当協会は、平成17年4月より技術基盤の整備、自主保安活動の促進を行い、社員共通の利益である原子力産業界の活性化を図ることを目的に、安全文化の推進、情報の収集・分析・活用、民間規格の整備支援の3つの事業を柱として業務を推進してきた。発電所の保安活動の支援においては、保安情報の共有化など新たな取り組みも行なってきた。今年度は、安全文化の更なる向上を目指して、安全文化に関する現場診断も本格的に実施する。さらに平成19年度より4つ目の柱として着手した原子力技術者の育成・維持に関する業務は、平成20年度にその活動が加速される。運転責任者判定業務については、認定制度が今秋までに見直しされる予定で、これに伴い当協会が資格判定業務を実施する。民間技量認定については、認定制度導入に向け制度設計の検討支援を行なう。また、原子力発電所における保全プログラムの導入に関わる電力共通技術基盤の整備については、技術支援を実施してきたが、これらの業務を電事連より引き継いで保全に関する技術基盤情報の維持管理などを実施する。従って、平成20年度はこれらの業務を当協会の中核業務の一つと位置づけ、新たに技術基盤部を設置して体制を整備して取り組むものとする。同部では、さらに技術者の育成・維持のための総合的なプログラムをINPOなどの経験を参考に構築していく。平成20年度は「原子力アカデミー」と称し、原子力安全セミナーの開講を目指す。
さらに、最近は、原子力発電所のトラブルや先般の中越沖地震に対する報道に見られるように、事業者や規制からの情報発信だけでは必ずしも社会からの信頼を得られる状況には無く、原子力技術の的確な情報発信の重要性が高まってきている。平成20年2月に柏崎市で開催した「原子力発電所の耐震安全性・信頼性に関する国際シンポジウム」など、当協会がこの3年間実施してきた原子力技術の情報発信やマスコミを含めた対話活動の有効性が理解されつつある。これらの活動も、当協会の重要な役割と位置づけ、平成20年度には広報関連業務の強化と、その活動を対外的にも明確にするため、組織を整備して取り組むものとする。
しかしながら、これまでの成果が会員から評価されているのか、3年間の組織運営が有効に機能していたのか、などの評価と改善が必要である。
ついては、平成20年度においては、環境の変化に伴う事業に対応できる体制構築に向け、さらには3年間の組織運営などの課題を明確にして、その改善を継続的に実施する。あわせて、INPOなどの海外機関の標準的な業務運営をベンチマーキングして適切かつ柔軟な組織運営を行い、さらなる発展を目指す。
組織運営の再評価による改善と強化
各部の運営機能の強化、継続性を確保するため、現状の課題を明確にし、改善策を検討する。特に、当協会の活動実績に伴い、知的財産の管理の強化、品質保証管理の充実、事業予算管理の最適化など、改善・強化を図る検討を実施する。
要員確保計画の推進
専門性を有する技術者の確保は当協会にとって重要な課題である。各部においては中期要員計画を立て、それに基づく各出向元との異動調整、プロパー化、シニアエンジニアの活用などの検討を行って、事業規模に応じた継続性のある要員確保を図る。
一般社団法人化への円滑な導入に向けた移行準備
平成20年12月に一般社団・財団法人法が施行されることに伴い中間法人法が廃止されることから、移行に必要な準備を行なう。
(2)
関係団体、会員との連携強化
関係団体との連携
当協会の3年間の活動を踏まえて、改めて原技協の基本的役割を明確に示すことにより、日本原子力産業協会を始めとする関係団体との連携を強化し、原子力産業界の活性化に資するよう効果的かつ自立的な業務運営を図る。
会員との連携
原子力産業界を取り巻く環境変化に伴う新たな動向および会員の新たなニーズを把握し、原子力産業界として目指すべき自主保安および安全文化醸成は何か、を検討する。併せて、会員も含めた当協会の運営の最適化を検討する。
原子力技術の的確な情報発信の充実化
原子力技術の社会的理解のために、会員だけでなく国内外の一般及びマスメディアに対し、いかに適切な技術情報を提供することが重要であるか、この3年間の当協会の活動を通して明らかになったことから、広報・情報管理グループを設置する。
原子力産業界にとって、安全上重要な技術課題が発生した場合に、海外も含め積極的な情報発信を図る。
記者懇談会は今後も継続的に開催し、マスメディアへの理解促進を図る。
会員への事業内容の理解促進
ホームページ、メルマガで当協会活動を積極的に紹介する。さらに、技術セミナーを継続的に実施し、事業内容の理解促進を図るとともに会員の意見・要望を聴取し、事業へ反映していく。
海外機関との連携強化
原子力技術の社会的理解のために、会員だけでなく国内外の一般及びマスメディアに対し、いかに適切な技術情報を提供することが重要であるか、この3年間の当協会の活動を通して明らかになったことから、広報・情報管理グループを設置する。
ニューシアの充実
システムの柔軟性、使い勝手及び信頼度の向上を図り、公開性も高めていく。
スクリーニングの効率化
委託等を活用して膨大なスクリーニング業務をできるだけ効率化させる。
分析・評価の充実
