生方の審議でこれだけ非常に多面的に検討されたこれを拝見して,何か即座に意見を言えるような状態ではございませんが,やはり私も一番心配しておりますのは,こういう競争社会の中で,こういう文化的な面が相対的に軽くなってくるということでございます。これはお金だけではございませんで,それ以外の面でも皆さんの関心が,国内での関心がやはり軽くなるということを恐れております。そういうときに,こういうふうな施策のもとになる考え方がまとまり,それに基づいて具体的な実行がされていくということは非常に心強く思っております。
予算に絡めて申しますと,私が一番重要だと思っておりますのは,13ページの最後にあります各省庁の連携と官民の相互協力という,先ほど山内委員の言葉にもありましたけれども,やはり少ない予算の中で効果を上げていくためには,総合的な政策やその実行ということは非常に重要でございます。ぜひ,財政的に厳しい中では厳しいなりに工夫を施して,効果の上がる具体的な方法を考えていくという方向へ進んでいければ非常によろしいかなと思っております。
具体的に申しますと2点ございます。私が考えていますのは,一つは教育の面でございまして,文化の発信というのは,システマティックにやるということも大事ですけれども,先ほど佐々木委員のご発言の中にありましたように,個人の働きといいますか,機能は非常に重要でございます。特に教員養成の中にこういう分野を取り入れて,先生たち一人一人がしっかりした日本文化に対する理解を持って,そういう方による教育をしていただくというような方向にうまく進んでいけば非常によろしいかなと。
それからもう一つは,やはり観光でございまして,ただ来てもらってお金を使うだけじゃなくて,いかにこういう文化政策と結びついた総合的観光の施策ができるかと,これも非常に重要な点かと思います。
非常に整いませんけれども,この報告に敬意を表しながら,ちょっと気のついたところを申し上げました。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
林田委員,お願いいたします。
しろまる林田委員
私もこれで3期目ということになりますが,大体,日ごろ参加しておりますと,所属しております文化財の分科会のほうにかかり切りというようなことになるわけでございます。やはりこういう場で今伺っておりましても,今後の審議会におきましては,こういう議論がとてもますます大事になってくるだろうと感じがいたします。それで,特にその議論は文化政策部会を中心にやっていただいているという形になると思いますので,ぜひその機能をこれからも充実していただいて,ご活動をお願いしたいと思います。
それからもう一つは,予算のことがいろいろございました。私も皆さんの意見に全く賛成でございます。何とかしてもう少し総額がふえるような努力をしていくことはとても大事だと思っております。しかしあわせて,今,林先生もおっしゃいましたけれども,文化庁予算だけが文化予算ではないという面もあります。したがって,例えば具体的に申しますと,先ほどの報告にもありましたけれども,文化財関係で,地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律のような,関係省庁と連携して活動するということによって,それもある面では大きな意味での文化予算に入ってくるというような面が非常にいろいろこれから出てくるだろうと思いますし,実際そのように進めていらっしゃいますので,ぜひその方向を続けていただくと同時に,ある程度まとまったところでは,その関係でこれだけの文化的な活動ができましたというような形の報告をどこかでいただくと,もっとそれが目に見える形になってくるのではないかと思ったところでございます。
もう一点,これは個別の美術館としての今の関心事が一つあるんでございますけれども,国家補償制度についての議論が今出ておりますようで,大変心強く思っております。国家補償制度と申しますのは,美術館・博物館が外国などから美術品を借りてきて展覧会を開催する場合に,その保険料を,今は主催者が,特に山脇さんがいらっしゃいますから後でお話があるかもしれませんが,負担をしなければならいという,この金額がとても大きくなっておりまして,かなり入場者の入場料に反映をせざるを得ないような面もあって,ちょっとこれが我々として苦慮しているところでございます。こういうものは今,文化庁が予算をおとりいただきまして検討いただいている,かなり作業がこの間新聞にも出ておりましたし,国会でも議論があったようでございますから,私どもとしても期待をしております。直接に予算に計上しなくても,文化活動をこれによって大変支援していただくというような形で,効果が大変大きく出るものだと思っておりますので,そのような形も工夫しながらご努力いただければありがたいと思っております。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
