南海トラフ地震に備えるために
我が国で想定される最大クラスの地震であり、神奈川県にも大きな被害をもたらす南海トラフ地震について、その特徴や対応を紹介します。
- 南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にのびる南海トラフ(プレート境界の海の溝)を震源に発生する地震であり、現在、我が国で想定されている地震の中で最大の地震です。
- 南海トラフ地震の震源域では、過去に、概ね100年から150年の周期で、繰り返し、大規模な地震が発生しており、前回は、1944年(昭和19年)の昭和東南海地震と1946年(昭和21年)の昭和南海地震で、甚大な被害が発生しました。この地震から80年が経過した現在、大規模地震の切迫性が指摘されており、今後30年以内の発生確率は約60%から90%程度とされています。
- 南海トラフ地震が起きることで、関東から四国・九州にかけて、強い揺れや津波等により、甚大な災害が発生するおそれがあります。
(注) 詳しくは気象庁ホームページ「南海トラフ地震のメカニズム」をご覧ください。
- 国の被害想定(2025年3月公表)によれば、最大クラスの南海トラフ地震が発生すると、静岡県から宮崎県にかけての一部地域では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。
- また、関東地方から四国・九州地方にかけての太平洋沿岸に10メートルを超える津波の襲来が想定されています。
「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書説明資料」(中央防災会議, 2025)より抜粋
- 想定震源域の全域や東側で地震が発生した場合、神奈川県でも地震の揺れ(最大震度6強)や津波(最大9メートル)が発生しますので、速やかな避難が必要となります。
- 想定震源域の西側で地震が発生した場合でも、神奈川県を含む南海トラフ沿いの全ての沿岸部に対して、大津波警報(※(注記)1)や津波警報(※(注記)2)が発表される可能性があるため、津波への警戒や速やかな避難が必要です。
- 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)や南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された場合には、日頃からの地震への備えの再確認等の対応が必要となります。
(※(注記)1)予想される津波の高さが高いところで3mを超える場合に発表
(※(注記)2)予想される津波の高さが高いところで1mを超え、3m以下の場合に発表
「マンガで解説!南海トラフ地震その日が来たら・・・」(内閣府(防災担当)・消防庁・気象庁作成)より抜粋
- 神奈川県は、令和5年度から令和6年度にかけて実施した地震被害想定調査において、南海トラフ地震により想定される神奈川県の被害を推計しています。
- 震度分布や津波の最大水位、人的被害の想定については次のとおりです。
(注)詳しくは神奈川県ホームページ「地震被害想定調査」をご覧ください
〇 想定される震度分布(想定震源域の東側で地震が発生した場合)
- 局所的に平塚市や小田原市、箱根町で震度6強が見られるほか、震度6弱の分布が小田原市、南足柄市、大磯町、二宮町、中井町、大井町及び箱根町の一部で予測されています。
- その他の地域は、震度5強以下と想定されます。
南海トラフ巨大地震(東側ケース)による震度分布
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〇 想定される津波の最大水位(想定震源域の東側で地震が発生した場合)
- 相模湾から東京湾内にかけて、2メートルから9メートルの水位が想定されます。
- 津波の到達時間は、相模湾内で30分から40分、東京湾内で60分以上と想定されます。
南海トラフ巨大地震の浸水分布
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「神奈川県地震被害想定調査報告書」(令和7年3月)より抜粋
〇 想定される人的被害(想定震源域の東側で地震が発生した場合)
- 全県での人的被害は、死者790人、重症者30人、中等症者930人、軽症者1910人と想定されます。
- また、人的被害のうち、津波による死者は780人と想定されます。
- 震源域全体や東側を震源に発生する場合は、神奈川県も激しい揺れや津波に見舞われることが想定されます。
- また、震源域の西側で発生した場合も、神奈川県には大津波警報が発表される可能性があるほか、南海トラフ地震臨時情報が発表され、後続の地震への備えなどの対応が必要になります。
