水質基準等の解説
水道法に基づき定められている水質基準等の改正について新着
「水質管理目標設定項目」が以下のように改正され、令和4年4月1日から適用されました。
詳しくは厚生労働省医薬・生活衛生局水道課からの通知等を参照してください。
水質管理目標設定項目の改正点
- 農薬類の対象農薬リストに「イプフェンカルバゾン」が追加されました。
- 農薬類のうち「ホスチアゼート」の目標値が0.003 mg/Lから0.005 mg/Lに変更されました。
- 農薬類のうち「メチダチオン(DMTP)」について、原体の濃度と、そのオキソン体の濃度を原体に換算した濃度を合計して算出する旨が対象農薬リストの「注2」に追加されました。
水質基準及び水質管理目標設定項目
水質基準(令和2年4月1日から適用)
区分
項目
基準値
解説
病原微生物の指標
一般細菌
100個/mL以下
大部分は直接病原菌との関連はありませんが、多数検出される場合は、病原微生物に汚染されている疑いがあります。また、消毒が有効に機能しているかの判断基準にもなります。
大腸菌
検出されないこと
大腸菌を含む水は、糞便に由来する病原菌に汚染されている疑いがあります。
無機物質 ・ 重金属
カドミウム及びその化合物
カドミウムの量に関して、0.003mg/L以下
自然界に極微量ですが広く分布しているほか、鉱山や工場等の排水から混入することがあります。イタイイタイ病の原因物質として知られています。
水銀及びその化合物
水銀の量に関して、0.0005mg/L以下
工場排水等から混入することがあります。有機水銀化合物は水俣病の原因物質として知られています。
セレン及びその化合物
セレンの量に関して、0.01mg/L以下
生体微量必須元素で、河川水にわずかに含まれます。工場排水等により汚染される場合があります。化合物の毒性が強く皮膚障害、嘔吐、けいれん等を起こします。
鉛及びその化合物
鉛の量に関して、0.01mg/L以下
工場排水等の混入によって河川等で検出されたり、水道管に鉛管を使用している場合に検出されることがあります。長期摂取により貧血や血色素量の低下を起こします。
ヒ素及びその化合物
ヒ素の量に関して、0.01mg/L以下
鉱山排水、工場排水等の混入によって河川水等で検出されることがあります。急性毒性として嘔吐、下痢、腹痛、慢性毒性として爪や毛髪の萎縮、肝硬変等を起こします。
六価クロム化合物
六価クロムの量に関して、0.02mg/L以下
工場排水等の混入によって河川水等で検出されることがあります。急性毒性として腸カタル、慢性毒性として黄疸を伴う肝炎等を起こします。
亜硝酸態窒素
0.04mg/L以下
自然界に広く存在しており、窒素肥料、生活排水等からの汚染がある場合があります。高濃度に含まれると乳児にメトヘモグロビン血症を起こすことがあります。
亜硝酸態窒素は、極めて低い濃度で健康影響があるため、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の項目とは別に、単独で基準値が設定されています。
シアン化物イオン及び塩化シアン
シアンの量に関して、0.01mg/L以下
工場排水等の混入によって河川水等で検出されることがあります。シアン化合物のシアン化カリウム(青酸カリ)は代表的な毒物です。
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素
10mg/L以下
自然界に広く存在しており、窒素肥料、生活排水等からの汚染がある場合があります。高濃度に含まれると乳児にメトヘモグロビン血症を起こすことがあります。
硝酸態窒素と亜硝酸態窒素の合計値として基準値が設定されています。
フッ素及びその化合物
フッ素の量に関して、0.8mg/L以下
自然界に広く分布し、主に地質に由来しますが、工場排水の混入等によることもあります。適量に含んだ水は虫歯の予防効果があるとされていますが、多量に含まれていると斑状歯の原因になります。
ホウ素及びその化合物
ホウ素の量に関して、1.0mg/L以下
海水淡水化による水道水や、火山地帯などの地域で問題となる項目です。
一般有機化学物質
四塩化炭素
0.002mg/L以下
化学工業原料、溶剤、金属類の洗浄剤、塗料、ドライクリーニング等に使用され、地下水を汚染している場合があります。発癌性を持つものや肝臓障害等を起こすものがあります。
1,4-ジオキサン
0.05mg/L以下
シス-1,2-ジクロロエチレン及びトランス-1,2-ジクロロエチレン
0.04mg/L以下
ジクロロメタン