では,森西委員お願いいたします。
しろまる森西委員
私も今年から参加させていただきます。この後,文化財分科会に所属いたしまして,私は専門が無形文化ということになるわけですが,ご承知のように,日本には国立の劇場が東京と大阪と沖縄にございます。私は日本芸術文化振興会のほうの委員も幾つかさせていただいておりまして,しかも関西から来ておりますので,日ごろから感じておりますことは,やはり同じ日本芸術文化振興会が運営に携わっている国立の劇場でも,東京と,それから大阪,沖縄の抱えている課題,現状に,流行の言葉で言うと,格差がございます。
5年ほど前に独立行政法人になりましたこともあり,またここ2,3年の間に本館が40周年,能楽堂が25周年,新国立劇場が10周年,国立劇場沖縄が5周年,そして4月からの新年度で国立文楽劇場が25周年ということで,節目の年ということもあり,随分振興に力を入れていただいているおかげもありまして,幸い今のところ,日本芸術文化振興会の事業というのは高い評価を得ているわけですが,中身を細かく分析していくと,実は大阪と沖縄はしんどいんです。
どこがしんどいかと言いますと,入場者数で判断されるんですね。東京はいつも大入りなのに,大阪,沖縄は50%の入りしかないというようなところが実情でございまして,私としては,そういう格差を克服していく方法を見つけていきたいと一つは思いますし,一方で,いい意味での大阪,沖縄,独自性も持っておりますので,そういったことをもっとアピールしていきたいと考えておりますのと,もう一つは,どうしても数字で判断されますが,芸術・文化というものは,数字だけではよい・悪いは決められません。ぎょうさんお客さんが来たから,それがいいのかというと,決してそうではないんですね。たくさん来てもらうにこしたことはないんですけれども,高い評価を得たんやけど,何やもう一つ入りが悪かったというのは確かにあるわけでございまして,そのあたりの判断の仕方みたいなこともこれから考えていく機会にしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
しろまる西原会長
山内委員,よろしくお願いいたします。
しろまる山内委員
先ほど発言したのにまた重ねて申しわけないのですが,今,節目という言葉が出ましたけれども,私の専門にかかわるほうで恐縮ですけれども,イラン・イスラム革命というのが起きて,ちょうど今年で30年という節目を迎えたばかりなんですね。イランは,アメリカ型の民主主義に慣れている方からすれば非常に不自然にお考えになられる方も多いかと思いますけれども,イランはやはりみずから,世界でも屈指の民主主義国家という,こういう認識を持っているわけで,政権交代がありますし,大統領選挙もあると。ただし,その民主主義というのは,私の友人のイランの研究者などの表現をかりれば,私は非常にうまい言い方だと思うんですけれども,傷ついた民主主義という言葉を使うんですね。
それで,今の皆様方の議論を伺っていまして,私も全く賛同するのですが,私の考えというのは,やや,この傷ついた民主主義をもじって言うと,傷ついた理想主義というか,傷ついた現実主義というか,理想を目指す,しかし現実との折り合いというようなものをどうつけていくのかと。大学で教育なんかに携わっていますと,理想と現実のはざまを常に揺れるという面もありまして,そういう思考法がやや自分では身についているかなという点は少し反省しなくてはいけないかと。
省への昇格,あるいは予算の省レベルへの増大,増額。これはいずれも大変大事なことで,こういった問題について私自身どう考えていくのかと,個人としても。それからこういう文化発信の取り組みについても,その種の議論というのは必ずしも反映というか話題にならなかったわけなので,話題にはならなくはなかったのですが,ちょっとそのあたりはやや足りなかったかなという点も含めまして,今後,自分の問題としては検討しなければいけないなというふうに感じております。
それから,格差の問題は大変大事なことで,東京では毎月,歌舞伎座,ちょうどあと1年で取り壊しになりますけれども,毎月昼も夜も,ともかく小屋が満員になるんですね。ところが,南座にしても,松竹座にしても,毎月小屋がそもそも立つということ自体があり得ない。あったとしても,南座は4月の顔見せはまたすごい料金をとったりする。あれで本当に大衆的に京都の市民や関西の人々にちゃんとした発信ができるのか,アクセスできるのか,そういう疑問なども一方ではあります。そういうやっぱりちぐはぐさというもの。