LCOの逸脱等保安規定に抵触する事象、経年的トラブル及びヒューマン・エラー等時宜に応じて課題となる事象について、ニューシア情報を活用して継続的に分析・評価する。その成果物を報告会等においてフィードバックして運転・保守活動に資する。
勧告文書等の適時・適切な発行と確実なフォローアップ
事象分析結果に基づく勧告等の文書を適宜発行するとともに、提供した共有情報等の各社の活用状況を確認し、類似事象の発生防止に努める。
(2)
INPO、WANOとの連携INPOについては、テーマごとにベンチマークすることが有益である。また、WANOについては、東京センターとの協力関係を強化する。
運転経験情報及び分析結果の活用
INPO、WANOの運転経験情報に関する分析評価レポート及びそれらに基づくガイドライン等の文書を共有し、国内発電所での有効活用に資する。
WANO−PIの活用
事業者パフォーマンス指標であるWANO−PIを活用し、国際的レベルでのパフォーマンスの向上を図る。
自主保安情報システムの活用促進
保安情報システムを活用して情報の共有化を図るとともに保安情報を分析・評価して、検査等に係る傾向や良好事例などを事業者にフィードバックする。なお、これらの情報をタイムリーに登録管理し、適切かつ効果的な活用を目指す。
また、品質マネジメントシステム(QMS)に係る電力共通課題を抽出し、その対応方策を検討するとともに事業者の取り組みをフォローする。良好事例については水平展開してより有効なQMSの構築に資する。
根本原因分析(RCA)活動の推進支援
事業者のRCA実施及び社内でのRCA普及推進の核となる人材を育成するため、引き続きRCA研修を実施する。
また、事業者の自律的な社内普及活動の促進を目指すため、ハンドブック及び研修テキストの整備等支援活動を実施する。なお、導入研修以降については各社のニーズ等を勘案して別途、運用を検討する。
なお、本業務については、将来的には全体的な訓練プログラムの一環に移行させるよう計画する。
PI/SDP(重要度決定プロセス)の充実
平成21年度からのPI/SDPの運用に向けて、試行における問題点を抽出し、そのフォローにより円滑に導入できるよう支援する。
平成17〜19年度にINPO支援を得て実施した6回の電力会員向けピアレビュー実績を分析し、原技協版ピアレビュープロセスの定着を図っていく。
WANO東京センターとの連携を強化するとともに、原技協からWANOピアレビューへのレビューワーを7回派遣し、実力向上を図る。また、レビュー体制整備のために、INPO派遣者の協会内継続勤務を定着させ、電力OBのシニアエンジニアをレビューワーとして活用する。
発電所の改善活動に対する支援を実施するとともに、電力会員以外のピアレビューについても、各事業所の業態に応じたプロセスの改善を図る。
(2)
安全文化普及・向上活動安全キャラバンについては、これまでの活動実績について第三者評価を実施し改善を行う。
職場安全風土調査のアンケート結果を基に、平成18年度より会員の安全文化レベルを診断する方法を開発し、現場診断活動を開始した。今年度は5箇所の現場診断を実施するが、診断の専門家を育成し原技協手法の確立を目指す。あわせて、会員要望にタイムリーに応じられる運用方法を検討する。
従来の講演型および体験型セミナーに加え、CRM(Crew Resource Management)をテーマとしたグループ討議による研修型セミナーを継続する。
会員に役立つ研修資料(e-ラーニング等)の充実と会員への浸透を図る。
原子力産業界で必要とされる民間規格の整備支援を行なう。特に、中越沖地震に関連して早急に必要となった民間規格の整備支援に着手する。
今後数年間にニーズが高いと想定される分野のうち、国レベルでの動向、産業界のニーズを踏まえて、適切な資源配分を行い、効率的な事業運営を進める。
民間規格整備ロードマップ5ヵ年計画に基づく活動を実施する。平成20年度は昨年度に引き続き、プラント運営分野のうちリスク活用関連、廃棄物・廃止措置分野のうち低レベル放射性廃棄物の基準整備に加え、新たに中越沖地震対応の民間規格制定が必要とされている。重点的に進める内容は以下の通りである。
中越沖地震の教訓事項を受けての関連規格の改定支援。あわせて、耐震、構造健全性に関しても健全性評価委員会の結果を踏まえて必要な改定支援を実施。
保全における重要度判断など、リスク情報の実用化に対応した民間規格整備支援。
国大での包括的な技術基準制定の動きに対応した低レベル廃棄物関連規格の体系的な整備支援。
運転責任者判定制度をより適切に、客観性を持たせる制度として、民間規格に基づく判定業務を開始する。
保修工事従事者の技能レベルの維持・向上、人材基盤の強化を図るため、民間技量認定制度について、制度導入に向け制度設計の検討支援を行う。
保全に関する電力共通技術基盤整備を電事連より引き継いで実施する。そのための業務体制を新たに構築して取り組む。
JEAC4804が規制基準として認められ、改正実用炉規則が施行されたのち、当協会は判定業務を実施する。そのための判定システムを構築する。運転責任者諮問委員会、運営委員会などの運営を通して制度の透明性、客観性を確保し、判定業務を行なう。