月刊 経団連2013年4月号
特集 革新的ビジネスモデルの創出に向けて
巻頭言
新入社員に何を期待すべきか
春は若い人が真新しいスーツ姿で出勤する風景を見かける季節、新入社員は高い志と理想を持って人生の新たな門出に立ったはずだ。その新入社員に会社は何を期待し迎え入れているのであろうか。
特集
革新的ビジネスモデルの創出に向けて
激しさを増すグローバル競争を勝ち抜き、日本経済がさらなる成長を実現するため、従来の発想にとらわれないビジネスモデルを構築し、新たなフロンティアを切り拓いていくことが求められる。しかし、ベンチャーの旗手が次々と誕生する米国などと比べ、日本の革新的ビジネスモデルの創出に向けた取り組みは、まだまだ十分とはいえない。新事業・新産業創出を取り巻く環境と課題、新たなビジネス創出を活性化するための取り組みについて議論した。
座談会:革新的ビジネスモデルの創出に向けて
- 荻田 伍 (経団連副会長・起業創造委員会委員長/アサヒグループホールディングス会長)
- 有馬 誠 (グーグル代表取締役)
- 安達俊久 (伊藤忠テクノロジーベンチャーズ社長/日本ベンチャーキャピタル協会会長)
- 鈴木五郎 (立山科学工業常務)
- 椋田哲史 (司会:経団連常務理事)
荻田 伍 (経団連副会長・起業創造委員会委員長/アサヒグループホールディングス会長)
日本社会におけるベンチャーに対する見方が、起業の障壁になっている。成功した企業へのバッシングをやめ、起業しやすい環境をつくるべきだ。エンジェル税制の拡充など、政府による環境整備も重要である。社内ベンチャーについては、各企業におけるベンチャー風土の維持や強化が必要である。また、経営トップは成長のためにリスクを取る覚悟を持たなければならない。視野を広く持ち、新しいチャレンジを応援することは、企業の社会的使命である。
有馬 誠 (グーグル代表取締役)
日本でベンチャーが育ちにくいのは、風土・環境の問題が大きい。米国では、新しい価値を生み出すことは何よりも尊敬され、ヒーローとして賞賛される。政府も、企業も、チャレンジする人を応援する、成功した起業家をリスペクトするような気運を高めていくべきだ。また、一流大学・大学院を出たエリート層からベンチャーの成功者が出る確率が高い。日本でもセーフティーネットの整備など、彼らが起業しやすい、再チャレンジしやすい仕組みをつくる必要がある。
安達俊久 (伊藤忠テクノロジーベンチャーズ社長/日本ベンチャーキャピタル協会会長)
日本のベンチャーキャピタルの投資額は、年間1000億円程度で、米国の約20分の1でしかない。しかし、日本に資金がないわけではなく、人材も豊富である。最大の問題は、企業や国民のマインドセットだといえる。挑戦者をバッシングするのではなく、賞賛する環境をつくらなければならない。この数年、若い世代の優秀な層がベンチャーで起業する例が増えてきている。ベンチャーキャピタルとしては、彼らを継続的にサポートして、成功事例を積み上げていきたい。
鈴木五郎 (立山科学工業常務)
規模の小さな地方の企業は、限られた資本・人材を有効に活用するために、新しいニーズを見つけて、そこに研究開発テーマを絞る必要がある。当社は、産学官の連携のなかで、ニーズをとらえ、強みを活かして、オンリーワンの企業を目指している。政府の支援を受け、富山大学医学部と共同で開発したウイルスの抗体を抽出する技術などは、その成功事例である。また、富山県内の企業としては初めてミャンマーに進出するなど、新たな挑戦を続けている。
椋田哲史 (司会:経団連常務理事)
- ●くろまる事例に学ぶベンチャー・事業成功の要因
- ものづくり企業からサービス産業への転換
- 「20%ルール」が生んだGmail
- 若い人たちのアイデアを企業の力に変えていく
- ベンチャー企業の突破力を活用する仕掛けづくり
- ●くろまる日本におけるベンチャーの難しさ
- ベンチャー企業の特性を受容する社会へ
- エリート層からベンチャー成功者が出ている米国
- 産学官の連携のなかでオンリーワン企業を目指す
- 社内ベンチャーをカーブアウト、スピンアウトさせるために
- ●くろまるベンチャーを育てる税制・金融等の支援策のあり方
- 日米のベンチャーキャピタルの差とは
- ベンチャーキャピタルに潤沢な資金が投下される仕組みが必要
- 投資判断をする「目利き役」の育成が必要