- 南海トラフ沿いで下記の異常な現象が確認され、大規模地震の発生の可能性が、通常時と比べて高まったと評価された場合、国が「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意・巨大地震警戒)」を発表し、連続して発生する地震(後発地震)への注意喚起を行う制度が設けられています。
- 令和6年8月には、制度運用開始後初めての南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。
(注)詳しくは気象庁ホームページ「南海トラフ地震に関連する情報について」をご覧ください。
〇異常な現象
次の3つのケースに整理されています。
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内閣府(防災担当)「南海トラフ地震臨時情報 防災対応ガイドライン(令和7年8月改訂)」より抜粋
- 南海トラフ巨大地震が発生する際に、プレート境界の想定震源域が「ずれ動く」ことを「割れる」と表現します。
- 想定震源域の広い範囲で一度に割れる(「全割れ」とも言われます)場合や、東側と西側が別々に割れる(「半割れ」ともいわれます)場合があり、これが連続して発生することもあります。
〇南海トラフ地震臨時情報の種類と発表条件
[画像:rinjijyouhou]
内閣府(防災担当)・消防庁・気象庁作成「マンガで解説!南海トラフ地震その日が来たら・・・」より抜粋
気象庁ホームページ「南海トラフ地震に関連する情報について」より抜粋
- 南海トラフ地震臨時情報は、以前、東海地震(※(注記))で運用されていたような、地震の発生を予知するものではなく、通常時と比べて相対的に発生の可能性が高まったことを示すものです。「巨大地震注意・巨大地震警戒」の情報が発表された場合は、常日頃からの地震への備えの再点検や、津波が発生してからでは避難が間に合わない地域(市町村があらかじめ指定します)の方は事前避難を行う(巨大地震警戒の場合)など、後発地震への警戒が必要です。
- 南海トラフ地震臨時情報の意味を正しく理解し、この情報が発表された場合は冷静に対応するようお願いします。
(※(注記))南海トラフ地震の震源域の最も東側で発生し、マグニチュード8クラスの地震の一種
〇南海トラフ地震臨時情報が発表された場合の対応のイメージ
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内閣府(防災担当)・消防庁・気象庁作成「マンガで解説!南海トラフ地震その日が来たら・・・」より抜粋
〇事前避難対象地域
- 後発地震による津波が襲ってきた場合に避難が間に合わない地域について、「事前避難対象地域」と指定しています。事前避難対象地域にお住いの方は、津波の危険がない場所で1週間を目途に避難を継続します。
- 事前避難対象地域には次の2種類があります。
高齢者等事前避難対象地域:要配慮者(高齢者、障がい者等)のみが避難を要する地域
住民事前避難対象地域:健常者も含むすべての住民が避難を要する地域
- 神奈川県では藤沢市 が高齢者等事前避難対象地域を指定しています。この地域にお住いの方で、高齢者等、地震発生後では避難が間に合わない方は、避難を継続していただくことになります。
(注)事前避難における注意点事前避難は実際に災害が発生しているわけではありませんので、基本的に自主避難になります。安全な親戚宅や友人宅などへの避難が基本となりますが、自治体が避難所を開設している場合は避難所を利用できます。ただし、避難所の運営や生活は水、食料の調達も含め避難者自身が行うことが基本になることに留意が必要です。
1.地震発生後すぐに避難するための準備
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒・巨大地震注意)が発表された場合、その後に地震が発生してもすぐに避難できるよう、次のような準備をしてください。
〇 迅速な避難体制・準備
- 準備した非常持出品を常時携帯する(就寝時でもすぐに持ち出せるように準備する。)。
- すぐに逃げられる服装で就寝する。
- 屋内のできるだけ安全な場所、安全な部屋で生活する。
- がけ崩れのおそれがある地域では、がけから離れた居室を利用する。
- 避難情報を確実に取得できるようにする(携帯電話の音量を通常時より大きくする等)。
〇 室内の対策
〇 出火や延焼の防止対策
- 火災警報器の電池切れがないことを確認する。
- 不要な電気機器等の使用を控え、コンセントのプラグを抜く。
- 消火器を取り出しやすい場所に置く。
〇 地震発生後の避難生活の備え
- 携帯ラジオや携帯電話の予備バッテリー等を準備する。
揺れを感じたら直ぐに避難できる態勢の準備と身の安全の確保
[画像:yurewokanjitara]
内閣府(防災担当)・消防庁・気象庁作成「マンガで解説!南海トラフ地震その日が来たら・・・」より抜粋
2.日頃からの地震への備えの再確認
