中小規模事業者のための
脱炭素経営ハンドブック
-温室効果ガス削減目標を達成するために-
はじめに
パリ協定では、産業革命後の気温上昇を、2 度を十分に下回るよう抑え、1.5 度まで
に制限する努力を継続することを目標としています。また、我が国においても、2020 年 10
月に菅総理が、我が国の温室効果ガスの排出を 2050 年までに実質ゼロ、いわゆるカー
ボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言する等、脱炭素社会の実現に
向けた社会的機運が高まっています。
現在、グローバルに展開している企業を中心に、RE100(Renewable Energy
100%)や SBT(Science Based Targets)、TCFD(気候関連財務情報開示タ
スクフォース)等の脱炭素経営に向けた企業の取組が急速に広がっています。この流れを
受けて、自らの事業活動に伴う排出だけではなく、原材料・部品調達や製品の使用段階
も含めた排出量を削減する動きや、金融機関の融資先の選定基準に地球温暖化への
取組状況が加わるケースが増えています。中小企業にとっても、温室効果ガス削減の取
組が光熱費・燃料費削減という経営上の「守り」の要素だけでなく、売上の拡大や金融機
関からの融資獲得といった本業上のメリットを得られるという「攻め」の要素を持ちつつあると
言えます。
環境省では、「令和 2 年度 中小企業の中長期の削減目標に向けた取組可能な対
策行動の可視化モデル事業」において、SBT または SBT に準じた中長期目標を設定し
ている中小企業から 8 社を採択し、各社に対し主要事業所への訪問を交え、削減計画
の策定・再生可能エネルギー調達手段の検討・設備導入のための資金計画立案等につ
いて支援を実施しました。このハンドブックはモデル事業で得られた知見を踏まえて、中小
企業における中長期的な削減計画の検討の進め方を整理したものです。
2050 年カーボンニュートラルを達成するためには、今後 30 年のうち、この5年間、10
年間の取組が重要となります。また、脱炭素化の動きにいち早く対応することが、中小企
業の皆様の更なる成長の実現にもつながるものと考えております。これから「攻めの一手」と
しての脱炭素経営に踏み出す皆様の一助となれば幸いです。
目次
ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット........................................ 4
1.1 脱炭素経営によって期待されるメリット...................................................................................5
1.2 事例紹介..............................................................................................................................8
(1) 事例1 株式会社大川印刷(印刷事業、神奈川県横浜市).............................8
(2) 事例2 山形精密鋳造株式会社(鋳造部品製造、山形県長井市)...............12
(3) 事例3 中部産商株式会社(鋳造用耐火物製造、三重県四日市市)...........15
脱炭素化に向けた削減計画の策定.................................................................. 18
2.1 脱炭素化に向けた基本的な考え方....................................................................................19
2.2 脱炭素化に向けた計画策定の検討手順 ...........................................................................20
STEP1 長期的なエネルギー転換の方針の検討..................................................................21
STEP2 短中期的な省エネ対策の洗い出し.........................................................................22
STEP3 再生可能エネルギー電気の調達手段の検討.........................................................23
STEP4 削減対策の精査と計画へのとりまとめ......................................................................26
2.3 ケーススタディ.......................................................................................................................30
(1) モデル事例1 三和興産........................................................................................30
(2) モデル事例2 リマテックホールディングス..................................................................35
(3) モデル事例3 ジェネックス.......................................................................................39
(4) モデル事例4 マックエンジニアリング........................................................................43
(5) モデル事例5 宮城衛生環境公社........................................................................47
(6) モデル事例6 恩田金属工業................................................................................51
(7) モデル事例7 小坂鉄工所....................................................................................54
(8) モデル事例8 艶金................................................................................................56
参考資料 ....................................................................................................................... 58 4ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット 5第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
1.1 脱炭素経営によって期待されるメリット
2020 年 10 月の菅総理大臣による 2050 年カーボンニュートラル宣言以降、国内の脱炭素
に向けた動きが急激に加速しつつあります。この目標の達成に向けて、産学官が協力して実現に
向けた検討を進めています。また、脱炭素経営に関する、RE100(Renewable Energy
100%)1
や SBT(Science Based Targets)等の国際的な民間イニシアティブに加わる企
業が近年増加しています。
この脱炭素に向けた急激な社会変化は、厳しい規制や制約としての面が強く意識される場合
もあるかと思います。例えば、再エネ電力を調達すると電気代が上がるのではないか、化石燃料の
使用が制限されると自社の製品製造が困難になってしまうのではないか、温室効果ガスを多く排
出する自社と取引をする会社が少なくなるのではないか、などの不安を抱いている方もいらっしゃる
のではないでしょうか。既に排出量の多い産業や企業は、国際世論や金融機関から厳しい視線
を浴びています。例えば、金融機関からは化石燃料産業等からの投資撤退(ダイベストメント)
や脱炭素化への働きかけ(エンゲージメント)といった動きも出てきています。また、政策面では、
例えば、カーボンプライシングが導入されている国もあります。さらに SDGs(持続可能な開発目
標)の考え方が広まっている中、消費者からも持続可能ではない事業活動への視線は年々厳し
くなりつつあります。
脱炭素経営は、こうした規制や制約等の社会情勢に対応する手段となることに加え、様々なメ
リットを生み出します。本ハンドブックでは、中小企業が脱炭素経営に取り組む上での、5 つのメリッ
トを紹介します。
1 つ目のメリットは、優位性の構築(自社の競争力を強化し、売上・受注を拡大)です(参
考:1.2(1) 大川印刷(p.8)、1.2(2) 山形精密鋳造(p.12))。SBT に加盟する等、
環境への意識の高い企業を中心に、サプライヤーに対して排出量の削減を求める傾向が強まりつ
つあり、脱炭素経営の実践は、こういった企業に対する訴求力の向上につながります。例えば、
Apple ではサプライヤーに対して、再エネ電力の使用を求めており、Apple 向けの生産を行ってい
る国内企業では再エネ調達が進められています2
。国内企業においても、SBT 目標を策定してい
る大企業を中心に、サプライヤーに対する働きかけが同様に拡がりつつあります。SBT 目標では、
自らの事業活動に伴う排出(Scope1/2)だけではなく、原材料・部品調達や製品の使用段1RE100 は電力使用量の多い大企業を対象として、遅くとも 2050 年までに使用電力の 100%を再生可能エネルギーで賄う
ことを目標として設定し、その達成に向けて取り組むことを求める世界的なイニシアティブ。2自然エネルギー財団「先進企業の自然エネルギー利用計画 (第 7 回)Apple、全世界で自然エネルギー100%達成〜20
社超のサプライヤーも Apple 向けに対応〜」(2019 年 2 月)
第1部
ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット 6第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
階も含めた排出量(Scope3)の削減も目標として示すことを求めています。そのため、脱炭素
経営は自社製品の競争力確保・強化に今後ますますつながっていくものと考えられます。
図 1-1 脱炭素経営による自社製品の訴求力の向上(イメージ)
2つ目のメリットは、光熱費・燃料費の低減です。脱炭素経営に向けて、エネルギーを多く消費
する非効率なプロセスや設備の更新を進めていく必要があり、それに伴う光熱費・燃料費の低減
が メ リ ッ ト と な り ま す ( 参 考 : 1.2(2) 山 形 精 密 鋳 造 ( p.12 ) 、 1.2(3) 中 部 産 商
(p.15))。また、一般的には費用が高くなると思われがちな再エネ電力の調達についても、大
きな追加負担なく実施しているケースもあります。
3つ目のメリットは、知名度や認知度の向上です。省エネに取り組み、大幅な温室効果ガス排
出量削減を達成した企業や再エネ導入を先駆的に進めた企業は、メディアへの掲載や国・自治
体からの表彰対象となることを通じて、自社の知名度・認知度の向上に成功しています(参考:
1.2(1) 大川印刷(p.8))。また、大幅な省エネ対策の実施によって光熱費を大幅に削減で
きたことにより、利益を出しにくい多品種少量生産の製品であっても積極的に生産・拡販できるよ
うになり、副次効果として顧客層への浸透が期待されるケースもあります(参考:1.2(3) 中部
産商(p.15))。
4つ目のメリットは、脱炭素の要請に対応することによる、社員のモチベーション向上や人材獲
得力の強化です(参考:1.2(1) 大川印刷(p.8))。気候変動という社会課題の解決に
対して取り組む姿勢を示すことによって、社員の共感や信頼を獲得し、社員のモチベーションの向
上に繋がります。また、脱炭素経営に向けた取組は、気候変動問題への関心の高い人材から共
感・評価され、「この会社で働きたい」と意欲を持った人材を集める効果が期待されます。脱炭素
経営は金銭的なメリットだけでなく、社員のモチベーション向上や人材獲得を通じて、企業活動の 7第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
持続可能性向上をもたらします。
5つ目のメリットは、新たな機会の創出に向けた資金調達において有利に働くことです。金融機
関から脱炭素化に向けた圧力が高まりつつある点について先述しましたが、融資先の選定基準に
地球温暖化への取組状況を加味し、脱炭素経営を進める企業への融資条件を優遇する取組
も行われております。例えば、滋賀銀行は温室効果ガス排出量の削減や再生可能エネルギーの
生産量または使用量等に関する目標の達成状況に応じて貸出金利が変動する「サステナビリテ
ィ・リンク・ローン」3
を開始しています。
上記の 5 つのメリットを踏まえ、「脱炭素経営」を、事業基盤の強化や新たな事業機会の創出、
企業の持続可能性強化のためのツールとして認識・活用していくことが重要となります。次頁からは、
事例紹介として3社のインタビュー調査を掲載しております。脱炭素経営を進める各社の取組が、
読者の皆様が、自社の脱炭素経営の構想を練る際の御参考となれば幸いです。3滋賀銀行「サステナビリティ・リンク・ローン〜持続可能な社会の実現に向けて〜」
(https://www.shigagin.com/company/catalog/sustainability/)<閲覧日:2020 年 12 月 18 日> 8第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
1.2 事例紹介
ここでは、脱炭素や温室効果ガス排出削減に向けた各社の取組より、取組内容や取組による
効果やメリットを紹介します。
(1) 事例1 株式会社大川印刷
(印刷事業、神奈川県横浜市)
株式会社大川印刷は、1881 年(明治 14 年)に創業した印刷会社です。本業を通じた社
会課題解決を実践する「ソーシャルプリンティングカンパニー®」を標榜しています。脱炭素経営を通
じて、新たな企業との取引に成功している企業として注目を集めています。
SDGs や SBT 目標に取り組みながら、再エネの活用による BCP 対策やエネルギーコストの削
減、取引先や売上の増加といった多くのメリットを生み出している取組について、社長の大川哲郎
氏、品質保証部 草間綾氏にお話を伺いました。
SBT 目標に取り組む過程で売上増とコスト低減を同時達成
(司会者) SBT 目標設定の経緯や動機について御教示いただけますと幸いです。
(大川氏) 2018 年度、環境省中小企業版 2°C目
標・RE100 の設定支援事業に選定されま
した。それ以前から、CSR に取り組んでいま
す。2004 年、ソーシャルプリンティングカン
パニー®(社会的印刷会社)というパー
パス(存在意義)を掲げ、長年環境や社
会性を重視した事業活動を続けてきまし
た。中小企業でも世界共通の目標に取り
組むことが重要だと考えています。
(司会者) SBT の目標達成に向けた具体的な計画
の達成状況はいかがでしょうか。
(大川氏) 2016 年度に Scope1、2 のゼロを達成しています。非常に野心的な目標
ですが、2030 年に Scope3 を含めたゼロ化をしようとしています。
(司会者) SBT の目標達成に向けて、これまでどういった対策に取り組んできましたか。
大川氏 9第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
(大川氏) 省エネでは LED UV 印刷機4
への切り替えなど、消費電力量の削減に努め
ています。
また、自社の工場屋根に第三者所有モデルで太陽光発電設備を設置して
およそ 20%の電力を賄い、残りのおよそ 80%の電力を青森県横浜町の風
力発電による電力(FIT 利用)を購入し、グリーン電力証書を利用するこ
とで、2019 年本社工場全体の使用電力の再生可能エネルギー100%化
を実現しています。
再エネ以外ではサプライチェーン排出量の削減に取り組んでいるところです。
同業他社の印刷業者や、製本業者、配送業者等を招いてCO2排出削減
に向けたセミナーを開催しました。セミナー参加企業 11 社のうち、2 社が
CO2 削減に取り組む意向があると回答するなど、普及啓発にも力を入れて
います。
エネルギーコスト削減・BCP 対策・取引先拡大・従業員の意識醸成
(司会者) 脱炭素経営に向けた取組により、どのような効果やメリットが得られましたか。
(大川氏) 再エネに切り替えると、コスト高になるのではないかとよく質問を受けますが、
2019 年度は、売上が対
前年度比 8%伸びたのに
も関わらず、エネルギーコス
トは 8%削減できました。
一番のメリットは、非常時
でも事業が継続できたこと
です。昨年工場に電気を
取り込む機器が壊れ、電
話やパソコンも含め全く機
能しなくなりました。その際、太陽光発電から直接電気の供給ができたので、
復旧には 2 日ほどかかったものの、お客様には全く御迷惑をおかけすることな
く済みました。
また、早くから脱炭素経営に取り組んだため、先進的な取組としてメディアに4オフセット印刷機の乾燥装置の光源に、世界で初めて LED(発光ダイオード)を採用し、LED 専用の紫外線(UV)硬化
型インキを使用して行う印刷システム。
出所)リョービ株式会社「印刷機器」
(https://www.ryobi-group.co.jp/projects/profile_printing.html)<閲覧日:2021 年 3 月 10 日>
印刷工場の屋根に設置した太陽光発電 10第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
取り上げられ、見学者を多数(2019 年度は 430 名)お迎えし、取組や
環境印刷に共感を持ったお客様からの問い合わせや御注文が増えました。こ
れが売上増に貢献したと感じています。売上高経常利益率は 1.8%増加し
ました。中小企業で 1.8%増はなかなか達成できない数字です。
さらに言えば、従業員の意識が変化しました。従業員がセミナーの講師に挑
戦したり、オンラインイベントを開催し、気候危機に関する情報発信をしたり
と、プライドを持って取り組んでくれています。目指すは「全従業員 SDGs 担
当」といった気持ちで、自分の言葉で仕事と SDGs との関わりを語ることがで
きるのが強みです。これが自社の競争力の源泉だと思っています。
(司会者) 脱炭素経営の取組の実施にあたり、自治体との連携はありましたか。
(大川氏) 横浜市地球温暖化対策推進協議会の副会長を務めていることが御縁で、
横浜市の取組に率先して参加しています。横浜市と青森県横浜町が連携
している再エネ電力供給は横浜市から声がけがあって取り組むことにしまし
た。
従業員の一人一人が担う脱炭素経営
(司会者) 印刷工場のそれぞれの印刷設備にも SDGs の目標が掲示されています。
(草間氏) それぞれの SDGs 目標は、従業員が印刷設備に対応するようアレンジして、
目標を掲示しています。例えば、
ゴール6(安全な水とトイレを世界中に):印刷設備は従来アルコールを
含む水を使っていたものをノンアルコールに変更し、環境に配慮しました。
