本書は、資料論・方法論をふくむ最新の研究成果に目配りをし、これまでと大きく異なる枠組みと視点で、ギリシア哲学史の全体を俯瞰する試みである。(※(注記)納富信留『ギリシア哲学史』裏表紙より)序. 古代ギリシア哲学を扱う和書としては,内山勝利 編『哲学の歴史〈第1巻〉哲学誕生―古代1 』以来,約十年ぶりの通史です. 『古代ギリシア哲学史』(以下 本書)では初期ギリシア哲学から古典期の哲学までの通史です.さて,初期ギリシア哲学(※(注記)ソクラテス以前という語は近年用いない傾向)の研究分野では,2016年にエポックがありました.そのことについて始めに説明しておきましょう. 初期ギリシアの哲学者たちの著作は殆どが散逸(消滅)したために,彼らの著作そのものを読むことは叶いません.そこで彼らの思想を知るために,「資料集」1を用いることになるのですが,その資料集が,ローブ古典叢書『初期ギリシア哲学』全九巻により,約百年