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クマにご注意ください
2025年09月09日
奥多摩
山村源
9月になり、奥多摩町の小中学校でも二学期が始まっています。
事務所最寄りの奥多摩駅に至るJR青梅線の電車には通学する小学生も乗っていますが、子どもたちの方からいつもとは違う音がするなと思って見てみると、なんとランドセルに熊鈴を付けるようになっていました。
ニュースでも報じられたのでご存じの方も多いと思いますが、令和7年8月23日に奥多摩町でツキノワグマによる人的被害が発生しました。
ツキノワグマへの対策について(注意!令和7年8月23日人的被害発生)/奥多摩町
ツキノワグマに注意してください | 奥多摩ビジターセンター
奥多摩のみならずクマの生息域にお出かけの際は、熊鈴など音が出るものを持つことなど、クマと出会い頭に鉢合わせしないような対策をお願いします。
また、クマに対してカメラを向けるなどすると、クマを刺激してしまい襲われる危険性が高くなります。クマと遭遇した際には撮影等をせず、静かに離れるようにしましょう。
秩父多摩甲斐国立公園内の各都県では、クマの目撃情報を公開しています。
埼玉県ツキノワグマ出没マップ(公開用)
都内での目撃等|ツキノワグマについて|東京都環境局
山梨県/ツキノワグマ出没に対する注意について
ツキノワグマ出没(目撃)マップ/長野県
クマは行動圏がとても広い動物であるため、目撃情報がない場所でも遭遇することがあります。市街地に出没することもありますので、秩父多摩甲斐国立公園内は全域がクマの生息域であるとご理解ください。
事務所最寄りの奥多摩駅に至るJR青梅線の電車には通学する小学生も乗っていますが、子どもたちの方からいつもとは違う音がするなと思って見てみると、なんとランドセルに熊鈴を付けるようになっていました。
ニュースでも報じられたのでご存じの方も多いと思いますが、令和7年8月23日に奥多摩町でツキノワグマによる人的被害が発生しました。
ツキノワグマへの対策について(注意!令和7年8月23日人的被害発生)/奥多摩町
ツキノワグマに注意してください | 奥多摩ビジターセンター
奥多摩のみならずクマの生息域にお出かけの際は、熊鈴など音が出るものを持つことなど、クマと出会い頭に鉢合わせしないような対策をお願いします。
また、クマに対してカメラを向けるなどすると、クマを刺激してしまい襲われる危険性が高くなります。クマと遭遇した際には撮影等をせず、静かに離れるようにしましょう。
秩父多摩甲斐国立公園内の各都県では、クマの目撃情報を公開しています。
埼玉県ツキノワグマ出没マップ(公開用)
都内での目撃等|ツキノワグマについて|東京都環境局
山梨県/ツキノワグマ出没に対する注意について
ツキノワグマ出没(目撃)マップ/長野県
クマは行動圏がとても広い動物であるため、目撃情報がない場所でも遭遇することがあります。市街地に出没することもありますので、秩父多摩甲斐国立公園内は全域がクマの生息域であるとご理解ください。
さて、私も長く登山をしてきておりツキノワグマやヒグマの話に触れる機会は多いのですが、意外と「ツキノワグマなんか大して怖くはない」という話を聞くことがありました。
確かに私が過去に遭遇したツキノワグマも大型犬ぐらいのサイズで、距離もあったため強い恐怖を感じるということはありませんでしたが、時には生命に関わる大怪我の事故が報じられることもあります。
では、実際にクマに襲われて、命がけで抵抗するような状況とはどのようなものでしょうか。
奥多摩の山岳救助隊を長く勤められた金邦夫さんの著書に、世界トップレベルのクライマーである山野井泰史さんが当時奥多摩にあった自宅近くでクマに襲われたときの話がありますので引用します。
(かなりショッキングな話ですのでご注意ください)
走り出して10分ほどの所にあるゲートを開けて入り50mほど走ったとき、ふと前方からこちらに向かって走ってくる獣が見えた。
「ンッ、カモシカかな?」
獣は唸りながらこちらに走ってくる。
「???」。グワーッと吠えた。
「クマだ!」
獣の後ろに小さな子グマの姿も見えた。山野井君は素早く反転しようとしたが間に合わず、クマに跳びかかられ、右上腕に嚙みつかれて山側に引き倒された。覆い被さってきたクマは人間の大人くらいの大きさで、腕を噛みついたまま離さない。恐怖のなか必死の反撃を試みる。大声を上げながら左手の肘をクマの顔面に打ちつける。耳のそばで聞く、クマのすごい唸り声と荒い呼吸。野生の獣の臭い。猛り狂った母グマの顔が目の前にある。体験したことのない身の凍るような恐怖。