0.02mg/L以下
テトラクロロエチレン
0.01mg/L以下
トリクロロエチレン
0.01mg/L以下
ベンゼン
0.01mg/L以下
消毒副生成物
塩素酸
0.6mg/L以下
原水中の一部の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成されます。
クロロ酢酸
0.02mg/L以下
クロロホルム
0.06mg/L以下
ジクロロ酢酸
0.03mg/L以下
ジブロモクロロメタン
0.1mg/L以下
臭素酸
0.01mg/L以下
オゾン処理や消毒剤の次亜塩素酸生成時に不純物の臭素が酸化されて生成します。
総トリハロメタン
0.1mg/L以下
クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルムの各濃度の合計を総トリハロメタンといいます。これらの中には発癌性を持つものがあります。
トリクロロ酢酸
0.03mg/L以下
原水中の一部の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成されます。
ブロモジクロロメタン
0.03mg/L以下
ブロモホルム
0.09mg/L以下
ホルムアルデヒド
0.08mg/L以下
色 ・味
亜鉛及びその化合物
亜鉛の量に関して、1.0mg/L以下
鉱山排水、工場排水等の混入や亜鉛メッキ鋼管からの溶出に由来して検出されることがあり、高濃度に含まれると水が白濁する原因となります。
アルミニウム及びその化合物
アルミニウムの量に関して、0.2mg/L以下
高濃度に含まれると、水の変色を起こす場合があります。
鉄及びその化合物
鉄の量に関して、0.3mg/L以下
高濃度に含まれると異臭味(金気臭)や、洗濯物等を赤褐色に着色する原因となります。
銅及びその化合物
銅の量に関して、1.0mg/L以下
銅山排水、工場排水、農薬等の混入や給水装置等に使用される銅管、真鍮器具等からの溶出に由来して検出されることがあり、高濃度に含まれると水が青く着色する原因となります。
ナトリウム及びその化合物
ナトリウムの量に関して、200mg/L以下
工場排水や海水またはpH調整等の水処理に由来し、水質基準では味覚を考慮した数値になっています。
マンガン及びその化合物
マンガンの量に関して、0.05mg/L以下
地殻中に広く分布しており、浄水中に高濃度で含まれると、酸化により黒く着色することがあります。
塩化物イオン
200mg/L以下
地質、下水、家庭排水、工場排水及びし尿等の混入により検出され、水質汚濁の指標の一つになっています。
カルシウム・マグネシウム等(硬度)
300mg/L以下
硬度とはカルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計量をいい、主として地質によるものです。適当な硬度の水は味をよくしたり、水道管の腐食を防ぐとされています。また、硬度が高いと下痢の原因となったり石鹸の泡立ちを悪くします。
蒸発残留物
500mg/L以下
水中に溶解又は浮遊している物質の総量をいい、水の一般的性状を示す水質指標のひとつです。
発泡
陰イオン界面活性剤
0.2mg/L以下
生活排水や工場排水等の混入に由来し、高濃度に含まれると水の泡立ちの原因となります。
臭気
ジェオスミン
0.00001mg/L以下
放線菌や藍藻類が作る、カビ臭などの原因物質です。
2-メチルイソボルネオール
0.00001mg/L以下
発泡
非イオン界面活性剤
0.02mg/L以下
合成洗剤の主要成分です。
臭気
フェノール類
フェノールの量に換算して、0.005mg/L以下
工場排水等の混入によって河川水等で検出されることがあり、微量であっても水の塩素処理過程でクロロフェノール類が生成し異臭味の原因となります。
味
有機物(TOC)
3mg/L以下
有機物等による汚染の度合いをあらわします。土壌に起因するほか、し尿、下水、工場排水等の混入による場合もあります。
基礎的性状
pH値
5.8以上8.6以下
酸・アルカリの液性を示すもので0から14の数値で表されます。pH7は中性を表し、pH7より値が大きくなるほどアルカリ性が強くなり、値が小さくなるほど酸性が強くなります。
味
異常でないこと
水の味は、地質又は海水、工場排水、化学薬品等の混入及び藻類等生物の繁殖に起因します。
臭気
異常でないこと
水の臭気は、化学物質による汚染、藻類の繁殖、下水の混入及び地質等に起因します。
色度
5度以下
水の着色の程度を示すもので、基準値以下であれば、ほぼ無色です。
濁度
