第33回卒業証書授与式式辞
式 辞
厳しかった寒さも和らぎ、春の息吹きが感じられるこの佳き日に、PTA会長・増田真由美様、PTA・後援会顧問・吉田功治様のご臨席を賜り、保護者の皆様をお迎えして、ここに埼玉県立和光国際高等学校・第33回・卒業証書授与式が挙行できますことは、卒業生はもとより、教職員にとりましても誠に大きな慶びであります。
只今、卒業証書を授与された318名の卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。入学以来、3年間の努力が実を結び、めでたく卒業するみなさんに心からお祝い申し上げます。
みなさんにとってコロナ禍が始まってからの高校生活は、我慢することの多い2年間だったと思います。1年生の締めくくりである3月からの約3ヶ月にもおよぶ臨時休業。学校の中心として活躍しようと張り切っていたみなさんにとって、出鼻をくじかれた思いだったでしょう。また、その後も度重なる緊急事態宣言の発令などにより、部活動の大会やコンクールが中止になったり、思うように活動ができなかったこともあったでしょう。また、みづのき祭などの学校行事も、大きく制限された環境の中での開催でした。さらに海外研修や修学旅行が実施できず、実体験から学ぶ機会や仲間との思い出づくりの場も奪われてしまいました。毎年当たり前のように行っていたことができなくなり、初めてコロナ禍前の生活が、いかに貴重であったかを痛感した人も多いと思います。もしかしたらコロナの影響で、家庭においても何か辛い思いをした人もいるかもしれません。しかしみなさんは、そうした全ての事から何かを学び、前向きに努力をし、乗り越えることで今日の日を迎えることができました。改めて心からお祝い申し上げます。
卒業は人生にとって大きな節目であり、新しい世界へ羽ばたく出発点であります。この輝かしい門出に当たり、私から3つのことをお話したいと思います
1つ目は「意思決定プロセスへの参加」ということです。この2年、コロナ禍の世界において私たちの心を曇らせたことがあります。それは民主主義への攻撃です。香港では国家安全維持法が施行され、人々から自由や人権が奪われています。ミャンマーではクーデターが発生し、現在も軍と市民との間で激しい闘いが続き、多くの人が犠牲になっています。そして今回のロシアによるウクライナへの軍事進攻。人間の尊厳はもとより、少なくとも冷戦後30年間続いてきた世界の秩序と民主主義を破壊する戦争が、今この世界で起きているのです。まさに歴史の分岐点を目の当たりにしているのです。
では民主主義が脅かされる時、つまり政治や社会がおかしな方向に進もうとしている時、みなさんはどうすればいいのか。それこそが「意思決定のプロセスに参加する」ことです。自らの意志を社会に示し、物事を決めるプロセスに参加することです。自分の意見を言葉にし、間違っていることには間違っているとはっきりと伝える。そして正しいと信じることを訴えていく。そうすることで意思決定のプロセスに参加し民主的な社会を創り上げていく当事者になることです。それは皆さん1人ひとりの義務であり責任なのです。選挙で1票を投じること、つまり選挙権を行使することは勿論ですが、しかしそればかりではありません。平和的なデモに参加する、SNSで意見を発信する、会議で発言するなど、自分の意志を示す方法はいくらでもあります。この4月に成人となるみなさんには、是非、責任のある大人として民主的な社会の「守り手」になってほしいと切に願っています。
2つ目は、「共感する心を持つ」ということです。これからみなさんは新しい世界に羽ばたいていきます。新しい環境に身を置き、新しい多くの人々と出会うことになります。自分と全く違った考え方、価値観を持った人と出会うことでしょう。また異なった文化や習慣、言語や宗教を持った人々とも出会うことでしょう。そんな時「この人は自分と違う」といって理解しようとすることを諦めたり排除したりしないでください。理解しようと努力する心、共感する心を養ってください。そしてもしどうしても「共感」できない時は、少なくとも「落としどころ」を見つける知恵を持ってください。自分と違った価値観を認め、理解しようとする「共感力」、そして共に生きていこうとする「共生力」は、本校の教育方針であり、グローバルリーダーを目指すみなさんにとって必要な資質です。そして、みなさんの人生を豊かにすると共に、これからの日本の社会も豊かにしていくのです。
そして最後は「和国で出会った友人を大切にしてほしい」ということです。コロナ禍はもう少し続くでしょう。人との接触を避ける生活やオンラインでの会議や授業、そして人との繋がりや親睦を深める機会がなかなか持てない日々が、4月からの新生活でもしばらく続くかもしれません。そうした生活の中で、もしかしたら寂しさや孤独を感じてしまうかもしれません。そんな時、大きな力となるのが和国で出会った友人です。3年間、共に生活し育んだ友情は、たとえ皆さんがそれぞれ違う道に進むとしても変わることはありません。寂しい時、不安な時、遠慮することなく連絡を取りお互いを励まし合い助け合ってほしいと思います。和国で出会った友人は間違いなくみなさんにとって一生の宝物です。大切にしてください。
最後になりましたが、保護者、ご家族の皆様におかれましては、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。この3年間で立派に成長されたお子様の晴れ姿を目にされ、喜びもひとしおのことと存じます。皆様には入学以来、本校の教育方針をご理解いただきまして、終始温かい御支援と御協力を賜りましたことを心より感謝申し上げます。
結びに本日、このように第33回卒業証書授与式を保護者の皆様と共に挙行できましたことに感謝すると共に、318名の卒業生のみなさんの輝かしい前途を祝し、今後の限りないご活躍を心から祈念いたしまして式辞といたします。
令和4年3月11日
埼玉県立和光国際高等学校長
鈴 木 啓 修