「健康」は世界中のすべての人々にとってかけがえのないものです。それは地球自身にとっても同じです。「健康」を「科学」としてとらえ、「いのち」をいかに尊びつつ、人類の持続的な発展をめざすのか。 21世紀に入ってあらゆる分野で急速にグローバル化が進み、様々な要因が複雑に関係し合う現在においては、この地球規模の課題を解決するために公平な視線で現状を充分に理解し、具体的な方向性を示しつつスピード感を持って実践して行く事が必須です。
長崎大学は「人々の健康に貢献する世界的グローバルヘルス教育研究拠点」を実現するため全学的に取り組んできました。本プログラムでは、熱帯医学・グローバルヘルス研究科とロンドン大学衛生・熱帯医学大学院との連携を軸に、学内のみならず、他の教育研究機関や企業との連携によってグローバルヘルス分野の実践的リーダーの育成をめざしています。自国主義が台頭する中、グローバルな視点で人々の健康を考え、世界をより良い方向に動かして行く人材を育てたいのです。かつて長崎は諸外国への「窓」でしたが、いまや「発信地」として地球上のあらゆる健康を支え、生まれた国によって子供達の将来が左右されてしまうことのない、真の意味での「グローバルスタンダード」を築き上げて行きたいと考えています。
「日本は、グローバルヘルスの世界でもっと活躍できる」、2012年11月に初めて長崎大学を訪れたロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM) Peter Piot学長が、私たちと確認した共通の認識です。
勤勉で、おもてなしの心をもった日本人は、そして次々とユニークなテクノロジーを発展させてきた日本企業は、世界中の人々の暮らしを豊かにしてきました。メイドインジャパンのもつ高い評価は、欧米やアジアに留まらず、アフリカの小さな地方都市にまで通じています。この日本の持つポテンシャルを世界の保健医療の課題解決に、さらに適材適所で応用すれば、世界中の人々の健康をもっと向上できるに違いないと私たちは信じています。
長崎大学がスタートさせる卓越大学院「世界を動かすグローバルヘルス人材育成プログラム」は、ときには保健医療領域を越えたあらゆる日本のポテンシャルを、世界の保健医療の課題解決に応用できる人材の育成を目指します。そして、この目標に共感する日本やLSHTMの指導者たちが、長崎大学をハブとするこの共同教育研究活動に参加・協力しています。 真に卓越したグローバルヘルス人材とは、「誰一人として取り残されることのない健康な世界」を本気で実現するため、国境や国籍、組織や専門領域といった旧来のボーダーを越えてつなげることができる人材です。そして、学術的な卓越性だけではなく、無私で行動できる人材であり、そのような人材が輩出されることを心から願っています。