蓄電池は家庭やオフィスで活躍するものの、永久的に使用できる製品ではありません。
耐用年数は、一般的に10年〜15年ほどといわれています。しかし、寿命は使用環境や運用方法によって大きく左右されます。
寿命が近づくと、充電に時間がかかったり、貯められる電気量が減ったりするなどの問題が発生してしまうでしょう。これらの症状を放置すると、本来の性能を発揮できなくなるだけでなく、故障や事故につながる可能性があります。
この記事では、蓄電池の耐用年数の目安や寿命を知らせるサイン、蓄電池を長持ちさせるための具体的な方法を詳しく解説します。
蓄電池の耐用年数を知りたい方、長く安全に利用するための知識と対策を学びたい方は、ぜひ最後までお読みください。
蓄電池の耐用年数は、使用状況や種類によって異なります。
一般的には10年〜15年が目安となり、製品がメーカーによって定められた性能を維持し、安全に利用できる期間を指します。
蓄電池の寿命はスマートフォンのバッテリーと同様に、充放電を繰り返すと徐々に性能が低下していく特性があります。毎日充放電を繰り返す環境では、寿命が短くなりやすいです。
一方で、あまり充放電をしない環境であれば、より長く使える可能性があります。
製品の性能が低下すると、満充電までの時間が長くなったり、貯められる電気の量が減ったりする症状が見られます。これらの症状が現れた場合は、交換や点検を検討する時期が近づいているサインかもしれません。
蓄電池は高価な設備なため、できるだけ長く使うための工夫が欠かせません。
蓄電池の耐用年数と関係する指標は、以下の3つです。
ここでは、蓄電池の耐用年数と関係する指標について詳しく解説します。
蓄電池の寿命を測る指標のひとつに、サイクル回数があります。
サイクル回数とは、蓄電池を満充電に近い状態から完全に放電し、再び満充電にするまでの一連の流れを1サイクルと数えるものです。
メーカーは製品ごとに保証するサイクル回数を定めており、達すると製品の性能が初期の70%ほどまで低下するとされています。例えば、毎日1サイクルの充放電を行う場合、保証サイクル回数が10,000回であれば、約27年間使用できる計算です。
しかし、これはあくまで理論上の数値です。実際の寿命は、使用環境や充放電の深度によって変動します。深い充放電を繰り返すと蓄電池への負担が大きくなり、寿命が短くなる傾向です。
蓄電池の寿命を測るうえでは、製造されてからの経過年数も欠かせない指標です。
蓄電池は、使用していなくても自然に劣化が進む特性があります。これを自然劣化と呼び、充放電のサイクルとは関係なく、性能は時間とともに少しずつ低下していきます。
特に、高温多湿な環境に長時間放置されている、適切でない保管方法がされている場合は、自然劣化の進行が早まる傾向です。一般的に、製造から10年以上が経過した蓄電池は、サイクル回数が少なくても初期性能を維持するのが難しくなるといわれています。
法定耐用年数とは、税務上の減価償却計算に使われる年数であり、実際の使用可能期間とは異なります。
蓄電池の種類や用途によって細かく定められています。
例えば、再生可能エネルギー発電設備に付随する蓄電池の場合は17年、家庭用蓄電池の場合は6年と設定されています。ただし、これはあくまで会計上の処理に関する基準であり、期間内の動作を完全に保証するものではありません。
そのため、法定耐用年数を超えても問題なく使用できる場合もあれば、年数に達する前に性能が低下してしまうケースもあります。
蓄電池の導入を検討する際は、法定耐用年数が実際の製品寿命とは別物だと理解しておきましょう。
耐用年数を超えた蓄電池には、何らかの症状が発生する可能性が高まります。
起こる可能性の高い症状は、以下の通りです。
症状が現れた場合は、蓄電池が寿命を迎えているサインかもしれません。
耐用年数を超えた蓄電池に起こりやすい症状には、満充電までの時間が長くなる症状があります。
これは、蓄電池内部の化学反応が効率的に行われなくなるためです。
新品なら短時間で満充電に達するものが、劣化が進むと以前よりも多くの時間を要する可能性が高まります。この現象は、スマートフォンやノートパソコンのバッテリーが古くなった際に、充電に時間がかかりやすくなるのと同じ原理です。
充電時間が長くなると、必要な時に十分な電力を確保できなくなります。
満充電までの時間が長くなるのは、蓄電池の効率が低下しているサインです。可能なかぎり、早めの点検や交換を検討してください。
蓄電池が耐用年数を超えると、蓄電できる最大量が少なくなります。
内部の劣化が進み、電気を貯められる容量が減少するためです。
新品ではカタログスペック通りの電力量を蓄えられますが、使用期間が長くなるにつれて、徐々に最大容量が低下していきます。
例えば、これまで丸一日分使用できていた電力が、半日分しか持続しなくなるなどです。この症状は、停電時や非常時に役割を果たせなくなる可能性を示唆しています。
蓄電量の減少は、製品の性能が低下している明確なサインです。蓄電できる最大量が減少した場合は、設備の交換を検討しましょう。
蓄電池が耐用年数を超えると、発熱や膨張などの危険な症状が現れる場合があります。
内部の劣化が深刻化し、異常な化学反応やガスが発生しているためです。特にリチウムイオンバッテリーにおいては、内部ショートやセルの劣化により、異常な発熱を伴う場合があります。
また、本体が膨らんでいるように見える場合は、内部でガスが発生しているサインです。破裂や発火のリスクが高まっている状態といえます。
