月刊 経団連2014年10月号
特集 経済社会を支える科学技術イノベーション
巻頭言
グローバル化とイノベーション
世界経済フォーラム等の国際会議に参加する機会や海外出張の折に、最近とみに感じるのは、日本が国際社会における存在感や海外の人々の関心を確実に取り戻しつつあるという手応えである。安倍政権の第一の矢である金融緩和と第二の矢である財政出動が起爆剤となり、景況感が好転した。日本経済の再生に世界が熱いまなざしを向けている今こそ、...
特集
経済社会を支える科学技術イノベーション
安倍政権となって以来、科学技術イノベーション政策は大きな進展が図られつつある。総合科学技術会議は、「総合科学技術・イノベーション会議」へ改組され、司令塔機能がより強化することが期待される。欧米はもとよりアジア等の新興国においても、科学技術イノベーション政策は、イノベーション創出のための総合的なナショナルシステムの強化という視点で取り組まれている。そうしたなか、わが国のナショナル・イノベーション・システム全体を俯瞰し、イノベーション創出に向けた具体的な強化策や、将来有望な技術領域等について議論する。
座談会:経済社会を支える科学技術イノベーション
- 内山田竹志 (経団連副会長/トヨタ自動車会長)
- 久間和生 (総合科学技術・イノベーション会議議員)
- 元村有希子 (毎日新聞編集編成局デジタル報道センター編集委員)
- 須藤 亮 (司会:経団連産業技術委員会企画部会長/東芝常任顧問)
内山田竹志 (経団連副会長/トヨタ自動車会長)
科学技術イノベーション政策を成長戦略とも連動する国家戦略として重要視していくべきであるという観点から、経団連は、強力な司令塔の実現、ファンディングの仕組みの改革、大学・大学院の改革、科学技術予算の拡充の四点を提言している。現在、安倍政権のもと、改革は力強く進められている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックをマイルストーンにして、かつての新幹線のような子どもたちに夢を与えるイノベーションを実現したい。
久間和生 (総合科学技術・イノベーション会議議員)
総合科学技術・イノベーション会議は、政策・予算・法制度の三位一体で日本の科学技術イノベーション政策を立案・運営し、司令塔機能を強化してきた。現在、同会議のもとでは、SIPやImPACTなど、イノベーション創出のための新たなプログラムが進められている。今後は、研究開発法人を中核としたイノベーションハブを形成し、技術シーズを実用化・事業化に結び付ける「橋渡し」機能を強化するなど、「世界で最もイノベーションに適した国」を目指していく。
元村有希子 (毎日新聞編集編成局デジタル報道センター編集委員)
イノベーション政策に関しては、これまでは各省庁がバラバラに取り組んでいて、その全容をつかむことが難しかった。司令塔機能を強化したことによって、国民にわかりやすく広報できるチャンスだ。現在の施策のなかでも、ImPACTについては、ハイリスクハイリターンを目指すと言い切っているところに注目している。また、イノベーションにはダイバーシティーが必須であり、理系、特に工学系の女性を増やすことが課題である。そのためには、若い人たちが憧れるようなロールモデルを戦略的に確立することも重要である。
須藤 亮 (司会:経団連産業技術委員会企画部会長/東芝常任顧問)
経団連では、SIP、ImPACTに積極的に応募するよう会員企業に呼びかけた。今後は、継続した予算確保と制度の定着を求めていきたい。また、大学の改革と研究開発法人の改革は一体で行うべきである。経団連としては、国に提言するだけでなく、研究開発法人の橋渡し機能の強化に積極的に関与していきたい。
- ●くろまる科学技術イノベーションの意義と政策の現状
- SIP、ImPACTの継続した予算確保を
- 総合科学技術・イノベーション会議は科学技術イノベーション政策の司令塔
- ImPACTはフレキシビリティーが鍵になる
- ●くろまる世界に冠たるナショナル・イノベーション・システムの構築
- 地域の地場力を活かせる新たなクラスター形成
- 数値目標で縛り過ぎず、多様性や自由を担保することが大切
- 研究開発法人を中核とした「イノベーションハブ」
- 大学を再編・統合して機能分化を進めよ
- 大学改革は政府がトップダウンで進めるべき
- 大学院拡充政策は失敗、理系女子をいかに増やすか
- ●くろまる科学技術イノベーションが開く未来
- 再生医療、ロボティクスは日本のリーディングフィールド
- 2020年は、新幹線、衛星中継に匹敵するイノベーションを
- 2020年はゴールではなくマイルストーン
日本流イノベーションの創出
〜東レの研究・技術開発戦略
阿部晃一 (東レ副社長)
- 内なるフロンティアの開拓
- 先端材料が先端産業を創出する
- 「超継続」が革新を呼ぶ
- 技術融合による新材料創出
