月刊 経団連2019年1月号
特集 変化の時代に未来を創る
巻頭言
「Society 5.0 for SDGs」の実現に向けて
昨年を振り返ってみると、日本経済は緩やかではあるが安定的な景気拡大を続けているものの、国際環境は大きく変化し、デジタルテクノロジーは経済のみならず社会の基盤を大きく変える不確実な世界に入ったといえる。経団連はそのような世界で日本の未来を創るべく、昨年11月に提言「Society 5.0 ―ともに創造する未来―」を発表した。
特集
変化の時代に未来を創る
デジタル革新の波が社会の前提を根本から変えていく。 技術の進歩は社会をどのような方向にも導き得る。 今われわれがすべきことは、自ら変革を主導し、目指したい社会をともに創っていくことである。 社会の変化の波にのみ込まれることを恐れることはない。 デジタル革新を先導するサティア・ナデラ氏と中西宏明会長が、大変革の時代に創りあげる未来の姿について語り合った。
対談:変化の時代に未来を創る
- サティア・ナデラ (マイクロソフトコーポレーションCEO)
- 中西宏明 (経団連会長)
- トランスフォーメーションの推進
〜目的意識と企業文化 - 次世代の原動力となる3つの技術
- 産業構造の転換と中小企業対策
- Tech intensityを見る
- デジタル技術がもたらす予期せぬ影響への対応
- 目指す共通の未来
「Society 5.0 for SDGs」
【鼎談】
Society 5.0:ともに創造する未来
(PDF形式にて全文公開中)
人類が到達する新たな経済社会の姿「Society 5.0」。
その社会は、訪れるものではなく、ともに創りあげていくものである。
経団連は、2018年7月に未来社会協創会議およびタスクフォースを発足させ、目指すべき社会や未来に託したい社会のあり方について議論を重ねてきた。
そして、その成果を提言「Society 5.0 ─ともに創造する未来─」にまとめ、11月に公表した。
同会議・タスクフォースの委員による本鼎談では、提言で示したSociety 5.0の具体的な社会像についてあらためて議論し、Society 5.0をいかに創りあげていくか探りたい。
十倉雅和(経団連副会長・未来社会協創会議委員/住友化学社長)
「Society 5.0 for SDGs」というフレーズは、非常にわかりやすい。Society 5.0とは、イノベーションを通じてSDGsを達成するものと定義できる。SDGsやSociety 5.0の価値観は、近江商人の「三方よし」などに通じ、日本社会に受け入れられやすい。提言の「Society 5.0は訪れるものではなく、共に創りあげていくもの」という言葉にあるとおり、まさに、私たちみんなが「想像力と創造力」を駆使して、新しい社会をつくっていかなくてはならない。
篠原弘道(経団連審議員会副議長・未来社会協創会議委員/日本電信電話会長)
Society 5.0は、これまで抽象的な概念として語られてきたが、提言では、国民の皆さんにSociety 5.0をより身近なものに感じていただけるよう、具体的な社会像を提示している。Society 5.0を支える大きな要素は「データ」である。同じ産業分野でのデータ共有だけでなく、異分野と共有することにより、より新しい価値が生まれる。そのためには、データの収集や共有の仕組みの構築と、単にデータを持ち寄るのではなく、目的達成のためにどのようなデータが必要なのか、という発想が求められる。
河本宏子(経団連生活サービス委員会ユニバーサル社会推進部会長・未来社会協創タスクフォース委員/ANA総合研究所副社長)
未来社会協創タスクフォースは多様なメンバーで構成され、それぞれの立場から意見をぶつけ合い、議論を重ねてきた。とりわけ「明るい未来を描くものにする」「コンセプト・ドリブンなものにする」ことを重視した。提言は、一般の方々にわかりやすい言葉でまとめた。タスクフォースでの議論を通じて、デジタルトランスフォーメーションは恐れるべきものではなく、楽しむべきものだということを確信できた。この経験を、自分の周りの人たちに発信していくことで、第一歩を踏み出したい。
- ▼ 提言に込めた思い
- 多様なメンバーが意見をぶつけ合った
- 技術はあくまで「手段」にすぎない
- Society 5.0は訪れるものではなく、共に創りあげていくもの
