国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第38号
「バイオアッセイによって環境をはかる−持続可能な生態系を目指して」の 刊行について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
国立環境研究所の研究成果を分かりやすく伝える研究情報誌「環境儀」第38号「バイオアッセイによって環境をはかる−持続可能な生態系を目指して」が刊行されました。
私たちの簡便で快適な生活を支えるため、膨大な数の化学物質が生産され、私たちの目に見えない所で使用されています。その中には、人の健康や野生生物の存続にとって有害な影響を及ぼすものもあります。そのような有害な化学物質を適切に管理するために、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」や「農薬取締法」に代表されるいくつかの法律が施行されています。しかし、内分泌かく乱物質やナノマテリアルの毒性影響や、複数の化学物質が同時に作用したときの複合影響など、まだ科学的に解明されていない問題がたくさんあります。
今号では、主任研究員の鑪迫典久さんが環境リスク研究センターで十年以上にわたり続けてきた、化学物質の内分泌かく乱作用によるミジンコの性比かく乱を利用した試験法の開発や、排水中に含まれる化学物質の毒性を総合的に評価するバイオアッセイ法の研究に焦点をあてて紹介します。ミジンコの性比変化を利用した内分泌かく乱影響試験法は、OECDテストガイドライン(211 ANNEX7)に採用されています。また、排水を直接検定するバイオアッセイ法は、米国ではWET(Whole Effluent Toxicity) システムとして知られ、本研究成果によって、改良型WET試験法の導入が日本でも検討されています。
1 第38号の内容
化学物質は、私たちの生活を豊かにする一方で、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼす恐れがあります。毎年、1000種以上もの化学物質が新たに登録され、それらすべての化学物質に対して現行のような化学物質ごとに影響を評価して管理する方法では、化学物質の数の増加に規制が追いついていけません。また、工場などの事業場からの排水中には多数の化学物質が含まれていると考えられ、それらの相乗効果による複合影響が懸念されます。河川や湖沼の水質を確保するためには、現行の規制法を補完するような、より実際的な管理法が必要であり、その最も有望なモニタリング方法として、排水をそのまま生物検定にかけるWET(Whole Effluent Toxicity)システムが挙げられます。
[画像:環境儀第38号表紙写真]また、化学物質の多様化に伴い、その作用機構も多様となり、従来の試験法ではそもそも毒性影響が測定できない化学物質も出てきました。内分泌かく乱化学物質は、内分泌系に作用することで生物の生殖機能、発生・分化、性発現などに影響するため、従来の個体の死亡を主体とする毒性試験では把握できない低濃度で影響を及ぼします。
主任研究員の鑪迫典久さんは、これらの問題を克服することを目指して、化学物質の内分泌かく乱作用によるミジンコの性比かく乱を利用した試験法の開発や、排水中に含まれる化学物質の毒性を総合的に評価するバイオアッセイ法の研究を続けてきました。それらの研究成果は、OECDテストガイドライン(211 ANNEX7)や、日本におけるWETシステムの導入へ向けた動向に大きな影響を与えました。
内容概要は次のとおりです。
(1) 研究担当者へのインタビュー
- 鑪迫 典久(たたらざこ のりひさ)
環境リスク研究センター 環境曝露計測研究室 主任研究員
(2) 研究成果のサマリー及び国内外の研究の動向の紹介
(3) 『化学物質の内分泌かく乱作用に関わる試験法の開発』
(4) 『生物応答を用いた化学物質の総和的な管理手法の研究』等
2 閲覧・入手についての問い合わせ先
連絡先:国立環境研究所環境情報センター情報企画室出版普及係
(TEL: 029-850-2343、E-mail:pub@nies.go.jp)
(参考)これまで「環境儀」で取り上げたテーマ
バックナンバーはホームページから閲覧できます。
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/