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平成20年08月05日

日韓GLOBEC国際シンポジウムへの参加報告

三重県科学技術振興センター水産技術センター
久野 正博・山川 卓

2000年8月23日から25日にかけて韓国釜山市の海雲台(ヘウンデ)において,日韓共催でKorea-Japan Joint GLOBEC Symposium "Long-term variations in the northwestern Pacific ecosystems(北西太平洋における海洋生態系の長期変動)" が開催されました。このシンポジウムに参加しましたので報告します。

参加者職氏名 久野正博 研究員、山川 卓 主任研究員
研究集会名 日韓GLOBEC国際シンポジウム(Korea-Japan GLOBEC Symposium)
主催団体 日本GLOBEC、水産海洋学会、Korea GLOBEC ほか
開催日 2000年8月23日〜8月25日
場所 韓国釜山市(Grand Hotelおよび釜慶大学水産研究所)
発表内容1 Presentation of SST images from satellite NOAA on the internet by the Fisheries Research Institute of Mie, Japan.
(人工衛星NOAA海面水温画像のインターネット上からの提供)
(久野正博・山川 卓;ポスターおよび口頭発表)
発表内容2 Fisheries management of the spiny lobster Panulirus japonicus in Japan.
(日本におけるイセエビPanulirus japonicusの漁業管理)
(山川 卓;口頭発表)

[画像: ]
シンポジウムの行われた釜山市海雲台(ヘウンデ)。韓国有数のリゾート地でもある。

概要

このシンポジウムには日韓の水産海洋研究者100名程が集まり,最新の研究発表および意見交換が行われた。シンポジウムはセッションI〜IVおよび特別セッションとポスター発表から構成され,1日目にセッションI〜IIおよびポスター発表,2日目にセッションIII〜IV,3日目に場所を釜慶大学水産研究所に移して特別セッションが行われた。

まず、シンポジウムのはじめに日本GLOBEC代表の杉本教授(東京大学海洋研究所),韓国GLOBEC代表のキム教授(釜慶大学)から国際GLOBECおよび両国GLOBECの最近の活動内容や今後の計画などについて説明があった。 [画像:会場となった海雲台グランドホテル]

会場となった海雲台グランドホテル

発表の様子(久野)

発表の様子(久野)


[画像:ポスター発表の様子]

ポスター発表の様子

セッションIでは,気候と海洋環境に関する研究成果が報告された。韓国の研究者からは,東シナ海における流動や熱塩フロントの構造に関する報告,日本海や東アジア沿岸における水温変動に関する報告などがあった。日本の研究者からは,NEAR-GOOSの最近の活動についての紹介と,北赤道海流の塩分フロントの南方変動と日本ウナギ幼生の輸送に対する影響についての報告があった。

このセッションの中で久野・山川は「人工衛星NOAAによる海面水温画像のインターネット上での公開」と題した話題提供をし、また、同様の内容でポスター発表も行った。
( 発表要旨へはこちら)

セッションIIでは,海洋の基礎生産を中心とした研究成果が報告された。韓国の研究者からは,日本海における植物プランクトンや黄海における動物プランクトンの変動,河口域における栄養塩類をはじめとする環境要因の長期変動などの報告があった。日本の研究者からは,人工衛星から得られた海色画像を用いた研究事例やENSOサイクルやレジームシフトと沿岸のプランクトン量などの関係についての報告があった。

セッションIIIでは,浮魚類の再生産や資源調査に関する研究成果が報告された。韓国の研究者からは,サンマ資源への気候変動の影響,韓国沖でのマイワシの再生産や分布に対する密度依存効果,動物プランクトンの長期変動とイカ資源の関係などの報告があった。日本の研究者からは,遠州灘沖の黒潮離接岸とシラス漁況の関係,東シナ海において今年度から始まったFRECS調査の概要,東シナ海とその周辺海域におけるマサバ・ゴマサバの資源量変動,寿命の短いイカの資源量変動と気候変化の関係に関する最近の研究報告,北西太平洋におけるニシン科魚類の再生産についての報告があった。

セッションIVでは,調査観測システムに関する研究成果が報告された。韓国の研究者からは,黄海・東シナ海における海洋資源の新しいモニタリングシステム,耳石の安定同位体を用いたサケの調査などの報告があった。日本の研究者からは,航海中の表層プランクトン自動連続サンプリングシステム,将来の東シナ海における漁業情報システム,中層トロールによる黒潮続流域での浮魚分布調査,スキャニングソナーと科学計量魚探を用いた三次元解析に基づく浮魚の定量評価,衛星情報・音響機器・ROVを用いた資源・環境の複合調査についての報告があった。

