続・源氏物語今に遊ぶ

巻1・6

吉永哲郎

制度としての結婚(政略結婚)ではなく、制度外の結婚(純粋精神をもとにした愛情をもとにした結婚)に生きようとする帝の姿を、紫式部はなぜ描いたのでしょうか。単なる昔物語のような「めでたし、めでたし」で話が終わらない物語を、とても出来そうにもない制度外に生きる帝を通して、紫式部は何を主張したのでしょうか。
まず「愛するがゆえに愛する者を死に追いやってしまう。」悲劇を桐壺の巻で描きます。古物語にはこうした悲劇はありませんでした。この悲しい更衣の死が、この世に愛と美を求めてやまない心の持ち主、純粋精神を遺憾なく発揮する物語の主人公・光源氏の誕生へと展開されます。
まずは制度内に平穏な人生を送る主人公桐壺帝の制度内婚姻の姿を描きながら、政略結婚の課題を探ります。貴族社会の崩壊、武士集団の抬頭による政治形態の変化、京中心の思考ではなく海外諸国との交流など国際化の課題など、新しい時代の到来を予見しています。こうした多くの課題を行間に埋め描いているのが、「桐壺」の巻なのです。

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