だから,ただ単に地方と中央だけではなくて,やはり興業実績というものを持たなければいけない,営業的立場から言えば。そういう難しさと,文化行政での支援というもののあり方,これがどういうふうになるのか。
それから,さっき申したように教育に携わっている者としては,小中高生あたりのそういう古典や現代にかかわる芸術・芸能に対する関心をどのように持たせていくかと。そういうものと連動させて興業実績や営業というものにも結びつけていくというようなことが何か考えられないかと。昔,我々が子供のころに文部省推薦映画というのをしばしば,よく先生に連れて行かれて見た記憶があるんですね。今,文部省推薦映画はもちろんあると思いますけれども,ああいう楽しい風物詩というもの,あるいはそういうものを工夫しながら,今度は,実際の演劇や芝居を見るというのはこんなに楽しいことなのか,美術館等々はさほどのお金もかかりませんから,小学生,中学生はよく見学に行きますけれども,こういう喜びなんかを演劇や芝居なんかでもぜひ,もちろん文楽とか浄瑠璃,古典に関してもそうですが,アクセスしてほしいと。邦楽なんかの問題も同じだと思いますが,そういう夢なんかを私は持っていると。
次回の,こういう懇談会報告を受けて何かを実現していくというときには,そうした日本からの発信という要素として,今のような面も考えていきたいと。私の,言ってしまいますと,傷ついた理想主義といいますか,傷ついた現実主義というものの回復のためにも,何とかそうしたことに少し努力してみたいなと思っている次第です。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
最後でございますが,山脇委員,お願いいたします。
しろまる山脇委員
私は,以前は新聞記者をしておりまして,そして8年ぐらい前から文化事業という仕事を始めました。主に美術展の開催とか,それから音楽会の開催などをやっているのですけれども,記者のときには見えなかった,文化事業をやってみて,日本の文化のあり方のいびつさというのがよくわかるようになったんですね。
先ほど林田館長からお話がありました,国家補償の問題というのがございますが,よく美術館で特別展,いわゆる展覧会をやっているのは,基本的には,美術館とメディア,新聞やテレビが主催をしております。そして,今は独法ですが,旧国立館,国立の博物館や美術館の経済的なリスクを100%負っているのがメディアなんですね。
それで,先ほど林田館長からお話がありました,美術品の保険なども結局,全部メディアが負っているのですが,例えば大きな展覧会になりますと,3,000万円から2,3億までの掛け捨てになるんです。それで,先進国で国家補償がないところは日本だけです。ただ,メディアが主催をやっているということがまた非常にめずらしくて,それによって国家補償が今までなかったということだと思うんですが,基本的には国家がやるべきことをメディアがちょっと負っていたかなというような気もしています。
ただ,民間を活用してくださるのは全然問題ないのですが,やはりこういった経済状況になりますと,メディアもだんだんへたりこんでいきまして,今までできたことがやはりできなくなる。それが協賛企業もだんだん少なくなるということで,負い切れないことがたくさんあるんですね。そうしますと,やはり国家が文化に対してどういうふうに腰を据えてやっていくのかということがないと,やはり民間もなかなか活動できなくなるというふうに思います。その一つがやはり国家補償だというふうにも思っております。
先程来,海外への文化発信ということがございますが,これもいろいろメディアが今までやってきたとは思いますけれども,やはり経済だけが大きくなっても,海外では絶対に尊敬されません。文化がきちんとないとされないので,これは本当に国家戦略として,国が腰を据えて,どういうふうに文化を発信していくのか,日本の文化をどうするのかというのがやはり必要だと思いまして,先程来出ております文化省になること,そしてそれにはやはりお金が絶対に必要ですので,予算をきちんと獲得するということ,微力ながらもちょっといろいろ発言したり発信したりしていきたいというふうに思っております。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
最後に,宮田委員からお願いいたします。
しろまる宮田会長代理
先生方からすばらしいご意見がありましたので,ほんの少しですが。
山下座長の文化発信戦略に関する懇談会の資料,大変心強く受けとめました。ご苦労さまでございました。その中で,8ページにあります顕彰制度でございます。レジオン・ドヌール。仕事柄,海外でのシンポジウムが大変多うございます。そのときに何人かの方がこのドヌール賞の小さなバッチをここにつけていらっしゃる。そうしますと,海外の中での発言力,それから周りの方での聞く力,両者が大変強うございます。私は持っておりません。