- ×ばつ多様な人々の想像/創造力
- ▼ ×ばつ多様性を内包した創造社会へ
- デジタル革新の課題
- Society 5.0で地方を活性化する
- いかに国民のリテラシーを高めていくか
- Society 5.0時代に求められる「リーダー像」
- ▼ Society 5.0に向けてどう変わっていくか
- 「リアルデータ」と「ドメイン技術」が日本企業の強み
- 業種を超えたコラボレーションを進めていきたい
- デジタル革新を恐れずに楽しむべき
【特別寄稿】
グローバリゼーション 4.0:その意義とわれわれ人類が得るものとは
クラウス・シュワブ(世界経済フォーラム会長)
人工知能革命としてのデジタルトランスフォーメーション
北野宏明(ソニーコンピュータサイエンス研究所社長)
- 深層学習〜AIのブレークスルー
- AI-Ready化は、企業・産業構造のサイボーグ化
- ムーンショットへの挑戦
未来は訪れるものではなく、創りあげていくもの
―Society 5.0 -ともに創造する未来-
http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/095.html
(経団連産業技術本部)
- 変化をチャンスととらえる
- Society 5.0とは
- Society 5.0は創造社会
- Society 5.0のもたらすもの
- 日本を解き放つアクションプラン
- 企業が変わる
- 国民や政府が変わる
将来の社会を支えるわが国財政のあり方
佐藤主光(一橋大学国際・公共政策大学院教授)
- 消費税率引き上げに向けた対応
- 消費税の追加増税の行方
- 国・地方の基幹財源たる消費税の効用
- 決済のキャッシュレス化を含む小売業の生産性向上
全世代型社会保障制度の確立
翁 百合(日本総合研究所理事長)
- 高齢者を支えられる側から社会保障の支え手へ
- 高齢者の雇用が可能となる環境づくり
- 医療・介護のパラダイムシフト 〜健康寿命の延伸に向けて
- 社会保障制度の持続可能性に対する不安を払拭
対立の世紀における日本の針路
イアン・ブレマー(ユーラシア・グループ社長)
地政学から見た日本の対外経済戦略
宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
- 日本の「対外経済戦略」
- 国家安全保障の視点
- 地政学的分析の重要性
一般記事
競争から協調へ
―日中間の経済・産業協力関係のさらなる強化へ向けて
中西宏明(経団連会長)
- 日中経済協会合同訪中代表団(2018年9月9日〜15日)
- 日中CEO等サミット(10月11日〜12日)
- 日中第三国市場協力フォーラム(10月26日)
【提言】
「プラスチック資源循環戦略」策定に関する意見および事例集を公表
―海洋プラスチック問題の解決と資源循環の推進に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/098.html
http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/099.html
杉森 務(経団連副会長、環境安全委員長/JXTGホールディングス社長)
小堀秀毅(経団連審議員会副議長、環境安全委員長/旭化成社長)
- 関心が高まるプラスチック問題
- 基本的な考え方
- 地球規模の海洋プラスチック問題の解決に向けて
- 国内の資源循環のさらなる推進に向けて
経団連ミッションが北欧スウェーデン、南欧ポルトガルを訪問
―日EU EPAの活用を見据えて
佐藤義雄(経団連ヨーロッパ地域委員長/住友生命保険会長)
越智 仁(経団連ヨーロッパ地域委員長/三菱ケミカルホールディングス社長)
- 保護主義への対抗で一致〜スウェーデンの先進的な取り組みに学ぶ
- 可能性を高めるポルトガル経済〜EPAを追い風に日本との協力関係拡大へ
人生100年時代のリカレント教育に向けて
東 英弥(先端教育機構理事長)
- 三位一体としてのリカレント教育
- 学び続ける社会へ
- 企業経営におけるリカレント教育の理解
- 実務で得た知見を次世代に伝える
連載
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Essay「時の調べ」
アートの可能性
小山登美夫(小山登美夫ギャラリー社長)