3学期終業式校長講話
「らしさ」について
まずはじめに今回の国際理解委員の皆さんによるウクライナの人々のための募金活動について本当に感謝しています。ありがとう。
この募金活動は、国際理解委員が自発的に担当の先生に提案し実現しました。その提案の中で委員のみなさんは「困難を抱えている人たちに対して、物やお金を与えるだけが支援の方法でないし、この募金がウクライナの人々の生活の改善に有効な支援になるかわからないが、何もしないより、何かできる事をしたい」という思いだったそうです。多分、日々ウクライナの人々の惨状をテレビなどで見て、居ても立っても居られない気持ちだったのでしょう。私はその気持ちこそ人間として本当に尊いと思います。そして感動しました。理屈でなくまずは行動する。皆さんのような若い人たちにとって、それこそが尊いのだと思います。私が研修でいたJICAの「支援」の基本的な考え方は「お腹を空かせた人に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」ことでした。つまり技術を教え、人を育てることです。しかし今回のウクライナで起きていることは戦争であり、そんな悠長なことは言っていられません。今苦しんでいる人々を救うことが必要です。そういう意味で、今回の募金活動は大変意義のあることだと思います。これから多分、長期的な支援が必要になります。ですからみなさんには長期的な視点でウクライナを見つめ、思いを馳せ、何ができるかを考えてほしいと思います。またなぜこんなことが起きてしまったのか、そしてこれからの世界がどうなっていくのかについてもしっかり勉強してほしいと思います。
さて、今日は「らしさ」についてお話をします。皆さんも報道で知っていると思いますが、アメリカのトランプ前大統領が、今回の非人道的なロシアのウクライナへの軍事侵攻について「プーチンは天才だ。でも私が再選されていたら、こんことは起きなかった。」と発言しました。私は唖然として言葉を失いました。トランプが大統領だった4年間、彼は様々な混乱と分断をアメリカのみならず世界中に引き起こしました。人種差別問題で分断をあおり、移民に対して厳しくあたり、環境問題をないがしろにし、新型コロナ対策も真剣に取組みませんでした。またアメリカ第一主義を掲げ、中国をはじめ、イラン、EU、NATO、WHOなど、様々な国や国際機関とケンカをしてきました。しかし、こういった政策的な問題の他に、普通のアメリカ人がとても憂慮していたことがありました。それは「大統領らしさ」ということです。英語では、「presidential」といいますが、トランプ大統領はあまりにも「presidential」でない、大統領らしくないという問題です。そもそも王室のないアメリカは大統領に品位や尊厳、思いやりなど一国のリーダーとしてふさわしい人間性や資質を求めます。さらにアメリカは世界一の大国、世界のリーダーであるわけですから、それに相応しい振る舞いや言動を求められるわけです。しかし攻撃されればその倍返しで反撃する。それも口汚い言葉で相手を罵倒する。あの環境活動家で当時17歳のグレタ・トゥーンベリさんに対しても馬鹿にした発言をする。そして人々を、そして社会を分断していく。選挙に負けてもそれを一切認めない。そんな人物がホワイトハウスにいたということは、多くの普通のアメリカ人にとって耐えられないことです。私の知り合いのアメリカ人の多くは「national embarrassment、国家の恥、」だと言って嘆いていました。良識あるアメリカ人にとっては、このような世界のリーダーらしからぬ人物が自分たちの国の代表であることに本当に恥ずかしく思っていたのです。
なぜこの話をしているかというと、人は自分の地位や立場に相応しい言動、振る舞いをすることが大切だと私は思っているからです。政治家、会社の社長、警察官、医者、学校の先生、それぞれの立場に相応しい「らしさ」が必要だと思います。私も若い頃は、「らしくない」って「カッコいい」などと思ったこともありました。しかし大人になり歳を重ねていくうちに、やはり「らしさ」は大切だと思うようになりました。人間は年を重ねることで物の見方や考え方が変わるものです。私は和国の校長らしくありたいと思っています。
かつてイギリスの首相のウインストン・チャーチルは次のような言葉を口にしました。
"If you are not a liberal at twenty, you have no heart. If you are not a conservative at forty, you have no brain"
「二十歳の時にリベラルでないなら、情熱が足りない。40歳の時に保守的でないなら、思慮が足りない。」つまり人間は年を重ねることで、歴史や伝統に基づいた「らしさ」の大切さに気付いていくのです。守らなければいけないものの大切さを感じるようになります。
ここ数年、世間ではブラック校則が話題になり、生徒と先生がともに校則について話し合い変えていく動きが起きており、マスコミにも取り上げられています。このこと自体、私はいいことだと思います。しかしその時に忘れてはならないのが、この「らしさ」、「和国生らしさ」です。先生方がよく「品位」という言葉を使います。この「品位」という言葉の意味を、そして「和国生らしさ」とは何かを、今一度よく考えてほしいと思います。
和国は皆さんの日頃の活躍や、生徒ボランティアの協力によって素晴らしい学校説明会ができたことで、今年は特に高い倍率を誇る人気校として注目されました。中学生やその保護者、地域の大人も憧れと期待の目をもって和国を注目しています。先生と生徒がよりよい和国を創っていくために話し合いをすることは大切です。でもその時には、守らなければならないものを知っている大人の意見も聞いて、まさしく「落としどころ」を見つける知恵を養ってほしいと思います。みなさんには、是非このことを忘れないでほしいと思います。そして今後も和国が、ますます良い学校になるよう先生方と皆さんが協力していくことを期待しています。
最後に、来月には2年生はいよいよ3年生に、1年生は学校の中心として活躍する2年生になります。そして新入生を迎えます。それぞれ3年生は3年生らしく、2年生は2年生らしく振舞いができるよう成長してください。
では4月7日、元気に登校してください。