ゴール8(働きがいも、経済成
長も):2020 年 4〜12 月で
は 99.9%がノン VOC になりまし
た。ノン VOC インクを用いること
で、職場環境が改善し、働きや
すい環境となりました。
ゴール 12(つくる責任、使う責
任):印刷物の端材もリサイク
ルして使うことでムダを出さない努力をしています。
印刷工場の様子 11第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
ゴール 15(陸の豊かさを守ろう):FSC®森林認証5
を使っていて、
2020 年度は 4〜12 月で 72.3%を利用しています。
(司会者) 工場を視察させていただきましたが、機械と人の目による品質のダブルチェック
をするなど、丁寧で質の高い印刷物を提供していました。また、工場で従業
員の一人一人がそれぞれ担当している環境の取組を解説してくださった姿か
ら、脱炭素経営が従業員の方に根付いていると感じました。本日はありがとう
ございました。5FSC は環境団体、林業者、木材取引企業、先住民団体、地域林業組合などの代表者から構成される団体で、1993 年に
WWF(世界自然保護基金)を中心に設立されました。FSC®森林認証は環境影響や地域社会、先住民族の権利などを含
む 10 原則 56 基準に沿って、FSC が認定した認証機関が審査を実施することになっています。
出所)環境省フォレストパートナーシップ・プラットフォーム「森林認証制度」
(https://www.env.go.jp/nature/shinrin/fpp/maintenance/new/cert.html) <閲覧日:2021 年 3 月 25 日> 12第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
(2) 事例2 山形精密鋳造株式会社
(鋳造部品製造、山形県長井市)
山形精密鋳造株式会社はロストワックス鋳造法6
によ
り、精度の高い鋳物を製造しています。1986 年の設立当
初は水道管の継手部品の製造が主体でしたが、2000 年
頃より自動車部品中心の製造に切り替えています。大量
生産・低コストの鋳物が製造できることを強みとしており、国
内自動車メーカー全社に納品実績があります。
同社では、いずれサプライチェーン全体での環境取組が求められる時代になると見通しており、
温室効果ガス削減の取組は、将来的に自社の競争力強化につながると考えています。また、省エ
ネ診断の提案に従って省エネ対策を実施し、光熱費の削減を達成しています。
同社における省エネルギーの取組について、本社工場長の後藤与四昭氏にお話を伺いました。
溶解工程以外での省エネがカギ
(司会者) 精密鋳造による自動車部品が主力製品と伺いましたが、貴社の鋳造方法
の特徴を教えて下さい。
(後藤氏) ロストワックス鋳造法という、ワックスで
作った型をセラミックで覆い固め、鋳型
を製造する方式を採用しています。一
般的なロストワックス鋳造法は大量生
産が難しくコストが高いですが、当社
では鋳型造型から乾燥までの工程を
自動ラインで構築し、セラミックとして
価格の安い珪砂を採用する等の工
夫により低コストで大量生産が可能となっています。
(司会者) エネルギーは、どの工程で多く使われていますか。
(後藤氏) 消費エネルギーの 6 割は素材のステンレスを溶解する溶解電気炉が占めま
すが、この工程の省エネは困難だと考えています。そのため、別の工程での省
エネを進めてきました。
(司会者) 具体的にはどのように省エネの取組を進めてきたのでしょうか。6ロウ(ワックス)で作った原型の周りを鋳物砂や石膏で覆い固め、加熱により中のロウを除去することによってできた空洞に溶かし
た金属を流し込むことで鋳物を製造する手法。
製品例(自動車部品)
本社工場 13第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
(後藤氏) 山形県工業技術センターが実施していた電力等測定事業で電力量計の貸
与を受け、主要な設備の電力使用状況を把握するとともに省エネルギーセン
ターが実施している省エネ無料診断を受け、実施すべき対策を絞り込んでい
きました。2014 年以降に導入した主要な設備としては、インバータ付きコン
プレッサー、高効率貫流ボイラー、LED 照明が挙げられます。いずれも国の
補助金を活用しました。
きっかけはトップダウン、継続はボトムアップ
(司会者) お話を伺っていると、継続的に省エネに取り組むことによって「できる対策を着
実に実施していく」という姿勢が感じられます。省エネに取り組むことになったき
っかけと継続するコツを教えていただけるでしょうか。
(後藤氏) きっかけとしては、2008 年頃に話題
となっていた京都議定書に当時の社
長が関心を持ち、事業継続のために
は地球環境への配慮も必要であると
考えたことから、前述の電力等測定
事業や省エネ診断を受けたことが始
まりです。ただ、省エネ対策のヒントは
現場に散在していることから、トップの
意思だけでは取組の継続はできません。現在に至るまで継続できたのは、現
場から省エネのアイデアを吸い上げる仕組みを構築したことによると考えていま
す。具体的には、月に 1 回省エネ推進委員会を開催し、小さな運用改善の
アイデアでもよいので、社内で共有するようにしています。こうした取組が評価
され、令和 2 年度に山形県環境保全推進賞、東北七県電力活用推進委
員会委員長賞を受賞させていただきました。
(司会者) なるほど。トップダウンとボトムアップの両アプローチがあったからこそ継続的に取
り組めているというわけですね。これから本格的に省エネに取り組もうとしてい
る中小企業の皆様にアドバイスがあればお願いします。
(後藤氏) 2 つあります。1 点目は事業環境の変化をポジティブにとらえ、早め早めに動
き出して欲しい、という点です。Apple などのグローバル企業は部品サプライヤ
ーに対し、自社に納入する製品の製造時に使用する電力を再エネにするよ
う依頼をしていると聞きます。我々の所属している自動車業界はそこまで進
後藤氏 14第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
んでいませんが、お客様から当社の省エネ取組状況について尋ねられることも
増えてきました。業界によって早い/遅いの差はあると思いますが、いずれサ
プライチェーン全体での環境対策が求められる時代がやってくると考えていま
す。いざという時に慌てなくてよいよう、今からできることに着手することが重要
だと思います。
2 点目は、国や自治体の各種事業を積極的に活用いただきたいという点で
す。設備に対する補助金が有効であるのはもちろんですが、省エネ等診断事
業も設備投資計画を策定する上で非常に役立ちました。診断を受ける前は
「設備はカタログスペック通りに動くわけではないだろうから、診断結果の光熱
費削減効果見込みはあまり当てにならないのではないか」と考えていたのです
が、その後実際に設備を導入してみたら概ね想定通りとなりました。
(司会者) 省エネに取り組むことが難しい溶解工程がエネルギー消費量の 6 割を占める
中、補助事業を活用しつつ、できることから少しずつ、着実に取り組まれてい
る姿勢は多くの中小企業の参考になるのではないでしょうか。本日はありがと
うございました。 15第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
(3) 事例3 中部産商株式会社
(鋳造用耐火物製造、三重県四日市市)
中部産商株式会社は、鋳造用耐火物として、ストレーナー
(熱で溶かした金属中の不純物を取り除くためのフィルター)
や、湯口スリーブ(鋳型に流し込むための導管)の製造販売
を手掛けています。1963年の創業時は燃料の卸・小売販売
を行っていましたが、1985 年に工場を建設し、現在に至って
います。これらの鋳造用耐火物は全国の鋳物工場に販売さ
れているほか、中国・ベトナム・タイなどにも輸出されています。
同社の省エネルギーの取組は、約一千万円の光熱費を削減しただけでなく、知名度の向上等、
競争力強化に貢献しています。同社における省エネルギーの取組について、社長の井上幸次氏と
技術顧問の中川哲己氏にお話を伺いました。
生産量増加でもガス消費量を半減
(司会者) 鋳造用耐火物の製造におけるエネルギーは、どの工程で多く消費されていま
すか。
(井上氏) 鋳造用耐火物は、珪砂や粘土を原料とし、成形→乾燥→焼成といった工
程を経て製品になります。光熱費のうち、焼成工程で使うガスが年 1200 万
円程度かかり一番大きいですが、主に乾燥工程で使う電気も年 1000 万
円程度かかっています。もっとも、省エネ対策前の 5 年前はガスの使用量が
現在の倍近くありました。
(司会者) ガスを半分近く減らして 1000 万円以上も光熱費を節約できたとはすごいで
すね。そのような大幅な省エネを、どのように実現したのですか。
(中川氏) 大きくは 2 つの取組を行いました。1 つは、既設のトンネル炉に流量計を設
置した上で、燃焼空気及び燃焼ガスの流量を定期的に測定し、M 値(空
気比)の管理を行うことで、運用の最適化を図ったことです。2 つ目は、製
品の種類によって焼成温度を、最適な温度に調整できるようにしたことです。
補助金を活用して新型炉を導入し、製品によって焼成炉を使い分けていま
す。これらの取組により、効率が向上し、本社工場とは別にあった工場のトン
ネル炉を閉鎖し、生産量は増加でもガスの消費量を半分近く減らすことがで
きました。
(司会者) なるほど。それ以外の省エネの取組があれば、御紹介下さい。
本社工場入口 16第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
(中川氏) 乾燥工程も以前はガスを使っていた
のですが、省エネと品質向上を兼ね
て遠赤外線による電気乾燥に変更
しました。また、プレス機や成形機に
用いるコンプレッサーを容量の小さい
ものに更新したり、照明の LED 化な
ども図っています。全て、ここ 5、6 年
ほどの取組になります。
省エネで拡販
(司会者) 様々な省エネに取り組むことで光熱費を大きく節減できたわけですが、それ以
外に、省エネを通じて享受できたメリットはありましたか。
(井上氏) 当社は多品種少量生産のスタイルなのですが、これまで原価割れでも取引
先との関係で製造、出荷せざるを得ない製品も一部ありました。しかし、大
幅な省エネによって利益を出せるようになったため、こうした製品も積極的に
生産、拡販することができ、これが更なる製造原価低減に結び付く、といった
好循環を生み出すことができました。さらに、こうした積極対応が業界内にお
ける当社の知名度向上にも結びつくと信じ活動しています。
(司会者) 省エネの効果は光熱費の削減だけでなく、拡販や知名度向上と言った経営
全般にも波及するものなのですね。本日はありがとうございました。
新型炉(奥) 17第 1 部 ケーススタディ:中小企業による脱炭素経営のメリット
コラム
脱炭素経営に向けた中小企業と大企業との協働について
中小企業による脱炭素化の取組は、自社だけでなく、取引先となる大企業にとっ
ても重要な意味を持っています。原料の調達から製造、流通、使用、そして廃棄に至
る製品のライフサイクル全体を通じた温室効果ガス排出の責任が、大企業に問われ
るようになってきたためです。こうしたなか、大企業が中小企業と協働でサプライチェーン
全体の脱炭素化を模索する動きも増えています。
例えば、花王(株)は、資源制約や環境、人権、持続可能な開発といった課題
にサプライチェーン全体で取り組むことが重要であると認識し、CDP サプライチェーンプ
ログラムを活用して気候変動、水及び森林について、サプライヤーに情報開示を求め
ています。回答結果は花王(株)が独自の視点でスコアリングし、サプライヤーにフィ
ードバックするほか、サプライヤー表彰の評価項目に含めています。これらの取組を通じ
て、サプライヤーの意識向上につなげています。
(株)リコーは、公正かつ環境や社会への影響に配慮した CSR 調達活動を行う
ための基本的な考え方を「購買規定」にまとめ、サプライヤーとの新規取引にあたって
は、取引基本契約書に ESG(E:環境、S:社会、G:ガバナンス)に関する要求条
項を盛り込んでいます。また、希望するサプライヤーに対して、CO2 フリー電力を含め、
電力メニュー切替の相談に応じており、手続き面だけでなく価格交渉のサポートも行っ
ています。2018〜2019 年にかけては 10 数社を支援しました。
世界の温室効果ガス排出を削減する上で、サプライチェーン全体による取組の重
要性はますます高まっており、ここで紹介したような中小企業と大企業の協働が今後
とも増えていくと考えられます。
図 花王(株)におけるベンダーサミットの風景
出所)花王(株)提供 18脱炭素化に向けた削減計画の策定 19第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
2.1 脱炭素化に向けた基本的な考え方
第 1 部では、脱炭素経営によってもたらされるメリットについて、事例紹介を交えつつ紹介しまし
た。省エネ・再エネに取り組むことで、事業基盤の強化や新たな事業機会の創出、企業の持続可
能性の強化につながりうることがわかります。
自社で脱炭素経営に取り組む際には、生産プロセスや設備をはじめとするエネルギーの使い方
を根本から振り返る必要があります。
2015 年に公表した「温室効果ガス削減中長期ビジョン検討会 とりまとめ」においては、温室
効果ガス大幅削減の方向性として以下の 3 点を挙げています。
1 可能な限り、エネルギー消費量を削減する(省エネを進める)
例)高効率の照明・空調・熱源機器の利用等
2 エネルギーの低炭素化を進める
例)太陽光・風力・バイオマス等の再エネ発電設備の利用、CCS7
付き火力発電の利用、
太陽熱温水器・バイオマスボイラーの利用等
3 電化を促進する(熱より電力の方が低炭素化しやすいため)
例)電気自動車の利用、暖房・給湯のヒートポンプ利用等
図 2-1 温室効果ガス大幅削減の方向性
出所)環境省「温室効果ガス削減中長期ビジョン検討会 とりまとめ」7二酸化炭素回収・貯留技術。排出された CO2 をほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入する。
第2部
脱炭素化に向けた削減計画の策定 20第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
今後脱炭素化を図っていく上では、まずは長期的なエネルギー転換(3)を検討し、その上で
省エネ対策(1)や再生可能エネルギーの導入(2)を併せて検討することが重要になります。
第 2 部ではこの 3 つの方向性を具体的な計画に落とし込むための検討手順を御紹介します。
2.2 脱炭素化に向けた計画策定の検討手順
温室効果ガス排出量の大幅削減を進めるためには、運用改善等の省エネ対策のみでは難しく、
生産設備も含め、化石燃料消費の抜本的な見直しが必要になる場合が少なくありません。すな
わち、再エネ電気やバイオマス、水素といった温室効果ガス排出の少ないエネルギーを利用できな
いか、その可能性を以下の 4 つのステップで探ることが考えられます。
図 2-2 削減計画策定のフロー
最初の STEP1 では、都市ガスや重油8
等を利用している主要設備に着目した上で、これらの
電化や、バイオマス・水素等への燃料転換など、長期的なエネルギー転換の方針を検討します
(2.13該当)。
短中期的な省エネ対策の洗い出しは、次の STEP2 で行います。STEP1 で検討したエネルギ
ー転換の方針を前提に、これを補完する形で省エネ対策を検討することになります(2.11該
当)。
ここまでで、自社の温室効果ガス削減余地を概ね把握できることになります。そこで STEP3 で
は、温室効果ガス削減目標の達成に向けた再エネ電気調達の必要量を明確にするとともに、自
社に適した再エネ電気の調達手段を検討します(2.12該当)。
最後の STEP4 では、対策の実施に必要な投資額が財務(キャッシュフロー)に及ぼす影響8A 重油とは引火点 60°C以上、動粘度 20mm2
/s 以下、残留炭素分 4.0%以下、硫黄分 2.0%以下の石油製品(詳
細は JIS K 2205:2006 を参照)。ボイラー等の燃料として使用されている。
長期的なエネルギー転換の方針の検討
STEP1
短中期的な省エネ対策の洗い出し
STEP2
再生可能エネルギー電気の調達手段の検討
STEP3
削減対策の精査と計画へのとりまとめ
STEP4 21第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
を分析しながら、最終的に実施する削減対策を精査し、削減計画としてとりまとめます。
以下では、各ステップの具体的な検討手順を紹介します。
STEP1 長期的なエネルギー転換の方針の検討
燃料消費に伴う温室効果ガス排出量を、省エネルギー対策のみで大幅に削減することは困難
であり、エネルギーの種類を温室効果ガスがゼロもしくは小さいものに転換していくことが必要になり
ます。したがって、脱炭素化の検討を始めるにあたっては、将来の技術開発動向も見据えつつ、主
要設備についてエネルギー転換の方針を検討することが重要になります。
具体的なエネルギー転換の方策としては、以下が挙げられます。とりわけ電化する場合には、エ
ネルギーの種類が変わるだけでなく、省エネ(高効率化)にも寄与するケースが少なくありません。
もっとも、技術開発の進捗状況や導入コスト、関連インフラの普及状況などに応じて、一足飛
びにエネルギー転換を図ることが難しい場合も想定されます。こうしたケースでは、段階的に転換を
図ることも検討してみましょう。例えば、ガソリン自動車から電気自動車への転換が当面難しい場
合については、5〜10 年以内の当面の対策として、一旦ハイブリッド自動車を導入することも一案
となります。
図 2-3 燃料消費からのエネルギー転換の例
電化の可能性を探る
電化の主な例
◼ ボイラ:ヒートポンプへの転換
◼ 燃焼炉:電気加熱炉への転換(ピンポイント誘導加熱等)
◼ 自動車:ガソリンまたはディーゼル車からハイブリッド車や電気自動車への転換
バイオマスの利用可能性を探る
バイオマス利用の主な例
◼ ボイラ:バイオマスボイラーへの転換
(注記)燃料の安定調達の可能性を検証(未利用材、廃材、バイオディーゼル燃料(BDF)等)
水素の利用可能性を検討する(ただし、2030年代までは商業利用が難しい可能性あり)
水素利用の主な例
◼ 自動車:燃料電池車(FCV)への転換
◼ 工業炉:水素バーナーへの転換 22第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
STEP2 短中期的な省エネ対策の洗い出し
STEP1 で検討したエネルギー転換の方針を前提に、短中期的な省エネ対策を検討します。エ
ネルギー転換の内容や時期を踏まえながら、既存設備の稼働の最適化やエネルギーロスの低減
を図ります。
代表的な省エネ対策としては、以下が挙げられます。
表 2-1 省エネ対策の例
対策タイプ 実施対策例
運用改善 空調機のフィルター、コイル等の清掃
空調・換気不要空間への空調・換気停止、運転時間短縮
冷暖房設定温度・湿度の緩和
コンプレッサーの吐出圧の低減
配管の空気漏れ対策
不要箇所・不要時間帯の消灯
部分更新・
機能付加
空調室外機の放熱環境改善
空調・換気のスケジュール運転・断続運転制御の導入
窓の断熱性・遮熱性向上(フィルム、塗料、ガラス、ブラインド等)
蒸気配管・蒸気バルブ・フランジ等の断熱強化
照明制御機能(タイマー、センサー等)の追加
ポンプ・ファン・ブロワーの流量・圧力調整(回転数制御等)
設備導入 高効率パッケージエアコンの導入
適正容量の高効率コンプレッサーの導入
LED 照明の導入
高効率誘導灯(LED 等)の導入
高効率変圧器の導入
プレミアム効率モーター(IE3)等の導入
高効率冷凍・冷蔵設備の導入
高効率給湯機の導入
ここまでで、STEP1 のエネルギー転換や STEP2 の省エネ対策により、温室効果ガスがどの程