- 「日本版JOBS法」で新規上場するベンチャーを増やす
- ●くろまるベンチャー・新事業創造にチャレンジする人材育成のあり方
- 経営陣がベンチャー精神を見せることが大切
- 全部門の年間計画に必ずビッグアイデアを入れさせる
- 実践のなかで成功事例を積み上げていくしかない
- チャンスを与えて、やらせてみることで人は成長する
新事業創造に向けた取り組み
グローバルに挑戦する企業と人材が革新的ビジネスモデルを創出する
樋口泰行 (日本マイクロソフト社長)
- イノベーション創出力の低下の影響
- 真のグローバル人材による化学反応を
- 当社の取り組み
ベンチャーが輩出する環境を醸成し、日本の新成長を促せ
堀 義人 (グロービス経営大学院学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー)
- 「価値観」「生態系」「人材」の醸成を
- 志高き挑戦者を支える「場」
新しい価値の創造
〜その源泉は"圧倒的な当事者意識"
池内省五 (リクルートホールディングス取締役)
- 従業員の当事者意識を醸成し、創造性を誘発
- 当事者意識を引き出し活かす仕組み・制度
フューチャーセンターで新たな価値を創造する
横塚裕志 (東京海上日動システムズ社長)
- 対話する創造的な協業の場
- 当社における取り組み
- 活用の場を広げさらなる進化を
産学連携への取り組み
ビジネスモデル・イノベーション
×ばつ事業業態により「次世代産業生態」を主導する
妹尾堅一郎 (産学連携推進機構理事長)
- 技術を活かすビジネスモデルが意識されていない
- 多様なビジネスモデルの定石を知る
「ジャパン・オープン・イノベーション・プラットフォーム」構想
各務茂夫 (東京大学教授・産学連携本部事業化推進部長)
- テクノロジーと長期継続的資金の橋渡しを
- コンテストで事業化プランのブラッシュアップ
一般記事
成長著しいミャンマー、カンボジアを訪問
〜インフラ整備、ビジネス環境改善、人材育成について官民首脳と協議
米倉弘昌 (経団連会長)
- ミャンマー
〜官民あげての日本の支援に期待 - カンボジア
〜日本企業のさらなる進出に期待
【提言】 競争力強化に資する戦略的な知財政策を
〜「知的財産政策ビジョン」策定に向けた提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/015.html
足立直樹 (経団連知的財産委員会共同委員長/凸版印刷会長)
日覺昭廣 (経団連知的財産委員会共同委員長/東レ社長)
- 柔軟な知財制度の必要性
- 国内における「知的創造サイクル」の強化
- グローバルレベルの「知的創造サイクル」の強化
- 一層の体制整備の必要性
【提言】 企業の事業活動の継続性強化に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/014.html
松井憲一 (経団連防災に関する委員会・国民生活委員会 危機対応タスクフォース座長/出光興産副社長)
- 企業・経済界に求められる取り組み
- 行政に求められる取り組み
- 中長期の視点に立って持続的に取り組む
「防衛産業政策に関する調査ミッション」報告
〜イタリア、英国の政府機関、防衛産業の取り組みを調査
堀 謙一 (経団連防衛生産委員会基本問題ワーキンググループ主査/三菱重工業航空宇宙事業本部営業推進室長)
- 英国〜企業との長期契約により官民協力して装備品を開発
- イタリア〜EU全体の防衛産業基盤を有効に活用
- 企業自らの競争力強化と産業支援が不可欠
企業の経済活動と国際法
〜万国国際法学会総会の日本開催の意義
石井正文 (外務省国際法局長)
- 企業の経済活動と国際法のかかわり
- 国際法の発展に貢献
- わが国で開催することの意義
連載
- Column 日本のインフラ輸出
- カンボジア・シアヌークビル港経済特別区開発工事
高橋博一 (大豊建設シアヌークビル造成作業所長)
- 経営者のひととき
生命のにおい
潮田洋一郎(LIXILグループ会長) - エッセイ「時の調べ」
意識した呼吸
深澤里奈(パーソナリティー・茶道家) - 翔べ!世界へ―奨学生体験記
UWCファミリーの一員となって思うこと
橋本弥和(堂島ビルヂング雲仙観光ホテル取締役)