栗山ダムについて
栗山ダムの写真
事業の概要と経過
栗山ダムは石狩川水系夕張川の支川、雨煙別川総合開発事業の一環として建設されたものです。雨煙別川流域は、北海道の穀倉地帯である石狩平野の東端(栗山町)に位置し、栗山町の基幹産業である農業を支えてきました。しかし、豊かな水の恩恵は時として豹変し、たびたび洪水氾濫をくりかえし、大きな被害を与えました。このような背景から事業が立案され実施される運びとなりました。この事業は、洪水氾濫の防止、良質な水道水の供給、農業用水、河川環境を守る維持用水の確保を目的に、支川ポンウエンベツ川に多目的ダムを建設したものです。ダムの建設にかかる調査、計画設計、工事期間は昭和47年の着工以来、22年間の歳月を費やしました。
流域の概要
雨煙別川は夕張山地の西麓に位置し、標高約420mの山地に源を発しています。雨煙別川及び、その支川ポンウエンベツ川は、概ね南西方向に流下し、その後北西に向きを変え合流後、栗山町市街地を貫流して、夕張川に合流する、流域面積は80.6km、流路延長14.7kmの一級河川です。流域は内陸性の気候を示し、山地部は植栽林として、谷すじとその下流は水田として利用されています。
ダムサイトの地形、地質
ダムサイトはポンウエンベツ川、王子川の合流点直下に位置し、両河川の浸食作用によって形成された比較的広く平坦な谷地形を呈しています。堤体とともに水を捉える、両岸の袖地山は、標高150m〜200mの低い尾根形状を示し、下流に広がる平低地との境界をなしています。ダムサイト流域の地形は、日高山脈の造山運動に伴って形成されたもので、地質的には、川端層と呼ばれる新第三紀中新性の堆積岩で構成されています。ダム底敷には砂岩、砂岩優勢互層が多く分布し、泥岩、礫岩、擬灰岩類を介在しています。これらは、互層および変化に富んだ分布を示し、左岸河床部には断層や節理の発達した地層の乱れを伴う変質帯の分布が見られます。
ダム地質平面図および断面図
ダム地質平面図および断面図
所在地
夕張郡栗山町本沢地先
栗山ダムの位置図
マメ知識1
多目的ダムとは
洪水調節・かんがい用水や水道用水、発電、流水の正常な機能の維持など多くの目的で使われるダムのことをいいます。
新第三紀中新世とは
約6400万年前から始まる新世代は200万年前を境に第3紀、第4紀に分けられる。約2600万年前から始まる中新世には黒鉱などを胚胎するグリーンタフの活動で特徴づけられる為、第3紀後半を新第3紀、前半を古第3紀と区分しています。
諸元
ダムの諸元
堤頂幅 5.1m
堤体積 174000m3
計画高水流量 170m3/s
15.2km2
ダムの図面
平面図
平面図
下流面図
下流面図
工事方法
ダムの建設工事は多くの関連工事を伴います。
- コンクリ-ト及びその骨材生産のためのプラント工事
- コンクリ-ト骨材を採用するための原石山工事
- 本体コンクリ-ト打込みに先がけての基礎掘削工事
- 貯水池及び堤体の遮水性能を高めるためのグラウト注入工事
等が行われます。栗山ダムの工事においては、本体施工法及び原石山工事が特色あるものとして挙げられます。
本体コンクリ-ト工事
栗山ダムの比較的平坦で谷巾の広い地形は、トラック、クレ-ン等によるコンクリ-ト及び、工事資材の搬入に有利な条件になっています。ここでは、コンクリ-ト輸送手段に通常の11tダンプトラックを採用し、コンクリ-トを生産するプラントから工事中の堤体上面まで直接搬送する方法を採用しました。また、谷巾も広く、打設するブロック数の多いことから北海道では初めて実施する、普通のダムコンクリ-トを用いた拡張レヤ-打設工法を採用しました。この工法は、施工技術の一般化、汎用機械の活用、ダムの平坦な拡張による施工性の向上と安全な作業環境を確保できる等、従来の工法に比べ優れたものです。このような特色は、コンクリ-ト品質管理の一環として実施された夏季の夜間打設においても、施工性、安全性の面で反映されました。
原石山工事
堤体コンクリ-トの骨材原石を採取するための原石山工事は、本体打設工事工程を左右する重要な工事となります。栗山ダム付近は地質年代が比較的新しいことから、骨材に適した強固な砂利、岩石の分布が乏しく、約40km離れた夕張市紅葉山地区に原石山を求めました。品質の安定した岩石は一般に、地質年代の古い堆積岩、火成岩類が対象となり、栗山ダムにおいては、地層に縦状にうすく分布している安山岩が選定されました。このため掘削形状はV字型となり、深く長い掘削工事となりました。この掘削跡地は、環境保全のため造形整備されています。
