平成11年6月17日
建設資材・労働力需要実態調査(平成9年度原単位)の結果について
建設省建設経済局労働資材対策室
課長補佐 田井中(内線2823)
資材係長 水 野(内線2826)
電話番号 (03)3580-4311(代表)
(03)5251-1844(夜間直通)
1.調査の概要
1) 調査の目的
本調査は、主要建設資材及び労働力の建設工事における原単位を把握することにより、
その需要構造を明らかにし、もって建設資材供給の安定化等、建設工事の円滑な推進を図ることを目的として実施しているものである。
本調査では、各種の主要建設資材及び労働力のそれぞれについて、以下の2種類の原単位を算出している。
・金額原単位:請負工事費(発注者より支給された資材の評価額を含む。以下同じ。)100万円あたりの投入量
・面積原単位:建築工事において、延べ床面積10?uあたりの投入量
2)調査経緯
原単位は、施工技術の進歩・合理化、新工法の開発、建設資材の品質向上及び二次製品化の進展等、及びこれらに伴う生産性の向上等によって、経年的に変化する。
このため、昭和49年度工事を対象に1回目を実施し、以後、実態に即した原単位の把握を行っている。
今回の調査は、平成9年度に着工された工事を対象として、平成10年度に実施したものである。
なお、本調査は、総務庁の承認統計として実施している。
3)調査の方法
調査方法については、以下のとおりである。(図−1参照)
(1)調査対象工事の抽出
調査年度に着工された請負工事費500万円以上の工事の中から、建築工事、土木工事の別に、工事の施工地、種類及び規模毎にそれぞれの抽出数及び抽出率を定めて調査対象工事の抽出を行う。
?@建築工事
予め約2,000事業所について予備調査を行い、その調査結果の中から約5,000件を抽出する。
?A土木工事
建設経済局調査情報課が実施している公共工事着工統計(うち土木分)及び民間土木工事着工統計のデータから、5,000件を抽出する。
(2)調査票の送付・回収及び審査
抽出した調査対象工事を請負った各事業所(元請け)に対し、郵送により調査票を送付・回収する。回収した調査票については、記入内容を審査し、審査を通過したものを有効標本とする。
(3)原単位の算出
得られた有効標本のデータから、以下の手順により、各主要建設資材及び労働力のそれぞれについて原単位を算出する。
?@標本原単位の作成
得られた有効標本のデータから、建築工事、土木工事のそれぞれについて、施工地、種類及び規模等の別毎に標本原単位を作成する。
?A着工統計による母集団の復元
作成した標本原単位の施工地、種類及び規模等の偏りを無くすため、建築工事、土木工事それぞれの着工統計データに基づき、金額原単位については請負工事費のシェアにより、面積原単位については延べ床面積シェアにより、それぞれ復元倍率を算出し、それを標本原単位に乗じることにより、着工統計の母集団の原単位を復元する。
注:より高い精度を得るために抽出された標本は、規模などの別が、母集団である着工統計データのシェアとは異なった抽出を行っている。そのために母集団でのシェアに復元する係数を乗じている。
原単位(母集団)=標本原単位(抽出標本より作成)×ばつ復元倍率
?B各統計区分に対応した原単位の算出
復元した母集団の原単位を基に、建築工事、土木工事のそれぞれについて、主要建設資材及び労働力の原単位を、以下により作成する。(表−1参照)
・建築工事
建設投資推計、着工統計(建築)、建設省所管事業の各区分の別に応じ、建築物の使途、用途、構造、面積規模等それぞれの区分毎、及びそれらを総合したものについて作成。
・土木工事
建設投資推計、着工統計(公共土木、民間土木)、建設省所管事業の各区分の別に応じ、事業種別、金額規模等それぞれの区分毎、及びそれらを総合したものについて作成。
図−1 原単位調査の実施手順
調査対象工事の抽出
→
調査票の送付・回収
及び審査
→
原単位の算出
予備調査
(建築のみ)
→
調査対象
工事抽出
調査票の
送付回収
→
調査票
の審査
母集団
の復元
→
原単位
の算出
建設投資推計
着工統計
建築工事
?@住宅・非住宅別
?A政府・民間別
?B地域別
?@使途別
?A地域別
?B構造別
?C面積規模別
?D地域別
土木工事
?@政府・民間別
?A地域別
?@事業種別
?A地域別
?B金額規模別
?C地域別
2.調査結果の概要
1)調査対象工事の抽出
平成9年度に着工された工事の中から、建築工事5,026件、土木工事5,325件を抽出した。(表−2参照)
2)有効標本件数
抽出した調査対象工事のうち、未回収記入漏れ等により無効となった工事を除く有効標本件数は、建築工事3,971件、土木工事4,322件で、全体の着工件数に対するカバー率は、それぞれ0.4%、1.3%となった。(表−2参照)
表−2 調査対象工事件数結果一覧表
部 門
抽出件数
(A)
回 収 数(B)
有効標本数(C)
平成9年度
全体着工件数
(D)
カバー率
(C/D)%
(B/A)%
(C/B)%
建築工事
5,026
4,228
84.1
3,971
93.9
*1
992,555
0.4
土木工事
5,325
4,572
85.9
4,322
94.5
*2
325,774
1.3
*1:建築着工統計(建築部門)における着工棟数
*2:公共工事着工統計(土木)および民間土木着工統計における着工件数の合計
3)原単位算出結果
建設投資推計区分及び、建築着工統計区分(構造別)に対する原単位の算出結果は、
以下のとおりとなった。
(1)建設投資推計区分に対応する金額原単位(表−3参照)
?@セメント
土木が建築を上回っている。これは、治山・治水、港湾・空港、鉄道・軌道等コンクリート構造物の多い工種の原単位が大きいことによる。
?A骨材・石材