- 日頃から、次のような地震への備えを行ってください。
- 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒・巨大地震注意)が発表された場合には、地震への備えの再確認を行ってください。
(注)日頃からの地震への備えについては、神奈川県ホームページ「大規模地震に備えて・・・今、わたしたちにできること。」や神奈川県の「地震防災チェックシート」を参考にしてください。
〇 迅速な避難体制・準備
- 地域のハザードマップでどのような危険(地震の揺れに伴う津波や土砂災害)があるかを確認する。
- 安全な避難場所(緊急避難場所や避難所)・避難経路等を確認する。
- 家族との連絡手段を決めておく(SNS・メール・電話・災害用伝言ダイヤル等)。
- 非常持出品(食料、水、常備薬、懐中電灯、携帯ラジオ、身分証明書、貴重品等)を準備しておく。
- 出入口に避難の支障となる物を置かない。
- 耐震性が低い建物や、土砂崩れや津波浸水のおそれがあるところには、できるだけ近づかない。
- 倒壊危険性のあるブロック塀等には近づかない。
- 津波、土砂災害等のリスクが高いところでは、不安がある場合に避難できる安全な知人宅、親類宅等を検討する。
(注)ハザードマップについては、国交省・国土地理院ホームページ「ハザードマップポータルサイト」や神奈川県ホームページ「e-かなマップ」、お住まいの市町村のホームページをご覧ください。
(注)緊急避難場所や避難所については、神奈川県ホームページ「指定緊急避難場所・指定避難所について」や、お住まいの市町村のホームページをご覧ください。
〇 室内の対策
-
窓ガラスの飛散防止対策をする。
- タンス類・本棚の転倒防止対策をする。
- キャスター付きの収納、ベッド等を固定する。
- テーブル・椅子のすべり防止対策をする。
- テレビをテレビ台に固定し、テレビ台のすべり防止対策をする。
- 食器棚の転倒・ガラス扉の飛散・引き出しの飛びだし防止対策をする。
- 冷蔵庫の転倒防止対策をする。
- 電子レンジの落下・すべり防止対策をする。
- ベッド頭上に物を置かない。
〇 出火や延焼の防止対策
- コンロやストーブの周囲に燃えやすい物を置かない。
- プロパンガスのボンベを転倒しないよう固定する。
- 漏電遮断機や感震ブレーカー等を設置する。
〇 地震発生後の避難生活の備え
- 水や食料の備蓄を多めに確保する(神奈川県は、最低3日分、できれば1週間分の備えを推奨しています。)。
- 簡易トイレや携帯トイレを用意する。
(注)携帯トイレについては、神奈川県ホームページ「携帯トイレを備蓄しましょう」をご覧ください。
(参考)
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内閣府(防災担当)・消防庁・気象庁作成「マンガで解説!南海トラフ地震その日が来たら・・・」より抜粋
(注)企業等の防災対応については、内閣府(防災担当)の「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン」の「企業編」を参考にしてください(内閣府(防災担当)ホームページ「南海トラフ地震防災対策」に掲載)。
〇 身の安全確保と迅速な避難体制・準備
- 地域のハザードマップを確認する。
- 建物の耐震診断を行う。
- 従業員等に耐震性の低い建物には近寄らないよう周知する。
- 耐震性が低い建物を利用している場合は、代替拠点に機能を移す。
- 安全な避難場所・避難経路等を確認するとともに従業員や顧客の避難誘導ルールを策定する。
- 従業員の安否確認手段を決める。
- 出入口に避難の支障となる物を置かない。
- 防災訓練(避難訓練、火災消火等)を実施する。
- 土砂崩れや津波浸水のおそれがある場所での作業を控える。
〇 施設・設備などの安全対策
- 重要設備の地震時作動装置の点検を実施する。
- 機械・設備・パソコン等の転倒・すべり防止対策をする。
- 机・椅子のすべり防止対策をする。
- 窓ガラスの飛散防止対策をする。
- 高い場所に危険な物を置かない。
- 文書を含む重要な情報をバックアップし、発災時に同時に被災しない場所に保存しておく。
〇 発災後のための備え
- 非常用発電設備の準備及び燃料貯蔵状況を確認する。
- 早期復旧に必要な資機材の場所を確認する。
- 事業継続に必要な調達品の確保を実施する(製品や原材料の在庫量見直し等)。
- 水や食料等の備蓄品の場所と在庫の有無を確認する。
- 企業・組織の中枢機能を維持するための、緊急参集や迅速な意思決定を行える体制や指揮命令系統を確保する。
- 発災後の通信手段、電力等の必要な代替設備を確保する。
- 取引先、顧客、従業員、株主、地域住民、政府・地方公共団体などへの情報発信や情報共有を行うための体制の整備、連絡先情報の保持、情報発信手段を確保する。
