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人形の工夫―夏祭浪花鑑の人形演出

首(かしら)の工夫「団七(だんひち)」と「文七(ぶんひち)」

「文七」
太い眉、薄く開いた口許、
強い意思と力の宿る目
口角はぐっと引き締められ、眉根には、何かに堪える悲壮感が漂っています

「団七」
ギョロッとした丸い目で、頬骨が高く、
面構えとしては、ふてぶてしい雰囲気があります

人形のくびから上を「首(かしら)」と呼びます。面(めん)・喉木(のどぎ)・胴串(どぐし)で構成されます。性別や性根[心の持ち方]、年齢や階級に応じて分類された40種ほどの首があります。鬘(かつら)や塗色や衣裳を替えて、さまざまな役に流用します。

その他、特定の1役にしか使わない特殊首が30以上あります。昨今では、役によって首は決まっていますが、昔は、太夫の語り口や太夫の人物造形、描出された人物像により、使い分けられていました。また、人形遣いの解釈や演出で変わることもありました。太夫も首の性格を意識し、語り方の工夫をしたのです。

「団七」は『夏祭浪花鑑』の団七九郎兵衛(だんしちくろべえ)から首の名称となりましたが、現在『夏祭浪花鑑』の団七には、「文七」を使っています。「文七」は『男作五雁金(おとこだていつつかりがね)』の雁金文七(かりがねぶんしち)に使われて首の名称となりました。人形遣い・吉田栄三(よしだえいざ)や吉田玉男(よしだたまお)が、団七に「文七」の首を使っている理由を挙げています。玉男の芸談をまとめると、「(団七は)義平次(ぎへいじ)のいたぶりにもじっと耐えて男を磨く侠客(きょうかく)です。団七の首ではやはり映(うつ)りません。目元がきりりとし、口許もぐっと何かに堪えている表情をした文七でないと、悲劇味を描写できない。全身に刺青をしているところからも、薄卵の団七ではなく、白塗りの文七の首がふさわしい」と、役の性根と描写から、的確な説明をしています。

首(かしら)の塗り色。人肌よりやや濃い色。胡粉に紅殻を混ぜる具合で調合する。

首(かしら)の塗り色。材料は胡粉で、作成者により若干の差はあるが、「白」には区別も段階もない。


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