国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第31号
「有害廃棄物の処理−アスベスト、PCB処理の一翼を担う分析研究」
の刊行について(お知らせ)
(環境省記者クラブ、筑波研究学園都市記者会同時配付 )
国立環境研究所の研究成果を分かりやすく伝える研究情報誌「環境儀」第31号「有害廃棄物の処理−アスベスト、PCB処理の一翼を担う分析研究」が刊行されました。この号では、有害廃棄物であるアスベスト(石綿)、PCBの処理技術の開発や評価に関する分析化学面からの研究を取り上げました。
アスベストは建材を中心に大量に使用され、アスベストによる中皮腫の発症は大きな社会問題になりました。今後も大量のアスベストが廃棄物として排出され続けることから、適切な無害化処理対策が求められています。一方、1960年代に起きたカネミ油症事件を契機に、製造が禁止された使用済みPCBが現在も大量に残されたままであり、その適正処理が進められています。
このように、有害性の認識がありながら、安全・安心な処理技術がなかったため、廃アスベストと廃PCBは長い間「負の遺産」として存在してきました。本号では、有害廃棄物対策の研究分野で分析化学的アプローチを用いて長年研究を進めてきた二人の研究者の活動に焦点をあて、リサイクルできない、厳重に最終管理すべき有害廃棄物の対策に関する研究を紹介します。「循環型社会」や「3R」を目指す中で、私達の社会経済活動が生み出した過去の「負の遺産」の適正な処理も、安全・安心な循環型社会づくりに不可欠であることを再認識して頂ければと思います。
1 第31号の内容
「有害廃棄物の処理」をテーマに、長年この分野で研究を行ってきた二人の研究者の活動に焦点が当てられます。「Interview研究者に聞く」では、二人が地方環境研究所の時代から現在にいたるまでの30年余の間、時々の有害廃棄物を中心とする廃棄物問題にどのように研究面から対処してきたかが熱く語られます。最近では「循環型社会」に関心が移っていますが、現場で起こっている廃棄物問題や現場での問題解決がどのように行われてきたかを改めて考えさせてくれる内容になっています。現場での問題解決を知った上で、政策的な課題研究に取り組むべきとの主張は説得力があります。
廃アスベストや廃PCBの対策については、二人のライフワークである分析化学的アプローチからの研究が紹介されています。アスベストは溶融などの技術で無害化処理されますが、どのレベルまで処理したら安全なのかを判定する分析方法が確立していませんでした。そこで、透過型電子顕微鏡を用いた方法を新たに開発しました。一方、廃PCB処理については、化学処理技術の評価に資するPCB分解メカニズムの解明や、処理基準判定のための分析手法を確立しました。その成果は、現在の国レベルの処理対策に活用されています。
「循環型社会」や「3R」を目指す中で、私達の社会経済活動が生み出した過去の「負の遺産」の適正な処理も、安全・安心な循環型社会づくりには不可欠なのです。
[画像:環境儀第31号]
内容は、
(1) 研究担当者へのインタビュー
- 貴田 晶子(きだ あきこ)
循環型社会・廃棄物研究センター廃棄物試験評価研究室長 - 野馬 幸生(のま ゆきお)
循環型社会・廃棄物研究センター物質管理研究室長
(2) 研究成果のサマリーや国内外の研究の動きの紹介のほか、『負の遺産』『石綿(アスベスト』『PCB(ポリ塩化ビフェニル)』、などについてのコラム、その他用語解説等
2 閲覧・入手についての問い合わせ先
連絡先:国立環境研究所環境情報センター情報企画室出版普及係
(TEL: 029-850-2343、E-mail:pub@nies.go.jp)
(参考)これまで「環境儀」で取り上げたテーマ
バックナンバーはホームページから閲覧できます。
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/