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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見(10/20)における筒井会長発言要旨

2025年10月20
一般社団法人 日本経済団体連合会

【自民党と日本維新の会による連立政権】

〔自民党と日本維新の会による連立政権に対して、特に期待することを問われ、〕重要外交日程が迫っていることに加えて、内外に重要課題が山積している状況下で、安定した政治の態勢の確立が急務である。こうした中、自民党と日本維新の会による連立政権は、政治の安定化に向かう契機となると評価している。政策的にも、社会保障制度改革、エネルギー問題、外交、安全保障といった分野で重なる政策は多いと受け止めている。いわゆる政治空白からの脱却を図り、迅速で着実な政策遂行を期待する。

〔前回の参議院選挙における、自民党、日本維新の会両党の比例得票数が前々回よりも減少している中で、両党に対する国民の信頼回復に向けて必要な取組みを問われ、〕両党の比例得票数をみると、国民からの信頼が低下していることは認めなければならない。信頼回復に向けた取組みとしては、山積する重要課題に迅速かつ着実に対応していくことが挙げられる。その中には、政治改革として、「政治とカネ」の問題に真摯に向き合い政党間で協議を深めることや、自民党総裁選でも主要論点となった物価高対策への対応に加えて、日本が抱える中長期的な構造問題の解決に着手する姿勢を示すことも含まれる。1つひとつの政策について、国民にしっかりと発信し、有言実行で難局を乗り越えていくことが必要である。

〔これまでの自民党と公明党による連立政権との差異や、日本維新の会との連立政権を持続可能とするために、両党に求めたいことについて問われ、〕26年間続いた自公連立政権は、政治の安定化に寄与したと評価している。新しい連立政権の下では、政策の推進力が一層強化されることを期待したい。日本維新の会が提起してきた政策を推進していく上で、自民党との協働体制の確立がエンジンとなろう。連立政権が短命で終わっては意味がなく、持続可能性の確保のカギを握るのは、両党の政策スタンスを十分に共有することである。両党の掲げる政策には重なる部分が多いため、仮に両党で十分なすり合わせが必要なテーマがあったとしても、大義に立ち戻って、政策本位の政治の実現に邁進していただきたい。

【政治資金問題】

〔いわゆる自民党の「裏金問題」につながった企業・団体献金について、これまで政治寄附を呼びかけてきた経団連としての反省の有無や、より踏み込んだ対策の提示に関する必要性を問われ、〕議会制民主主義と政党政治には、コストを要し、民間からの自発的な寄附は社会的役割として認められていると認識している。経団連は、あくまでも現行のルールに則って政治寄附を呼びかけており、議会制民主主義の発展に向けて、企業の社会的役割の一環として、寄附の出し手である企業・団体の自主的な判断に基づくことを重視している。一方で、「政治とカネ」の問題に注目が集まり続ける中、国民の信頼回復という観点から、企業・団体献金のあり方について政党間で協議を深めていただきたい。経団連としては、政治資金のあり方について、透明性の向上、いわゆる「見える化」が何より重要と考えており、政党のガバナンス強化等も含めて、これからも政治に対する信頼回復に向けて提言していきたい。

〔グローバルに活動する企業が、いわゆる「裏金問題」の指摘された政党に政治寄附を継続することに伴う、レピュテーションリスクについて問われ、〕グローバルに活動を展開する企業だけでなく、内外の株主に対して、企業は常に説明責任を要請されていることは事実である。企業の自主的な判断の裏返しとして、説明の仕方によってはレピュテーションリスクが発生しないとも限らない。経団連としては、政治資金について、透明性の向上を図ることが、出し手である企業・団体のレピュテーションリスクへの対応という意味でも、直接的、間接的に重要となると考えている。今後も、政党のガバナンス強化とともに透明性の向上を訴求していきたい。

