- Q
- 旧日本軍の階級を言う場合に、「大尉」「大佐」の読みは「タイイ」「タイサ」でいいのでしょうか。
- A
- 原則は陸海軍ともに「タイイ」「タイサ」です。
ただし、昭和期の旧日本海軍では、「ダイイ」「ダイサ」と呼称されるのが主でした。よって昭和期の海軍については「ダイイ」「ダイサ」とするのが海軍経験者や戦史に詳しい視聴者にも違和感がない読み方です。
<解説>
「大尉」「大佐」ともに、軍隊の階級を表す語です。一般的には「タイイ」「タイサ」と読みます。しかし、別の言い方を情報として示す辞書もあります。
例えば、『大辞林第3版』(平18・三省堂)の「大尉(たいい)」「大佐(たいさ)」の項目には
「旧日本海軍では「だいい」と称した」
「旧日本海軍では「だいさ」と称した」
と説明があります。
「旧日本海軍では「だいさ」と称した」
「ダイイ」「ダイサ」という言い方が本当に、旧海軍で使われていたのか。また、旧海軍のことを伝える場合「大尉」「大佐」の呼称は、どのように扱えばいいのか、ドラマの時代考証を担当し、軍隊のことばにくわしいNHKドラマ番組部・大森洋平シニア・ディレクターに聞きました(以下、四角囲みにまとめます)。
- 海軍でも正式には「タイイ」「タイサ」である。
- 海軍省監修書籍には「たいい」「たいさ」の読みがながつけられており、表記で「だいい」「だいさ」が出てくることはない。
(考証資料:『旧軍諮問録3』ほか) - 堤明夫元防衛大学校教授(ドラマ「坂の上の雲」の海軍考証を担当)によれば、海軍でも正式には「たいい」「たいさ」だった。
- 海軍省監修書籍には「たいい」「たいさ」の読みがながつけられており、表記で「だいい」「だいさ」が出てくることはない。
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「ダイイ」「ダイサ」は昭和になってはっきり出てきた呼称である。
- NPO法人「零戦の会」会長神立尚紀氏(ノンフィクション作家)の取材経験によれば、海軍兵学校の同窓会で60期(昭和4年入校者)までの人は「タイイ」と言う人が多く、はっきり「ダイイ」と言うのは62期(昭和6年入校者)からである。
- 昭和期の海軍に関するドラマのせりふやドキュメンタリーのコメントでは、当時を知る人の強い要望もあり、極力「ダイイ」「ダイサ」が望ましい。
- 明治・大正期のせりふでは「タイイ」「タイサ」で差し支えないが、「艦長」「分隊長」などの役職名にすれば、海軍の習慣にもかなう。
参考文献:『考証要集 秘伝!NHK時代考証資料』文春文庫
「ダイイ」「ダイサ」については、正式の読み方ではなく、昭和期の旧海軍での習慣的呼称であり、旧日本海軍では全期間において、「○しろまるダイイ、ダ×ばつタイイ、タイサ」ということではありません。このことを踏まえたうえで、番組で使うことばを選ぶようにしてください。