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屋久島と口永良部島の災害・防災

Eruption of Kuchino-erabu
2015年5月29日 口永良部島 新岳噴火/後藤利幸 氏 撮影

テーマセッション1
オーガナイザー 中川正二郎

中川正二郎 テーマ及びセッション 説明
下司信夫(産業総合研究所 大規模噴火研究グループ長)
「口永良部島の地質概要」
爲栗 健(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター 准教授)
「2014年以降の口永良部島の噴火活動について」
黒川 潮(森林総合研究所 山地防災研究グループ長)
「口永良部島2015年噴火直後の被災状況、及び屋久島5.18豪雨被災状況」
用貝敏郎(口永良部島火山防災連絡事務所 所長)
「屋久島の大雨と5.18豪雨の気象解説」
16:00-16:30 ステージ座談会(下司、黒川、用貝 司会・中川)

<テーマセッション趣旨>
地震、津波、巨大台風、ゲリラ豪雨等々、近年の自然災害は激しさを増しているように思えてなりません。日本一多雨と言われる屋久島と、活火山と共に暮らす口永良部島。屋久島町はタイプの異なる2つの島からなり、両島それぞれに特徴ある自然災害の危険性をはらんでいます。それらについて基礎から学び、今後の防災に役立てたいと考えます。セッション1では、気象、地質、防災の専門家達を講師にお招きし、主に近年噴火を繰り返している口永良部島の地質・噴火史・災害に焦点を当てます。気象については屋久島での豪雨メカニズム等について学びます。これから私達はどのように自然と向き合い、時に現すその凶暴な一面にどう備えるべきかを、これを機会に皆で考えて行きましょう。

講演 1「口永良部島の地質概要」
下司信夫(げし のぶお)(産業総合研究所 大規模噴火研究グループ長)

<講演要旨>
口永良部島火山は屋久島町に属しながら、屋久島とは全く異なる生い立ちをたどった火山島です.口永良部島火山は、霧島山や桜島から、開聞岳や薩摩硫黄島などを通って南西諸島に連なる琉球火山弧の火山の一つです.口永良部島の標高は海抜約650mですが、海底下にはさらに500〜600mの高さの火山体が隠れています.口永良部島の噴火活動の開始ははっきりしませんが、海面上のうち最も古い部分は島の北側の寝待温泉付近の海岸で約50万年前ごろの溶岩と見積もられています.口永良部島は、複数の小さな火山が少しつづ場所を替えながら成長したため、古岳や新岳など多くのピークが連なる複雑な形をしています.口永良部島では、1万5千年前ごろに島の中心部の野池山から大規模な噴火が起こり、ひょうたん型をした島の東側の大部分は火砕流で覆われました.その後、島の南部で噴火が繰り返し、今の古岳が作られました.古岳の形成中には、少なくとも2回大規模な崩壊が起きたと考えられます.2回目の崩壊後、今から約1000年前には古岳と野池山の間から大量の溶岩が流出して今の新岳ができました.古岳や新岳では、マグマと地下水が接触することによるマグマ水蒸気爆発も繰り返し起こっています.

<プロフィール>
2002年から口永良部島の火山地質の調査をはじめ、口永良部島火山の生い立ちや活動の特徴を調査.その結果を「口永良部島火山地質図」として公表しました.その後も屋久島における鬼界幸屋火砕流の分布やそれに伴う津波堆積物の調査などを継続しています.最近はさらに姶良カルデラなど多くのカルデラ火山の噴火履歴やマグマの特徴の調査などを進め,さまざまな火山の生い立ちや噴火のメカニズムの研究を続けています.

講演 2 「2014年以降の口永良部島の噴火活動について」
爲栗 健(ためぐり たけし)(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター 准教授)

<講演要旨>
鹿児島県は霧島、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島など現在も噴火を繰り返している活発な火山が多く、講演主題となっている口永良部島も過去に何度も被害を生じる噴火が発生している。口永良部島火山ではここ100年近くは1931〜34年、1945年、1966年、1980年と約20年周期で噴火活動を繰り返していた。京都大学防災研究所附属火山活動研究センターは1991年から口永良部山頂近傍における火山観測を開始し、火山活動の把握と噴火予測の研究を開始した。2000年以降、何度も小規模な群発地震が発生し、山頂近傍の僅かな膨張も観測されており噴火の恐れが指摘されてきた中、2014年8月3日に噴火が発生した。翌年の2015年5月29日には噴煙高度が10km、火砕流が島内の集落近傍にまで到達する噴火が発生し、気象庁は噴火警戒レベル導入後初となるレベル5を発表、屋久島町は口永良部島に避難指示を発令し全島民島外避難に至った。この2015年噴火は2014年噴火前とは明らかに違う前兆現象が観測されていた。本講演では口永良部島の火山観測、噴火の特徴や噴火予測の研究について紹介する。

