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ドイツ:メルツ首相、石炭火力閉鎖ペースの緩和を検討

掲載日:2025年9月19日

9月10日付報道によると、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は業界会合で、新たなガス火力発電所が代替できる準備ができるまで、残りの石炭火力発電所の閉鎖を一時停止することを検討すべきだと述べた。

メルツ氏はベルリンで行われたエネルギー企業幹部の会合で、「誰も国の石炭火力発電からの撤退を止めたいとは思っていない」としながらも、「撤退はいつも非常に迅速で、参入は非常に複雑だ」と述べた。

欧州最大の経済大国であるドイツは、2038年までに最も汚染度の高い化石燃料の使用を終わらせることを約束しており、次期大規模褐炭発電所であるLEAG AGのヤンシュヴァルデ発電所は年末までにさらに1基の稼働を停止する予定となっている。石炭火力発電所と小規模褐炭発電所は2028年目標を既に達成しており、新たな閉鎖は差し迫っていない。

ドイツは2年前に原子力発電を停止しており、風力や太陽光といった再生可能エネルギーからの電力供給が不足した場合に備えてバックアップが必要となる。エネルギー規制当局は電力供給を維持するために、2035年までに22〜36GWの追加容量が必要になると述べた。

メルツ首相は「我が業界にとり電力供給の安定確保の問題は非常に優先順位が高い」と語った。

しかし、石炭火力発電所の閉鎖は政治介入とは無関係に規制当局によって命じられるためこの提案には議会の支持が必要となっている。連邦政府としては風力と太陽光発電の供給が逼迫した際に電力網を支えるため、ガス火力発電所の拡張を補助金で支援したいと考えており、ガス火力発電所を段階的によりクリーンな水素で稼働する施設に転換する計画となっている。しかし建設費用が高額で数十億ユーロ規模の補助金が必要であるためEUの承認が必要となる。

メルツ氏は10日、「全てをすぐ水素対応にする必要はない。暫定的な段階としてまずガス火力発電所を建設できる」と主張した。また送電網のボトルネックに対処するため、再生可能エネルギーの拡大を減速させることも示唆した。政府は9月中旬に発表される重要なエネルギー調査に基づき本決定を下す予定としている。当該調査は、今後数年間のドイツの電力需要予測を目的とした委託調査である。メルツ氏は、将来の電力需要に係るこの報告書の結論は参考資料として役立ち、今後何年にもわたるエネルギー戦略を形作ることになるだろうと述べた。

他方、再生可能エネルギー開発者らは、この研究の方法論を批判し、クリーンエネルギーへの野心を引き下げればドイツの気候目標が危険にさらされる可能性があると警告している。

(石炭開発部 宮崎 渉)

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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