展覧会の入り口パネル。遮光器土偶に「どっグ〜な展覧会」の吹き出しがあしらわれている
「土器にドッキドキ」なんてギャグを飛ばされたら、「ルパン三世」の石川五ェ門よろしく、「またつまらぬものを聞いてしまった......」とぼやきたくなるのだけれども、土偶に「どっグ〜な展覧会」と言われると、なぜだか「カワイイヤツめ♪」と許せてしまう。それほどに、土偶には見る人を引きつける魅力が詰まっています。
北国からやってきた個性あふれる土偶たちに会いに、京都文化博物館(京文博、京都市中京区)の特別展「世界遺産 縄文」(朝日新聞社など主催)を訪れました。(撮影場所はいずれも京都文化博物館)
会場に入ると、十字架のような土偶が迎えてくれます。国の特別史跡・三内(さんない)丸山遺跡(青森市)から出土した重要文化財「大型板状(ばんじょう)土偶」の複製です。大きく口を開けた独特の雰囲気をまとい、来場者を縄文の世界へといざないます。
今回、展示されているのは、2021年に世界文化遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」からの出土物が中心です。土偶や土器、装飾品など計約250件を通じて、縄文人の暮らしと精神性に迫ります。
なかでも注目されるのが、土偶。西日本から出土する土偶の多くは、頭や手足が簡略化されるなどシンプルなつくりという印象がありますが、東日本〜北日本で見つかったものは、地域ごとに多種多様な造形が施されています。
今回、最も楽しみにしていたのが、宇宙人のような目が印象的な遮光器(しゃこうき)土偶です。複製2体を含めると、7体もの遮光器土偶が集結。東北を中心とする「亀ヶ岡文化」を代表する土偶ですが、一つ一つをよく見ると、手足の文様などが微妙に異なります。
手代森(てしろもり)遺跡(盛岡市)の遮光器土偶は、重要文化財に指定されています。
豊岡遺跡(岩手県岩手町)の遮光器土偶は、丸みを帯びたフォルムにかわいらしさを感じます。
藤株遺跡(秋田県北秋田市)の遮光器土偶は、両脚が欠けています。いっぽう星宮(ほしのみや)遺跡(秋田県大仙市)の遮光器土偶(秋田県指定文化財)は、片脚が欠けていますが、上半身に赤彩が残っています。
八日町遺跡(青森県三戸〈さんのへ〉町)の遮光器土偶は青森県重宝に指定されています。ほかの土偶と違い、頭は王冠をかぶったように表現され、上からのぞくと空洞がよく見えます。
1887(明治20)年、稲を育てる田んぼから出土した亀ヶ岡遺跡(青森県つがる市)の遮光器土偶(複製)も展示。原資料は国の重要文化財に指定されています。
恵比須田(えびすだ)遺跡(宮城県大崎市)で、壊れたところがほとんどない状態で見つかった、貴重な遮光器土偶(複製)も。原資料は国の重要文化財となっています。