地球環境研究センター 炭素循環研究室長 向井 人史
(自転車発電研究会 発起人)
"家庭の白熱電球を電球形蛍光灯に替えてみませんか?"
"電球形蛍光灯って......?"値段は高いけれど、環境にやさしいなんてどこかで聞いたことがあるはず。
7月21日(土)に行われた国立環境研究所夏の大公開で、「自転車発電&電球交換実験」を行った。今回、自転車をこいで発電の大変さを体感してくれた皆さんの協力を得て、電球形蛍光灯の配布とアンケート調査を実施した。電球形蛍光灯は、白熱電球のソケットに直接使用できる蛍光灯である。その消費電力は、白熱電球に比べて4分の1以下、寿命は6倍。白熱電球から電球形蛍光灯に交換することで、同じ明るさを保ったまま省エネ効果が得られる。また、電気のもつエネルギーを熱として放出してしまう白熱電球に比べて発熱量も少ないので、室温の上昇が抑えられる。
白熱電球を1個つけるのと電球形蛍光灯を5個つけるのに必要なエネルギーはほぼ同じであり、自転車発電ではその消費電力の違いを体感してもらうことができた。では、実際、交換することでCO2排出量の削減につなげることができるかどうか......今回の実験に協力してくれたのは110世帯。家庭における白熱電球の使用状況を調査し、家に帰ったら電球形蛍光灯に交換してもらい、その寿命や使用状況については1年後に追跡調査を行う。
写真1
写真1 自転車をこいで100Vを発電する様子。白熱電球1個つけるなら電球形蛍光灯5個つけられる!
写真2
写真2 昔の家にはよく白熱電球が使われていた。
協力してくれた方々には、まず、アンケートにより白熱電球の使用状況を調べた(全回答数110世帯)。図1は家庭で使われている白熱電球の数である。回答された各家庭の平均は約5.3個であり、お店を経営していたりするところは10個以上にもなる(普通の家庭でも10個と答えている場合もある)。今回交換してもらえる白熱電球がついている場所としては、トイレや洗面所、玄関が多く、またリビングと答えた人も多い(図2)。
交換してもらう白熱電球は主に40W、60Wとの答えが多く(図3,平均57.6W)、100Wはお店で使われているようだ。また、使用頻度としては、ON/OFFの切り替えをこまめにしている場合が多いが、32世帯は2〜3時間つけたままと回答している。1日合計で何時間ほどその電球を点けているかの時間を答えてもらった結果は図4のようになっており、短い時間も多いが、意外に6〜10時間というケースも少なくない。お店のようなところで10時間以上使用するケースでは、電球形蛍光灯に交換した方が明らかに効果的である。使用平均時間を求めると3.64時間となった。
これらの結果から、この110世帯における1日の白熱電球の総使用時間の平均約3.64時間と、交換される白熱電球のW数から、今回の企画によるCO2削減量を概算することができる(表1)。 表1 110世帯が白熱灯から電球形蛍光灯に交換した時の電気削減量
東京電力のCO2排出量計算式に当てはめると(「TEPCO:暮らしのCO2ダイエット」参照) 1年分の使用量差 6,885kWhr
×ばつ
CO2排出係数0.37kg/kWhr
=
CO2排出量 2,547kg
1年で2,547kgのCO2(電球1個あたり23kg)排出を削減できることがわかる。これを体積に換算すると 2,547,000g
×ばつ
(22.4L/44g)
=
1,296,655 L/年
つまり参加者全員の力で、1年後に1L牛乳パック約130万本分のCO2を削減できるということになる。また同時に、1世帯あたりの電気使用量の削減量は、6,885kWh/110=63kWhであり、 63kWhr
/
全国平均電気使用量(1世帯/年)3,987kWhr*
×ばつ
100
=
1.6%
(*資源エネルギー庁データから(2003年))
各家庭の電力を平均的に約1.6%削減することができ、1kWhあたりの電気量料金を21円とすると年間電気料金を約1,314円減らすことが可能となる。つまり、電球の値段を1,000円としても、1年以内に元は取れる計算になる。 【謝辞】 (注1)南齋、森口、産業連関表による環境負荷原単位データブック、購入者価格ベース2000年 |