ESJ55 poster P3-255

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一般講演(ポスター発表) P3-255

クロツラヘラサギ(Platalea minor)における脱落羽毛等を用いたミトコンドリアDNAの多型解析

*者炯柱(九大・比文),江田真毅(鳥取大・医),鄭鐘烈(朝鮮大・教育),小池裕子(九大・比文)

クロツラヘラサギ(Platalea minor)は、おもに朝鮮半島北西部で繁殖し、朝鮮半島南西部、日本、中国本土、台湾、香港、ベトナムで越冬するアジア固有の渡り鳥である。現在、個体数は約1700羽と少なく絶滅の危機に瀕しており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは絶滅危惧IB類に、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧IA類(CR)に指定されている。朝鮮半島西海岸付近の島々に集中している繁殖地と、東南アジア全体に散在している越冬地に関して、まだ十分な遺伝的研究は行われていない。

本研究では、クロツラヘラサギの繁殖地・越冬地の遺伝的構造、および繁殖地と越冬地の関係性を明らかにし、遺伝的多様性の評価を行うことを目的とし、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコントロール領域の解析を試みた。分析試料としては、死亡個体から筋組織等を3試料、および越冬地から脱落羽毛約30試料を採取しDNAを抽出した。はじめにmtDNAのコントロール領域を増幅するプライマーを設計し、配列を決定したところ、1個体に由来する増幅産物から、二つの異なる配列が検出された。これらはmtDNAのコントロール領域を含んだ一部領域の重複によるものであり、Long-PCR等を用いて解析をおこなった結果、チトクロームb領域の後部からコントロール領域までがタンデムに重複する構造であることがわかった。また、この重複する二つのコントロール領域配列の一部は互いに協調的に進化していることが示唆された。現在、この重複している二つのコントロール領域を含めて塩基配列を決定しながら多型解析を進めており、その結果について報告する。

日本生態学会

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