「子どものための法教育」に関する特別決議
当連合会は,法教育が,国民一人ひとりの自己実現にとって,さらには自由で公正な民主主義社会の実現のために必要不可欠であるとの認識にたち,これまでにない法教育を世に広めるべく,子どもを対象として,平成13年度に決議を,平成14年度には宣言を表明した。
その後,同宣言を受け,各方面において法教育についての取り組みがなされ始めたことは喜ばしい。
しかしながら,法化社会が急速に進行し,司法制度改革が最終段階を迎えている現状に鑑みると,法教育の普及は,いまだ不十分であると言わざるを得ない。
我々の目指している法教育は,法に関する専門的な知識やトラブル対処のハウツーを教えるだけのものではなく,法化社会において,国民一人ひとりが主体的に自律的に生きていくための,また,互いの人権を尊重し,人々の多様な生き方を可能ならしめる自由で公正な社会を実現するための知識,技能,のみならず人権意識と責任感の習得を目指している。このような新しい法教育が21世紀の我が国にとって重要であることはいうまでもない。
そこで,当連合会は,このような認識を踏まえ,子どものための法教育の普及を図るため,以下のとおり特別決議する。
- 国とりわけ文部科学省に対して,法教育の重要性・必要性に照らし,下記のとおりの施策を強く要望する。
(1) 全国の子どもたちが法教育を学べるように,学校教育に法教育を積極的に導入するための方向を明確に打ち出すこと。
(2) 全国の教育委員会及び教師に向けて,法教育の必要性及び内容について周知させるための施策を速やかに講じること。
(3) 法教育の学校教育への導入のために,研究者,法律実務家,教師等から構成される研究組織を速やかに立ち上げること。
- 日本弁護士連合会,各弁護士会連合会,各単位弁護士会等関係団体に対して,下記の施策を講じることを希望する。
(1) 法教育の必要性について広く理解を得るために広報等具体的な企画立案を早急に講じること。
(2) 学校の授業で使用可能な実践的な教材及び教授法の習得プログラムの作成等を速やかに実施すること。
(3) 学校において法教育の授業の実践を行える弁護士を育成するための 研修制度を企画立案すること。
(4) 学校教育の担い手である教師に,法教育の重要性を理解してもらい,授業を実践してもらうため,教師を対象とした研修制度の設置,さらに教師の指導上の疑問や子どもたちからの法に関する疑問に答え,援助を目的とする「法教育センター」(仮称)の設置について検討すること。
- 当連合会は,関係諸団体に対して,法教育の重要性を広く訴えるとともに,法教育をより普及させるためいっそう尽力することを固く誓う。
以上のとおり決議する。
2004(平成16)年9月25日
関東弁護士会連合会