メタボリックシンドローム・糖尿病
公開日:2016年03月30日
最終更新日:2025年07月08日
この記事を監修したドクター
子どもと女性のための病院と研究所国立成育医療研究センター
メタボリックシンドローム(メタボ)は運動不足や食生活の乱れによって内臓脂肪が蓄積されている複合生活習慣病のことをいいます。進行すると糖尿病や心筋梗塞、脳卒中になる危険性が高まりますので、40歳以上の方は積極的に特定健康診査(メタボ健診)を受けて予防していくことが大切です。
目次
メタボリックシンドローム(メタボ)とは?
生活習慣病といわれるおもな病気には、「肥満症」「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」などがあります。
これらの疾患は、それぞれに原因があるのではなく、内臓に脂肪が蓄えられる肥満によって引き起こされると考えられています。
内臓脂肪の蓄積によって起こる複合生活習慣病を「メタボリックシンドローム」といい、心筋梗塞や脳卒中に進行する危険性が高くなります。
日本の40歳〜74歳の成人男女の約900万人が有病者か、その予備軍であるという報告があります。
(2023年度 厚生労働省 特定健康診査・特定保健指導の実施状況)
メタボリックシンドロームの診断基準は?
メタボリックシンドロームかどうかの診断の基本は、ウエストのサイズです。ウエストサイズは、内臓脂肪の蓄積状態を知るための、ひとつの目安だからです。
そのうえで、中性脂肪やコレステロール、血圧、血糖などについても、次のような基準が設定されています。
ウエストサイズに加え、コレステロール、血圧、血糖の3つのうち2つ以上が基準値から外れると「メタボリックシンドローム」と診断されます。
1. 腹部肥満 | ウエストサイズ 男性85cm以上 女性90cm以上 |
---|---|
2. 中性脂肪値・HDLコレステロール値 |
中性脂肪値 150mg/dl以上 HDLコレステロール値 40mg/dl未満 (いずれか、または両方) |
3. 血圧 |
収縮期血圧(最高血圧) 130mmHg以上 拡張期血圧(最低血圧) 85mmHg以上 (いずれか、または両方) |
4. 血糖値 | 空腹時血糖値 110mg/dl以上 |
メタボリックシンドロームは心血管系の病気のリスクを高めます
メタボリックシンドロームは心血管系疾患のリスクを高めます。
体脂肪は、余ったエネルギーをいざという時のために蓄えておく貯蔵庫で、内臓脂肪と皮下脂肪に分けられます。
男性の肥満は、内臓脂肪が中心で、特に腸の周辺に脂肪が蓄積され、メタボリックシンドロームの原因となります。
女性の肥満は、皮下脂肪が中心で、特に臀部と大腿部に脂肪が蓄積されます。しかし、閉経とともに女性ホルモンが失われることで、女性も内臓脂肪が蓄積されやすくなって、男性型の肥満となり、メタボリックシンドロームのリスクが上がります。
40歳以上で公的医療保険に加入している人は、医療機関などで「特定健康診査」を受けて、心血管のリスクの評価を受けることができます。
リスクが高い人に対しては、保健師や管理栄養士などが生活習慣の改善のアドバイスを行う「特定保健指導」が行われます。
心血管リスクを低く抑える生活習慣
メタボリックシンドロームの人は、生活習慣の改善に努めることが重要です。また閉経以降の女性は、リスクが高くなりますので、予防的に生活習慣を変えることも大切です。閉経後も女性ホルモンがある時期と同じ食生活や生活習慣をしていると、メタボリックシンドロームになりやすくなります。
保健指導を受けても、心血管リスクが低下しない場合には、薬物療法も検討することになります。
メタボリックシンドロームのリスクを抑えるためには、生活習慣の見直しが基本です。次の7 項目を参考にしてください。
1. 禁煙し、受動喫煙を回避する
2. 過食を抑え、標準体重を維持する
3. 肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品の摂取を増やす
4. 野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やす
5. 食塩を多く含む食品の摂取を控える
6. アルコールの過剰摂取を控える
7. 有酸素運動を毎日30分以上行う
血糖値が高い状態が続くと糖尿病です
通常、食事をすると膵臓からインスリンが分泌されて、その働きで糖が代謝されます。
けれども、インスリンの分泌が不足すると、糖の代謝が適切に行われず、慢性的に血糖値が高い状態になります。これが「糖尿病」です。
糖尿病は、膵臓のインスリン産生細胞が破壊されインスリンの分泌が欠乏して発症する「1型糖尿病」と遺伝的要素に加えて肥満、運動不足などが原因となる「2型糖尿病」とに分けられます。
日本人の糖尿病患者さんの約9割は、「2型糖尿病」です。
2型糖尿病は一度かかると、完全に治すのはむずかしい病気ですが、適切な治療や生活習慣の改善によって、血糖値を良い状態に保ち、健康的で充実した毎日を過ごすことができます。なかには、薬を使わずに血糖値が正常に保たれる『寛解(かんかい)』という状態になる方もいます。早めに取り組むことで、将来の合併症を防ぎ、安心して元気な毎日を送ることが可能です。
糖尿病の初期は自覚症状がありません!
糖尿病初期は自覚症状がないのが特徴です。しかし、病状が進行していくと、のどの渇きや異常な量の水分摂取、多尿、だるさ、体重減少、視力低下などの症状が現れ始めます。
糖尿病で最も怖いのが合併症です。糖尿病を放っておくと、神経痛、網膜症からの失明、腎臓障害や足が腐る(壊疽)こともあります。
さらには、心不全や尿毒症、脳梗塞や心筋梗塞などの病気に発展して、生命に関わることさえあります。
糖尿病の治療法は食事と運動が基本です
「1型糖尿病」では、皮下にインスリンを注射します。
「2型糖尿病」では、血糖値をコントロールする食事・運動や血糖降下剤の服用により治療をします。
ただし、どちらの場合も食事療法が治療の基本中の基本です。
×ばつ25〜30kcalと制限されます。その範囲内でバランスよく栄養を摂ることが大切です。
また、運動は、血液中の糖分を消費するので、血糖値を下げる効果があります。毎日無理なく継続できるウォーキングなどがおすすめです。
* 標準体重=身長(m)×ばつ身長(m)×ばつ22
もっと知りたい! ドクター監修の記事を続けて読む