日誌

第3学期始業式校長講話

投稿日時 : 2024年01月09日 principal カテゴリ:

「反面教師」

皆さん、新年明けましておめでとうございます。まずは大きな事故もなく、こうして3学期を迎えられることを大変嬉しく思います。冬休みはどうでしたか?充実した時間を過ごせましたか?今回は、コロナが5類になって初めての年末年始ということで、皆さんの中にも家族で帰省したり、地元の神社やお寺に出かけお参りした人もいると思います。特に受験を控えている3年生諸君は、受験に成功するよう神仏に手を合わせた人も多いと思います。しかし神仏に手を合わせただけでは受験は成功しません。「人事を尽くして天命を待つ。」という言葉があります。最後の最後まで人事を尽くしてほしいと思います。

私の正月ですが、実は31日の大晦日あたりから熱が出始め、喉の痛みや頭痛に見舞われ、3日ぐらいまで37度から38度を行ったり来たりしていました。一応2日にコロナとインフルの検査をしたのですが、いずれも陰性で単なる風邪だったようですが、とてもつらい正月でした。テレビをつければ、能登半島の大地震の被災の状況が映し出され、とても正月を祝う気分ではなかったです。今回のこの大きな災害について心を痛めている人も多いと思います。この中から被災者のために具体的な行動に移す人が出てくれることを願っています。

さて、今日は「反面教師」という話をします。私は2学期の終業式に世界の紛争と分断、金と政治の問題、企業の不正事件など、君たち高校生からすれば大人たちはいったい何をやっているのだと怒りを感じている人が多いのではないかという話をしました。そんな大人に対して怒りを感じた時、是非、思い出してほしいのがこの「反面教師」という言葉です。皆さんは「反面教師」という言葉の意味は知っていると思います。調べてみるとこの言葉が最初に使われたのは、1957年に中国の毛沢東が「腐敗した組織について排除するのではなく、悪い見本からそうならないようにと、学ぶ事が大事だ」と説いた時の演説の中だそうです。広辞苑には、「見習い学ぶべきでないものとして、悪い手本、見本となる事柄・人物」と書いてあります。

ですから皆さんにお願いです。よくないことをしている大人を見たときに、「大人がああなら、俺たちもああでいいんだ。」とは思わないでください。「反面教師」として見て「ああいう大人には絶対にならない」と思ってほしいのです。

実は、私は自分の父親が「反面教師」でした。私が中学生のころまで、父親は小さな町工場の経営者で比較的、裕福な暮らしをしていました。しかし私が高校生になるころ事業がうまくいかず倒産してしまいました。父親は倒産の時、サラ金から金を借りてしまい個人的な借金も背負ってしまいました。父親は1年以上、行方不明になりました。家にはサラ金の取り立てが来るようになり、母親と2歳上の姉と私は親戚の家に身を寄せました。その後小さなアパートに3人で暮らすようになりましたが、それからの生活は本当に苦しいものでした。食べるものにも困る時もありました。姉は大学を諦め、就職をし、家を助けてくれました。私は親戚の援助もあり、大学まで行かせてもらいました。しかし自分に係るお金は、全てアルバイトで何とかし遊ぶことも控え、大変倹約した大学生活を過ごしました。今思うと、そのおかげで真面目に勉強することができたのかもしれません。

また、高校時代のある先生が、「お父さんを恨んでもお前の人生よくならないぞ。お父さんを反面教師として捉え、違った人生を努力して築け。」と言われたことが大きかったと思います。父親は人間としては悪い人ではなかったので、不思議と私はその先生の言葉がすっと心に落ち、父親を恨むことはありませんでした。「反面教師」として受け止め、私は強く思いました。「お金のために働きたくない。」と。そしてお金のために働くのではない教師の道を選びました。そういう意味で私の父親の教えてくれたことで今があると言ってもいいかもしれません。

近年、「親ガチャ」という悲しい言葉をよく耳にします。たしかに経済格差の固定化で学力や学歴に関して負の連鎖が起きていると社会問題化されています。しかしでは「親にはずれた人」に対して、国や社会が何かしてくれるのでしょうか?ちゃんと最後まで面倒をみてくれるのでしょうか?そんなことはありません。くれるとしても限界があります。やはり家庭の状況を乗り越え、何とかしていくのは、その人自身だと私は思います。

ここにいる皆さんも様々な家庭環境の中で日々生活し、学校に通ってきています。決して平等な環境ではないと、皆さん自身が感じていると思います。だからこそ自分と人を比較することなく、自分の与えられた環境の中で精一杯、努力してほしいと願っています。勿論、奨学金などの様々な支援制度をよく知り、社会からの支援を十分活用することは大切です。周りの人に相談する事もとても大切です。私は高校の先生からもらったアドバイスのおかげでしっかり心が決まったような気が、今でもしています。

今日は自分自身のナラティブ・物語を話ました。この話から、何かを感じてもらえればと思い、恥ずかしながらお話しした次第です。

今日から3学期が始まります。3年生諸君は、体調に気を付けて全力を出せるよう祈っています。1,2年生諸君は、次の学年に進むための大切な時期です。目の前にある課題を客観的に見つめ、それに真摯に取組む、謙虚な姿勢を持ってほしいと思います。

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