土木が建築を大きく上回っている。これは、特に港湾・空港、土地造成等、土木工事での原単位が大きいことによる。
?B木材
木材は、居住専用が使途別にみても他を大きく上回っている。
?C鋼材
建築が土木を上回っている。これは、鋼構造のシェアが高い非住宅建築で原単位が大きいことによる。
?D就業者
建築が土木を上回っている。これは、建築の住宅が他に比べ内部造作が複雑であることによる。
表−3建設投資推計区分に対応する金額原単位(全国)
(請負工事費100万円当り)
資材・職種名
単位
建設総合
建 設 総 合
建 築
建 築
土 木
土 木
住 宅
非住宅
政 府
民 間
セメント
骨材・石材
木材
鋼材
就業者
t
m3
m3
t
人・日
1.06
9.00
0.26
0.45
11.33
0.98
3.85
0.48
0.53
11.96
0.89
3.43
0.72
0.37
13.46
1.12
4.46
0.11
0.77
9.73
1.14
14.95
-
0.36
10.61
1.24
15.73
-
0.37
10.53
0.80
12.26
-
0.32
10.89
(注:1):資材については、加工品等に含まれているものを含む。
(例:生コンクリートに含まれるセメント、骨材)
(注:2):就業者については、全職種の合計。
(2) 建築着工統計区分(構造別)に対応する面積原単位(表−4参照)
?@セメント及び骨材・石材
生コンクリートの使用割合が高い鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造で原単位が大きく逆に生コンクリートをほとんど使用しない木造で原単位が小さい。
?A木材
木造の原単位は、当然のことながら大きい。また非木造の構造別内訳では、鉄骨造の原単位が鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造より小さいが、これは、鉄骨造の住宅比率が低く、木製の内装材の使用が少ないためと思われる。
?B鋼材
鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄骨造で原単位が大きく、木造で小さい。
?C就業者
構造の違いよりむしろ、内部造作の多い住宅、逆に少ない工場及び倉庫という使途の違いが影響しているものと思われる。
表−4 建築着工統計区分(構造別)に対応する面積原単位(全国)
(建築延べ面積10?u当り)
資材・職種名
単位
建 築
建 築
木 造
(W)
鉄骨鉄筋
コンクリート造
(SRC)
鉄 筋
コンクリート
(RC)
鉄 骨 造
(S)
セメント
骨材・石材
木材
鋼材
就業者
t
m3
m3
t
人・日
1.63
6.42
0.83
0.90
20.51
0.83
3.42
2.22
0.14
23.96
2.75
10.36
0.19
1.50
20.44
2.99
11.48
0.25
1.12
23.54
1.45
5.81
0.11
1.33
16.25
(注1):資材については、加工品等に含まれているものを含む。
(注2):就業者については、全職種の合計。
(注3):補強コンクリートブロック造(CB)及びその他造(O)のウェイトは、0.1〜0.3%と少ないため、表から除外している。
4) 過去の調査結果との比較
平成3年度と今回(平成9年度)の調査結果について、原単位を比較した。このうち、建築総合の金額原単位(実質)と面積原単位および土木総合の金額原単位についての結果は以下のとおりである。
(1) 建築総合金額原単位(実質)
各原単位ともに、平成3年度より増加に転じた。
これは、平成3年度と比較して取引価格の下落が原単位の増加の要因になっているためと思われる。(表−5参照)
表−5 金額原単位(実質)(建築、全国) (請負工事費100万円当り)
資材名
単 位
平成3年度
平成9年度
セメント
骨材・石材
木材
鋼材
就業者
t
m3
m3
t
人・日
0.72
2.87
0.40
0.40
9.27
0.98
3.85
0.48
0.53
11.96
(注1):建設工事費デフレーターの「建築」の値による、平成9年度価格。
(注2):資材については、加工品等に含まれているものを含む。
(注3):就業者については、全職種の合計
(2) 建築総合面積原単位
各原単位ともに、大きな増減は見られない。
これは、面積原単位が建物の使途や構造等で決定するため、その変化の要因がない限り、大きく変動することはない。また、平成3年と平成9年度との構造別のウエイトをみても大きな変化は見られない。(表−6参照)
表−6面積原単位(建築、全国) (延べ面積10?u当り)
資材名
単 位
平成3年度
平成9年度
セメント
骨材・石材
木材
鋼材
就業者
t
m3
m3
t
人・日
1.57
6.35
0.90
0.91
20.74
1.63
6.42
0.83
0.90
20.51
(注1):資材については、加工品等に含まれているものを含む。
(注2):就業者については、全職種の合計
(3) 土木総合金額原単位
各原単位ともに、平成3年度より減少に転じた。
原単位は、前回調査と比較して、公共、民間に関係なく減少している。これは、近年、環境対策、高付加価値工事等の増加により主要建設資材の需要量が減少傾向にあると
思われる。(表−7参照)
表−7 金額原単位(実質)(土木、全国) (請負工事費100万円当り)
資材名
単 位
平成3年度
平成9年度
セメント
骨材・石材
鋼材
就業者
t
m3
t
人・日
1.54
16.49
0.42
11.34
1.14
14.95
0.36
10.61
(注1):建設工事費デフレーターの「土木総合」の値による、平成9年度価格。
(注2):資材については、加工品等に含まれているものを含む。
(注3):就業者については、全職種の合計