注:パソコンとソフトウエアWSJT-Xの組みあわせでは、上記のデジタル通信モード以外にも、QRA64、ISCATなどといったデジタル通信モードでの運用も可能です。
また、上記の通信方式のうち、うち一部の通信方式はJTDX(
https://jtdx.tech/en/)での運用も可能です。
★パソコンとソフトウエアを組み合わせて運用可能なその他の主なデジタル通信モード
名称
OLIVIA
主な特徴
OLIVIAは、HF帯でフェージングやマルチパスをはじめとした伝搬コンディションが悪く、極めて低いレベルの信号でも、デコードできるアマチュア無線用デジタルモードとして、2003年にPawel Jalovha氏(SP9VRC)によりプロトコルが開発されました。周波数ズレ、混信などの条件下でも動作し、HF帯の低電力での遠距離QRP通信、ラグチュー用などに使用されました。前記の、WSJT-Xが普及する以前には運用者が多く見られました。帯域幅や使用するトーンの設定等により、特性、速度、機能が異なる40種類に渡るOLIVIA形式を使用できる特徴がありましたが、一般的に使用された組み合わせは、そのうち比較的少数でした。
OLIVIAは誕生してからかなりの年月を経過しており、その後の大きなバージョンアップもおこなわれず、運用に対応するソフト群の設計が古くなってしまったこともあり、近年のWSJT-Xソフトウエアの普及によって、以前より使用される機会が少なくなっているようです。一部には根強いファンがいらっしゃり現在に至っているようです。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:FSK 32tone(5bit構成)
〇通信速度:24WPM
〇周波数偏移幅:1,000Hz
〇副搬送波周波数:500〜2,210Hz
〇符号構成:ASCII 7bit 128characters
〇電波型式:F1B、F2B
名称
RTTY
主な特徴
1849年にアメリカのフィラデルフィア←→ニューヨーク間の通信で実用化され、業務電報通信に活用されていましたが、1946年ごろからアマチュア無線でも運用されるようになった、たいへん歴史の古い文字通信のデジタル通信モードです。
業務用のテレタイプ装置や変復調器が組み込まれたターミナル装置などの専用装置を必要としたため、以前は少々敷居が高い運用モードでしたが、近年ではアマチュア無線家が制作したパソコンをRTTYターミナル装置の機能を持たせるソフトウエアが多く登場しており、日常的にRTTYの信号音として特徴的な「ピロピロ」音がバンド内で聞こえています。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:AFSK/FSK
〇通信速度:45.45bps
〇副搬送波周波数:500〜2,210Hz
〇周波数偏移幅:±85Hz
〇符号構成:BAUDOT
〇電波型式:F1B、F2B
名称
PSK(BPSK31/BPSK63/BPSK125/QPSK63など)
主な特徴
考案者であるイギリスのG3PLX(Peter Martinez)氏が、1997年に80mバンド(3.5MHz帯)で地点間距離50kmの伝送実験を開始し、翌1998年にリリースされた文字通信モードです。PSKは複変調及び送受信制御をソフトウエアでおこないます。2相のBPSK(Binary Phase-Shift Keying)と4相のQPSK(Quadrature Phase-Shift Keying)のタイプが実用化されていますが、よく利用されるのはBPSKです。アメリカ・ヨーロッパでは、BPSK31、BPSK63、BPSK125、およびこれらの混在モード、さらにQPSK63のデジタルモードコンテストがあります。
なおこれらの方式の中では、QPSK63が最も早い文字通信ができます。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:ABPSK/AQPSK
〇通信速度:31.25bps(BPSK31)/62.5bps(BPSK63)/125bps(BPSK125)
〇副搬送波周波数:50〜2,700Hz
〇符号構成:STD-VARICODE(通常のVARICODE)
〇モード:BPSK、QPSK
〇電波型式:G1B、F2B
名称
SSTV
主な特徴
SSTVは「Slow Scan TeleVision」の略称で、1枚の静止画像を低速度で(数秒〜数分)かけて送信する画像通信の方式です。黎明期には残光型のブラウン管を使用したモノクロ静止画像の通信に端を発しますが、1980年代にスキャンコンバーターと呼ばれる専用通信装置が登場し、カラー画像の伝送が可能となりました。
そして1990年台にはこのスキャンコンバーターがパソコンソフト化され、SSTVは無線機+パソコン+ソフトウエアの組み合わせで運用できる電波型式となっています。SSTVの信号は占有周波数帯域幅が3kHz以下であり、SSBの送信機で信号が送信できることから、HF帯で運用でき海外との交信も盛んです。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:副搬送波周波数変調(SCFM)
