日誌

3学期始業式校長講話

投稿日時 : 2022年01月07日 principal カテゴリ:

Think Outside the Box

皆さん、新年明けましておめでとうございます。昨日の雪で今朝の登校はちょっと大変だったと思いますが、まずは大きな事故もなくこうして3学期の始業式が迎えられることを大変嬉しく思います。

冬休みはどうでしたか?充実した時間を過ごすことができましたか?今回は2回目のコロナ禍の年末年始でしたが、帰省や初詣などの人出は、昨年に比べて少し多かったようです。皆さんの中にも、今年こそいい年になるよう地元の神社やお寺に出かけお願いした人もいると思います。特に受験を控えている3年生諸君は、受験に成功するよう神仏に手を合わせた人も多いと思います。しかし神仏に手を合わせただけでは受験は成功しません。「人事を尽くして天命を待つ。」という言葉があります。まずは最後の最後まで人事を尽くしてほしいと思います。

さて2022年、令和4年という年を迎えたわけですが、この新しい年の最初の講話にあたり、今日は「Think outside the box」をテーマに話をしたいと思います。皆さんは「Think outside the box」というフレーズを知っていますか。これは「既存の枠にとらわれない、独創的に考える」という意味のよく使われるイディオムです。この「これまでの枠にとらわれない独創的な発想・創造性」という資質は皆さんのような、これからしっかり学問をし、社会に役立つ人間になろうと考えている若者にとって、とても大切だと思い今日のテーマとしました。

昨年の11月22日に「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム〜次世代へのメッセージ」というイベントが北海道大学で開催されました。今年は「材料で未来を拓く」がテーマでした。フォーラムでは新しい化学反応をとおして、材料の新しい機能の研究をしている北海道大学の前田智教授や、LEDの開発で2014年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学の天野博教授が基調講演を行いました。前田教授は100万回以上実験をして、やっと1つの革新的な化学反応が見つかる、それほど開発には時間とコストがかかるという話や、その一方で、コンピュータの性能が向上することで、計算化学が効率化しているといった話をしました。また天野教授はインベンションは1人でできるが、イノベーションは一人ではできない。これからの時代は、理学・工学の研究者が社会的価値の創出を担うビジネス起業家などと協働してイノベーションを起こさなければならないと語っていたそうです。

さらに、このフォーラムでは「作ってみたい夢の材料」をテーマに高校生がアイディアを発表しました。その中の1人、北海道紋別高校の1年生が「屈折率1の物質を作りたい。コロナ禍でアクリル板が広がったが向こう側が見えづらかった。屈折率1の物質が開発できれば、光が屈折しないので見やすくなる。」という発表をしました。するとそれを聞いた天野教授は「私たちは眼鏡のレンズやコンタクトレンズに、今見ている情報に加えてインターネットの情報も映し出す、未来型のディスプレーの開発に取り組んでいる。それを実現するためには屈折率1に近い材料が必須だ。非常に素晴らしい視点だと思う。」とコメントしたそうです。

私たちの日常で困っていること、変えたいことについて既存の枠にとらわれずに独創的に考えることで、新しいアイディアが浮かぶ。今はできるかどうかわからないけど、そのアイディアの実現に向けて、今日からやるべきことをこつこつと努力する。素晴らしいことではありませんか。新しく奇抜なアイディアを持っただけでは、なにも生まれません。まずは興味を持った分野の基礎をしっかり学び、先行研究を知り、その分野のこれまでの歩み、歴史を学びながら新しいものを創造する。2学期の終業式で私は「歴史から学ぶ」というお話をしましたが、人文科学だけでなく自然科学でも、研究する分野の歴史と対話することはとても大切です。研究分野の歴史、先人の歩みを理解した上で、これまでの枠にとらわれない独創的な発想が生まれるのです。

このフォーラムには、1973年に「半導体のトンネル効果の発見」でノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈博士がビデオメッセージを寄せました。その中で江崎博士は「我が人生、何をなすべきか。人生はあなたが主役を演じるドラマであり、そのシナリオが問われる。試行錯誤を繰り返し、人生のドラマの主人公を的確に演じ社会に貢献してほしい。安定した社会では将来は現在の延長線上と思いがちだ。しかし変革の時代には、革新的なものが誕生し将来は創られる。決定的な役割を演ずるのは個人の創造性だ。行きがかりやしがらみにとらわれてはいけない。既成概念を超えるところに発見のチャンスがある。」と高校生にメッセージを送りました。まさしく「Think outside the box」のすすめです。

今は変革の時代です。新しいウイルスとの闘い、気候変動、資本主義の行き詰まり、民主主義の危機。この世界の現状を見渡してみれば、決して安定した社会とは言えません。皆さんが社会で活躍する10年後、20年後に安定した素晴らし社会になっているよう、皆さんの創造性に期待しています。

それでは今日から始まる3学期、創造性が発揮できるよう、日々努力してほしいと思います。

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