続・源氏物語今に遊ぶ

巻1・7

吉永哲郎

旧制度内で新しい生き方を、つまりヒューマンな生き方を示す人間、身分制度を超えた「愛」をつらぬく物語の主人公を描くことは、現藤原氏独裁政治への批判を意味します。ですから当時の人々は桐壺帝と桐壺更衣へ徹底的に批判します。その批判する側の制度内に生きる女性の代表が桐壺帝の正室弘徽殿女御です。右大臣の女(ムスメ)として最も早く桐壺帝に入内し、後宮を威圧する存在です。
まず第一の問題が生じます。弘徽殿女御は第一皇子をもうけていますが、更衣腹の第二皇子の美しさ、気品にはとうていかなわない。後宮での評判は当然第二皇子に集中します。こうした第二皇子の評判は第一皇子の存在を脅かす事態が起こる可能性があるように、人々は思うようになっていきます。そこで旧制度の実力を弘徽殿女御が、右大臣家の家刀自の立場を発揮することで示します。
家刀自とは主婦権で女の家を取り仕切ることです。弘徽殿女御の立場は右大臣家一族に対しての気配りを意味します。ですから右大臣家を脅かす勢力に対しては、第二皇子だけでなくライバルである左大臣家に対しても徹底した対抗意識を、右大臣家の家刀自としての認識を深めていきます。弘徽殿女御の右大臣家への気配りは息つく間もありません。次回で右大臣家に関して触れましょう。

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