エレベーター構造規格の一部を改正する告示の適用について
基発第0328021号
平成15年3月28日
都道府県労働局長 殿
エレベーター構造規格の一部を改正する告示の適用について
エレベーター構造規格の一部を改正する告示(平成15年厚生労働省告示第8号)は、平成15年2月6日に公示され、平成15年3月31日から適用されることとされたところである。
今回の改正は、技術の進歩等に伴うエレベーターの多様化・高性能化への対応等のため、従来の規格の一部を見直したものであり、その内容は、下記のとおりであるので、その運用に遺漏なきを期されたい。
なお、平成15年3月31日をもって、
別添の1に掲げる通達についてはそれぞれ定めるところにより改正するとともに、別添の2に掲げる通達については廃止する。
おって、関係団体に対し、周知方協力要請を行うこととしているので了知されたい。
記
第1
改正の要点
1
技術の進歩等に伴うエレベーターの多様化・高性能化に対応するため見直しを行ったこと。(第16条、第21条、第24条、第30条及び第31条関係)
2
性能規定化への対応を図ったこと。(第16条、第17条及び第38条関係)
3
その他エレベーターに使用する材料、許容応力の計算方法等について所要の見直しを行ったこと。(第1条、第3条、第4条、第5条、第7条、第8条、第9条、第10条、第14条、第22条、第23条、第26条、第27条、第33条、第40条及び第41条関係)
第2
細部事項
1
第1条関係
エレベーター(労働安全衛生法施行令第12条第6号に掲げるエレベーター及び同令第13条第28号に掲げるエレベーターをいう。以下同じ。)の材料について、新たに日本工業規格(以下「JIS」という。)G3114(溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材)等4種類の材料を追加したものであること。
なお、第1項の「同等以上の化学成分及び機械的性質を有する鋼材」の例としては、それぞれ表1に掲げる鋼材があること。
表1(別紙参照)
2
第3条関係
ガイドレールは、アルミニウム製のものも作られるようになったことから、鋼製のものでなくとも差し支えないこととしたこと。
なお、鋼製以外の材料を用いた場合の許容応力の値は、第9条で規定された値を用いて計算されるものであること。
3
第4条関係
第1項は、σa( 以下「基本許容応力」という。) の値から、鋼材の許容引張応力等の値を求める計算式を定めたものであること。
なお、基本許容応力の値は、JISに定められた鋼材の「降伏点」、「耐力」及び「引張強さ」のそれぞれの最小値をもとに算定するものであること。
また、第1条第1項の「同等以上の化学成分及び機械的性質を有する鋼材」についても、それぞれの鋼材の規格(製造者の規格を含む。以下同じ。)に定められた「降伏点」、「耐力」及び「引張強さ」のそれぞれの最小値をもとに基本許容応力を算定するものであること。
4
第9条関係
材料の製造技術の向上への対応及び建築基準法施行令第129条の4に規定するエレベーター強度検証法(搬器及び主要な支持部分の強度を検証する方法)との整合を図るため、許容応力の計算に用いる値の見直しを行ったものであること。
5
第14条関係
第3項の「それぞれエレベーターの種類、荷重率、運転時間率、定格速度、衝撃及び構造部分の形状に応ずる値」として、エレベーター強度検証法による計算方法との整合を図るため、静荷重係数として1、動荷重係数として2が各々用いられることが望ましいこと。
6
第16条関係
(1)
第1項第4号は、頂部すき間及びピットの深さの値を規定しないこととしたものであること。なお、同号の規定の適用に当たっては、以下の点に留意すること。
ア
自動車運搬用エレベーターのように搬器に天井や戸を設けない場合には、最上階出入口の上端から昇降路頂部の床又ははりの下端までの垂直距離を頂部すき間とすること。
また、れん台(昇降路塔又はガイドレール支持塔頂部のシーブを取り付けている部材)を具備した工事用エレベーターにあっては、れん台の下端が「昇降路の頂部にある床又ははりの下端」に相当すること。
イ