度削減されるのか、概算してみましょう。大幅な温室効果ガス削減効果が期待されますが、自社
の削減目標に届かない場合には、自社の消費電力を再エネに切り替えることが必要になります。 23第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
STEP3 再生可能エネルギー電気の調達手段の検討
再生可能エネルギー電気は、CO2 ゼロの代表的・汎用的なエネルギーです。STEP1 の電化と
組み合わせることで、大幅な CO2 削減を図ることができます。また、STEP1〜STEP2 までの検
討の結果、自社の排出量が削減目標に届かない場合には、電気を再エネに切り替えることで追
加的に削減を図ることができます。
再エネ電気の調達には様々な方法があり、一般的には以下に整理されます。
表 2-2 再エネを調達する手段
再エネを調達する手段 概要 長所 短所
小売電気事業者との
契約
(再エネ電気メニュー)
自然エネルギー100%の
電力を購入
 当該プランの購入契約
のみで調達が可能なた
め、取引コストが相対
的に低い
 小口でも調達可能
 大口向けに、個別のプ
ランを提供する小売電
気事業者もある
 電力購入先の切り替
えが必要となるため手
続きが多い
 拠点が複数地域にまた
がる場合は拠点ごとの
検討が必要
 契約電力会社の再エ
ネ調達力に依存するた
め、将来の調達リスクが
ある
自家発電・自家消費 発電設備を事業所敷地
内に設置・運転し、発電
した電力を自家消費
 屋根や遊休地の活用
が可能
 設置場所の確保が必要 稼働まで期間を要する
ため、即座に調達でき
ない
 継続的なメンテナンスが
必要
第三者所有モデル
((注記)自家消費の
1 類型)
第三者が、発電設備を
事業所内の屋根・敷地
等に設置し、その発電し
た電力を購入
 メンテナンス等の手間が
不要
 系統電力よりも安く設
定されるため電気代の
削減が可能
 工事等への対応が必要再エネ電力証書等の
購入
自然エネルギーの電力が
生み出す環境価値を証
書で購入
 複数拠点の再エネ化
の一括実行が可能
 電力購入先の切り替
えなしに再エネ価値を
調達可能
 長期契約が不要で、
市況に応じて購入判
断が可能
 価 格 変 動 が あ り 、 か
つ、相対的に高価
 現時点で流通量が限
定的
出所)以下の文献を参考に作成
自然エネルギー財団「企業・自治体向け 電力調達ガイドブック」(発行日:2020 年 1 月)(https://www.renewable-
ei.org/pdfdownload/activities/RE_Procurement_Guidebook_JP_202001.pdf)<閲覧日:2020 年 12 月 3 日>
東京都環境局「再生可能エネルギー(電気)の利用に関するアンケート集計結果(都内大規模事業所対象)」
(https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/large_scale/data/index.files/re_survey.pdf)
<閲覧日:2020 年 12 月 3 日>
京セラ「自家消費ニーズと第三者所有モデル」(http://www.jpea.gr.jp/document/seminar/pdf/obata.pdf)
環境省「RE100・SBT の義務履行に対応した再エネ調達方法について」 (https://www.env.go.jp/council/45chikyu-
saiene-inove/y450-05/pdf/mat06.pdf)<閲覧日:2020 年 12 月 3 日> 24第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
調達手段は、必要とする再エネ電気の調達量や事業所の立地状況、自社におけるレジリエン
ス電源の必要性等を勘案して選択、組み合わせることになります。
ここでは多くの中小企業で導入を検討することになると思われる、太陽光発電設備の設置
(自家消費)と再エネ電気メニューについて検討のポイントを説明します。
1) 太陽光発電設備の設置
太陽光発電設備を本社や工場の屋根に設置し、自家消費することで、電気代の節約が期待
できるほか、停電や電力供給のトラブルがあった際の電源としてレジリエンスの向上につながります。
太陽光発電設備を設置する上で考慮すべきポイントは以下の 3 点になります。
a. 発電容量の検討
太陽光発電は、日中に発電のピークがあり夜間は発電しません。また、日射量の季節変動や
需要変動に留意しつつ、立地地域の環境を検討し、導入を検討する必要があります。こうした太
陽光発電の特性を踏まえた上で、年間を通じて発電の出力変動が事業所における電力需要の
変動(日負荷変動)に概ね収まるよう、太陽光発電の発電容量を決める必要があります。
図 2-4 発電量と購入電力量のイメージ
b. 屋根の強度・形状・素材
屋根に太陽光発電設備を設置する場合には、屋根の強度の確認が必要です。太陽光発電
設備の重量は 3kW の場合で 300〜500kg 程度あり、屋根 1m2
あたり 10〜15kg の荷重が
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
電力量(イメージ)
時間帯
発電量 購入量 25第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
かかり、架台の支持点には局部的な荷重が作用するため、屋根の強度を考慮する必要がある9と言われています。目安としては新耐震基準建物(1981 年 6 月以降に建築確認を受けた建築
物)が必須条件10
であるとされています。
c. 第三者所有モデルの適用可能性
第三者所有モデルとは「電気の需要家が、敷地や屋根のスペースを提供し、第三者が無償で
太陽光発電設備を設置するとともに、需要家と太陽光発電設置者が電力供給契約(PPA)
を結び、太陽光発電電力を需要家が購入するもの」11
です。太陽光発電設備を設置するための
イニシャルコストがかからず、その発電電力を利用できるほか、電気代を削減できるケースもあるとし
て近年注目されています。
ただし、第三者所有モデルの利用にあたっては、長期契約が必要になるため需要家の信用力
が必要となることや、契約期間中の需要家の建物移転や倒産等のリスクがあることが導入の障壁
になっており12
、留意が必要です。
2) 再エネ電気メニュー
多くの小売電気事業者が「再エネ電気メニュー」を打ち出しています。再エネ電気メニューを選
択して購入することで、電気の調達に係る CO2 排出量を低減できます。
再エネ電気メニューを提供している小売電気事業者の例は環境省「気候変動時代に公的機
関 が で き る こ と 〜 「 再 エ ネ 100 % 」 へ の 挑 戦 〜 」 ( 発 行 日 : 令 和 2 年 6 月 )
(https://www.env.go.jp/earth/earth/re100_1/RE100guidebook.pdf)を参考
とすることも可能です。9一般社団法人太陽光発電協会「住宅用太陽光発電の設計と施工」(発行日:2018 年 6 月 21 日)
(http://www.jpea.gr.jp/pvj2018/webdownload/SS_2_5.pdf)<閲覧日:2020 年 12 月 11 日>10株式会社エコスタイル「分散型太陽光発電による脱炭素ソリューション 工場・施設の生産性向上とエネルギーの効率化で注
目される自家消費型太陽光発電システム」環境経営に向けた脱炭素ビジネス〜中小企業Webセミナー資料 p.29(発行
日:2020 年 6 月 30 日)11日本電気計器検定所「特定電気取引の範囲について」特定電気取引に関する計量課題研究会第 2 回(発行日:2019
年 10 月 2 日)資料 1
(https://www.jemic.go.jp/wp-content/themes/jemic/gizyutu/20191002-Document1.pdf)<閲覧
日:2021 年 1 月 7 日>12環境省分散型エネルギープラットフォーム 事務局「分散型エネルギープラットフォーム 結果報告」(発行日:令和 2 年 3 月
19 日)(http://www.env.go.jp/earth/kekkappt.pdf)<閲覧日:2020 年 12 月 11 日> 26第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
再エネ 100%の電力に切り替える際には、下記の資料を準備した上で、複数の小売電気事
業者から見積を取得しましょう。
⚫ 現在契約中の「電力会社」「契約種別」「契約容量」がわかる資料(電気御使用量のお
知らせ(検針票))
⚫ 月別の電力使用量(可能であれば 1 年、少なくとも複数月)
⚫ 月別の電力使用料金(可能であれば 1 年、少なくとも複数月)
⚫ (既に電力プランを切替済みの場合)現在の電力プランの説明資料
なお、2020 年冬〜2021 年 1 月にかけて、日本卸電力取引所(JEPX)での卸電力価格
が急激に高騰していることから、市場連動型の契約の場合、電気料金が市場価格に合わせて高
騰したケースもありました13
。電力料金の条件が市場連動型になっている場合はそのようなリスクが
あることを認識することも必要です。
STEP4 削減対策の精査と計画へのとりまとめ
STEP1〜STEP3 の検討結果をとりまとめ、洗い出した削減対策について
1 想定される温室効果ガス削減量(t-CO2/年)
2 想定される投資金額(円)
3 想定される光熱費・燃料費の増減(円/年)
を定量的に整理します。
さらに、可能な範囲で各削減対策の実施時期を決めた上で、以下の表のような形で企業全
体のロードマップとして削減計画に整理するとともに、削減対策を行うことによる効果・影響として
⚫ 各年の温室効果ガス排出削減量(実施した各削減対策による1の総和)
⚫ 各年のキャッシュフローへの影響(実施した各削減対策による2と3の総和)
を集計し、とりまとめます14。13
経済産業省「卸電力市場価格の急激な高騰に対する対応について」(発行日:2021 年 1 月 29 日)
(https://www.meti.go.jp/press/2020/01/20210129002/20210129002.html)
<閲覧日:2021 年 2 月 4 日>14ここでは、自社努力による排出削減効果や発生費用を大まかに把握する目的で、個別の削減対策における排出削減量や設
備投資額、光熱費・燃料費増減を単純に積み上げることとしているが、電力由来 CO2 に係る排出削減量や電気料金の増減を
正確に見込むためには、将来の購買電力の排出係数や電力需要を考慮して計算する必要がある。なお、国は 2030 年の電力
排出係数を 0.37kg-CO2/kWh に低減する目標を掲げており、全国平均では 2019 年度の実績である 0.444kg-
CO2/kWh(電気事業低炭素社会協議会:調整後)からの自然減が想定される。 27第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
表 2-3 削減計画のとりまとめイメージ(例)
その上で、以下の観点で削減計画を精査します。
【洗い出した削減対策によって目標達成は可能か】
目標年(例えば 2030 年)における削減量の総和(上表のイメージ例では「x+y+z」)が、
目標達成に十分かどうかをチェックします。不十分であれば、削減対策の追加が必要になります。
他方、目標達成に十分であれば、全ての削減対策を実施する必要はなく、優先的に実施すべ
き対策を絞り込むことも考えられます。基本的には、事業上の優先度を勘案することになりますが、
削減コストの低い対策、すなわち
(法定耐用年数当たりの投資金額+光熱費・燃料費増減額)/排出削減量
のできるだけ小さい(マイナスの大きい)対策を選択することも一案でしょう。一般に、STEP2 に
掲載した表 2-1 に示すような省エネ対策のうち、運用改善は費用対効果が高く、短期的に取り
組みやすいと言えます。
【温室効果ガス排出削減に係る追加的な費用支出を許容できるか】
設備更新を伴う削減対策にはまとまった初期投資がかかるほか、再エネ電気メニューへの切替
を行ったり、電化などのエネルギー転換を行う場合にも、光熱費・燃料費が上昇する可能性があり
ます。これらの費用が、第 1 部で述べた脱炭素経営のメリットに照らして許容できるかを検討する
必要があります。
ただし、設備投資については、以下の 2 つの観点で資金繰りの負担軽減の可能性を併せて検
討することが望ましいでしょう。
対策 対策
実施年
計画期間(年)
費用等
2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030
対策1
(省エネ:運用改善)2021年
排出削減量:x
投資金額:なし
光熱費・燃料費増減額:a
対策2
(設備更新)2025年
排出削減量:y
投資金額:B
光熱費・燃料費増減額:b
対策3
(再エネ電気メニューへの
切替)2023年
排出削減量:z
投資金額:なし
光熱費・燃料費増減額:c
排出削減量 x x x+z x+z x+y+z x+y+z x+y+z x+y+z x+y+z x+y+z
キャッシュフロー[千円] a a a+c a+c B+
a+b+c a+b+c a+b+c a+b+c a+b+c a+b+c
工事
実施
実施
実施 28第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
1) 補助金の活用による負担軽減
現在、国や自治体では再エネ・省エネ投資に対する様々な補助制度が設けられています。補
助金の適用を受けるための要件が細かく定められているケースが少なくありませんが、獲得できれば
大きなメリットにつながるため、積極的に活用を検討したいところです。
本マニュアルの参考資料では主要な補助制度を紹介しておりますので、適宜御参照下さい
(参照:参考資料)。
2) 設備投資による税負担の軽減
設備投資は、耐用年数に応じて毎年の減価償却費として経費化され、法人税の軽減につな
がります。通常、省エネ対策の現場では考慮しない場合も多いですが、投資額が大きい場合には、
企業の享受する法人税の軽減効果も無視できなくなります。
特に中小企業の場合には、税額控除(特別控除)や特別償却といった優遇制度があります15ので、これらも考慮して法人税の軽減効果を含めたキャッシュフローを分析することが望ましいで
しょう。
なお、将来的にカーボンプライシング(炭素税など)が導入される場合に備えて、予め炭素価
格を想定した上で、光熱費・燃料費増減及び炭素費用削減(×ばつCO2 削減量)の
合計による設備投資の回収が所定の年数以下であれば投資を意思決定する、といった考え方も
あります。インターナルカーボンプライシングと呼ばれており、一部の企業で取組が進められています。
【削減対策の実現に向けた詳細検討をどのように進めるか】
洗い出した削減対策は、現場での導入に向けて、必要に応じて設備メーカーやエンジニアリング
会社なども交えつつ、設備機器の選定や詳細設計を進めることになります。とりわけ、
⚫ 現時点で技術の開発・実用化が十分に進んでいないもの(電気貨物自動車の導入、水
素バーナーの導入など)15青申告告をする中小企業が機械や装置を取得して製造業や建設業などのために利用した場合に、特別償却(基準取得価
額の 30%相当額)もしくは相当額の特別税額控除(基準取得価額の 7%)のいずれかが認められる。適用期間は令和 3 年
3 月 31 日までとされてきたが、令和3年度税制改正の大綱(令和2年 12 月 21 日 閣議決定)により、これらの中小企業
向け投資促進税制等の 2 年延長が定められた。
⚫ 国税庁ホームページ:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5433.htm
<閲覧日:2021 年 3 月 11 日>
⚫ 令和3年度税制改正の大綱:
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2021/20201221taikou.pdf
<閲覧日:2021 年 3 月 11 日> 29第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
⚫ 生産設備の更新や改変を伴うもの(産業用ヒートポンプの導入、工業炉の空気比適正化
など)
については、この段階では未だ自社への適用可否や導入可能時期が十分見通せないため、削減
計画の策定以降も詳細な検討が必要になります。例えば、電気貨物自動車の導入については、
今後の技術開発動向(一充電当たり走行距離、積載量など)を調査しながら、社内の車両運
用のあり方や充電器の整備について検討する必要があるでしょう。また、既往の工業炉の空気比
を適正化する場合には、現在運用されている工業炉の空気比を測定・分析した上で、空気比を
監視・制御するための方法を検討する必要があります。加えて、生産設備の更新・改変にあたって
は、製品の品質への影響について分析・確認が必要なケースも少なくありません。
このような詳細検討には数ヶ月〜数年を要します。そこで、
⚫ 詳細検討で明らかにすべき事項
⚫ 詳細検討の方法、プロセス、実施体制
⚫ 詳細検討の期間
を定め、社内で周知することにより、取組を前に進めることが求められます。
その上で、削減計画についても、詳細検討に要する期間を勘案して対策実施までのリードタイ
ムを精査しましょう。なお、詳細検討の結果、削減対策の実施可否や実施時期の見通しが立て
ば、併せて削減計画を見直すことが必要になります。 30第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
2.3 ケーススタディ
ここでは、SBT または SBT に準じた中長期目標を設定している中小企業を対象とした、「令和
2 年度 中小企業の中長期の削減目標に向けた取組可能な対策行動の可視化モデル事業」の
中で支援した、削減計画等の検討事例を紹介します。
(1) モデル事例1 三和興産
三和興産は、アスファルト合材の製造・販売、道路建設工
事、建築・解体工事、燃料用チップの製造・販売等、様々な事
業を手掛けています。アスファルト事業では、各種アスファルト合
材の製造、舗装施工、リサイクルまでのサービスをワンストップで提
供しています。
同社の CO2 排出量を大幅削減するためには、アスファルト合
材製造過程に加熱用として使用している A 重油の対策が鍵とな
るため、モデル事業では A 重油の燃料転換を重点的に検討しました。燃料転換や省エネ対策に
よる CO2 排出量削減の検討を踏まえ、SBT 目標を確実に達成するため、さらに再エネ電気の調
達を検討しました。これらの対策により、CO2 排出量削減だけでなく、A 重油タンクの撤去により、
安全性や作業効率性の向上、メンテナンス費用の削減といった効果やメリットが期待されます。
事 業 内 容 ⚫ 舗装・土木・建築・解体・上下水道・電気・電話工事等
⚫ 各種アスファルト合材の製造・販売
⚫ 各種骨材の販売
⚫ アスファルト殻のリサイクル・収集運搬
【関連会社】
株式会社チップス:木屑のリサイクル、燃料用チップの製造・販売、製 材料の
製造・販売
株式会社三和 MKI:舗装・土木工事等
所 在 地 愛知県一宮市木曽川町玉ノ井柳原 280
温 室 効 果
ガス排出量
Scope1: 1,659 t-CO2
Scope2: 226 t-CO2
(注記)2017 年(基準年)排出量
本社事業所 31第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
モデル事業への参加動機
同社は環境配慮の意識が高く、主要事業であるアスファルト合材事業においてはアスファ
ルト素材の循環を達成しています。また、事業所の周囲が住宅地のため、地域コミュニティと
の共生にも力を入れ、製造工程において外部へ排出する物質やエネルギー削減に日々取
り組んでいます。同社では、これらの課題を経営改善の種として前向きに取り組んでおり、将
来的には経営計画の中に、CO2 排出量の大幅削減を組み込みたいと考えています。