そして2日目の最後に、セッションI〜IVの各座長によるセッションごとのとりまとめ,意見交換が行われた。意見交換では日本と韓国はもちろん,ロシアや中国,台湾などの隣国が協力して調査することやデータを共有化することが重要であるとの認識を確認した。

発表の様子(山川)

発表の様子(山川)

3日目の特別セッション「New paradigm in fisheries management(資源管理の新しいパラダイム)」は、日韓両国における資源管理について情報と意見の交換を行うことを目的に、場所を釜慶大学水産研究所に移して行われた。当研究所は海雲台の冬柏島(ドンベク島;島と言っても橋を介して陸続き)の風光明媚な海岸沿いにあり、たいへん眺めの良い会議室でのセッションとなった。

釜慶大学水産研究所のPark所長の開会挨拶に続いて、日本側から4題、韓国側から2題の発表が行われた。日本側からは最初に、東大海洋研究所の勝川氏が日本のTAC管理における意思決定過程と題した発表を行い、ABCの算定方法や将来展望について論議を展開した。とくに、海上における小型魚投棄の問題や Reproductive Potential (RP)の概念の導入、フィードバック制御や生態系の考慮の必要性などについて考え方が述べられた。西海区水産研究所の浅野氏は日本のTAC管理の現状について、総括的な紹介を行った。韓国側の研究者から、ABC算定量とTAC配分枠の違いに関する質問等が出され、論議が展開された。

次に、山川が日本のローカルな資源管理の代表例として、イセエビの漁業管理について発表した。現実の管理内容に言及した後、資源評価手法の紹介や、漁獲努力の漁期内最適配分モデル、産卵資源量の経済価値を考慮したうえで加入資源の有効利用と再生産管理を同時にめざす最適漁獲モデルなどを提示した。
( 発表要旨へはこちら)

東大海洋研の松田氏は生態系ダイナミックスとフィードバック制御に基づく資源管理について発表した。海洋生態系の特徴を整理した後、マイワシ、カタクチ、マサバの魚種交替モデルに言及し、各年代における優占種を順次利用していくecosystem-based managementの考え方を提唱した。そして、相対資源量や年齢構成のモニタリングを通じたフィードバック制御について論議を展開した。

[画像:発表の様子(山川)]

発表の様子(山川)

韓国側からは釜慶大学のZhang氏(アラスカ漁業科学センターのMarasco氏との共同発表)により、韓国における200海里体制下での資源評価と漁業管理に関する新しいアプローチが紹介された。タチウオ、マサバ、スルメイカ、サワラ、マイワシ等の主要魚種の資源評価、ABC算定とTAC管理の過程などの紹介があり、利用可能な情報の質的量的な違いに対応する戦略について言及がなされた。続いて、National Fisheries Research & Development Institute(釜山)のChoi氏らによって、韓国海域でのマサバの加入量と海洋環境要因の関係に基づいた資源評価と管理についての発表がなされた。産卵場付近での水温、塩分、動物プランクトン量を考慮した再生産関係を求めたうえで、ABC算定に用いる試みが紹介された。

各発表の終了後、Zhang氏、松田氏、浅野氏の共同座長により、総合討論が行われた。利用している資源や手法は共通であることが多いため、今後も両国の研究者間で情報交換を行うことの重要性を確認し、特別セッションは終了した。

3日間におよぶ内容の濃いシンポジウムは,地方水試の研究者である我々にとっては大変貴重な経験であり,水産海洋研究に関する最新の情報を得ることができたばかりでなく,グローバルな視野で研究を進めていく重要性や研究者間の交流の必要性などを強く認識することができた。今後、両国間での国レベルや地域レベルでの様々な視点での研究交流が進展することを期待するとともに、今後の調査研究活動に大いに活かしていきたい。

最後に,シンポジウムでの発表の機会を与えて下さった東京大学海洋研究所の杉本隆成教授をはじめ,水産海洋学会、日韓GLOBEC関係者の方々に深甚の謝意を表します。また,今回の派遣は水産海洋学会の松宮基金による海外渡航・滞在費の助成を得て実現したものであり、ここに記して厚く御礼申し上げたい。

なお、シンポジウムの内容に関する詳細は別途 ”Fisheries Oceanography” に掲載予定であることを申し添えます。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 水産研究所 企画・水産利用研究課 〒517-0404
志摩市浜島町浜島3564-3
電話番号:0599-53-0016
ファクス番号:0599-53-2225
メールアドレス:suigi@pref.mie.lg.jp

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