〇最高映像周波数:900Hz以下(50Hz=754Hz/60Hz=847Hz)
〇副搬送波周波数:1,750Hz(白=2,300Hz/黒=1,500Hz/同期=1,200Hz)
〇周波数偏移幅:±550Hz
〇電波型式:F3F
名称
デジタルSSTV
主な特徴
オーストラリアのEriks氏(VK4AES、故人)が開発したEasy-Palというソフトに組み込まれたモードの一つで、いわいる前記のSSTVの発展版の一つと考えられるでしょう。変調形式には直交周波数分割多重方式が採用され、従来のSSTVにはなかった誤り訂正も組み込まれており、より確実な画像伝送が可能です。
またデジタル音声の添付も可能で、世界の多くのアマチュア無線家がデバッガーとして参加し、改良を加えたソフトウエアであり、世界中のアマチュア無線家によって現在、主流として運用されているようです。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:COFDM(直交周波数分割多重方式)
〇帯域周波数:300〜2,300Hzまたは300〜2,500Hz
〇副搬送波周波数:57Hz以下
〇副搬送波変調方式:4/16/64QAM
〇エラー訂正:リードソロモン
〇コーデック:LPC、SPEEX、MELP(デジタル音声)
〇画像圧縮:JPEG等
〇電波型式:F1D、F1E、G1D、G1E
名称
アマチュア・パケット通信
主な特徴
1980年代から急激に普及が始まったアマチュア無線の電波を使ったデータ通信の一つです。
アマチュア無線機にパソコンを接続する際には、専用のインターフェースであるTNC(Terminal Note Controller)という附属装置を接続して通信ソフトで通信をおこないました。キャラクター(文字)ベースの通信に加え、通信ソフトの機能によりバイナリーデータの伝送にも対応しています。その後、パケット通信を使った転送系BBSも大流行しました。
現在はTNC無しでも運用できるSoftware TNCも登場しており、現在もアマチュア衛星のテレメトリーデータ伝送やAPRS(アマチュア無線を用いた位置情報送信システム)などにも活用されています。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
【300/1200bps】
〇方式:AFSK方式
〇通信速度:300/1200bps
〇副搬送波周波数:1700Hz
〇最大周波数変移:±100/±500Hz
〇符号の構成:AX.25プロトコル準拠 ASCII/JIS
〇装置出力の最高周波数:3kHz以下
〇電波型式:F1D/F2D(FM)
【9600bps】
〇方式:GMSK(FSK)方式(ガウスフィルターにより帯域制限(BT=0.5)されたGMSKベースバンド信号による直接周波数変調)
〇通信速度:9600bps
〇最大周波数変移:±2400Hz以下
〇符号の構成:AX.25プロトコル準拠 ASCII/JIS
〇電波型式:F1D(FM)
名称
MFSK(MultiFSK)
主な特徴
MFSKは、HF帯でのキーボードチャットに便利な通信モードです。ロングパスおよび北極回りのDXパスで良好に活用できるようにチューンされています。フルタイムの前方誤り訂正(FEC)を備えた半二重の非ARQ連続位相MFSK同期モードです。
操作はほどよい速度でのタイピングに対応でき、キーボードチャットが楽しめるのが特徴です。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:Multiple FSK
〇通信速度:15.625〜31.25bps
〇周波数偏移幅:最大キャリア数 16、キャリア間隔 ±15.625Hz
〇副搬送波周波数:500〜2,210Hz
〇符号構成:MFSK-VARICODE
〇電波型式:F1B、F2B
名称
FreeDV
主な特徴
FreeDVはHF帯で使用できるデジタル音声通信モードの一つです。特許フリーな音声符号化方式を採用し、世界のアマチュア無線家が協力して開発しており、現在も新しいモードの追加など開発者たちによって改良が続けられています。
FreeDVをインストールしたパソコンをSSBモードの無線機に接続すれば、SSBの半分程度の帯域幅の狭帯域で、ノイズの無い高品位なデジタル音声通信ができます。
附属装置
(ソフトウエア)
諸元
〇方式:FDMDV2/COHPSK
〇副搬送波変調方式:17QPSK
〇副搬送波数:17(QPSK)
〇データレート:1,900bit/s(Voice Coding 1,875bit/s、text 25bit/s、frame sync 50bit/s)
〇占有帯域幅:1,125Hz
〇コーデック:CODEC2
〇電波型式:G1E、1K13G7W、F1E、F7W
※(注記)上記の諸元はFreeDV700Dの場合です。
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