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インドネシア:2025年インドネシアの石炭産業は転換点にある

掲載日:2025年8月22日

2025年8月11日付地元報道によると、インドネシアは世界最大の石炭生産国として国際市場における主導的地位を維持している。しかし、過剰供給・輸出収入の減少・世界市場の需要構造の変化の三重の圧力に直面し、石炭産業の将来は不透明さを増している。投資家にとっての課題は、石炭鉱山会社が事業の多角化や高カロリー炭への特化にいかに適応するかを見極めると同時に、気候変動対策や不確実性とどう両立させるかにある。

2025年の同国の石炭生産量は7億トン超の見込みであり、国内需要の堅調な伸びが下支えとなっている。一方で、2025年上半期の輸出量は前年同時期比6.33%減の1億8,419万トンにとどまり、輸出収入も21.09%減の119億7,000万米ドルに落ち込んでいる。平均輸出価格は64.99米ドル/トンまで急落しており、世界的な供給過剰と需要減退を反映している。主要輸入国であった中国やインドは国内で記録的量の石炭を生産し、インドネシアからの輸入依存度を低下させている。特にインドの火力発電所では石炭在庫が6,000万トンに急増し、20日分の稼働に十分な水準に達しており、価格下落に拍車をかけている。

こうした市場の不安定性を背景に、主要鉱山企業は非石炭分野への多角化を進めている。同国最大の石炭生産会社であるAdaro Energyはアルミニウム生産と再生可能エネルギーに投資し、長期的な安定性を模索している。同様にHarum Energyはニッケル精錬事業に注力し、EVバッテリー需要を取り込む戦略を進めている。

また、世界市場では高カロリー炭需要が拡大しており、特に中国は高カロリーの石炭を好むため、インドネシアの低カロリー炭は競争力を失いつつある。これに対応し、一部の鉱山企業は高品位炭生産のための設備近代化を進めている。しかし、この戦略にはリスクも伴っており、鉱山企業が自社所有の石炭火力発電所を拡張して自社炭を燃焼する方式は、年間5,300万トンのCO2排出量の増加を招き、パリ協定に基づく同国の32%の排出削減目標を阻害する可能性がある。

(ジャカルタ事務所)

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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