「第30条第1項第6号及び第7号(同条第6項又は第7項の規定により同条第1項第6号に掲げる装置を備えないエレベーターにあっては、同項第7号)に掲げる装置が確実に作動するのに十分なもの」には、例えば、表2の中欄及び右欄に掲げる値以上の頂部すき間及びピットの深さを設けたものが該当すること。
表2(別紙参照)
ただし、ロープ式エレベーターにあっては、頂部すき間に代えて搬器に取り付けられた機器の最上部から昇降路頂部の床又ははりの下端までの垂直距離(以下「頂部の最小間隔」という。)を、例えば、表3の左欄に掲げる緩衝器の区分に応じてそれぞれ同表の右欄に掲げる式により計算して得た値以上のものと、油圧式エレベーターにあっては、頂部すき間に代えて頂部の最小間隔を、例えば、表4の左欄に掲げるエレベーターの区分に応じてそれぞれ同表の右欄に掲げる式により計算して得た値以上のものと、巻過防止装置を設けた巻胴式エレベーターにあっては、頂部すき間に代えて頂部の最小間隔を、例えば、表5により計算して得た値以上のものと各々することができること。
また、第30条第1項第8号に掲げる装置(緩衝器)が設置されている場合のピットの深さは、例えば、緩衝器が設置できる深さ以上の深さとすることができること。ただし、緩衝器を全圧縮した場合であっても、搬器下に設置した機器とピット内に設置した機器又はピット床面との間に0.025メートル以上の垂直距離を確保することが望ましいこと。
なお、いずれの場合であっても、頂部すき間又はピットの深さが1.2メートル未満となるエレベーターにあっては、搬器上又はピット内部で作業する際に有効となる第30条第1項第11号又は第12号の安全装置を備えなければならないことに留意すること。
表3(別紙参照)
表4(別紙参照)
表5(別紙参照)
(2)
第1項第5号の「運転のために必要でない配線」には、駆動装置を昇降路内に設けるエレベーターの電源引込線は含まれないこと。
(3)
第2項の「難燃材料」とは、建築基準法施行令第1条第6号に規定する難燃材料をいい、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後5分間、次のアからウの要件をすべて満たしているものをいうこと。なお、難燃材料には不燃材料及び準不燃材料が含まれること。
ア
燃焼しないものであること。
イ
防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること。
ウ
避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること。
7
第17条関係
第1項第1号は、昇降路塔等を建築物に固定し、又は控えを用いて支持する間隔を規定しないこととしたものであるが、建築物に確実に固定される措置が講じられていることが必要であること。
8
第21条関係
第1項は、一定の条件を満たす自動車運搬用エレベーターに係る規定等を整備したものであること。
なお、同項の規定の適用に当たっては、以下の点に留意すること。
(1)
同項ただし書の「自動車運搬用エレベーターであって、車止めを設ける等の墜落による危険を防止するための措置が講じられているもの」とは、例えば、次のアからウの要件をすべて満たしているものをいうこと。
ア
エレベーターの操作盤は、自動車の運転席で容易に操作できる位置に備えられていること。
イ
搬器の床に車止めが設けられていること。
ウ
自動車が所定の位置に停止していなければエレベーターの昇降ができない装置が備えられていること。
なお、アからウのすべての要件を満たす自動車運搬用エレベーターにあっては、第1項第3号の「壁又は囲い」の高さを1.4メートル以上とすることが望ましいこと。
(2)
同項第5号の「安全に搬器外に救出することができる措置」には、例えば、次のア及びイの措置があること。
ア
搬器に出入口の戸以外の救出口を天井等に設けること。
イ
停電等で電源が断たれた場合でも搬器を昇降させ、かつ、搬器及び昇降路の戸を開閉できる構造とすること。
なお、アの開口部は、救出するのに必要な大きさであることが求められることから、おおむね最小幅0.4メートルで、かつ、面積が0.2平方メートル以上とすることが望ましいこと。
9
第22条関係
積載荷重の計算において、(1)から(4)のすべてに該当するトランクを設けたエレベーターについては、搬器の面積からトランクの面積を除いた面積を床面積として計算することができること。
