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子宮頸がん予防接種(HPVワクチン)【小学6年〜高校1年の方向け】

公開日:2022年05月27日

最終更新日:2025年04月23日

稲葉 可奈子 先生

この記事を監修したドクター

Inaba Clinic 院長稲葉 可奈子 先生

共著:国立成育医療研究センター

ポイント

1HPVワクチンは子宮頸がんなどHPV(ヒトパピローマウイルス)による病気を予防するための予防接種
2小学校6年生〜高校1年生相当の女子はHPVワクチンの定期接種の対象で、無料(公費)で接種ができる
3全ての接種を無料で行うには、遅くても高1相当の9月までに1回目の接種が必要

HPVワクチンとは

HPVワクチンは子宮頸がんなどHPV(ヒトパピローマウイルス)による病気を予防するための予防接種です。かつては「子宮頸がんワクチン」と呼ばれていましたが、HPVの感染を予防することで、子宮頸がんだけでなく、尖圭(せんけい)コンジローマや、中咽頭がん、肛門がんなどのHPVが原因で生じるさまざまな病気の予防につながるため名称が変更されました。

しかし、子宮頸がんの原因のほとんどがHPV感染であり、HPVワクチンで子宮頸がんを予防することができることに変わりはありません。
HPVは主に性交渉で感染するため、初めての性交渉より前の接種が最も有効で、17歳未満で4価HPVワクチンを接種すると子宮頸がんの88%を予防できます。すでに性交渉の経験があっても有効ですが、なるべく早めの接種がより有効です。

HPVワクチンは小学校6年生〜高校1年生相当の女子を対象とした定期予防接種で、対象者は公費(無料)で接種できます。高校1年生相当の3月までに接種した分が助成の対象となります。

(注記)中学校卒業後に高校に進学していない人の場合は、進学していた場合の学年の数え方で「高校1年生の3月」までが対象となります。

現在日本で接種することができるHPVワクチンは3種類あります。感染を予防することができるHPVの種類によって、2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)があります。9価ワクチンの場合、15歳未満の場合は全部で2回、15歳以上の場合は全部で3回接種します。全部接種するには約6ヶ月かかります。高校1年生相当の方がこれから初めての接種をする場合、9月までに1回目を接種し、翌年3月までに3回目を終わらせることができれば全て無料で接種ができます。2価ワクチンと4価ワクチンは年齢に関わらず3回の接種が必要です。

この期間を過ぎてしまうと自費での接種となります。全3回の接種で約10万円かかるので、大人になってから自分で接種しようと思うと高額になってしまいます。HPVワクチンは17歳になるまでに接種する方がより効果的と言われていますので、なるべく無料で接種できる定期接種の対象期間の接種がおすすめです。

若いから大丈夫、じゃないがん、それが子宮頸がん

子宮頸がんは、子宮にできる「がん」の1つです。毎年約1万人が子宮頸がんと診断され、子宮摘出などの治療を受けています。
子宮頸がんが一番発症しやすいのは20-40代と若いのが特徴で、子宮頸がん患者の約9割で子宮摘出や放射線治療、抗がん剤治療などの治療が必要になります。また、日本における子宮頸がんによる年間死亡者数は約2900人で、海外ではマザーキラーとも呼ばれています。

子宮頸がんの原因であるHPVは約8割の人が一生に一度は感染すると言われているとてもありふれたウイルスです。つまり、だれもが子宮頸がんになる可能性があるのです。

「若い人でもかかる」「だれでもかかりうる」と聞くと不安になるかもしれませんが、子宮頸がんは、「予防接種」と「がん検診」とで、多くを予防することができます。

子宮頸がんはHPV感染が原因でないものも稀ながらあるため、HPVワクチンのみでは、すべての子宮頸がんを防げるわけではありません。そのため、HPVワクチンを接種した人も、20歳をすぎたら2年ごとに子宮頸がん検診を受けましょう。ただし、がん検診だけ受けていればいいかというと、そうではありません。
子宮頸がん検診は子宮頸がんの手前の前がん病変(異形成)の段階で早期発見するための検査です。前がん病変の段階では自覚症状はなく痛くもかゆくもありませんが、数ヶ月ごとに産婦人科で細胞や組織などの検査を受けて経過観察が必要です。進行していたらどうしよう、という不安も伴いますし、前がん病変は女性にとってはとても負担な状況です。また、前がん病変が高度異形成・上皮内がんという状態に進行した場合などには、子宮頚部の円錐切除術が行われます。円錐切除術後の妊娠は早産のリスクが高いことが分かっています。
早期発見でがんにさえならなければ良いわけではなく、HPVワクチンによって前がん病変のリスク自体を下げることは女性にとってはとても重要です。前がん病変も予防することができるのはHPVワクチンだけです。

HPVワクチンは安全なの?

2013年にHPVワクチンの副反応ではないかと疑われた症状について大きく報道されましたが、その後、国内外で多数の大規模研究が行われ、副反応と疑われた症状の発生頻度はHPVワクチンを接種したグループと接種していないグループとで差がないことが確認されています。つまり、副反応と疑われた症状とHPVワクチンとには因果関係は示されていません。WHOは「HPVワクチンは極めて安全性が高い」としています。

では報道された症状はなんだったのかというと、HPVワクチンとの因果関係はなく、接種後ストレス反応(ISRR)もしくは機能性身体症状とされています。
接種後ストレス反応は、接種によるストレスや不安がきっかけであらゆる予防接種において起こりうる症状です。
機能性身体症状は、何らかの身体症状はあるものの、画像検査や血液検査を受けた結果、その症状に合致する異常所見が見つからない状態のことをいいます。その症状の原因や経過に、心理・社会的な要因が影響しているとされています。身体症状としては、知覚症状(痛い、痺れるなど)や運動症状(痙攣、歩行困難など)、自律神経症状(動悸、下痢など)など、さまざまです。
もし接種後になにか気になる症状がありましたら、HPVワクチンが原因かどうかにかかわらず、接種した病院で相談しましょう。

HPVワクチンによる一般的な副反応は、接種時の疼痛やその後の接種部位の腫れで、いずれも短期間で改善します。
注射や採血で気分が悪くなったことがある人は、横になって接種することもできますので、接種前に相談しましょう。

HPVワクチンを接種してもらう方法

定期接種の対象の方は、お住まいの市区町村から接種予診票が送付されます。接種予診票が届いていない方、紛失された方は、お住まいの市区町村へ連絡をしてみて下さい(問合せ先は自治体ホームページなどでご確認下さい)。そして、医療機関に連絡して、ワクチン接種の予約をとりましょう。

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