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真立ダム
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2012年02月09日 Thursday 12:24
堤高21.8m
B/P 1929年 北陸電力
2011年6月某日見学
The Genuine Buttress.
有峰で新中地山ダムを見せて戴いた翌日、次は真立ダムを見せていただける事になりました。そうです、あのバットレスダムの真立です!。
見せていただけると言っても、北陸電力さんのランクルでダムまで横付けと言う訳には行きません。
昭和の初めに建設された真立ダムには当初から車で行ける道は無く、現在でも徒歩がヘリコプターでしか行く事が出来ません。
また、徒歩で向かう巡視路は関係者以外は立入禁止となっている為、一般人の場合、自家用ヘリをお持ちでない限り見る事が出来ないダムでもあります。
この日は、有峰林道の小見線が不通であった為、林道入口ゲートから片道10キロ弱ほど歩く事になりました。
有峰林道から脇に入った巡視歩道から関係者以外立入禁止ゾーンです。
ですので、詳しい行程は割愛致します。
山腹からの有峰の山。
この風景の中に、あの真立ダムがあります。
250mm望遠でぐっと拡大すると・・・。
見えました!コンクリートの四角い格子、紛れもなくバットレスです。
ここまで歩いてくるのも大変ですが、ターゲットが見えると足取りも軽くなります。
但し、足取りが軽くなっても、有峰の山では急がず、ゆっくり歩く事が鉄則と教わりました。熊と出会わない為に、熊の方が先に人間に気が付いて、森の中へ立ち去る時間を与える為です。
湿った泥の上に真新しい足跡。足跡の中は露に濡れていないので今朝(数時間前)に付けられた足跡でしょう。
山歩きを心得ない人が立ち入るには、リスクが高すぎる有峰の森。
この地で人間は完全にアウェーなのです。
熊の痕跡にヒヤヒヤしながら小一時間、ようやく先程大望遠で見えた格子が目の前に!。
北陸電力のバットレス、真立ダムについに到着です!。
バットレスダムの特徴でもある、鉄筋コンクリートの遮水壁。
この遮水壁に架かる水圧を扶壁=バットレスで支えるのがバットレスダムです。
遮水壁の中央にあるのは排砂設備です。
そのまま貯水池左岸を散策すると、発電所があります。
小口川第三発電所です。
外壁は北電カラーのスチールで保護されていますが、歴史ある建屋である事は屋根のシルエットでも解ります。
1934年、祐延ダムを上とした揚水発電を開始。
これは、日本初の揚水発電である新潟の池尻川発電所に遅れる事わずか1ヶ月。
落差621.2mは、現在に於いても一般水力のタイトルを保持している凄い発電所なのです。(揚水発電は1978年に終了)
山の中を何キロにも渡り水平に伸びていた小口川軌道。
終点がこの真立ダム、小口川第三発電所です。
発電所の裏手も見せて頂きました。
以前は揚水発電用のポンプがあったそうですが、発電所の壁面に遺構を残し、草むらとなっていました。
ちょっと珍しい方向からの真立ダム。
青い建物は下流にある小口川第二発電所への取水口です。
その向こうに半分見えている白い建物は職員宿舎。屋根の上にヘリポートが備わっていますが、通常の巡視では徒歩で行き来しているそうです(大変だ!)。
真立ダムの貯水池はとても小さいもので、貯水池と言うよりも、発電所から次の発電所までの階段の踊り場といった感じです。
ダム本体の天端にも入らせて頂きました。
シンプルな高欄。色、質感、共に良し。
手摺りの鋼管が細く華奢です。
遮水壁にかかる水の重さによって堤体を支えるバットレスダムは、堤体自体が軽いという事も特徴のひとつです。
この鋼管の手摺がそれに関係した配慮であるかは解りませんが、余分な所は軽くしたイメージを受けました。
真下を観ると絶壁です。
ダムの型式は数あれど、こういう風に真下が見えるのはバットレスダムだけ。
余水吐も、排砂もトンネルとなっている為、ダムの真下には何もありません。
下流側の華奢な高欄と比べ、貯水池側は重厚な造りとなっています。
バットレスに限らず、古いダムに、このタイプが多いです。
左岸にあるのは余水吐ですが、現在は使われていないそうです。
昨日、新中地山ダムで観た物に近いです。
真立ダムと兄弟とも言える真川調整池は堤体左岸付近にやはり似た余水吐を持っているそうです。
そういや、奥津発電所調整池も似た余水吐があった気がします。
この吐に入った水はトンネルでダム下流に放流されます。