(1)
床面から天井までの高さが1.2メートル以下であること。
(2)
搬器の他の部分とトランクの床面の段差が0.1メートル以下であること。
(3)
施錠装置を有する戸を有すること。
(4)
搬器の奥行き(トランク部分の奥行きを含む。)は2.2メートル以下であり、かつ、トランク部分の奥行きが搬器の奥行きの2分の1以下であること。
10
第23条関係
第2項は、搬器が停電、故障等により乗場以外で停止した場合に搬器の戸を開けて昇降路に墜落することを防ぐための規定であること。
なお、「安全上支障がない場合」とは、例えば、次のいずれかの場合をいうこと。
(1)
昇降路の出入口の戸の位置に停止したとき以外には搬器の内側から容易に戸が開かない構造の場合
(2)
工事用エレベーターであって、昇降路塔及び搬器が鉄網等で覆われ外部が見える構造の場合
(3)
8の(1)に該当する自動車運搬用エレベーターであって、搬器が停電等で停止した際にも外部と通話できるインターフォンによって救出を求めることができ、かつ、運転者は昇降中に自動車から出ないよう教育されている場合
(4)
荷物用エレベーターであって、搬器が停電等で停止した際にも外部と通話できるインターフォンによって救出を求めることができ、かつエレベーターの操作に係る安全教育を受けた荷取扱者により操作される場合
11
第27条関係
小型・低速のエレベーターについて、シーブのピッチ円と当該シーブを通る巻上用ワイヤロープの直径との比の値の要件を緩和したものであること。
12
第30条関係
(1)
第1項第5号及び第6号は、先に第5号に規定する安全装置が1.05メートル毎秒を超えないうちに作動し、次いで第6号に規定する安全装置が1.14メートル毎秒を超えないうちに作動すべきものであることを明確にしたものであること。
(2)
第1項第10号は、ダブルデッキエレベーターに設けなければならない装置を規定したものであること。
なお、「固定することができる装置」とは、ダブルデッキエレベーターの上下の搬器の間隔を固定し、下部の搬器の上で点検整備を行う際のはさまれ防止のための装置をいうこと。
(3)
第1項第11号及び第12号は、頂部すき間及びピットの深さを1.2メートル以下とした場合に設けなければならない装置を規定したものであり、いわゆる、頂部安全距離確保スイッチ及びピット安全距離確保スイッチをいうこと。
なお、駆動装置を昇降路内に設ける方式のエレベーターにあっては、ピット内での点検整備の際のはさまれ防止のため、ピット安全距離確保スイッチのほか、ピットに入る際にエレベーターを停止させる自己保持型のスイッチ(ピットスイッチ)及び搬器降下防止装置(カウンターウエイトの固定装置又は搬器の機械的ストッパー)を備えることが望ましいこと。
13
第31条関係
第1項第4号は、油圧エレベーターに備えなければならない安全装置として、新たに油温を一定に保つことのできる装置を追加したものであること。
この場合の装置としては、例えば、寒冷地などで油温が5度以下になるおそれがある場合には保温材で囲うこと、油温が60度以上になるおそれがある場合には冷却装置を設けること等があること。
14
第33条関係
第2項第2号ハは、日本工業規格C8335(交流電磁開閉器)が廃止されたことに伴い、新たに日本工業規格C8201-4-1(低圧開閉装置及び制御装置-第4部:接触器及びモータースタータ-第1節:電気機械式接触器及びモータースタータ)に改めたものであること。
15
第40条関係
(1)
第1項第5号イは、エレベーター強度検証法の考え方を取り入れるとともに、小型・低速のエレベーターの巻上用ワイヤロープについては安全率を緩和したものであること。
(2)
第1項第5号ニは、巻上用ワイヤロープを2本以上とすることができるエレベーターとして、新たに間接式油圧エレベーター及び巻胴式エレベーター以外のエレベーターであって安全上支障がないものを追加したものであること。
なお、「安全上支障がない場合」とは、例えば、巻上げワイヤロープのうち1本が切れた場合において、残った1本の安全率が6.7以上を確保できる場合をいうこと。
16
第41条関係
エレベーター強度検証法の考え方を取り入れるとともに、小型・低速のエレベーターの巻上用チェーンについては安全率を緩和したものであること。