<プロフィール>
京都大学防災研究所火山活動研究センター 火山テクトニクス領域 准教授
高校時代の1991年に長崎県雲仙普賢岳の大火砕流をマスメディアの映像で見た際に、噴火がなぜ起こるのか?という疑問から火山研究に興味を持つ。1996年に大学院に進学した後、京都大学桜島火山観測所において桜島の爆発的噴火の発生メカニズムの研究を始める。2002年4月に京都大学防災研究所助手に採用され、桜島の他に諏訪之瀬島、口永良部島、薩摩硫黄島など鹿児島の離島火山の研究も行っている。

講演 3 「口永良部島2015年噴火直後の被災状況、及び屋久島5.18豪雨被災状況」
黒川 潮(くろかわ うしお)(森林総合研究所 山地防災研究グループ長)

<講演要旨>
口之永良部島噴火災害:2015年5月29日の新岳噴火を受け、林野庁九州森林管理局、鹿児島県、屋久島町と連携してヘリコプターによる被害状況調査を6月4日に実施した。噴火により発生した火砕流は、最大のもので向江浜地区を経由し海まで到達したことを確認した。この火砕流の通過に伴い、渓流内には火山噴出物が堆積し倒木が見られた。さらに熱風または火山ガスの影響により樹木が変色し、森林被害が認められた。屋久島に関しては調査日時点において火山灰の堆積や森林被害は認められなかった。屋久島豪雨災害:2019年5月18日に発生した豪雨を受け、被害状況の把握及び対策の検討のため6月10〜12日に現地調査を実施した。その結果最も崩壊面積の大きい箇所については、樹木根系の効果が及ばない深層崩壊が発生したものと考えられる。また県道屋久島公園安房線沿いで発生した山腹崩壊については花崗岩および風化した真砂土が混じり、コアストーンも確認できた。崩壊深は比較的浅く現象としては表層崩壊と考えられる。

<プロフィール>
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所九州支所山地防災研究グループ長。1996年農林水産省森林総合研究所入所。(独)森林総合研究所、(独)森林総合研究所関西支所、(独)森林総合研究所九州支所を経て現職。専門分野は治山工学、山地防災工学で、森林の持つ防災機能に関する研究に携わる。

講演 4 「屋久島の大雨と5.18豪雨の気象解説」
用貝 敏郎(ヨウガイ トシロウ)(口永良部島火山防災連絡事務所 所長)

<講演要旨>
屋久島は驚くほど雨が降りますが、大雨による災害はほとんどありません。そのような屋久島ですが、実は過去に大雨災害が発生しています。ごく簡単ではありますが、1979年台風第16号に伴う大雨よる永田の土面川災害についてお話します。次に、「屋久島は日本一雨が多い?」と言われます。「これは本当か?」について議論します。出来れば、決着を付けたいと思います。
そして、5.18豪雨について簡単にお話します。「5.18豪雨ってどんな大雨?」だったのかを気象衛星(ひまわり)、気象レーダー、雨量計データ等から見ていきます。また、1ミリの雨についても議論します。たかが1ミリ、されど1ミリ。1ミリの雨の持つ真の意味を紹介します。「5.18は、なぜ、大雨になったのか?」について、ごく簡単に紹介します。
最後に、「大雨から命を守るためには、どうすれば良いのか?」について、考えていきたいと思います。

<プロフィール>
2017年4月〜現在 気象庁 口永良部島火山防災連絡事務所 所長(再任用)
2017年3月 気象庁 定年退職
2016年4月〜2017年3月 気象庁 熊本地方気象台 台長
2013年4月〜2016年3月 気象庁 福岡管区気象台 次長
2012年4月〜2013年3月 気象庁 福岡管区気象台 観測課長
2009年4月〜2012年3月 気象庁 鹿児島地方気象台 観測予報課長
2007年4月〜2009年3月 気象庁 予報部 予報課 予報官
1979年4月 気象庁 入庁

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