2度以下
水の濁りの程度を示すもので、基準値以下であれば、ほぼ透明です。
項目
目標値
解説
アンチモン及びその化合物
アンチモンの量に関して、0.02mg/L以下
半導体の材料などに使用されています。
ウラン及びその化合物
ウランの量に関して、0.002mg/L以下(暫定)
天然の花崗岩などに広く存在します。主に核燃料として使用されます。
ニッケル及びその化合物
ニッケルの量に関して、0.02mg/L以下
合金やメッキに使用されます。鉱山廃水やニッケルメッキからの溶出により、水道水に混入することがあります。
1,2-ジクロロエタン
0.004mg/L以下
合成樹脂原料、有機溶剤、殺虫剤等に使用されています。
トルエン
0.4mg/L以下
染料、香料、火薬、有機顔料等の合成原料として使用されています。
フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)
0.08mg/L以下
プラスチック添加剤(可塑剤)として使用されています。
亜塩素酸
0.6mg/L以下
水道水を二酸化塩素で消毒した場合に生じる消毒副生成物ですが、日本では水道水に二酸化塩素を使用した例はありません。
二酸化塩素
0.6mg/L以下
水の消毒、漂白剤等に使用されています。
ジクロロアセトニトリル
0.01mg/L以下(暫定)
原水中の一部の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成される場合があります。
抱水クロラール
0.02mg/L以下(暫定)
農薬類
検出値と目標値の比の和として、1以下
水道水で検出される可能性の高い114農薬についてリストアップされ、それぞれの目標値が設定されています。
詳細については農薬類(水質管理目標設定項目)の対象農薬リスト [PDFファイル/151KB]をご覧ください。
水道事業者等においては、対象農薬リストから水源上流部で使用される可能性のある農薬等を選定するとともに、対象農薬リスト以外の農薬についても、地域の実情に応じて測定を行い、総農薬方式による評価を行います。
残留塩素
1mg/L以下
おいしい水の観点から、目標値が設定されています。
カルシウム、マグネシウム等(硬度)
10mg/L以上100mg/L以下
マンガン及びその化合物
マンガンの量に関して、0.01mg/L以下
浄水における除マンガン設備の適正管理のための目標値です。
遊離炭酸
20mg/L以下
腐食性やおいしい水の観点から目標値が設定されています。
1,1,1-トリクロロエタン
0.3mg/L以下
臭味発生防止のために目標値が設定されています。
メチル-t-ブチルエーテル
0.02mg/L以下
ガソリンのオクタン価向上剤等に使用されています。
有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)
3mg/L以下
おいしい水の観点から、目標値が設定されています。
臭気強度(TON)
3以下
水道水に臭味があることは汚染や浄水処理などの不具合を示しています。
蒸発残留物
30mg/L以上200mg/L以下
おいしい水の観点から、目標値が設定されています。
濁度
1度以下
より高いレベルの水道を目指すための目標です。
pH値
7.5程度
腐食性(ランゲリア指数)
マイナス1程度以上とし、極力0に近づける
水の金属腐食性の程度を示す項目で、水道施設の維持管理の観点から目標値が設定されています。
従属栄養細菌
1mLの検水で形成される集落数が2,000以下(暫定)
生育に有機物を必要とする多様な細菌を検出することができ、浄水処理や消毒の効果を評価するために目標値が設定されています。
1,1-ジクロロエチレン
0.1mg/L以下
化学工業原料、溶剤、金属類の洗浄剤、塗料、ドライクリーニング等に使用され、地下水を汚染している場合があります。発癌性を持つものや肝臓障害等を起こすものがあります。
アルミニウム及びその化合物
アルミニウムの量に関して、0.1mg/L以下
高濃度に含まれると、水の変色を起こす場合があります。
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)の量の和として、0.00005mg/L以下(暫定)
有機フッ素化合物の一種で、泡消火剤等で広く使用され、環境中で分解されにくい物質です。
現時点では、毒性学的に明確な目標値の設定は困難ですが、諸外国・機関が行った評価の中で妥当と考えられるものを参考に、我が国の水道水の目標値が暫定的に設定されています。