このような症状が見られた場合はすぐに使用を中止し、電源を遮断してください。その後は専門業者へ連絡し、適切な処置を依頼しましょう。
蓄電池をできるだけ長く使うためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
耐用年数以下の期間で性能低下を招かないためにも、適切な使用方法を心がけてください。
蓄電池をできるだけ長く使うには、高温多湿な場所への設置を避けるべきです。
蓄電池は熱や湿気に非常に敏感な精密機器のため、高温多湿の環境下では劣化が早まります。
高温環境下での使用は、内部での化学反応が促進されてしまうため、バッテリーの寿命を縮める要因です。また、多湿な場所では内部の電子部品が腐食しやすくなるため、故障の原因になりかねません。
そのため、蓄電池の設置場所は直射日光が当たらない風通しの良い場所や、温度変化の少ない安定した環境を選びましょう。エアコンの室外機から離れた場所や、湿気のこもりにくい場所に設置するのが望ましいです。
蓄電池を長持ちさせるには、過充電や過放電を避けましょう。
過充電とは、蓄電池が満充電状態になったにもかかわらず、充電を続ける状態です。蓄電池に過度な負荷がかかり、内部の劣化を早めます。
過放電は、蓄電池の残量がほとんどない状態からさらに放電を続ける状態です。そのまま使用し続けると、本体に大きなダメージを与えます。
最新の蓄電池には、過充電や過放電を防ぐための保護機能が搭載されていますが、古いモデルや安価な製品では十分でないケースも珍しくありません。
そのため、蓄電池の残量には常に注意を払い、残量が少なくなる前に充電を開始し、満充電になったら充電を終了するよう心がけましょう。
蓄電池の寿命を延ばすには、1日のサイクル回数を減らす必要があります。
例えば、毎日頻繁に充放電を繰り返すよりも、必要な時のみ充放電を行うほうが負担は軽減されます。電力消費のピークタイムにのみ蓄電池を使用するなど、充放電の頻度を抑える工夫が有効です。
また、夜間の安価な電力を利用して蓄電池に充電し、日中の高い電力料金の時間帯に蓄電池から放電するなどのピークシフト運用も、サイクル回数の減少につながります。
蓄電池を長く使うには、自身のライフスタイルに合った容量の製品を選ぶべきです。
容量が不足している製品を選ぶと、頻繁に充電と放電を繰り返すことになるため、サイクル回数が増加し寿命を短くしてしまいます。一方で、過剰な容量の製品を選んでも、初期費用が高くなるだけです。
導入を検討する際は、家庭の電力消費量や停電時に備えたい電力の量などを考慮しましょう。必要な電力を賄える最小限の容量を選ぶのが最善であり、寿命を保つうえでも効果的です。
また、太陽光発電と連携させる場合は、発電量と消費量のバランスを考慮して最適な容量を検討してください。
蓄電池を安心して長く使うには、保証期間の長い製品を選びましょう。
保証期間は、製品の品質や性能に対してメーカーが責任を持つ期間です。保証期間が長いほど、万が一の故障や不具合が発生した際に、無償で修理や交換を受けられる可能性が高まります。
なお、蓄電池の保証期間は、10年〜15年ほどが一般的です。しかし、なかにはそれ以上の長期保証を提供しているメーカーもあります。
蓄電池は高価な設備のため、導入後の故障は大きな負担です。だからこそ、長期保証がついている製品は、安心して使用できます。
また、購入を検討する際は製品本体の保証だけでなく、システムの設置工事に対する保証の有無や期間も確認しましょう。
蓄電池を長く安全に使い続けるには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
メンテナンスを怠ると、蓄電池の性能が低下したり、故障のリスクが高まったりする可能性があります。
専門業者による定期点検では、蓄電池の電圧や電流、温度などの状態をチェックし、異常がないかを確認します。また、接続部の緩みや損傷がないか、冷却ファンに埃が溜まっていないかなども点検の対象です。
これにより、異常を早期発見できるほか、小さな問題が大きな故障に発展するのを防げます。
定期的なメンテナンスは性能維持だけでなく、安全性の確保にもつながります。メーカーが推奨する点検時期や内容を確認し、忘れずに実施してください。
異常やトラブルが発生した際は、すみやかに専門業者に相談してください。
蓄電池は、高電圧を扱う機器です。安易に自分で対処しようとすると、感電や火災などの重大な事故につながる危険性があります。
以下の症状が見られた場合は、直ちに運転を停止し、電源を遮断しましょう。
また、購入した販売店や設置業者、メーカーのサポートセンターに連絡し、専門家による診断と修理を依頼してください。
専門業者は蓄電池の構造や特性を熟知しているため、安全かつ正確な診断と適切な処置を行えます。自己判断での操作は避け、専門家の指示に従いましょう。
蓄電池の耐用年数は10年〜15年が目安ですが、寿命はサイクル回数や製造からの年数、設置環境によって変動します。
寿命が近づくと、充電時間の延長や蓄電量の減少、発熱や膨張などの症状が現れる場合があります。これらの症状が見られた際は、交換や点検を検討する時期です。
長く安全に利用するには、高温多湿な場所への設置を避け、過充電や過放電をしないよう注意し、1日のサイクル回数を減らすよう工夫しましょう。
また、定期的なメンテナンスを行い、トラブル発生時はすみやかに専門業者に相談してください。
株式会社TANAKAは、蓄電池の導入や交換、メンテナンスに対応しています。お困りの際は、お気軽にご相談ください。