CO2 排出削減の取組は、製造原価の削減に直結するため、数年前から CO2 排出削
減対策の検討を行ってきました。しかし、CO2 排出削減対策を実行するための設備導入に
係る資金調達や事業との調整が難しく、経営計画に対策を組み込み、実行に移すことはで
きていませんでした。
令和元年度に環境省が実施した「中小企業向け SBT・再エネ 100%目標設定支援
事業」に参加し、CO2 排出量削減の野心的な目標(SBT 水準)を設定しました。ただ
し、目標達成のための計画策定に苦慮していたため、本モデル事業に参加し、改めて、中
長期の削減目標に向けた計画策定に取り組むことにしました。
モデル事業の実施内容
同社における中長期の削減目標に向けた計画策定を、本モデル事業を通じて検討しま
した。同社の CO2 排出量を大幅削減するためには、アスファルト合材製造過程に加熱用
として使用している A 重油の対策が鍵となるため、モデル事業では A 重油の燃料転換を重
点的に検討しました。燃料転換や省エネ対策による CO2 排出量削減の検討を踏まえ、
SBT 目標を確実に達成するため、さらに再エネ電気の調達を検討しました。各対策の実施
予定時期を整理し、対策を実施する場合の各年度のキャッシュフローを整理しました。
現状の整理
◼ エネルギー消費実態の特徴
同社の CO2 排出量のうち、約 9 割は Scope1 であり、ロータリーキルン(回転式の焼
成炉)におけるアスファルト加熱用の A 重油の消費量が多いことが特徴です。
生産したアスファルト合材をサイロで保管する際に、アスファルト合材の固化を防ぐため、
電気ヒーターを利用してサイロを保温しています。 32第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
◼ 現状の削減の取組(予定を含む)
これまでに外灯の LED 化、重機・建機のハイブリッド化(電気モーター、及びエンジンで
駆動)を実施しています。
◼ SBT 目標等の設定状況
SBT 目標は未取得であるものの、2025 年までに CO2 排出量を 2017 年比 30%削
減とする SBT 水準での目標を設定しています。
STEP1: 長期的なエネルギー転換の方針の検討
同社のエネルギー消費実態の特徴を踏まえ、長期的なエネルギー転換の方針として、ア
スファルト合材製造用加熱バーナーの燃料転換(A 重油→都市ガス、または A 重油→
LPG)を重点的に検討することとしました。
当該事業所の立地地域は、都市ガス導管が未整備であり、SBT 目標年(2025 年)
までに整備の目途が立てば、都市ガスを利用し、整備の目途が立たなければ、LPG ガスの
利用を想定することとしました(都市ガスの場合 446t-CO2 削減見込、LPG の場合
330t-CO2 削減見込)。
さらに、都市ガスあるいは LPG への燃料転換後、燃焼用空気の予熱用として、ロータリ
ーキルンの排ガスを新たに活用する可能性を現在検証しています。
STEP2: 短中期的な省エネ対策の洗い出し
同社の主要な排出源である A 重油に着目した対策として、現在運用中の A 重油バー
ナーの空気比適正化を検討しました。
その他には、消費電力量削減のため、排風機へのインバータ導入や保温用ヒーターの通
電停止等の省エネ対策を検討しました。
STEP3: 再生可能エネルギー電気の調達手段の検討
STEP2 までの検討を踏まえ、SBT 目標の達成に向けた再エネ電気調達の必要量を整
理したところ、購入電力の排出係数の低減や省エネ対策によって SBT 目標は達成できる
見通しです。
しかし、生産量の変動に応じて BAU(Business As Usual, 現状継続ケース)排出
量が増加する懸念があり、確実に SBT 目標を達成するため、再エネ電気の調達を検討し
ました。必要に応じて、比較的容易に再エネ電気を調達できるため、小売電気事業者が 33第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
提供する再エネ電気メニュー(CO2 排出量ゼロ)の利用を優先的に検討しました。
STEP4: 削減対策の精査と計画へのとりまとめ
STEP3 までの検討内容をとりまとめて、削減計画として整理しました(表 2-4)。ま
た、今回検討を行った全対策を実施する場合のキャッシュフローへの影響を分析しました。
A 重油から都市ガスへの燃料転換(対策 10)は、CO2 排出量削減効果は大きいで
すが、投資金額が大きく、また運転維持費も A 重油と比べると 5,032 千円(2019 年度
の消費量、価格の場合)高くなるため、対策実施想定の 2026 年度以降、キャッシュフロ
ーはマイナスとなる見込みです。A 重油から都市ガスへの燃料転換(対策 10)と関連対
策(対策 11)は、都市ガス導管の整備計画に依存するため、協議状況を注視して対策
を実施していくことになりました。
設備投資不要の対策 2・3・4 は、2021 年度実施と想定しました。一方、設備投資が
必要な対策 9・12・13 は、資金を確保する必要があるため、利用可能な補助金を確認し
た上で、実施を検討していくこととなりました。
ロータリーキルンのバーナーの空気比適正値を検証後に、ロータリーキルン関連の対策
(対策 1・5・6・7・8)をまとめて実施する予定です。最も早い実施として 2022 年度を想
定しました。 34第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
表 2-4 削減計画(A 重油→都市ガスの場合)
対策
対策実
施年度
計画期間(年度)(注記)SBT目標年:2025年(年度) 費用・
削減見込量(原油換算)
2021 2022 2023 2024 2025 2026 20271バージン材ロータリーキル
ン用バーナの空気比適正化2022
年度
投資額:なし
削減額:1,229千円
削減見込量:19.0kL
2 サイロ2保温用ヒータの
通電停止2021年度
投資額:なし
削減額:308千円/年
削減見込量:3.7kL
3 コンプレッサ吐出圧力の
低減2021年度
投資額:なし
削減額:37千円/年
削減見込量:0.4kL
4 コンプレッサ空気配管の
漏れ防止2021年度
投資額:なし
削減額:8千円/年
削減見込量:0.1kL5バージン材ロータリーキル
ン用排風機へのインバー
タ導入2022年度
投資額:895千円
削減額:722千円/年
削減見込量:8.7kL
6 リサイクル材ロータリーキ
ルン高温部への保温施工2022年度
投資額:200千円
削減額:199千円/年
削減見込量:3.1kL7バージン材ロータリーキル
ン用送風機へのインバー
タ導入2022年度
投資額:300千円
削減額:197千円/年
削減見込量:2.4kL
8 バージン材ロータリーキル
ン高温部への保温施工2022年度
投資額:140千円
削減額:80千円/年
削減見込量:1.2kL
9 デマンド監視装置導入に
よる最大電力の低減2021年度
投資額:300千円
削減額:83千円/年
削減見込量:なし
10 A重油から都市ガス転換
後の省エネ効果について2026年度
(注記)仮定
投資額:10,000千円
運転費:34,182千円/年
削減額:-5,032千円/年
(注記)運転費増加
削減見込量:54.8kL11(参考)バージン材ロータ
リーキルンの廃熱利用
(都市ガス転換後)2026年度
投資額:設備費・配管費
削減額:541千円/年
削減見込量:-
12 (参考)サイロ2保温設
定温度の緩和2021年度
投資額:なし
削減額:44千円/年
削減見込量:-
13 再エネメニューへの切替
2021年
12月〜
投資額:なし
削減額:メニューによる
削減見込量:ー
Scope1/2 CO2排出見込量[t-CO2] 1,497 1,230 1,230 1,230 1,230 784 784
キャッシュフロー[千円] 294 1,803 3,338 3,338 3,338 -11,694 -1,694
実施
◇生産への影響を確認(実施可否の判断)
工事 実施
くろまる設計・工事事業者の選定・工事計画
◇モータの回転数低下による作業環境への影響を確認
実施
◇生産への影響を確認(実施可否の判断)
実施
◇生産への影響を確認(実施可否の判断)
実施
◇空気漏れ箇所の確認
注1)◇:実施の検討
くろまる:◇の検討結果により実施を判断する対策
注2)対策10:都市ガス導管の整備時期が不透明のため仮置き。整備決定から導入開始まで3年と想定。
くろまる設計・工事事業者の選定・工事計画
◇検討(実施可否の判断)
くろまる設計・工事事業者の選定・工事計画
◇検討(実施可否の判断)
工事 実施
工事 実施
くろまる設計・工事事業者の選定・工事計画
◇検討(実施可否の判断)
工事
くろまる設計・工事事業者の選定・工事計画
◇検討(実施可否の判断)
実施
◇生産への影響を確認(実施可否の判断)
工事 最適化
くろまる設計・工事事業者の選定・工事計画
◇排ガス温度等の測定・検討(実施可否の判断)
◇電力メニューの選定・調達計画
調達
工事 最適化
くろまる設計・工事事業者の選定・工事計画
◇設備導入の検討
導管敷設協議 導管工事等 (注記)注2
実施
工事 実施 35第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
(2) モデル事例2 リマテックホールディングス
リマテックグループは、廃油などの廃棄物から再生燃
料(RF: Reclaiming Fuel)を製造する事業を主に
手掛けています。再生燃料はセメント工場の石炭代替
燃料等に利用されています。このほか、環境修復事業
(環境事故・自然災害等の廃棄物処理及びマネジメ
ント)、ネットワーク・物流事業、メンテナンス事業、太
陽光発電事業、バイオガス発電事業を手掛けていま
す。また、同社グループは、いち早く中小企業版 SBT 目標を設定した企業です。同社グループで
は経営理念として「持続可能な社会の構築に貢献できるグループを目指す」を掲げており、中小
企業版 SBT の取得は、地球温暖化に高い危機意識をもって、事業活動を実施していく決意表
明です。「脱炭素経営」を通じ、志を同じくする、より多くのステークホルダーの皆様と「オープンイノ
ベーション」で取り組むことによって、持続可能な社会の実現に貢献していくことができると期待して
います。
本モデル事業では、SBT 目標を達成するための対策として、RF 製造工場における省エネ対策
と、消費電力量の多い事業所を対象に再エネ電気メニューへの購入電力契約の切替を検討しま
した。これらの対策によって、SBT 目標達成に必要な CO2 排出量の削減が期待できる見通しで
す。
事 業 内 容 ⚫ RF 事業
⚫ 環境修復事業
⚫ メンテナンス事業
⚫ ネットワーク・物流事業
⚫ 太陽光発電事業
⚫ バイオガス発電事業
【グループ会社】
株式会社レックス RF:RF 製造事業、ネットワーク・物流事業
リマテック九州株式会社:産業廃棄物処理業、RF 製造事業
リマテック東北株式会社:資源循環に関する請負業務
リマテック R&D 株式会社:新規事業・技術の開発、コンサルティング業務
RTT 株式会社:一般貨物運送事業、産業廃棄物収集運搬業
所 在 地 大阪府岸和田市地蔵浜町 11 番地の 1
九州工場 36第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
温 室 効 果
ガス排出量
Scope1: 2,093 t-CO2
Scope2: 836 t-CO2
Scope3: 310,473 t-CO2
(2019 年度実績、グループ 6 社)
モデル事業への参加動機
同社では、グループミッションとして「環境分野における社会的課題に対応するイノベーシ
ョンの創出」を掲げており、環境負荷の低減に積極的に取り組みたいと考えています。
2018 年度に環境省が実施した「中小企業向け SBT・再エネ 100%目標設定支援
事業」に参加し、温室効果ガス排出量削減の野心的な目標を設定し、2020 年 9 月に
は中小企業版 SBT の認定を取得しています。SBT 目標を達成するための具体的な対策
を十分に見出せていないため、本モデル事業に参加しました。
モデル事業の実施内容
同社における中長期の削減目標に向けた計画策定を、本モデル事業を通じて検討しま
した。Scope1 排出量の大部分は運搬用トラックや重機の燃料ですが、調査の結果、
SBT 目標年度である 2030 年度までにトラックや重機の燃料電池車両(FCV)や電動
車両(EV)の市場普及は想定しづらいことが判明したため、電動化の対策は見送りまし
た。Scope2 の削減対策に関しては、RF 製造工場の 1 つである子会社の岸和田工場を
対象に、省エネ対策を検討しました。省エネ対策による CO2 削減見込量のみでは SBT
目標を達成できないため、併せて購入電力を再エネ電気メニューへ切り替えることを検討し
ました。
現状の整理
◼ エネルギー消費実態の特徴
Scope1 の大半は、廃油や廃液を工場に運搬するローリー、廃棄物・瓦礫等を運搬す
るトラック、撤去用重機等の燃料である軽油の消費量が占めています。
Scope2 の CO2 排出量のうち、RF 製造工場(リマテック九州の九州工場、レックス
RF の岸和田工場)の消費電力量が大半を占めています。
中小企業向けの SBT では Scope3 は対象外ですが、グループ 6 社の Scope1〜3 の
CO2 排出量のうち、約 95%は Scope3 カテゴリ 11 が占めています。これは、RF 販売先 37第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
のセメント工場にて、石炭代替燃料として RF を燃焼させた時に発生しています。
◼ 現状の削減の取組(予定を含む)
これまでに実施した設備導入対策は、電気自動車や低燃費車両の導入、デマンドコン
トロールシステム(最大需要電力を監視し、デマンド値が目標値に収まるように制御するシ
ステム)の設置、LED 化です。
これまでに実施した運用改善対策は、低燃費走行、電力使用量の「見える化」、エアコ
ンの設定温度の調整や設備機の間欠運転です。
◼ SBT 目標等の設定状況
Scope1/2 の温室効果ガス排出量について、2030 年までに 2018 年度比 30%削
減とする目標を設定しており、SBT 認定取得済みです。
STEP1: 長期的なエネルギー転換の方針の検討
Scope1 の大半を占める運搬用トラックや重機への燃料電池化(FCV)や電動化
(EV)の開発・商用化時期について調査を行った結果、2030 年までの商用化の可能
性は現時点では不透明ということが判明しました。したがって、2030 年までのトラックや重
機の FCV 化や EV 化の想定は見送ることとしました。
(注記)Scope2 の大半の CO2 排出量を占める RF 製造工場は電気で稼働しており、更なる
電化の余地はありません。
STEP2: 短中期的な省エネ対策の洗い出し
RF 製造工場の 1 つである岸和田工場を対象に、電気に係る省エネ対策を検討しまし
た。加温槽では、循環水の昇温に電気ヒーターを利用していますが、ヒートポンプ式給湯器
へ変更することにより消費電力量の削減が期待できます。その他には、変圧器の更新や加
温槽の保温施工等を検討しました。
STEP3: 再生可能エネルギー電気の調達手段の検討
STEP2 までの検討を踏まえ、SBT 目標の達成に向けた再エネ電気調達の必要量を整
理したところ、購入電力の排出係数の低減や省エネ対策のみでは、SBT 目標には達しな
い見込みであることが判明しました。したがって、SBT 目標を達成するために、消費電力量
の多い事業所(九州工場、岸和田工場)を対象に、再エネ電気メニューへの購入電力 38第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
の契約切替を検討しました。対象事業所で利用可能な、電力排出係数ゼロの再エネ電
気メニューを提供する小売電気事業者を調査しました。
STEP4: 削減対策の精査と計画へのとりまとめ
省エネ対策については、適用可能性等の確認を踏まえて、対策の実施可否を判断して
いく予定です。
また、各小売電気事業者に対して、再エネ電気メニューの見積金額を問い合わせ、どの
程度の費用負担増加になるのかを確認した上で、切替の判断を行っていく予定です。 39第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
(3) モデル事例3 ジェネックス
株式会社ジェネックスは、1969 年創業、太陽光発電の建
設・運営事業を経て自社保有の太陽光発電の売電、施設運
用・保守を通じたワンストップ事業を展開しています。
2017 年からは太陽光発電施設建設用地を調達し、自社
で建設しており、現在 150 ヶ所、40MW の太陽光発電所を
保有しています。
既に CO2 排出削減の取組を進めていますが、出張時の社
有車利用に伴う Scope1 排出量が多く、Scope1 の排出量
を中心に削減対策を検討しました。出張先や社有車の利用
状況より、ガソリン車の利用をハイブリッド車へ切り替えることによる CO2 削減率を整理し、社有車
のリース期限を踏まえた削減計画を策定し、社有車の効率的な運用や電車+レンタカーを促進
する施策を検討しました。
事 業 内 容 ⚫ 太陽光発電事業の建設・運営
⚫ 中小企業向けに CO2 排出量算定・SBT 策定支援
所 在 地 愛知県碧南市向陽町 4-79 ウィルビル 3F(中央本部)
温 室 効 果
ガス排出量
Scope1: 48 t-CO2(2018 年度)
Scope2: 50 t-CO2(2018 年度)
モデル事業への参加動機
同社では、目標達成のための削減計画作成については自社で検討しているものの限界
があり、本支援事業で、具体的な削減計画の作成について支援を受けようと、本モデル事
業に参加しました。
モデル事業の実施内容
同社における中長期の削減目標に向けた計画策定を、本モデル事業を通じて検討しま
した。目標達成に向けた削減計画作成に向けて、特に消費量の多い燃料について、出張
時における新幹線利用や電動車への利用の促進方策を図りました。具体的には、現在の
出張先で遠方に行く場合は電車とレンタカーに切り替えることにより、社有車利用を約 5,6
割削減し、Scope1 の排出の半減を目指す削減計画を検討しました。
中央本部 40第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
現状の整理
◼ エネルギー消費実態の特徴
事務所での空調や照明が中心で、限定的です。社員 1 人 1 台程度の社用車を保有
しています(合計 24 台)。用地調達課では、リース車両のガソリン車を 5 台、ハイブリッド
車 5 台を利用しています。工事課では、リース車両のガソリン車を 4 台、ハイブリッド車を 2
台、購入車両のガソリン車 3 台を利用しています。太陽光発電事業用地の探索や地権
者訪問のため、愛知県から長野県・滋賀県・静岡県、場合によっては北関東まで車で出
張することもあります。新幹線との組み合わせや、ガソリン車から電動車への利用を促すため
に、社員の意識改革(CO2 排出量、出張時宿泊先での電気自動車充電器の確認
等)や、それを促進する出張告請制度が必要と感じています。
◼ 現状の削減の取組(予定を含む)
電力は CO2 フリーの電力プランに切り替え済みです。社用車にはガソリン車、ハイブリッド
車(HV)が多数を占めますが、電気自動車(EV)2 台や燃料電池自動車(FCV)
1 台を導入しています。(オフィスは賃貸ですが、電気自動車充電器を設置してもらってい
ます。)
◼ SBT 目標等の設定状況
Scope1/2 について、基準年を 2017 年とし 2030 年までに 54.6%削減することを目
標としており、SBT 認定取得済みです。Scope3 について、基準年を 2017 年として
2024 年までに購入した製品・サービスからの排出量の 90%に相当するサプライヤーに
SBT 目標を設定してもらう予定です。