クマの手は体のあらゆるところに爪を立て、こんどは山野井君の顔面に噛みついた。ちょうど鼻のあたりである。唸りながらその顔を左右に振る。鮮血が飛び散る。必死に肘打ちを続けるが、これ以上続けたら鼻を食いちぎられてしまう。痛みと恐怖で何度も意識が飛びそうになる。抵抗をやめた。フッと力を抜いたら、クマも顔を離した。「いまだっ」両足に渾身の力を込めて蹴り込んだら、クマと体が離れた。すかさず起きあがり、後方に走った。脇目も振らずに走った。クマの唸り声と、ときどき「ウオー」という咆哮が後ろで聞こえた。金網のゲートの所で振り向くと、まだ後を追ってはきていたが、追い付いてまた攻撃をしようという意図は見受けられなかった。とにかく姿が見えなくなるまで一目散に走った。もう一度振り向いたら、もうクマはいなかった。
繰り返しますが、これは過去に奥多摩町で発生した人的被害の話で、襲われたのは極限の状況をいくつも乗り越えてこられたクライマーの方です。
山野井さんはこの後病院に搬送され、ICU(集中治療室)で顔面と右腕を合わせて90針の縫合をする治療を受けたそうですが、これを読んでもなお「ツキノワグマなんか大して怖くはない」と言える人は多くないのではないでしょうか。
これからクマの出没が増えるとされる秋のシーズンを迎えます。
夏の猛暑が落ち着いてから登山へ行こうと計画されている方も多いと思いますが、クマへの対策を万全にして山を楽しんでほしいと思います。
参考文献
金邦夫『すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘』東京新聞(2015)
確かに私が過去に遭遇したツキノワグマも大型犬ぐらいのサイズで、距離もあったため強い恐怖を感じるということはありませんでしたが、時には生命に関わる大怪我の事故が報じられることもあります。
では、実際にクマに襲われて、命がけで抵抗するような状況とはどのようなものでしょうか。
奥多摩の山岳救助隊を長く勤められた金邦夫さんの著書に、世界トップレベルのクライマーである山野井泰史さんが当時奥多摩にあった自宅近くでクマに襲われたときの話がありますので引用します。
(かなりショッキングな話ですのでご注意ください)
走り出して10分ほどの所にあるゲートを開けて入り50mほど走ったとき、ふと前方からこちらに向かって走ってくる獣が見えた。
「ンッ、カモシカかな?」
獣は唸りながらこちらに走ってくる。
「???」。グワーッと吠えた。
「クマだ!」
獣の後ろに小さな子グマの姿も見えた。山野井君は素早く反転しようとしたが間に合わず、クマに跳びかかられ、右上腕に嚙みつかれて山側に引き倒された。覆い被さってきたクマは人間の大人くらいの大きさで、腕を噛みついたまま離さない。恐怖のなか必死の反撃を試みる。大声を上げながら左手の肘をクマの顔面に打ちつける。耳のそばで聞く、クマのすごい唸り声と荒い呼吸。野生の獣の臭い。猛り狂った母グマの顔が目の前にある。体験したことのない身の凍るような恐怖。
クマの手は体のあらゆるところに爪を立て、こんどは山野井君の顔面に噛みついた。ちょうど鼻のあたりである。唸りながらその顔を左右に振る。鮮血が飛び散る。必死に肘打ちを続けるが、これ以上続けたら鼻を食いちぎられてしまう。痛みと恐怖で何度も意識が飛びそうになる。抵抗をやめた。フッと力を抜いたら、クマも顔を離した。「いまだっ」両足に渾身の力を込めて蹴り込んだら、クマと体が離れた。すかさず起きあがり、後方に走った。脇目も振らずに走った。クマの唸り声と、ときどき「ウオー」という咆哮が後ろで聞こえた。金網のゲートの所で振り向くと、まだ後を追ってはきていたが、追い付いてまた攻撃をしようという意図は見受けられなかった。とにかく姿が見えなくなるまで一目散に走った。もう一度振り向いたら、もうクマはいなかった。
繰り返しますが、これは過去に奥多摩町で発生した人的被害の話で、襲われたのは極限の状況をいくつも乗り越えてこられたクライマーの方です。
山野井さんはこの後病院に搬送され、ICU(集中治療室)で顔面と右腕を合わせて90針の縫合をする治療を受けたそうですが、これを読んでもなお「ツキノワグマなんか大して怖くはない」と言える人は多くないのではないでしょうか。
これからクマの出没が増えるとされる秋のシーズンを迎えます。
夏の猛暑が落ち着いてから登山へ行こうと計画されている方も多いと思いますが、クマへの対策を万全にして山を楽しんでほしいと思います。
参考文献
金邦夫『すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘』東京新聞(2015)