- 災害時の初動対応や二次災害の防止など、各担当業務、部署や班ごとの責任者、要員配置、役割分担・責任、体制などを確認する。
- 津波浸水が予想される海沿いの道路利用を避け、輸送に必要な代替ルートを検討する。
〇「南海トラフ地震防災対策推進地域指定市町村一覧」 28市町
横浜市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、 三浦市、秦野市、厚木市、伊勢原市、海老名市、座間市、南足柄市、綾瀬市、 三浦郡葉山町、高座郡寒川町、中郡大磯町、同郡二宮町、足柄上郡中井町、同 郡大井町、同郡松田町、同郡山北町、同郡開成町、足柄下郡箱根町、同郡真鶴 町、同郡湯河原町
〇「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」 13市町
横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、三浦市、三浦郡葉山町、中郡大磯町、同郡二宮町、足柄下郡真鶴町、同郡湯河原町
「南海トラフ地震防災対策推進地域」のうち、都府県知事が設定し公表した津波による浸水想定で、水深30cm以上の浸水が想定される区域において、特定の施設又は事業を管理し又は運営する者については、「南海トラフ地震防災対策計画」(以下「対策計画」という。)の作成及び都府県知事への届出及びその写しの市町村長への送付が義務付けられました。
〇 水深30cm以上の浸水が想定される区域
南海トラフ地震防災対策計画を作成して津波に関する防災対策を講ずべき者に係る区域(PDF:46KB)のとおり
(区域が指定されている市町:横浜市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、三浦市、三浦郡葉山町、中郡大磯町、同郡二宮町、足柄下郡真鶴町、同郡湯河原町)
〇 対象となる施設及び事業
南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法施行令(平成15年政令第324号。以下「政令」という。)第3条各号に掲げる施設又は事業を管理し、又は運営する事業者
対象となる施設及び事業の詳細(PDF:560KB)
〇対策計画に定める事項
- 南海トラフ地震に伴い発生する津波からの円滑な避難の確保に関する事項
- 時間差発生等における円滑な避難の確保に関する事項
- 南海トラフ地震に係る防災訓練に関する事項
- 地震防災上必要な教育及び広報に関する事項
〇対策計画作成における参考資料
対策計画については次の資料を参考に作成してください。
南海トラフ地震防災対策計画及び南海トラフ地震防災規程作成の手引(PDF:331KB)
南海トラフ地震防災対策計画・南海トラフ地震防災規程の作成例(ワード)(ワード:20KB)
南海トラフ地震防災対策計画・南海トラフ地震防災規程の作成例(PDF)(PDF:234KB)
南海トラフ地震防災対策推進基本計画(PDF:1,195KB)
〇対策計画の特例 (「南海トラフ地震防災規程」の作成)
消防法に規定する消防計画や、火薬類取締法に規定する危害予防規程等を既に作成及び提出している事業者で、当該計画又は規程等において、津波からの円滑な避難に関する事項等について定めた場合は、その事項を定めた部分を当該施設又は事業にかかる南海トラフ地震防災対策計画とみなすことができます。この津波からの円滑な避難に関する事項等について定めた部分を「南海トラフ地震防災規程」といいます。(新たに単独で対策計画を作成する必要はありません。)
この場合は、作成した計画又は規程等を、それぞれの法令で定める提出先に提出し、かつ、その写しを市町村長に送付しなければなりません。
【提出先及び提出様式】
持参又は郵送により届出をお願いします。
- 対策計画の特例として、単独で対策計画を作らず、消防計画等の中で「南海トラフ地震防災規程」として作成した場合
【提出期限】
- 当該地域内において政令第3条各号に掲げる施設又は事業を管理し、又は運営することとなる者
施設又は事業の開業前(法第7条第1項)
- 南海トラフ地震防災対策推進地域の指定があった日(平成26年3月28日)に、既に施設又は事業を管理し、又は運営されている者
平成26年9月29日まで(法第7条第2項)
こちらについては、既に提出期限が経過していますので、未提出の場合は、急ぎ提出をお願いします。
南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法
南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法施行令
南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法施行規則
内閣府 防災情報のページ(南海トラフ地震対策)