STEP1: 長期的なエネルギー転換の方針の検討
ガソリン車の社有車での出張が多いため、燃料消費に着目し、エネルギー転換を図る方
針にしました。
社有車の走行距離が長いことを考えると、充電が必要な EV や水素ステーションが少な
い FCV よりも、ガソリン車やハイブリッド車に利用が集中しがちです。出張先付近までは極
力電車を利用して移動し、新幹線下車後はレンタカー・カーシェア・(出張先付近の駐車
場に予め置いておいた)社有車の活用を検討しました。 41第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
STEP2: 短中期的な省エネ対策の洗い出し
STEP2 では、自動車の更新タイミングに合わせた自動車の保有構成を検討しました。
社有車を利用している部署は工事課と用地調達課であり、社有車の利用状況に関する
社員の意見を確認しました。工事課は運搬する荷物が多いため、電車での移動が難しく、
車の利用を控えづらいですが、用地調達課は出張地によっては電車+HV レンタカーへの
切り替えの可能性があることがわかりました。
国交省によれば、輸送量あたりの二酸化炭素の排出量は旅客の場合、自動車は
133g-CO2/人 km、航空は 96 g-CO2/人 km、バスは 54 g-CO2/人 km、鉄道は
18 g-CO2/人 km です16
。車の利用を鉄道にシフトさせることにより、大幅な CO2 削減
が見込まれます。
したがって、用地調達課の移動手段の変更余地を検討対象とし、用地調達課の利用
する社有車の行き先を分類し、検討対象を整理しました。このうち、社有車で行く範囲につ
いてケース 1 を愛知県・三重県・中京圏へき地、ケース 2 を愛知県・静岡県・中京圏へき
地として設定しました。中京圏へき地では電車を利用するよりも社有車は時間がかからない
と判断し、対象外としました。
図 2-5 社有車の行き先別走行距離
STEP3: 再生可能エネルギー電気の調達手段の検討
既に CO2 フリーメニューに切り替え済みのため、検討対象外としました。16国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」
(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html)<閲覧
日:2021 年 3 月 11 日>
0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000
合計(全て)
合計1(中京圏外)
合計2(中京圏外+岐阜県)
合計3(中京圏外+静岡+岐阜)
合計3ー中京圏へき地
合計4(中京圏外+三重+岐阜)
合計4ー中京圏へき地
走行距離(km)
愛知県 三重県 静岡県 岐阜県 滋賀県 長野県
山梨県 群馬県 埼玉県 大阪府 和歌山県 不明34%41%56%56%68%64%
ただし、「中京圏へき地」は下記の通りとした。
三重県:こもの町、多気町、明和町、南伊勢町
岐阜県:御嵩町
ケース1:社有車利用
愛知県+三重県+中京圏へき地
ケース2:社有車利用
愛知県+静岡県+中京圏へき地 42第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
STEP4: 削減対策の精査と計画へのとりまとめ
STEP1~2 の検討結果を基に、CO2 排出量の削減量を算出するために、購入車両は
長期保有するものとして、リース車両を中心に検討しました。
用地調達課はガソリン車 5 台を全てハイブリッド車に更新/購入し、更に社有車での出
張の走行距離のうち 56%(ケース1)または 64%(ケース2)を電車+レンタカーに
転換したものと想定しました。電車とレンタカーの距離の比率は 20%としました。
工事課はリースのガソリン車 4 台をハイブリッド車へ転換したものと想定しました。
この結果、対策後の Scope1 の CO2 排出量は、ケース1の場合 47.6%削減、ケー
ス2の場合 53.2%削減となる見込みです。
リースで所有しているガソリン車をリースの更新タイミングでハイブリッド車へ更新し、用地
調達課の出張の 2 分の 1 は電車+レンタカー利用に転換し、リースのガソリン車は 2022
年 5 月に 0 台になる予定を考慮し、削減計画を作成しました。
図 2-6 削減計画((注記)イメージ)
最終報告を受けて、同社の出席者からは社有車の利用状況や行き先が可視化された
ことを受けて、徐々にガソリン車からハイブリッド車、次のリース更新の時期には電気自動車
に入れ替えてはどうかという意見がでました。今後は電気自動車のリース費用などを確認し
ながら、実現に向けてコストを考慮して削減計画を具体化していく予定です。そのためには
社内の出張制度や、社有車の利用ルール(EV は帰社したら給電する)等の整備など、
実現に向けて検討していく予定です。
現在
ガソリン車12台(リース8台)
2021/10
G9台(リース5台)用地調達課工事課
2021/11
G8台(リース4台)
2022/3
G6台(リース2台)
2022/5〜
G4台(リース0台)
リース
購入
リース
購入
(‘21/10/24)
(‘21/11/14)
(‘22/3/27)
(‘22/5/8)
(‘21/10/23)
(‘21/10/23)
(‘22/3/28)
(‘22/5/8)
リースの更新時期
ハイブリッド車
(リース)
ガソリン車
(リース)
ガソリン車
(購入)
凡例 43第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
(4) モデル事例4 マックエンジニアリング
マックエンジニアリングは、ワイヤーカット、NC(数値制御)
放電、マシニングセンタ、NC 旋盤、研磨機などによる精密部
品加工及び金型(ダイス)部品加工を得意とし、高精度な
治具・金型・部品の製造を行っています。また、岡山大学と
連携して、「マイクロリアクター」という少量の薬剤で数万回の
実験にも対応できる、経済的で環境にも優しい実験用器具
の研究・開発も進めています。
本事業では再エネ・省エネ両面から、削減計画を検討しました。再エネでは工場での屋根置き
太陽光発電の導入可能性や、再エネ電気メニューへの切り替え、省エネでは屋根に遮熱塗料の
塗布による空調負荷の軽減等を検討しました。これらの対策により、エネルギー効率化によるコス
ト削減が期待されます。
事 業 内 容 ⚫ 各種高精度加工
 多工程に及ぶ複雑形状加工
 同時三軸、四軸形状加工
 微細加工
 ワイヤーカット放電加工
 NC 放電加工
 マシニング加工
 複合旋盤加工
 平面・円筒研磨加工 等
⚫ マイクロリアクターの開発
所 在 地 岡山県倉敷市玉島乙島 8252-35
温 室 効 果
ガス排出量
Scope1/2: 114t-CO2 (注記)排出量の大部分は Scope2
(2020 年度推計)
モデル事業への参加動機
同社は 1981 年創業以来、NC 放電加工・ワイヤーカットを主要な工作機械として精
密部品加工技術で付加価値の高い製品を製造しています。顧客ニーズに基づきマシニン
グセンタ、NC 旋盤、研磨機等の機械加工機を徐々に導入、事業分野を拡大してきまし
た。また、同社は精密加工を生業としていることから、電力使用量が業績に大きく影響を与
本社工場 44第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
えるため、長年、電力料金の低減に取り組んでいます。
最近の工作機械は空気圧で駆動する装置が多く、このため同社ではコンプレッサーによ
る消費電力量が大きく、省エネの余地があるとの問題意識を有していますが、有効な省エ
ネ方策が打ち出せていない悩みを有しています。更に、同社では従業員への人材教育を
目的として、最先端の環境経営を経営目標に掲げており、その具体的な目標として温室
効果ガス排出削減を掲げています。これらの目標を実行に移すために、本モデル事業に参
加しました。
モデル事業の実施内容
同社における中長期の削減目標に向けた計画策定を、本モデル事業を通じて検討しま
した。夏冬の冷暖房の消費電力量に削減余地があることから、屋根に遮熱塗料を塗布す
ることにより空調負荷を軽減する対策を検討しました。また、空気圧で駆動する工作機械
が多く、コンプレッサーの消費電力量が大きいことから、コンプレッサーの消費電力量の削減
を対象とする方策の導入を検討しました。また、省エネ努力だけでは、掲げた SBT 目標を
達成できないことから、追加で太陽光発電の設置も検討しました。
現状の整理
◼ エネルギー消費実態の特徴
同社では長年の省エネ努力に取り組み、操業時間中の電力消費については季節的・
時間的な変動が少なく、理想に近い電力消費のパターンを実現しています。一方、これ
は、省エネによる消費電力量の削減余地が小さいことを示しています。しかし、春季・秋季
に比較して夏季・冬季の操業時間の電力消費が比較的高く、冷暖房の効率化などによる
省エネによる削減余地があることがわかりました。更に、空気圧で駆動する工作機械が多
く、コンプレッサーの消費電力量が大きいことも特徴となっています。本モデル事業ではこの点
を踏まえ、対応策を検討しました。
◼ 現状の削減の取組(予定を含む)
同社では既に、以下通り様々な削減努力を実施しています。
工場内の時計に LED ランプ(赤・黄申・青)を設置し、音響と共に電力需要の状態
の見える化を実施するなどの電力需要管理を徹底しています。ピーク電力の低下のため始
業時には数分おきに機材のスイッチを入れるルールや機材の不使用時には必ず停止させる
等のルールの導入、その遵守を徹底しています。終業時の消し忘れを防止するため、終業 45第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
後に一旦電源を遮断するルールの導入、工場内の空調はスポットクーラで対応、工場内の
照明を LED 化、第 2 工場の屋根に太陽光発電設備(24kW)を設置しています。
◼ SBT 目標等の設定状況
Scope1/2 の CO2 排出量について、2030 年までに 2019 年度比 20%削減とする
目標を設定しています。
STEP1: 長期的なエネルギー転換の方針の検討
同社のエネルギー消費実態の特徴を踏まえ、長期的なエネルギー削減の方針として、
(1)更なる省エネ方策と(2)更なる太陽光発電施設の導入と再エネ電力への切替
との二本立てで検討しました。
STEP2: 短中期的な省エネ対策の洗い出し
(1)では同社の電力消費の特徴を踏まえ、主に1空気圧縮機の漏れ防止によるエ
ネルギー効率の向上、2エアーブローノズルの小口径化によるブロー量の削減を通じたコン
プレッサーの電力使用量の削減、3屋根に遮熱塗料の塗布による空調負荷の軽減といっ
た省エネ策について検討を実施しました。これらの施策の導入により同社のエネルギー消費
量を 6.4%削減することが可能となります。
また、中期的な取組課題として、地下水による空調システムなど、更なる省エネ方策につ
いても検討しました。
STEP3: 再生可能エネルギー電気の調達手段の検討
(2)では更なる再エネ比率の上昇と消費電力量削減のため本社工場の屋上に太
陽光発電設備を設定する検討を行いました。具体的には、10kW と 20kW の太陽光発
電設備を導入した場合の投資回収年数、キャッシュフロー負担、税制度など助成金を活
用した場合のメリットなどを分析しました。結果、同社においては 20kW の太陽光発電を設
置すると、自家消費により、購入電力量を更に 10%程度削減可能となることが分かりまし
た。また、再エネ 100%電気メニューへの切り替えも検討しましたが、社員の節電努力を尊
重し、当面、導入は見送ることとしました。
STEP4: 削減対策の精査と計画へのとりまとめ
(1)と(2)の実施で最大約 16%の削減が可能となることが分かりました。 46第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
STEP3 までの検討を踏まえ、まずは、実施がしやすい省エネ対策を中心に導入を進め、
再エネ対策については、建物の耐久性や設置コスト等を見つつ、実施可否を判断していく
予定としています。また、中長期的な省エネ対策として、地下水の利用など、更なる省エネ
対策のアイデアについても議論を実施しました。 47第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
(5) モデル事例5 宮城衛生環境公社
宮城衛生環境公社は主に一般廃棄物や産業廃棄物の収集
運搬を手掛けています。特に仙台市内において一般廃棄物の収
集を行っています。合計 100 台近くのごみ収集車と大型・特殊
車両を保有しています。
本モデル事業では、車両からの CO2 排出量削減に向けた中
長期的な削減対策を中心に、事業所の省エネ対策、新建屋建
設に伴う再エネ・省エネを検討しました。これらの検討を踏まえ、
事業所の省エネ対策について来年度に実施することになりました。また、新建屋を建設する際に、
太陽光パネル設置、及び施工時に省エネ対策についても導入する方向で検討することとなりまし
た。車両に関する対策については、今回の結果を踏まえ、中長期的に EV・FCV 車への切り替え
を継続検討することとしました。
事 業 内 容 ⚫ 一般廃棄物、産業廃棄物、特別管理産業廃棄物収集運搬
⚫ 産業廃棄物安定型最終埋立処分場
⚫ 建築物飲料水貯水槽清掃業、建築物排水管清掃業
⚫ 下水道管、その他配管清掃
⚫ 浄化槽、汚水処理施設維持管理清掃
⚫ 除雪、凍結防止作業
⚫ 雑草除去作業、各種解体・土木舗装工事一式
⚫ その他の清掃業務とこれに関わる諸工事
所 在 地 宮城県仙台市青葉区熊ケ根字野川 26-6
温 室 効 果
ガス排出量
Scope1: 1355 t-CO2(2019 年度実績)
Scope2: 45 t-CO2(2019 年度実績) (注記)ただし、Scope2 は太陽光発電と
J-クレジット調達を進めており、2021 年 4 月以降は排出量ゼロとなる見込み。
モデル事業への参加動機
同社は衛生環境に携わる企業として、温室効果ガス排出削減をはじめとした環境への
取組には重点的に取り組んでいます。
同社では、Scope2 の 32%を現在建設中の太陽光発電、残り 68%を J-クレジットを
調達することで再エネ 100%を達成する予定となっています。一方、Scope1 において、合
計 100 台近くのごみ収集車と大型・特殊車両を保有し、車両からの CO2 排出が課題と
本社建屋 48第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
なっています。そこで、車両からの CO2 排出量削減に向けた計画を作成するために本モデ
ル事業に参加しました。
モデル事業の実施内容
同社における中長期の削減目標に向けた計画策定を、本モデル事業を通じて検討しま
した。車両からの CO2 排出量削減に向けた中長期的な削減対策として、EV・FCV トラッ
クの政策動向や技術開発動向、コスト等を整理しました。
加えて、本事業では3つの対策を検討しました。事業所の省エネ対策として、1外灯の
LED 化による削減効果の試算、22 重窓化による断熱性向上の削減効果及び費用の
試算、3新建屋の建設に伴う再エネ導入・省エネ対策を検討しました。
現状の整理
◼ エネルギー消費実態の特徴
同社の CO2 排出量の大半が Scope1 であり、ごみ収集車や大型・特殊車両等におけ
るディーゼル(軽油)の消費量が多いことが特徴です。
◼ 現状の削減の取組(予定を含む)
Scope1 では、全ての普通乗用車をハイブリッド化しています。Scope2 では、消費電力
量の 32%を太陽光発電、残り 68%を J-クレジットを調達することで再エネ 100%を達成
しています。
◼ SBT 目標等の設定状況
SBT 目標自体はまだ設定しておらず、Scope1 についても削減目標は未設定ですが、
今後目標・対策を明確化していきたいと考えています。
Scope2 については、2030 年 30%、2040 年 60%、2045 年 90%、2050 年
100%の再エネ調達目標を設定していますが、先行して 2021 年 4 月以降には再エネ
100%を達成する予定です。同社は再エネ 100 宣言 RE Action に参加しています。
STEP1: 長期的なエネルギー転換の方針の検討
同社のエネルギー消費実態の特徴を踏まえ、長期的なエネルギー転換の方針として、デ
ィーゼル車から EV・FCV への転換を重点的に検討しました。
政策動向や技術開発動向を整理した結果、中長期的には EV・FCV への切り替えが 49第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
進んでいくものの、本格的な普及導入には時間を要することが分かりました。長期的な資金
計画策定という観点から、コストの低減見通しや切り替えスケジュールを検討しました。ま
た、短中期的にはハイブリッド化やバイオディーゼル燃料活用も併せて検討しました。
STEP2: 短中期的な省エネ対策の洗い出し
事業所の省エネ対策として、外灯の LED 化による削減効果の試算と、アルミサッシガラ
ス窓の 2 重化による断熱性向上に伴う削減効果及び費用の試算を実施しました。その結
果、現在と比較して、LED 化は約 70%、アルミサッシガラス窓の 2 重化は約 7%の CO2
排出削減が見込まれました。
また、新建屋建設が予定されているため、新建屋施工に伴う省エネ対策を検討しまし
た。具体的には高効率空調等の導入による削減効果や空調・照明の運用による削減効
果の整理を実施しました。
STEP3: 再生可能エネルギー電気の調達手段の検討
予定されている新建屋へ太陽光パネルを設置した場合の費用や年間発電量の試算を
実施しました。また、将来的に EV への切り替えが実施された場合、消費電力量が大幅に
増加するため、再エネ調達手段についても整理しました。
STEP4: 削減対策の精査と計画へのとりまとめ
STEP3 までの検討内容をとりまとめて、削減計画として整理しました。また、今回検討を
行った対策を実施する場合のキャッシュフローへの影響を分析しました。
中長期的な視野での検討が必要となる車両からの CO2 排出量削減対策については、
検討スケジュールを整理しました。
表 2-5 削減計画 50第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
表 2-6 車両の対策検討スケジュール
モデル事業の検討結果を踏まえ、省エネ対策は来年度に実施することになりました。ま
た、新建屋の屋根へは太陽光パネルを設置し、施工時に省エネ対策を導入することとなり
ました。車両に関する対策については、今回の結果を踏まえ、検討を続けていくこととしまし
た。 51第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
(6) モデル事例6 恩田金属工業
恩田金属工業は金属のプレス加工を手掛けてい
ます。特に加工技術力が試される絞り加工に長けて
おり、チタン・ステンレスといった難加工材を扱うことが
できる専門性を有しています。また、金型の設計・製
作も行っています。
モデル事業では、空調とコンプレッサー更新による
削減効果と費用の試算を実施しました。また、再エネ調達方法を整理し、特に自家発電・自家
消費、第三者所有モデルについて、費用や削減効果を検討しました。これらの検討を踏まえ、空
調とコンプレッサーについては、来年度以降に更新を進めることとなりました。また、再エネ調達につ
いては、見積を取得し、具体的な検討に進む予定です。
事業内容 ⚫ チタン・ステンレス材などの難加工材をはじめとした金属のプレス加工
⚫ 金型の設計・製作
所 在 地 長野県東御市和 901-1
温 室 効 果
ガス排出量
Scope1: 2 t-CO2(2019 年度)
Scope2: 69 t-CO2(2019 年度)
モデル事業への参加動機
同社では、直近 1~2 年で省エネ対策の洗い出しとその実施を進めています。省エネ対
策を進めていくにあたり、目標を設定して対策実施計画を策定することが重要だと考え、