拡張レヤー工法
ダム堤体ブロックは、一般にダム軸方法に対して15mの長さで横継目が設けられています。従来工法は、この1ブロックを対象に、隣接打設を避けるように、柱状、または、櫛状に打ち上げられます。拡張レヤー工法は、このブロックを複数個(2〜4)まとめて、平坦に一度に打ち上げ、コンクリ-トの硬化直前に横継目を振動目地切り機械により造作し、15mのブロックとします。栗山ダムにおいては、普通のダムコンクリ-トを通常のダンプトラックを用いて搬送し、拡張レヤー工法と組合わせ施工性を高めたことに特徴があります。
工事中の全景
工事中の全景
原石山採取工事
原石山採取工事
堤体工事全景と夜間打設状況
堤体工事全景と夜間打設状況
栗山ダムの治水
雨煙別川は農地河川として古くから利用されてきましたが、たびたび洪水による被害にみまわれてきました。これは、復旧に時間を要するとともに人命にもかかわる大きな脅威でした。栗山ダムの計画では、ダムに流入する洪水流量170m3/秒を貯水池の洪水調節容量内にとどめながら最大34m3/秒を放流します。この結果として、ダムがない場合、夕張川合流地点で予想される洪水流量550m3/秒を450m3/秒まで低減させ氾濫を防止します。
各合流点での洪水調節流量(m3/秒)
洪水調節流量の図
貯水池の容量配分図
貯水池の容量配分図
洪水調節計画図
洪水調節計画図
マメ知識2
治水
洪水等河川流量のうち、主に大きな流量(高水)を監視、管理、制御して治めることをいいます。
流水の正常な機能の維持
既得用水や川の動植物の生息環境、水質、河川の景観を守る等、豊かできれいな川の流れを守ることをいいます。
栗山ダムの利水
雨煙別川の河川水は、中流域に古くから発達した水田地帯の用水を担ってきました。また、支川ポンウエンベツ川は豊かな山間に源を発し良質な水道水源として利用されていました。栗山ダムの水利用計画は、河川環境の保全も含め従来の水利権量を確保すべく正常流量を定め、安定放流するとともに、栗山町において日量10,000m3(約19,000人)の水道用水の取水を可能にします。
水道用水給水区域
マメ知識3
利水
ダムに水をためることにより安定した供給状態を保ち、水道用水、かんがい用水等計画的に利用することです。
水利権量
水を利用するための水量の権利のことで、河川管理者への申請により計画的に整理されます。
利水基準点
水を利用するにあたり、その地点を通過する水量を管理、測定把握する基準点をさします。
栗山ダムの親水
人間の生命と生活を潤す「水」。水とともに在るくらしを大切にしたい。
水は太古から、人間及び生命体にとってかけがえのない位置をしめてきました。始めは飲み水としてのみ利用されてきましたが、その後、文明を築くのになくてはならない役割を果たしてきました。
最近はエコロジ-を基本とした考えが広がり、環境と水との関係、とりわけ直接人間に関わる水環境は、精神的風土や文化に与える影響の大きな要素になっています。地域活性化の一端を担うものとして、ダムを核とした河川環境の整備は、水と緑に囲まれた潤いのあるスペ-スとして、わたしたちに安らぎを与えてくれるものです。これからの水利用は、治水、利水に加えて、エコロジカルな面が重要な課題となってきます。
栗山ダムでは、工事跡地の保全対策と、機能上造形された、ダム及びダム湖周辺空間の地域への開放空間利用を促すため、周辺環境の基盤整備を行っています。豊かな水辺の緑は、栗山町を中心として活用計画をすすめています。整備事業としては、四阿や遊び施設をふくめた「エントランスゾ-ン」、展望台やカリオンのある「管理棟周辺広場」、四阿や湖名碑のある「湖頭左岸展望広場」、ベンチや社のある「合流点展望広場」、パ-ゴラやトイレ、くりの森の「右岸広場」、植物による水質浄化を試みる「湿性植物ゾ-ン」が、実施されています。また「桜山自然の家」は、自然と人々とのふれあい体験学習の場として広く親しまれています。これらの事業を行うことで、人と水の有機的でソフトな関係を築いていこうとしています。
親水
栗山小学校の生徒達が毎年見学に訪れダムについて勉強しています。
親水
マメ知識4
親水
自然環境に配慮し、レクレ-ション性をもたせた河川や海などの水辺環境で、人と水が親しむことを目的としたものです。