【WTOミッション】

〔経団連会長に就任以来、初めての海外訪問先として、WTOを選んだ意義を問われ、〕オコンジョWTO事務局長自身はもちろんのこと、WTO加盟国の間でも自由貿易体制の維持に対する危機感が共有されており、日本に対する期待感もある。先般WTO改革に関する提言を公表した直後のタイミングで、WTOを訪問する機会を得たことは誠に時宜を得たものと考えている。同提言では、必ずしも十分に機能していないWTOの問題を解決すべく、「FUTURE DESIGN 2040」で示した「WTO2.0」の構築に向けた具体的な方策も提言している。今回の訪問を通じて、オコンジョ事務局長や、主要各国・地域の担当大使ともコンタクトを取る中で広く共有していきたい。また、「WTO2.0」につなげる道筋を提示すべく、高水準な貿易投資の基準にコミットする有志国による「自由で公正な貿易投資クラブ」の形成という提案をもって関係者との対話に臨みたい。今般のWTO訪問は、WTO改革の働きかけの第一歩であり、自由な貿易投資を標榜する国々に対し、二国間委員会の活動やミッション派遣の機会等を活用し、働きかけを継続していきたい。

〔WTO改革に向けて、米国への働きかけのあり方を問われ、〕米国は最大の同盟国であり、今後も貿易・投資の基軸を担う存在と認識している。民間経済外交の様々な機会を通じて、米国に対してWTO改革の意義の大きさを、じっくりと地道に訴求していきたい。もちろん、WTOの機能不全の背景には、米国の影響も大きいと理解しているため、一朝一夕に状況を打開することは難しいかもしれない。相応の時間を要することを前提に、着実に対話を進めていきたい。

〔WTO改革に向けて、現状特に問題と思われる点を問われ、〕自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化という理念を実現していく上で、WTOのガバナンス上の問題を解決する必要がある。このため、少数の反対によってルール形成が妨げられない制度設計、紛争解決の実効性確保、安全保障、サステナビリティ、デジタル等に即応したルール作りといったWTOの機能不全を克服するための方策を提起していきたい。また、「自由で公正な貿易投資クラブ」が触媒となって、ハイレベルなEPA等のルールをWTO協定に取り込むような働きかけも引き続き行っていきたい。

〔来年3月開催予定のWTO閣僚会議に向けて、提言実現に向けた働きかけを継続するかを問われ、〕今回の訪問後も、WTO閣僚会議に向けた働きかけを継続し、一定の期限を切ってWTO改革に取り組むべきことを関係者と広く共有していきたい。

【サイバーセキュリティ】

〔サイバー攻撃の被害が続いている現状に関する受け止めと、求められる対策について問われ、〕個別企業の事案に関するコメントは控えるが、サイバーセキュリティ対策は、もはやコストではなく、中長期をにらんだガバナンスと経営戦略のベースとなる投資と位置付ける必要がある。サプライチェーンの高度なデジタル化を踏まえれば、サイバーセキュリティ対策は、社会インフラの1つと考えられる。個社での対応は限界に来ているため、国全体の重要課題として官民挙げて取り組む必要がある。新たに成立した能動的サイバー防御法の趣旨に基づき、官民が緊密に連携し国を挙げて対応することが求められている。経団連としても、国家サイバー統括室や、経済産業省といった関係省庁と意見交換を行いながら、実効性と持続性を兼ね備えた政策の実現に向けて働きかけていきたい。

〔アサヒグループホールディングスへのサイバー攻撃が物流にも影響を与えていることへの受け止めを問われ、〕現在、サプライチェーン、特に最終消費者に至る物流にも大きな影響が出ていると認識している。様々な業界において、企業間での物流機能の共有化の動きもみられ、人手不足の時代には一層推進していくことが必要となる。今後、他業界でサイバーセキュリティ事案が発生した場合にも、製品を最終消費者に着実に供給するという企業の使命に関わる問題が業界全体で発生しかねない。そういう意味でも、国を挙げた対策と官民の連携強化を進めることが重要である。

【株価の動向】

〔本日(10/20)の株価の動向について受け止めを問われ、〕米中貿易摩擦の緩和も一因として挙げられるものの、自民党と日本維新の会の連立政権の下で国内の政治が安定化する目途が立ったことへの安心感や、新政権への期待感が主たる要因ではないか。一方で、株価は常に変動し、今後調整が入る可能性もある。重要なのは、株価が中長期のトレンドとして、安定的に上昇することである。そのためには、経団連の主張してきた「成長と分配の好循環」の実現が基盤になる。

以上

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