2030 年までに本社工場における CO2 排出量を 20%削減するという目標を掲げました。
本支援事業へは、目標達成に向けた具体的な削減計画の作成について支援を受けるた
めに参加しました。
モデル事業の実施内容
本社工場の省エネ対策として、空調とコンプレッサー更新による削減効果と費用の試算
を実施しました。また、石油ジェットヒーターをエアコンに切り替えた場合の削減効果を参考と
して整理しました。
再エネ調達方法を整理し、本社工場の屋根に太陽光パネルを設置した場合の発電ポ
テンシャルとその費用を試算しました。同社の屋根の発電ポテンシャルを活かすことができる
本社工場 52第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
自家発電・自家消費、第三者所有モデルの導入余地を検討しました。
上記の検討を踏まえ、中長期的な削減計画を作成しました。
現状の整理
◼ エネルギー消費実態の特徴
同社の CO2 排出量の大半は、Scope2 となっており、電力中心のエネルギー消費構造
です。中でも、コンプレッサーと空調の消費電力量が約 70%を占めています。冬期は石油
ジェットヒーターも暖房用に使用していますが、CO2 排出量全体に占める石油由来の排出
は僅かです。
◼ 現状の削減の取組(予定を含む)
省エネポテンシャル診断を実施済みです。その際に提案されたエアー配管の改修等は、
既に取り組んでいます。
◼ SBT 目標等の設定状況
SBT 目標自体は設定していないものの、2030 年までに本社工場における CO2 排出
量(Scope1/2)を 2019 年比で 20%削減という目標を設定しています。
STEP1: 長期的なエネルギー転換の方針の検討
既に大半のエネルギーが電力となっていますが、一部石油ジェットヒーターを使用していた
ため、エアコンへ切り替え場合の削減効果を参考として検討しました。
STEP2: 短中期的な省エネ対策の洗い出し
打ち合わせや本社工場の現地踏査の結果、特に優先度が高いと判断された高効率空
調機とエアコンプレッサーについて、削減効果と費用、投資回収年数を試算しました。
STEP3: 再生可能エネルギー電気の調達手段の検討
同社のエネルギー消費の大半を電力が占めており、再エネ電気への切り替えによる CO2
削減効果は非常に大きいため、再エネ調達方法の検討を実施しました。本社工場の屋根
に太陽光パネルを設置した場合の削減効果や年間発電量、費用を試算しました。その結
果、同社は発電ポテンシャルに恵まれていたため、このポテンシャルを活かすことができる自家
発電・自家消費、第三者所有モデルを中心に、事業者候補をリストアップしました。 53第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
STEP4: 削減対策の精査と計画へのとりまとめ
STEP3 までの検討内容をとりまとめて、削減計画として整理しました。また、今回検討を
行った全対策を実施する場合のキャッシュフローへの影響を分析しました。
表 2-7 削減計画
モデル事業の検討結果を踏まえ、空調とコンプレッサーについては、来年度以降に更新を
進めることとなりました。また、再エネ調達については、見積を取得し、具体的な検討に進む
予定です。
対策 対策
実施年
計画期間(年)
費用等
2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027
1 高効率空調機への更
新(合計4台)
2021~
2022年
投資金額:5,085千円
削減金額:434千円/年
2 エアコンプレッサーの更新2021年
投資金額:2,000千円
削減金額:57千円/年
3 太陽光パネル設置
(自前で設置した場合)
2023年
投資金額:18,000千円
削減金額:1836千円/年
Scope1/2 CO2排出見込量[t-CO2] 65.8 59.3 2 2 2 2 2
キャッシュフロー[千円] -4,406 -2,161 -16,591 2,327 2,327 2,327 2,327
工事 実施
くろまる工事事業者の選定・工事計画(2台)
くろまる工事事業者の選定・工事計画(2台)
工事 実施
くろまる工事事業者の選定・工事計画
工事 実施
◇検討(実施可否の判断)
工事 実施
くろまる設計・工事事業者の選定・工事計画 54第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
(7) モデル事例7 小坂鉄工所
小坂鉄工所は航空宇宙関係の精密小物部品
の製造、航空機用各種エンジンブレード研削加工
等を行っています。中でも H-IIシリーズのロケットエ
ンジンに使用される宇宙開発部品等は高温・高圧
下での耐久力が求められるため、難削材を使用す
ることが多いですが、そのような加工が難しい材料の
扱いについても高い技術を持っています。
モデル事業開始時点で御嵩工場への PPA による太陽光パネル設置について計画済みである
ほか、コンプレッサーの更新や LED 導入なども予定している点を踏まえ、モデル事業では追加的な
削減対策の余地がないか、第三者的な観点で診断、提案しました。また、年度末に運転開始予
定だった御嵩工場の太陽光パネル設置について、工事費用の点で折り合わず計画が白 に戻っ
たことから、改めて再エネ電気調達に向けたアドバイスを行いました。
事 業 内 容 航空宇宙精密部品加工
所 在 地 愛知県名古屋市南区要町 4 丁目 26 番地(本社工場)
温 室 効 果
ガス排出量
Scope1: 0 t-CO2
Scope2: 301 t-CO2
(注記)基準年度の 2018 年度実績。使用しているエネルギーは電力のみ。本社工
場と御嵩工場の合計値。
モデル事業への参加動機
航空宇宙業界の最大手企業であるボーイングが再生可能エネルギー購入同盟
(REBA)に加盟するなど、業界全体の流れとして温室効果ガス削減の取組が重要視さ
れてきており、同社としても対応していかないと近い将来受注に悪い影響があるかもしれな
い、という危機感がありました。
そこで、電気事業者が発電設備を保有する PPA モデルを採用すれば初期投資がかから
ないことや、導入することによって既存の電力会社からの受電量が 1/4〜1/3 程度減り、
基本料金も含めた電力コストが現状より下がる見通しであったこと、契約期間満了後には
太陽光パネルの所有権が譲渡されるのでそれ以降の発電分は無料の電力として活用でき
ること等、経済的なメリットが得られることから導入を検討していましたが、電気事業者の都
本社工場 55第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
合により断念せざるを得なくなったため、現在は小売電気事業者の再エネメニューへの切り
替えも含めて検討しています。
モデル事業の実施内容
同社で使用しているエネルギーは全て電力であったため、省エネ対策の実施とともに再生
可能エネルギーを導入することで温室効果ガスの大幅削減を実現することができます。
モデル事業参加時点で水銀灯の LED 化やコンプレッサーの更新が計画されていたため、
それら以外の対策として以下を提案しました。
⚫ 空気配管の漏れ防止
⚫ コンプレッサーの吐出圧の低減
⚫ コンプレッサーの吸い込み温度の低減
⚫ デマンド監視装置の導入
さらに、今後の再エネ導入に向けて、小坂鉄工所の主要工場がある中部地域で PPA に
よる太陽光パネル設置実績のある事業者の紹介や、再エネ電気メニューの見積を 3 社か
ら取る等、再エネ電気調達に向けた情報提供・アドバイスを行いました。 56第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
(8) モデル事例8 艶金
株式会社艶金は 1889 年(明治 22 年)に尾
州(愛知県西部の旧国名)で創業以来、衣料品
の染申整理業を生業としてきました。
現在はレディス・スポーツ衣料に採用される高機
能・高付加価値生地の染申が主力となっています。
また、2011 年には食品をつくる過程ででる食べもの
材料の「のこり」を原料とした染申、「のこり染」を採用
した KURAKIN シリーズを立ち上げ、農林水産省が協賛する第8回「食品産業もったいない大
賞」を 2020 年に受賞しました。
同社では 1987 年よりバイオマスボイラーを利用しており、工場内で使用している熱の 95%を
賄っています。そのため、削減余地は電力の使用量削減と再エネ電力の導入に限られることから、
モデル事業では電力の省エネ対策の探索や再エネ調達手段の整理を行いました。また、繊維産
業における環境負荷の現状や、環境負荷低減に向けた内外の取組状況を調査し、艶金が業界
や地域に対して情報発信をするための支援をしました。
事 業 内 容 ⚫ ファッション衣料向けニット(丸編、トリコット)、織物などの染申整理加工
⚫ ファッション衣料向け生地企画製造販売
⚫ 布地産業資材、雑貨小物等縫製品企画製造販売
所 在 地 岐阜県大垣市十六町字高畑 1050
温 室 効 果
ガス排出量
Scope1/2: 3,120 t-CO2
(注記)2019 年度実績。
モデル事業への参加動機
繊維産業は世界全体で年間 12 億 t-CO2 の温室効果ガスを排出していると言われて
います。これは日本の温室効果ガス排出量に匹敵する規模でありながら、国内の取引先
や消費者の間では「繊維製品の持続可能性」がそれほど意識されていないと感じています。
一方、世界に目を向けると、この数年はファストファションも含むグローバルブランドで持続可
能性に取り組むケースが増えてきました。国内の繊維産業が気候変動対応に二の足を踏
むことで業界全体が危機に陥るのではないかとの懸念を持っています。
そこで、当社としてできる範囲の対策を実施することで削減をさらに進めるとともに、取引
本社工場 57第 2 部 脱炭素化に向けた削減計画の策定
先を中心に業界内での情報発信に取り組みたいと考え、モデル事業に応募しました。
モデル事業の実施内容
現地踏査では、消費電力量の削減につながる対策を中心に探索し、以下を提案しまし
た。
⚫ 空気配管の漏れ防止
⚫ メタルハライドランプ・蛍光灯の LED 化
⚫ インバータ制御スクリューコンプレッサの導入
⚫ 変圧器の更新
⚫ 加工用機材の部分断熱強化
さらに、今後の再エネ調達の検討材料とするため、国内で現状取りうる再エネ調達手段
(自家発電、PPA、再エネメニュー、証書購入)について整理し報告しました。
繊維産業の持続可能性については、環境負荷の現状及び見通し、海外における規制
の動向、国内外の個別企業における取組事例などを調査し、今後の施策のあるべき方向
性についてディスカッションを行いました。 58参考資料 59参考資料
参考資料
SBT を知る
◼ SBT イニシアティブ『SCIENCE BASED TARGETS』
https://sciencebasedtargets.org/
SBT 公式ウェブサイト。世界全体における SBT 認定取得・コミット企業やルールなどの最新情
報を入手できます。
◼ 環境省・経済産業省『グリーンバリューチェーンプラットフォーム』
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/index.html
環境省・経済産業省が共同で情報提供する、サプライチェーン排出量に関する情報プラットフ
ォーム。SBT の他、RE100、WMB(We Mean Business:SBT,RE100,EP100,
EV100 等のプラットフォーム)に関する関連動向、算定方法等に関する情報を掲載していま
す。
温室効果ガス排出削減体制を構築する
◼ エコアクション21
http://www.ea21.jp/
エコアクション21は、環境省が策定した中小事業者向けの環境マネジメントシステムです。
PDCA サイクルに基づいてエネルギー使用量・CO2 排出量等を把握、管理し、脱炭素経営を
目指す態勢を構築することができます。
排出量算定の方法を知る
◼ GHG プロトコルイニシアティブ『GREENHOUSE GAS PROTOCOL』
https://ghgprotocol.org/
国際的に認められた GHG 排出量の算定と報告の基準を開発し、Scope 毎に算定に関する
ガイダンスを公表しています。SBT の対象とする排出量の範囲などは GHG プロトコルに基づい
て定められています。
事業環境変化に関する最新情報を集める
◼ 国際エネルギー機関(International Energy Agency)『World Energy
Outlook』
https://www.iea.org/topics/world-energy-outlook
IEA が毎年発行している国際エネルギー情勢に関するレポート。世界のエネルギー動向、シナ 60参考資料
リオ分析によるエネルギー需給の見通し等が示されています。
◼ 総務省『未来をつかむ TECH 戦略(IoT 新時代の未来づくり検討委員会 中間とりまと
め)』
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-
news/02tsushin01_04000517.html
2030〜2040 年頃の未来社会を展望しつつ、IoT・AI・ロボットのようなイノベーションの社会
実装等に向けて取り組むべき情報通信政策のあり方について検討したもの。小説形式で語ら
れる未来イメージも読むことができます。
◼ 欧州委員会『100 Radical Innovation Breakthroughs for The Future』
https://euraxess.ec.europa.eu/worldwide/brazil/100-radical-innovation-
breakthroughs-future-new-independent-expert-report
欧州(欧州委員会)の科学技術政策である Horizon 2020 の中で、将来に向けてグロー
バル価値創造・社会的ニーズに対して、重要なブレイクスルーを提示したもの。世界の技術予
測やニュース記事から抽出されており、将来の事業環境を想定する場合の参考となります。
◼ 内閣府『革新的環境イノベーション戦略(統合イノベーション戦略推進会議)』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tougou-innovation/
エネルギー・環境分野における革新的なイノベーションを創出していくための戦略を示したもの。
2019 年 6 月に閣議決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」に基づき経
産省・文科省による検討会が設置され、本戦略が策定されました。
◼ 経済産業省 資源エネルギー庁『長期エネルギー需給見通し(長期エネルギー需給見通し
小委員会)』
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcom
mittee/#mitoshi
第 4 次エネルギー基本計画を踏まえ、資源エネルギー庁開催の小員会の検討を経て、中長
期的な視点から、2030 年度のエネルギー需給構造の見通しを検討した結果のとりまとめ資料。
2030 年度のエネルギー需給構造、電源構成等の見通しが示されています。
◼ 経済産業省 資源エネルギー庁『エネルギー白書』
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/
エネルギー政策基本法に基づき、資源エネルギー庁が毎年報告する白書。主要国の地球温 61参考資料
暖化対策・エネルギー政策やエネルギー動向を把握できます。
最新の温室効果ガス排出削減対策を探す
◼ 省エネルギーセンター『省エネ大賞』
https://www.eccj.or.jp/bigaward/item.html
国内の産業、業務、運輸各部門における優れた省エネ取組や先進的で高効率な省エネ型
製品を表彰する制度。ウェブサイトでは受賞内容を閲覧できます。
◼ 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)『戦略的省エネルギー技術革新プログ
ラム』
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100039.html
2030 年に高い省エネ効果が見込まれる重要技術について、事業化までの技術開発を支援
するプログラム。ウェブサイトでは成果事例や支援対象の技術の概要を閲覧できます。
◼ 環境省『温室効果ガス排出抑制等指針』
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/
温室効果ガス排出抑制等指針の概要と、部門別の対策メニューや参考資料等を紹介したウ
ェブサイト。部門別のパンフレットも入手することができます。
エネルギー調達に関する情報を集める
◼ 環境省『電気事業者別電力排出係数』
https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/calc
環境省及び経済産業省により毎年公表される小売電気事業者及び一般送配電事業者の
事業者別電力排出係数一覧。電気事業者別に、基礎排出係数、調整後(メニュー別)
排出係数が把握できます。
◼ エネルギー情報センター『新電力ネット』
https://pps-net.org/
一般社団法人エネルギー情報センターが運営する情報サイト。電力・エネルギーに関する補助
金・入札情報や時事ニュース、エネルギー関連統計の集計結果などを公表しています。
◼ 経済産業省 資源エネルギー庁『石油製品価格調査』
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/
資源エネルギー庁が毎月調査している石油製品の価格調査結果。「1.給油所小売価格調 62参考資料
査(ガソリン、軽油、灯油)」、「2.民生用灯油(給油所以外)」、「3.産業用価格
(軽油・A 重油)」、「4.卸価格(ガソリン・軽油・灯油)」の価格推移を把握できます。
◼ 経済産業省 資源エネルギー庁『電力調査統計』
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/
電気事業法に則り、国内の電気事業者からの報告をとりまとめた資料。電気事業における需
要実績、発電電力量及び燃料消費実績等を把握できます。
再エネ電気の調達について知る
◼ 経済産業省 資源エネルギー庁『非化石価値取引市場の創設について』
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/non
fossil/
2018 年から開始された非化石価値取引市場の制度概要等に関する資料を入手できます。
◼ JEPX『非化石価値取引市場』
http://www.jepx.org/market/nonfossil.html
非化石価値取引市場の取引結果が掲載されています。
◼ 日本品質保証機構(JQA)『グリーンエネルギー認証』
https://www.jqa.jp/service_list/environment/service/greenenergy/index.html民間が発行するグリーン電力(熱)証書の認証を行う機関。制度概要の他、認定されてい
る発電設備の一覧や認定状況について掲載されています。
◼ 経済産業省・環境省・農林水産省『J-クレジット制度』
https://japancredit.go.jp/
J-クレジット制度の概要から入札情報まで、各種情報を入手できます。クレジットの活用に
関するページでは、CDP・SBT・RE100 での活用の際の注意点も掲載しています。 63参考資料
補助金を使う
◼ 参考:経済産業省関連(2020 年度事業のうち、2021 年度も継続予定の事業、及び 2021 年度新規事業のみ)
補助金名(注記)
エネルギー使用合理化等事業者支援
【省エネ補助金】
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル
(2020
先進的省エネルギー投資促進支援
事業費補助金
住宅・建築物需給一体型等
省エネルギー投資促進事業
中小企業等に対するエネルギー利用
最適化推進事業(エネルギー利用
最適化診断事業・情報提供事業)
I.工場・事業場単位 II.設備単位
公募団体 一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)
一般社団法人環境共創イニシアチブ
(SII)
一般社団法人環境共創イニシアチブ
(SII)
一般社団法人環境共創イニシアチブ
(SII)
一般財団法人省エネルギーセンター
予算
(2020 年度)
459.5 億円 (新規) (新規) (新規)
2021 年度の
継続状況 令和 3 年度以降は「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」
として実施
令和 3 年度以降は「住宅・建築物需
給一体型等省エネルギー投資促進
事業」として実施
(新規) (新規) (新規)
予算
(2021 年度)
325.0 億円 83.9 億円 8.2 億円
補助対象
(既存・新設)
既存 既存 既存・新築 既存 既存・新築 既存
補助対象費用 設備費・工事費 設備費のみ 設計費・設備費・工事費 設備費・工事費 設計費・設備費・工事費 事務費
補助率
a.一般事業
中小企業:1/3 大企業:1/4
b.大規模事業
中小企業:1/2 大企業:1/3
c.連携事業 中小企業:1/2 大企
業:1/3
d.エネマネ事業
中小企業:1/2 大企業:1/3
大企業は対象外
中小企業者等 1/3 以内
2/3以内
a.先進事業
中小企業:2/3 大企業:1/2
b.オーダーメイド型事業
中小企業:1/2 大企業:1/3
c.指定設備導入事業
定額
d.エネマネ事業
中小企業:1/2 大企業:1/3
ZEH・ZEB 実証支援:2/3以内
次世代省エネ建材支援:1/2 以内
定額補助
補助金額
補助金上限:a.3 億円 b.c.15 億
円 d.1 億円
補助金上限 3,000 万円
補助金下限 30 万円
補助金上限:5 億円
(複数年度:10 億円)
未定 未定 補助金上限:4.2 億円
告請条件
a.一般事業
1省エネ率 5%以上 or
2エネルギー消費原単位 5%以上改善b.大規模事業
原油換算 500kl 以上の省エネ量
c.連携事業
複数事業者連携
d.エネマネ事業
エネマネ事業者と契約し、EMS 効果
と運用改善で原油換算量 2%以上
の省エネ
設備単位ごとに補助対象設備の
範囲、基準値をクリアすること
大企業は対象外
省エネ率50%以上
BEMS 導入
既存建築物:
延べ面積 2000 m2以上
新築建築物:
延べ面積 10000 m2以上
(環境省と連携)
ZEB プランナーの関与を必須とする
a.先進事業
設備メーカーに対して先進設備の公
募及び審査並びに登録を実施し、予
めホームページ等にて先進設備の登
録リストを公表する
b.オーダーメイド
機械設計を伴う設備(オーダーメイド
型設備)を導入する省エネ投資事業
で、一定の省エネ要件を満たす
c. 指定設備導入事業
指定設備のうち一定の省エネ性能を
満たす設備を導入する
d.エネマネ事業
エネマネ事業者と「エネルギー管理支
援サービス」を契約し、EMS を用いて
より省エネルギー化を図り、運用改善
効果により一定の省エネ要件を満たす
1ZEH:ZEH ビルダー/プランナー、
デベロッパーの公募・登録を行うこと
2ZEB:ZEB ビルダー/プランナー、デ
ベロッパーの公募・登録を行うこと
既存建築物:
延べ面積 2000 m2以上
新築建築物:
延べ面積 10000 m2以上
3省エネ建材:次世代省エネ建材の
公募、登録、公表を行うこと
中小企業等の工場・ビル等のエネルギ
ー管理状況の診断、AI や IoT 等を
活用した運用改善や再エネ導入等提
案に係る経費の一部を国が支援
対象設備
<省エネ設備>
省エネに寄与する設備・システム
EMS 設備・システム
照明は対象外
1高効率空調
2産業ヒートポンプ
3業務用給湯器
4高性能ボイラー
5高効率コージェネレーション
6低炭素工業炉
7冷凍冷蔵設備
8産業用モーター
ZEB 実現に寄与する高性能建材
(断熱材、複層ガラス)空調、給
湯、換気、照明、太陽熱、蓄電シス
テム、受変電システム、BEMS 装置
等で構成するシステム・機器
・登録された先進設備
・機械設計を伴う設備(オーダーメイ
ド型設備
・指定設備
・EMS(エネルギーマネジメントシステム)1蓄電システム、V2H設備、燃料
電池、太陽熱利用温水システムのい
ずれかを導入した住宅
2ZEBの設計ノウハウが確立されて
いない民間の大規模建築物の ZEB化3高性能断熱建材や蓄熱、調湿等
の付加価値を有する省エネ建材を用
いた住宅
事業の遂行に直接必要な経費及び
事業成果のとりまとめに必要な経費
(人件費、事業費、諸経費)
(注記)2020 年度事業のうち、継続の事業は黄申、廃止事業は水申とした。2021 年度新規事業は緑申とした。 64参考資料
◼ 参考:国土交通省・環境省関連(2020 年度事業のうち、2021 年度も継続予定の事業、及び 2021 年度新規事業のみ)
省庁 国土交通省 環境省
補助金名(注記) 既存建築物省エネ改修等
推進事業
建築物の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業
1レジリエンス強化型
ZEB 実証実験
2ZEB 実現に向けた先進的
省エネルギー建築物実証実験
3既存建築物における省 CO2 改修支援事業
(1)民間建築物における省 CO2
改修支援事業
(2)テナントビルの省 CO2 改修
支援事業
(3)空き家等における省 CO2 改
修支援事業
公募団体
一般社団法人
環境共生住宅推進協議会
一般社団法人静岡県環境資源協会
予算
(2020 年度)
90.7 億円
《環境・ストック活用推進事業》
98.5 億円
但し他の補助金(国立公園宿舎・上下水道施設の省 CO2 改修支援事業)も含む
2021 年度の
継続状況
継続 継続 継続 継続 継続 継続
予算
(2021 年度)
74.94 億円
60 億円
但し他の補助金(国立公園宿舎・上下水道施設の省 CO2 改修支援事業)も含む
補助対象
(既存・新設)
既存 既存・新築 既存・新築 既存 既存 既存
補助対象費用 設備費・工事費 設計費・設備費・工事費・事務費 設計費・設備費・工事費 設備費・工事費・事務費 設備費・工事費・事務費 設備費・工事費・事務費
補助率 1/3 2/3
ZEB Ready 1/3
Nearly ZEB 1/2
ZEB 2/3
1/3 1/3 2/3
補助金額 補助金上限:5,000 万円 上限:3 億円、5 億円 上限:3 億円、5 億円 上限:5,000 万円 上限:4,000 万円 上限なし
告請条件
省エネ率:20%以上
ただし、躯体(外皮)の改修割合が
20%以上の場合は 15%とする
躯体の省エネ改修必須
エネルギー計測装置設置
水害等の災害時における電源確保
等に配慮された設計であること、災害
発生に伴う長期の停電時において
も、施設内にエネルギー供給を行うこ
とができる再エネ設備等を導入するこ
と等
ZEB の実現とさらなる普及拡大のた
め、ZEB に資するシステム・設備機器
等の導入を支援
・既存建築物において改修前に比べ
30%以上の CO2 削減
・運用改善によりさらなる省エネの実
現を目的とした体制の構築
・テナントビルにおいて改修前に比べ
20%以上の CO2 削減
・ビル所有者とテナントにおけるグリーン
リース契約の締結
・空き家等において改修前に比べ
15%以上の CO2 削減
・空き家等を改修し、業務用施設とし
て利用
対象設備
屋根・外壁等(断熱)、開口部(複
層ガラス、二重サッシ等)、日射遮蔽
(庇、ルーバー等)等の構造躯体(外
皮) バリヤフリー改修
空調、照明、給湯、昇降機
災害時に活動拠点となる公共性の
高い業務用建築物であって、延べ面
積 10,000 m2未満の新築民間建築
物、延べ面積 2,000 m2未満の既存
民間建築物、及び地方公共団体所
有の建築物(面積上限なし)
補助対象建築物:
延べ面積 10,000m2未満の新築民
間建築物、延べ面積 2,000m2未
満の既存民間建築物、及び地方公
共団体所有の建築物(面積上限なし)改修前に比べ 30%以上の CO2 削
減に寄与する空調、BEMS 装置等
の導入費用
改修前に比べ 20%以上の CO2 削
減に寄与する省 CO2 改修費用(設
備費等)
改修前に比べ 15%以上の CO2 削
減に寄与する省 CO2 改修費用(設
備費等)
(注記)2020 年度事業のうち、継続の事業は黄申、廃止事業は水申とした。2021 年度新規事業は緑申とした。 65参考資料
省庁 環境省
補助金名(注記)
二酸化炭素排出抑制対策
事業費等補助金
(CO2 削減ポテンシャル診断
推進事業)
(低炭素機器導入事業)
ASSET 事業
(先進対策の効率的実施による
CO2 排出量大幅削減事業設備補
助事業)
工場・事業場における先導的な脱炭
素化取組推進事業
地域の防災・減災と低炭素化を同時
実現する自立・分散型エネルギー設
備等推進事業
地域レジリエンス・脱炭素化を同時実
現する避難施設等への自立・分散
型エネルギー設備等導
入推進事業
脱フロン・低酸素社会の早期実現の
ための省エネ型自然冷媒機器導入
加速化事業(農水省、経産省、国
交省連携)
公募団体
一般社団法人低炭素エネルギー技
術事業組合
一般社団法人温室効果ガス審査協会未定
一般社団法人環境技術普及促進
協会
一般社団法人環境イノベーション情
報機構
未定
一般財団法人日本冷媒・環境保全
機構
予算
(2020 年度)
ポテンシャル診断・設備更新
15 億円
33 億円 (新規) 116 億円 (新規) 73 億円
2021 年度の
継続状況
令和 3 年度以降は「工場・事業場
における先導的な脱炭素化取組推
進事業」として実施
令和 3 年度以降は「工場・事業場
における先導的な脱炭素化取組推
進事業」として実施
(新規)
令和 3 年度より「地域レジリエンス・
脱炭素化を同時実現する避難施設
等への自立・分散型エネルギー設備
等導入推進事業」として実施
(新規) 継続
予算
(2021 年度)
40 億円 50 億円 73 億円
補助対象
(既存・新設))
既存 既存 既存 新設・既設 新設・既設 既設
補助対象費用 設備費・工事費 設備費・工事費 設備費・工事費 設置費・工事費 設置費・工事費 設置費・工事費
補助率1/3(中小企業は1/2)
L2-Tech 製品 1/2
その他の機器 1/3
1 脱炭素化促進計画の策定 1/2
2 設備更新 1/3
補助率:1/2、2/3、3/4 補助率:1/3、1/2、2/3 補助率:1/3
補助金額 30 年度より上限:2,000 万 補助金上限:1.0 億円
補助金上限:1計画策定 100 万
円 2設備更新 1 億円
下限:200 万 500 万円/件 1 事業者上限:5 億円
告請条件
CO2 削減ポテンシャル診断事業を受
診が条件
診断結果に基づき 20%以上(中
小企業は 10%以上)の CO2 削減1L2-Tech 認証製品導入比率が
50%以上
2自主的対策による排出削減目標
量が排出削減目標量全体に対して
10%以上
1CO2 排出削減目標を含む「脱炭
素化促進計画」
の策定(CO2 排出量 50t 以上
3,000t 未満の工場・事業場を保有)2工場・事業場単位で 15%削減ま
たは設備系統で 30%削減
地域防災計画または地方公共団体
との協定により災害時に避難施設等
として位置づけられた公共施設または
民間施設
災害時にもエネルギー供給等の機能
発揮が可能となり、災害時の事業継
続性の向上に寄与する再生可能エ
ネルギー設備等を導入
地域防災計画により災害時に避難
施設等として位置づけられた公共施
設に、再生可能エネルギー設備等の
導入し、平時の温室効果ガス排出
抑制に加え、災害時にもエネルギー
供給等の機能発揮を可能とすること
冷凍冷蔵倉庫及び食品製造工場に
用いられる省エネ型自然冷媒機器
並びに食品小売店舗におけるショー
ケースその他の省エネ型自然冷媒機
器を導入する事業であること
対象設備
ア 設備更新:
既存機器・設備の同種の機能と同
等以下の能力(出力)を有する機
器・設備への更新
イ システム更新:
エネルギーの発生・移送・消費を 1 つ
のシステムとし、当該システムの既存
機器・設備の機能やエネルギー供給
の全部または一部を異種の機器・設
備に置き換える
空調、照明、ボイラー、コージェネ、冷
凍機、モーター、変圧器、複層ガラ
ス、断熱、BEMS
未定
1太陽光発電+蓄電池
3バイオマスボイラー
3コジェネレーションシステム
4自立運転付き GHP など
高効率設備(空調、照明等)断熱
材等
防災・減災に資する再生可能エネル
ギー設備、未利用エネルギー活用設
備、及びコジェネレーションシステム
(CGS)並びにそれらの附帯設備
(蓄電池、充放電設備・充電設
備、自営線、熱導管等)
冷凍冷蔵倉庫及び食品製造工場に
用いられる省エネ型自然冷媒機器
並びに食品小売店舗におけるショー
ケースその他の省エネ型自然冷媒機器(注記)2020 年度事業のうち、継続の事業は黄申、廃止事業は水申とした。2021 年度新規事業は緑申とした。 66参考資料
◼ 利用可能な金融機関の支援
一般社団法人全国銀行協会が提供する「全国銀行 eco マップ」
(https://www.zenginkyo.or.jp/abstract/eco/ecomap/)に紹介されている、金
融機関から受けられる CO2 削減支援を整理しました。
表 0-1 利用可能な金融機関の支援一覧
銀行 商品・取組 内容 商品説明 URL
愛知銀行 あいぎん ESG 私募
債「エコモン」
環境に配慮した経営に取り組む企業が私募債を
発行する場合に手数料を優遇
https://www.aichiban
k.co.jp/corporate/fun
ding/private_bond/
エコカーローン ハイブリッド自動車や電気自動車などのエコカー購
入資金について金利を優遇
不明
足利銀行 環境格付融資 CO2 排出量削減につながる設備投資を行う事業
者を対象に、環境経営に対する実践状況を独自
の評価基準にて評価し、適用金利を優遇
不明
あしぎん環境配慮
型私募債
環境に配慮した取組を行う企業をサポート https://www.ashikaga
bank.co.jp/ashigin/rel
ation/env/business.htmlあしぎん太陽光発
電支援融資
「再生エネルギーの固定価格買取制度」を活用し
た、太陽光発電事業を行う事業者向けの融資制度https://www.ashikaga
bank.co.jp/ashigin/rel
ation/env/business.html阿波銀行 あわぎん SDGs 私募債SDGs の目標達成に向け取り組んでいる法人を支援https://www.awabank
.co.jp/files/7115/6896
/0801/news20190920.pdfあわぎん太陽光発
電ローン
電力会社への電力供給(10kW 以上の全量買取)
を目的とした発電事業のための設備資金専用商品太陽光発電設備導入により温室効果ガス排出削
減に積極的に取り組む法人及び個人事業主に必
要な設備資金を供給
https://www.awabank
.co.jp/houjin/shikin/s
olar-loan/
池田泉州銀行環境応援ローン 地域の環境保全を応援する融資商品として、省エ
ネ、節電、低公害車導入、汚水処理、CO2 の削
減、省エネ機器等環境負荷低減に寄与する製品
の製造等、環境保全に向けた取組や環境配慮型
経営を実践する事業者が対象
ISO14001、エコアクション 21 等の環境関連の認証
を取得している事業者に対する金利優遇制度
https://www.sihd-
bk.jp/houjin/shikin/s
martecosupport.html
大垣共立銀行環境対策支援ローン環境負担軽減に前向きに取り組む事業者に対し
て、適用金利引き下げ・手数料割引を行う専用商品https://www.okb.co.j
p/company/fund/eco-
loan.html
香川銀行 かがわ環境私募債 ISO14001 認証取得等、環境に配慮した経営を行
っている企業の私募債受託にあたり、発行手数料
を優遇することで、環境への取組を金融面で支援
不明
鹿児島銀行 かぎん環境型融資
制度
「かぎん環境格付」を付与された事業者において、
環境関連に対する資金が必要な事業者に融資す
る制度
https://www.kagin.co.
jp/houjin/202_suppor
t/support_eco.html
関 西 み ら い 関西みらい 再生 自社工場や収益物件などの屋上、遊休不動産な https://www.kansaimi 67参考資料
銀行 商品・取組 内容 商品説明 URL
銀行 可能エネルギー応
援融資
どの有効利用を目的として太陽光パネルを購入、
設置し、再生可能エネルギーの固定価格買取制
度に基づき売電する事業者を対象とした融資制度
raibank.co.jp/hojin/se
rvice/shikin/saiseikan
ou.html
紀陽銀行 紀陽エコビジネス 再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用
した事業へ参入を検討している事業者を対象とし
た、再生可能エネルギー事業融資
https://www.kiyobank
.co.jp/business/financ
ing/etc.html
熊本銀行 環 境 格 付 融 資
FFG「エコ・ローン」
オリジナルの「環境格付」により、環境に配慮した経
営を行う企業の取組を評価し、最大で 0.3%の金
利引き下げを行う融資商品
https://www.kumamo
tobank.co.jp/corporat
e/businesssupport/se
rvice/sonota/
京葉銀行 「エコアクション ×ばつ京葉銀行 eco プロジェクト」
取引先企業へ学生がコンサルティングを行い、環境
認証であるエコアクション 21 の取得を支援
https://www.chiba-
u.ac.jp/general/public
ity/press/files/2017/2
0180319ecoproject.pdf高知銀行 こうぎん環境配慮
型私募債
所定の認定を受けるなど、環境に配慮した企業を
対象に、私募債の受託に係る保証料等を優遇
https://www.kochi-
bank.co.jp/shibosai/p
df/shibosai_.pdf
西京銀行 エコ(環境)配慮型
融資商品
「節電」や「地球環境の温暖化防止」等に向けた
取組を行う事業者が対象
https://www.saikyoba
nk.co.jp/personal/info
rmation/docs/100205.pdf埼 玉 り そ な
銀行
埼玉りそな環境経
営応援融資
企業が取り組んでいる環境経営の状況を、独自に
制定した環境格付に基づいて評価し、環境保全に
関わる設備資金の調達について、その格付レベルに
応じて段階的な金利設定で提供
不明
山陰合同銀行ごうぎん SDGs 私募
債(エコ型)
ISO14000 取得など環境に配慮した取組を実施す
る企業を対象として私募債を発行
https://www.gogin.co
.jp/business/funding/
privatebond/
静岡銀行 環境格付私募債
「 ECOBON( エ コ ボ
ン)」
環境保全に取り組む企業の資金調達をサポートす
るため、環境格付ランクに応じて金利を段階的に
優遇する環境格付私募債
https://www.shizuoka
bank.co.jp/ir/pdf/11_
6.pdf
七十七銀行 七十七社会貢献
活動支援ローン
利用金額は 100 万円以上 1 億円以内、小口資
金の対応も可能
融資利率は短期プライムレートを基準とした変動
金利とし、長期資金の場合、期間別最下限金利
よりも最大で 0.20%引き下げた利率での利用が可能https://www.77bank.
