監修 赤穂市民病院 皮膚科 部長 和田 康夫先生
監修 赤穂市民病院 皮膚科 院長 和田 康夫先生
疥癬とはヒゼンダニ(疥癬虫:かいせんちゅう)というたいへん小さなダニが人の皮膚に寄生(きせい)しておこる、かゆみを伴う皮膚の病気です。
この病気には通常疥癬(つうじょうかいせん)と呼ばれるものと他の人に感染する力が強い角化型疥癬(かくかがたかいせん)と呼ばれる2つの種類の病型(びょうけい)があります。
ヒゼンダニは、たいへん小さなダニなので直接目で見ることはできません。卵からかえって幼虫になり、若虫、そして成虫(オス、メス)になります。
卵は3〜4日でかえり、そのライフサイクルは10〜14日間です。
メス成虫はオス成虫と交尾をした後、手首や手のひら、指の間、肘、わきの下、足首や足の裏、外陰部などに疥癬トンネルと呼ばれる横穴を掘り、卵を産みつけます。
ヒゼンダニは人の体温がいちばん生活に適しており、人の肌から離れた場合、長くは生きられません。また、高熱や乾燥に弱く、50°C以上の環境に10分以上さらされると死ぬことがわかっています。
通常疥癬と角化型疥癬はどちらもヒゼンダニが原因ですが寄生しているヒゼンダニの数が大きく違います。そのため感染力に大きな違いがあります。
| 通常疥癬 | 角化型疥癬 | |
|---|---|---|
| ヒゼンダニの数 | 数十匹以下 | 100万〜200万匹 |
| 人の免疫力 | 正常 | 低下している |
| 感染力 | 弱い | 強い |
| 主な症状 | 赤いブツブツ (丘疹・結節) 疥癬トンネル |
あかが増えたような状態 (角質増殖) |
| かゆみ | 強い | 不定 |
| 症状が出る部位 | かお・あたまを除く全身 | 全身 |
通常疥癬から感染する場合と角化型疥癬から感染する場合があります。
感染する力の強さが違うので注意が必要です。
| 通常疥癬 |
|---|
| 直接経路 長い時間、肌と肌が直接ふれることで感染します。少しふれる程度であれば感染することはほとんどありません。 間接経路 疥癬の患者さんが使用した寝具や衣類などを交換せずに、すぐに他の人が使用することで感染することもまれにあります。 |
| 角化型疥癬 |
|---|
| 感染する力が強いので短い時間の接触、衣類や寝具を介した間接的な接触などでも感染します。また、皮膚からはがれ落ちたあか(角質)にも多数のダニが含まれており、感染の原因になることがあります。 |
通常疥癬から感染した場合、潜伏期間と呼ばれる症状の出ない期間が約1〜2ヵ月あります。ただし、角化型疥癬から感染した場合には、感染する力が強いために通常疥癬から感染した場合よりも早く症状が出始めることがあるので注意が必要です。
治療にはヒゼンダニを殺すことを目的とした塗り薬または飲み薬が使われます。塗り薬が使われる場合には、塗り残しがないように通常疥癬では首から下の全身に、角化型疥癬ではかおも含めて全身にくまなく塗る必要があります。特に手や足、外陰部には念入りに塗ってください。かゆみに対してはかゆみ止めのお薬が使われます。
お薬の使い方ややめる時期については、必ず先生の指示にしたがってください。
通常疥癬と角化型疥癬では感染する力の違いからそれぞれ対応が異なります。
通常疥癬の患者さんに過剰な対応をとらないことが大切です。
長い時間、肌と肌が直接ふれないようにしてください
同室で布団を並べて寝ないでください
入浴時にタオルなど肌に直接ふれるものを一緒に使用しないでください
患者さんに接した後はきちんと手を洗うようにしてください
なるべく個室を用意してください
感染力がとても強いので、患者さんに接するときは予防着や手袋を着用してください
衣類やシーツなどはこまめに交換し、取り扱いは他の方とは別にしてください
洗濯物は他の方とは別に扱い、乾燥機を使用するか、50°C以上のお湯に10分以上浸した後に洗濯してください
洋式トイレなどから感染することもあるので注意してください
ベッドマットなどは掃除機で表面をていねいに掃除してください
入浴はできるだけ毎日行い、そのときには飛び散らないように厚くなったあか(角質)をしっかりこすり落としてください
患者さんから落ちたあか(角質)で感染することもあるので、お部屋は掃除機でていねいに掃除してください
患者さんがいるお部屋には、治療を始めたときと治療が終わったときの合計2回殺虫剤を使用してください
本ホームページでは、原因となるヒゼンダニについての説明、疥癬の症状、感染後の生活管理など、「正確な知識と適切な治療方法」について紹介しております。
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万一、本ホームページに掲載されているような症状がございましたら、自己判断せず、必ず皮膚科を受診してください。