それで,これもぜひ日本の顕彰制度ということ,そして海外で活躍している日本人,日本で活躍してくださっている海外の方,これは戦艦大和をつくるよりも安いお金でできますので,ただし心の中での力というものは大変すばらしい威力を発揮します。人間力,文化力というのはそういうところにもありますので,これはもうすぐ進めていただきたいと私は思っております。
それから,もう一つちょっと足らないなと思っているのは,なぜ外務省,国際交流基金,国土交通省等でおしまいなのかと。もっと,例えばコンテンツの話,私そこの会議は出ておりますが,当然,経産省,先ほど経済だけではと言いましたけれども,経済も両輪だと私は思っておりますので,そのところによって力が出てくるし,そこからお金も入ってくるということになってくるならば,経産省との流れというのが,余り私見ていてタッグを組む力が少し弱いような気がする。これからはそこの部分もつけていくということが必要なのかなという感じがします。
以上でございます。ありがとうございました。
しろまる西原会長
委員の皆様方,どうもありがとうございました。
常々は分属されていらっしゃる分科会においてご議論が進む,そのときにはもう少し先鋭的な,目的をはっきりさせたご議論がいろいろ進んでいくと思うのですけれども,この総会で,もう少し大きな視野からこういうご意見の交換があるというのは非常に意味のあることだと思いますので,突然振られてご迷惑だった方も多かったと存じますけれども,こういう方々がこの文化審議会を構成して,こういうお考えを持ちながらそれぞれの分科会でご活躍だということで,皆様方がいろんなことを共有できたのではないかと思います。本当にどうもありがとうございました。
では,どうぞ,政務官のほうから。
しろまる浮島文部科学大臣政務官
本日は本当に忌憚のないご意見をたくさんありがとうございました。
私も皆様がおっしゃっていることが,本当にそのとおりだなと思うことばかりでございました。私も議員になって4年が過ぎたところでございますけれども,初めから文化省を,庁じゃなくて省にすべきだということも質問でもさせていただいてきたところでございまして,これからもそれに向けて頑張っていきたいと思うところでございます。
それと同時に,予算のことですけれども,本当にゼロが1つどころか幾つか足りないのではないかなと私自身も思っているところでございます。今回も本当にこういう金融危機ということで,実は文化庁予算,大分削られて当初は出てきました。その中でも,こういうときだからこそ絶対に過去最高にしなければいけないということで戦わせていただきまして,今,過去最高に計上させていただいているところでございます。しかし,まだまだ少ないということは本当にそのとおりでございまして,これからも予算の獲得のために全力で頑張ってまいると同時に,寄附文化のほうもしっかりと広げていかなければならないなと思っておりますので,またそのことに関しても皆様のご意見もいただきたいと思います。
あと,国家補償制度の件,何回かお話が出ましたけれども,私も世界からいろんな美術品を日本に持ってくるのに保険がすごく高いという声を数年前から伺っておりました。この件に関しても数年前から質問等させていただきまして,今いろいろ動かしていただいておりますので,ぜひとも国民の皆様に,本当に皆様がおっしゃっているように,小さいときからいろんなものを見て,聞いて,触れて,日本の文化というものをしっかりと,頭じゃなくて心でみんなが感じとっていけるように,これからも全力で頑張ってまいりたいと思います。また今後ともさまざまなご意見を賜りたいと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。
本日は本当にありがとうございました。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
長官,何かございますか。
しろまる青木文化庁長官
皆様,本当にお忙しいところでございますけれども,この審議会,あるいは分科会だけではなく,個人的にも文化庁にアドバイスをしていただきたいと思っています。皆様のご協力を心からお願い申しまして,御礼を申し上げたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。
しろまる西原会長
ありがとうございました。
ご協力によりまして,ほぼ予定された時間に終わることができました。どうもありがとうございました。では,本日の会議はこれで終了にさせていただきます。

午後0時5分 閉会

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