co.jp/houjinloan/syak
aikouken.html
77ESG 私募債 3,000 万円以上からの発行が可能、総額引受手
数料は、社債発行総額の 0.05%とし、通常よりも
0.20%引き下げ
不明
十八親和銀行環 境 格 付 融 資
FFG「エコ・ローン」
オリジナルの「環境格付」により、環境に配慮した経
営を行う企業の取組を評価し、最大で 0.3%の金
利引き下げを行う融資商品
https://www.18shinw
abank.co.jp/corporate
/businesssupport/serv
ice/sonota/
十六銀行 じゅうろく環境格付
融資制度
じゅうろく環境私募債取引先の環境保全への取組を支援し、地域での
環境金融実現を目指す
取引先の環境保全への取組を評価・格付し、その
格付結果で金利を優遇
不明
エブリサポート 21 低公害車購入、太陽光発電等の新エネルギー設
備、公害防止設備、リサイクル関連設備などの購入
や、ISO を認証取得する場合等を用途とした融資
https://www.juroku.c
o.jp/corp/loan/every.html常陽銀行 太陽光発電事業
融資制度「LALA サ
再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく
設備投資を支援
https://www.joyoban
k.co.jp/enterpri/shikin 68参考資料
銀行 商品・取組 内容 商品説明 URL
ンシャイン」 /lala.html
常陽エコ・セレクトロ
ーン
資金使途に応じた5つのプランを設定し、地球環
境保護につながる様々な資金調達をサポート
https://www.joyoban
k.co.jp/enterpri/shikin
/eco.html
環境格付評価制度企業の環境への取組度合いを評価し、格付や取
組内容を公表するほか、高格付の企業には環境
保全に係る設備投資等への融資金利を優遇
不明
仙台銀行 エコビジネスローン
「みやぎ環境応援ロ
ーン」
地域環境に配慮した経営の実行に取り組む地域
中小企業に対し、安定的な資金供給を図るととも
に、地球環境の保全に積極的に支援
外部認証の取得状況等に応じて、2 つのローンプラ
ンを用意しており、運転資金及び設備資金の融資
金利を優遇
https://www.sendaib
ank.co.jp/hojin/yuush
i/ecobusiness.php
大光銀行 たいこう環境格付 環境保全に積極的に取り組む企業の、取組度合
いを評価し、その格付評価に応じて環境融資の金
利を優遇
不明
たいこう環境融資
「エコライナー」
環境保全に取り組む企業を応援するため、通常の
融資金利より優遇、「環境格付」を実施した企業
には、格付評価に応じてさらに金利を優遇
https://www.taikoban
k.jp/business/fund/ec
o.php
たいこう環境対策
私募債
環境対策に取り組むための資金または環境マネジ
メント(ISO14001、エコアクション 21 等)を取得し
ている企業には、手数料を優遇
https://www.taikoban
k.jp/business/sibo_ka
nkyou.php
第四北越銀行環境格付・環境格
付融資制度
環境配慮への取組を評価する「環境格付」のランク
に応じて金利を優遇する「環境格付融資制度」の
取扱い、事業者の環境問題に対する取組を支援
不明
太陽光発電プラン
「燦 sun」
太陽光発電システムや環境対策設備の設置の際
に利用できる専用ローンの取扱い、太陽光発電普
及を促進
https://www.dhbk.co.
jp/business/supply/ho
ujinsunsun.html
千葉銀行 環境格付融資制
度(ちばぎんエコ・
ステップ)
企業の環境に対する取組を客観的に評価した「環
境格付」に応じて融資金利割引を実施
https://www.chibaba
nk.co.jp/hojin/finance
/finance18/
太陽光発電事業
支援融資制度(ち
ばぎんエコ・パワー)
再生可能エネルギー発電事業へ参入する企業に
対して情報と資金を供給
https://www.chibaba
nk.co.jp/hojin/finance
/finance20/
中京銀行 エコ融資(事業性) 企業の環境ビジネス(低公害車の購入等)への
取組を低レートの融資で応援
不明
中国銀行 環境配慮型融資 環境に配慮した経営を行っている企業・事業者を
応援
https://www.chugin.c
o.jp/business/service/
financing/kankyohairyo/SDGs 私募債 SDGs に関連した地域への貢献並びに特典が受け
られる社債
https://www.chugin.c
o.jp/assets/media/20
19/08/190805_1.pdf?
639edc397f7df6563ef
549ebc464ab20
筑波銀行 エコカービジネスローン事業者向けのエコカー導入 不明
農家ローン「豊穣」 エコファーマー認定者への農家ローン「豊穣」金利
優遇
https://www.tsukuba
bank.co.jp/corporate/
financial/houjou.html
東邦銀行 再生可能エネルギ
ー関連融資
持続可能な社会を目指し、地球温暖化防止に向
けた取組として多くの再生可能エネルギー案件に積
極的に対応(2020 年 3 月末で 1,997 億円の融
http://www.tohobank
.co.jp/news/2012092
7_000722.html 69参考資料
銀行 商品・取組 内容 商品説明 URL
資実績)
栃木銀行 ( 指 定 金 融 機関)省エネルギー設備
投資に係る利子補
給金
地域 ESG 融資促
進利子補給事業
・「省エネルギー設備投資に係る利子補給金」
(経済産業省)...エネルギー消費効率の高い設
備を新設もしくは増設する際に利用する融資に、
最大1%の利子補給を受けることができる
・「地域 ESG 融資促進利子補給事業」(環境
省)...再生可能エネルギーや省エネルギー設備に
向けたESG融資を利用した場合に、最大1%の利
子補給が受けることができる
不明
とちぎん環境格付
認定企業サポート
資金
環境配慮へ取り組んでいる中小企業を積極的に
支援するため、環境経営の取組や環境配慮活動
を評価する独自の「環境格付」を実施し、その「環
境格付」に応じて融資の金利を優遇
https://www.tochigib
ank.co.jp/showimage/
pdf?fileNo=635
鳥取銀行 ・とりぎん環境配慮
型融資(グリーン・
アシスト、グリーン・リ
ード)
・とりぎん太陽光発
電事業向け融資グ
リーン・ライト
・銀行保証付私募
債(とりぎん環境
配慮型)
・とりぎん成長分野
強化ファンド
事業者の環境配慮型経営や様々な環境保全に
向けた取組などを積極的に支援するため、専用商
品を取扱い、一部商品については、一定条件を満
たすことで段階的に金利・保証料等を優遇
https://www.tottoriba
nk.co.jp/business/fina
ncial/kankyou/index.htmlトマト銀行 トマト環境配慮型
融資(トマト・グリ
ーン融資)
環境配慮型経営に必要な運転及び設備資金ニ
ーズに応える融資商品で、環境保全に積極的に
取り組む企業を資金面からサポート
https://www.tomatob
ank.co.jp/about/env_
activities.html
トマト・エコ私募債 「継続的」に環境保全活動に取り組む企業が発行
する私募債の引受手数料を優遇
不明
トマト・ソーラープロ
ジェクトローン
メガ・ソーラーなどの太陽光発電事業へ参入する企
業の資金調達をサポート
不明
長野銀行 エコ私募債 私募債発行にかかる財務代理手数料の優遇 不明
南都銀行 〈ナント〉グリーン私
募債
環境に配慮した経営や環境負荷の低減に資する
企業が発行する私募債の引受けに際して、保証
料や手数料の一部を優遇
https://www.nantoba
nk.co.jp/hojin/tyoutat
su/sibosai/
〈ナント〉環境配慮
型融資
環境配慮にかかる設備資金について、企業の環境
への取組度合いに応じて段階的に金利を優遇
https://www.nantoba
nk.co.jp/hojin/tyoutat
su/kankyouhairyo/
西日本シテ
ィ銀行
環境格付融資 環境経営への取組を評価して環境格付を決定
し、金利を優遇
https://www.ncbank.c
o.jp/nr/images/13100
3.pdf
環境私募債 環境に配慮した経営を行っている場合、発行コスト
を優遇
https://www.ncbank.c
o.jp/nr/images/08022
0.pdf
農林中央金庫農林水産環境格
付制度
企業の環境への取組に加え,農林水産業や食品
分野についての取組を評価し,融資条件に反映
不明
農山漁村再エネフ
ァンド
JA 共済連(全国共済農業協同組合連合会)と
ともに立上げたファンド
農林水産業との調和のとれた地域活性化につなが
る再生可能エネルギー事業に対し、金融面から支援不明
農林水産環境ビジ
ネスローン
企業の環境への取組や 6 次産業化・再生可能エ
ネルギー利活用の取組を対象とする融資制度
不明 70参考資料
銀行 商品・取組 内容 商品説明 URL
百五銀行 百五環境格付融
資「エコフロンティア」
地元事業者の環境保全に対する取組を促進し、
地球温暖化防止に貢献することが目的
この融資制度は、地球温暖化対策のための CO2
排出量削減などの企業活動を評価し、格付を実
施した上で、その格付に応じた金利を優遇
https://www.hyakugo.
co.jp/about/csr/envir
onment/env-29/
百十四銀行 114環境サポート融
資(百十四オリーブ
ファンド)
環境配慮型私募
債(百十四オリーブ債)114 再生可能エネ
ルギー事業支援融
資(114エネルギーサ
ポート)
など
環境配慮型商品を取り揃え、環境保全に取り組
む企業、個人事業主を積極的に支援
不明
百十四 SDGs 環境
応援ローン
環境配慮への高まりに対応した融資商品 https://www.114bank
.co.jp/newsrelease/20
19/pdf/news_201910
01_1.pdf
広島銀行 <ひろぎん>環境
格付融資制度「エ
コ・ハーモニーα」
環境配慮型経営を行う法人向けに公害防止・リサ
イクル・クリーンエネルギーなど、地球環境の保全に
向けての取組を資金面から支援
https://www.hirogin.c
o.jp/company/csr/env
ironment/service/
<ひろぎん>地球
環境対応支援制
度「 エコ・ ハーモニ
ー」
環境配慮型経営を行う法人向けに環境に配慮し
た経営度合いを評価する独自の「環境格付」を活
用し、環境保全への取組を資金面から支援
https://www.hirogin.c
o.jp/company/csr/env
ironment/service/
福岡銀行 環 境 格 付 融 資
FFG「エコ・ローン」の
取扱い
「環境格付」により、環境に配慮した経営を行う企
業の取組を評価し、最大で 0.3%の金利優遇を行
う融資商品
https://www.fukuoka
bank.co.jp/news/h20
10/h11-
12/news_eco_1.htm
北洋銀行 環境配慮型企業
向け私募債「北洋
エコボンド」
環境に配慮した取組を自主的・積極的に行ってい
る企業に対し、有利な私募債発行条件を提供
私募債(北洋エコボンド)の発行を通して環境配
慮型企業をサポート
北海道・札幌市とも連携を強めていることから、主
な対象企業を「北海道グリーンビズ認定制度(北
海道実施)」「さっぽろエコメンバー(札幌市実
施)」の登録企業としている
https://www.hokuyob
ank.co.jp/announcem
ent/detail/20100531_
010018.html
北陸銀行 環境評価融資「エ
コリード・マスター」
環境配慮型設備
投資利子補給融資環境配慮型経営を行う企業向けに環境配慮型
経営への取組状況を、当行独自の評価体系で環
境格付
環境格付に応じ、最大 0.2%の金利優遇
https://www.hokugin.
co.jp/business/financ
e/eco-lead.html
ほくぎんエコ私募債 環境配慮に取り組む企業を対象とした私募債で、
通常の私募債より発行条件を優遇
https://www.hokugin.
co.jp/business/financ
e/shibosai.html
「再生可能エネルギ
ー分野」へのサポー
ト体制強化
太陽光発電、風力発電や北陸の豊富な水資源を
利用した小水力発電の事業計画作成支援からフ
ァイナンス助言の実施
省エネ相談地域プラットフォームに参加
https://www.hokugin.
co.jp/business/etc/re
newable.html
北海道銀行 エコ関連商品・サー
ビス「道銀エコ私募
債」
環境に配慮した経営をしている法人には発行条件
が有利となる「道銀エコ私募債」等を積極的に紹介https://www.hokkaid
obank.co.jp/company
/csr/ecology/ 71参考資料
銀行 商品・取組 内容 商品説明 URL
三重銀行 みえぎん環境配慮
融資・私募債「eco
グリーン」「eco グリー
ン up」
CO2 削減といった企業による環境配慮の取組への
評価に応じて、融資金利の優遇、私募債取扱手
数料の割引
不明
みえぎん再生可能
エネルギー支援融
資「eco サポート」
など
太陽光発電事業等の再生可能エネルギー関連事
業への参入を支援する融資商品
https://www.miebank
.co.jp/news/pdf/news
946.pdf
みちのく銀行 ESG 型私募債 「環境保全、社会的な課題の解決、企業統治・コ
ンプライアンス」など、ESG 経営について積極的に取
り組んでいる企業をサポート
https://www.michino
kubank.co.jp/houjin/s
hikin/shibosai/shibosa
i.html
三井住友銀行SMBC-ECO ローン 環境認証を取得した中小企業を対象に、最大で
0.25%の金利を優遇(無担保)
ISO14001、エコアクション 21 のほかに、中小企業で
も取得しやすい、地方自治体などが独自に運営す
る環境認証も対象
https://www.smbc.co.
jp/hojin/financing/eco/SMBC 環境配慮評
価融資/私募債
企業の環境配慮取組を独自の基準で評価し、更
なる取組向上を支援する商品
評価は日本総合研究所が行い、企業の環境経営
における改善余地などを、簡易診断の形で提供
不明
三井住友信
託銀行
ポジティブ・インパク
ト・ファイナンス
企業のサプライチェーンを俯瞰して環境・社会・経
済に及ぼす影響(インパクト)を包括的に分析・
評価し、プラスの影響拡大とマイナスの影響抑制に
ついて具体的な KPI を設定して企業にコミットしても
らい、それを融資契約に織り込んだ商品
その後のモニタリングの実行と結果の開示を通じて
企業の SDGs への貢献を後押しし、グローバルな視
点から企業の競争力(事業や製品・サービスを含
む)の向上をサポート
不明
三菱 UFJ 銀行サステナブルファイナ
ンス目標の設定
企業への金融サービスの提供を通じて、持続可能
な社会の実現、そして SDGs の達成に貢献するた
め、2019 年度から 2030 年度までに累計 20 兆円
(うち、環境分野で 8 兆円)のサステナブルファイ
ナンスの実施をめざす
しかく主な対象事業
[環境]
・再生可能エネルギーの普及、エネルギー効率改
善等に資する事業
・グリーンビルディング等の気候変動の緩和に資する
事業
[社会]
・スタートアップ企業の育成、雇用創出に資する事業・貧困の改善に資する事業
・地域活性化、地方創生に資する事業
・公共交通/水道設備/空港などの基本的なイ
ンフラ設備、及び病院/学校/警察などの必要不
可欠なサービス事業
不明
再生可能エネルギ
ー普及への貢献
太陽光・水力・風力・地熱発電などのプロジェクトフ
ァイナンスのアレンジや融資を通じて、世界の再生
可能エネルギーの普及に取り組んでいる
不明
三菱 UFJ 信
託銀行
再生可能エネルギ
ーの推進と普及〜
R&D 目的投資
機関投資家向けの「再生可能エネルギー投資ファ
ンド」組成を目指し、自己資金による匿名組合出
資(「R&D 目的投資」)を拡大している
不明 72参考資料
銀行 商品・取組 内容 商品説明 URL
みなと銀行 法人向け「みなとエ
コローン」
環 境 認 証 ( 神 戸 環 境 マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム
(KEMS)、エコアクション 21、ISO14001)を取得
した法人を対象に金利を優遇する融資商品
https://www.minatob
k.co.jp/corporate/fina
ncing/eco_loan/
株式会社向け「み
なとエコ私募債」
環 境 認 証 ( 神 戸 環 境 マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム
(KEMS)、エコアクション 21、ISO14001)を取得
した株式会社が発行する私募債の財務代理手数
料や引受手数料の一部を優遇
https://www.minatob
k.co.jp/topics/news/fi
le/130/topics2009112
5.pdf
武蔵野銀行 企業向け商品・サ
ービスを通じた取組
環境負荷軽減効果のある照明・空調等を扱う提
携業者紹介を通じた、企業の省エネ設備導入支援不明
山梨中央銀行環境関連事業支援エネルギーを削減する「省エネルギー」、エネルギーを
創る「創エネルギー」、エネルギーをためる「蓄エネル
ギー」の取組に対して、融資やリース等の金融サポ
ートだけではなく、補助金等公的支援策のコンサル
ティングや、設備メーカー等とのビジネスマッチング等
の各種メニューを提供
不明
横浜銀行 〈はまぎん〉環境格
付融資制度
環境に配慮した経営を行う企業を金融面で支援 不明
りそな銀行 SDGs コンサルファンド本商品を御利用かつ、SDGs 対応に御関心のある
法人の企業に、りそな総合研究所による簡易コン
サルティングを無料で提供
https://www.resonab
ank.co.jp/about/news
release/detail/201809
20_878.html
私募グリーンボンド 環境改善効果のある事業(グリーンプロジェクト)
に充当する資金を調達するための私募債を引受け
不明

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