- 日本流イノベーションによる持続的成長
G空間社会実現に向けたイノベーション創出への取り組み
中谷義昭 (三菱電機専務執行役)
- 2020年東京オリンピックに向けて
- さらなる将来ビジョン「手のひらに宇宙」を
- イノベーション創出に向けた取り組み
- 政策への期待
世界に先駆けた脳情報産業の創出に向けて
〜脳情報の可視化と制御技術の可能性と課題
山川義徳 (NTTデータ経営研究所ニューロイノベーションユニットニューロマネジメント室長/内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)プログラム・マネージャー)
- 脳科学の産業応用の可能性
- 脳科学の産業応用に向けた課題と必要となる研究開発
米国の産学連携と大学改革
上山隆大 (慶應義塾大学総合政策学部教授)
- 米国の産学連携と知的財産権
- 大学研究の特許化と大学発ベンチャー
- 企業家的大学の出現
イノベーション教育の普及と企業における意義
堀井秀之 (東京大学大学院工学系研究科教授)
- 東京大学 i.schoolの取り組み
- 企業におけるイノベーション教育の意義
- 人間中心イノベーションの重要性の認識
- 不確実性の増加と保険としてのイノベーション事業
第四次産業革命に進むドイツの産学官連携
永野 博 (OECDグローバルサイエンスフォーラム議長/政策研究大学院大学講師)
- 産学官が一体となった「インダストリー4.0」
- 注目される「it's OWL」
- 産学官連携は日常的発想
欧州の科学技術イノベーション政策動向
小野寺 正 (経団連産業技術委員会共同委員長/KDDI会長)
- EUの科学技術イノベーション政策
- ドイツ、英国における科学技術イノベーション政策
科学技術イノベーション政策の実現に向けた取り組み
中村道治 (科学技術振興機構理事長)
- わが国の科学技術イノベーション政策
- イノベーションエコシステムの構築
- イノベーション人材の育成
- 新しい科学技術政策の立案に向けて
ナショナル・イノベーション・システムの強化に向けて
橋本和仁 (東京大学大学院工学系研究科教授/21世紀政策研究所研究主幹)
- 総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能強化
- 産学連携のプラットフォームとしての研究開発法人
- イノベーションの観点からの大学改革を
ペプチドリーム
〜世界最先端特殊ペプチド創薬イノベーションの担い手
菅 裕明 (東京大学大学院理学系研究科教授)
窪田規一 (ペプチドリーム社長)
- 特殊ペプチド創薬イノベーション
- バイオベンチャーにおける従来の新薬開発ビジネスモデル
- ペプチドリームのビジネスモデルと研究体制
- ペプチドリームの次の事業展開
一般記事
安倍総理とともに中南米諸国を訪問
〜日本への期待を再認識
榊原定征 (経団連会長)
- 合同会議で協力強化に向け官民で議論
- 日本への高い期待
【提言】
実質的な税負担軽減を伴う法人実効税率の引き下げを
〜平成27年度税制改正に関する提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/074.html
佐々木則夫 (経団連副会長・税制委員長/東芝副会長)
- 法人実効税率はOECD、アジア近隣諸国並みの25%へ
- 国際競争力強化の視点で議論を
- 地方法人課税の改革が不可避
デミング賞
〜その挑戦が組織にもたらすもの
坂根正弘 (デミング賞委員会副委員長/品質国際会議'14‐東京(ICQ'14-Tokyo)組織委員会委員長/日本科学技術連盟会長)
- 品質賞への挑戦は強固な組織をつくり上げる
- 日本企業のさらなる競争力の強化と飛躍を期待
連載
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世界に羽ばたく人づくり (7)
明治大学における国際化戦略
「MEIJI8000とグローバル人材育成」
勝 悦子(明治大学副学長)- MEIJI8000とグローバル人材育成
- 英語学位コースの拡充とスタディアブロード
- 明治大学アセアンセンターを基軸としたASEANとの連携
- 産業界との連携による人材育成・研究強化
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輝く日本の女性たち (7)
女性が活躍できる日本に向けて
村木厚子(厚生労働事務次官)- 女性活躍推進の社会的重要性
- 政府の取り組みと成長戦略
- 女性が活躍できる日本に向けて
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あの時、あの言葉
「運」を活かす
古河直純(日本ゼオン会長) -
エッセイ「時の調べ」
盆栽に育てられて
山田香織(盆栽家・彩花盆栽教室主宰・盆栽清香園五代目)