一般講演(ポスター発表) P2-261 (Poster presentation)
近年、小型UAV(ドローン)の自然環境調査における活用が進んでいる。鳥類ではガン・カモやチュウヒなど水辺での鳥類検出事例が見られるが、樹林での活用が進んでいるとは言い難い。樹林での猛禽類営巣状況は環境影響評価等において事業の成否に影響することも少なくない。営巣木は、対象ペアの飛翔状況からおよその営巣地を推定し、現地を踏査することで特定するが、踏査は、育雛中の巣に調査者が接近することによる調査圧の懸念がある。また、営巣地は踏査に危険を伴う急斜面にあることも多く、現地への到達に多くの時間を要する。こうした営巣木の探索を、UAVを用いた空中からの撮影で実現できないか試みた。営巣木の探索は、可視光カメラでは困難との予測のもと、赤外線カメラ搭載UAVを活用した方法で検討した。本方法の課題として、1猛禽類の体表面と周辺との温度差の有無、2営巣林の樹冠の遮蔽影響、3撮影密度・高度・カメラ角度、4UAV飛行音の猛禽類の忌避反応が想定された。1では動物園及び鳥類ふれあい施設で赤外線カメラ撮影を行い、鳥類の体表温度は自身の体温、気温、日射、羽毛の色に強く影響を受けていると推察された。また、周囲(樹木)温度も、日射に強く影響を受けており、影響の度合いは樹種で異なった。2ではトヨタテクニカルセンター下山事業地周辺で、UAVの夜間飛行によって既知のノスリ営巣木の赤外線カメラ撮影を行い、モミに営巣したノスリのヒナの撮影に成功した。また、アカマツでの営巣を想定した疑似ヒナ(40°C程度に調整した電子湯たんぽを高さ10m程度の位置に設置)も同様の方法で撮影できた。3は現在未検証であるが、4ではUAVの距離別の騒音測定を実施し、機種によっては離隔距離50m以上で周囲の暗騒音に紛れることが明らかとなった。今後は猛禽類の営巣木発見の確率を上げるための撮影密度・高度・角度等の検討を進めるとともに、猛禽類へのUAV飛行の影響について確認していきたい。