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続・源氏物語今に遊ぶ
巻1・8
吉永哲郎
右大臣家の長女は弘徽殿女御、二の君は不明、三の君は帥の宮(蛍兵部卿)の北の方、四の君は頭中将の北の方、五の君は不明、六の君は朧月夜内侍(東宮入内予定)といった家族構成。これに対して左大臣家は、頭中将(右大臣四の宮の夫)、葵上(光源氏の正室)がいます。右大臣家との差は、左大臣の北の方は桐壺帝の妹(大宮)であり、帝との深いかかわりをもっていることは歴然としています。しかも第二皇子は第一皇子と比較にならないほどに評判がよい。こうした右大臣家の負(マイナス)を、長女弘徽殿女御は払い退けなければならなかったのです。ですから普通の優しい女性としてのイメージはなく、傲慢な女性として、制度内で生きる家刀自として気迫をもって対抗者に向かう姿ととらえられます。そのすさまじさは、制度外の「愛」によって帝を奪った桐壺更衣を、亡き者にしたいと思う。そのすさまじさは更衣が里で息をひきとった時、平然と女房たちと管弦の遊びを後宮でひらいている姿に象徴されます。この場面はまるで勝利者祝宴のように紫式部は描いています。さらに、第一皇子を脅かす第二皇子の正室葵上をも亡き者にと思い、はては光源氏を須磨・明石へ退去させるという策略をめぐらします。家刀自弘徽殿女御のすさまじさは、物語の一つの柱です。
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