天端を渡ってバットレスの格子が良く見える場所に来ました。
堤高21.8m、堤頂長61.2m。
真川調整池が堤高19.1m、堤頂長105mなので、比較すると狭く高いプロポーションとなります。
狭く高いのは真立、低く長いのが真川。
どちらも重文クラスの貴重なダムです。
コンクリート表面に保護剤が塗布されているものの、竣工時の形をそのまま残しているのは真川と同じです。
函館の笹流ダムはまだ観ていませんが、恩原ダムや三滝ダムの様に扶壁の周りを補強で巻きたてたバットレスとは随分と印象が異なります。
上に行くにしたがって細くなるバットレス。白く繊細な格子は、ダムの骨格標本のようにも見えます。
徒歩でしか行く事の出来ない急峻な地形。
竣工時の繊細さを残すバットレスは、まさにバットレスの中のバットレス。
そんな印象を受けた真立ダムでした。
わざわざ現地まで徒歩でご案内頂きました北陸電力様。
大変お世話になりました、ありがとうございました。
真立ダム
★★★★★
おまけ。
日本で8基が造られ、6基が現存するバットレスダム。
まだ訪れていないのは笹流ダムのみとなりました、笹流ダムはいつ行けるか解りませんが、今まで見たバットレスダムのおさらいです。
群馬県 丸沼ダム。
堤高32.1mは、バットレスダムで最も高いものです。
立地が険しかったり、遠かったりでなかなか訪れにくいバットレスダムでは、一番気軽に行ける物件かと思います。
見学会を除き天端は立入禁止ですが、直下にフリーで使えるボートがあります。
岡山県 恩原ダム。
群馬より岡山の方が近いという方は、こちらが見学し易いでしょう。
ダム湖のすぐ横にスキー場があり、ゲレンデのBGMが聞こえる距離にあります。
鳥取県 三滝ダム
険しい峠道を登った奥にある分、恩原より少し行きずらいかも。
両岸の洪水吐が個性的です。
恩原、三滝と中国地方には2基のバットレスダムがありますが、実はもう1基バットレスダムがあります。それが、奥津発電所調整池 懸崖水槽 です。
堤高が低い為、ダムではなく堰堤になりますが、正真正銘のバットレスです。
崖の上に造られた懸崖造りが特徴で、バットレスの下半分が埋立てある為、土の上から露出している外観では高さを感じませんが、高さ30mを超えています。
バットレスは高さ30m超え、堤高は15m未満・・・不思議でしょう??
実は、バットレスと鉄筋コンクリートの支柱で、貯水池が丸ごと空中に浮いているのです。(これ、マジです)
恩原ダムの近くにあり、苫田ダムとも程近いので是非訪れてほしい超マニアック物件です。
(詳細は当ブログの みずのどぼく カテゴリー内にレポあります)
マニアック物件と言えば、さらにマニア向けなのかこちら。
長野県 小諸市にある小諸ダムの遺構です。
地盤に穴が開き、堤体崩壊した幻のバットレスダムでしたが、現在はダムの跡地に運動公園が整備され、広場の片隅に、かつての遮水壁の跡がはっきりと残されている事を発見しました。
また、排砂ゲート、水の取入口及び、取水設備なども、そのまま残されていて、実はダム本体以外はほとんどの設備が遺構として現存しています(!)
それに、公園は水を抜いた貯水池の底に整備されていて、プールやマレットゴルフ場の壁は、ダム湖の当時の護岸そのままだったりします。
オールドダムのファンでしたら、是非ともダム湖に泳ぐ魚の気持ちになって、かつての湖底を散策してみて下さい。当時の様子を想像してニヤニヤするには最高の物件です。
(下の写真、左がダム本体右岸の遮水壁の跡、左がトンネル式だった排砂ゲート。こちらも みずのどぼく カテゴリーにレポあります)
バットレスダムではないのですが、関連するダムとしてこちら。
小諸第二調整池です。
小諸ダムの遺構のすぐお隣に現在も現役のコンクリートダム(ローダム)です。
小諸バットレスの双子の兄弟として造られたダムで、クレストに並ぶ扶壁(ダミー余水吐)は、明らかにお隣の小諸バットレスを意識したデザインではないかと推測しています。
遺構と来たなら、こちらもバットレスダムに関連するダムです。
新潟県 高野山ダム。
再開発により、現在はアスファルトフェイシングフィルですが、かつてこの場所にバットレスダムがありました。
鉄筋コンクリートで造られるバットレスダムは、再開発では丸ごと撤去ができる、と言う事も他の形式には真似できない特徴かもしれません。
そして、バットレスダムの王道はこちら、今回レポしました。
富山県 真立ダム。
真立と並び、登山でしか行けない見学困難物件。
富山県 真川調整池。
こちらの登山道は立入禁止になっていないので許可なくとも訪問可能です。
但し、山道は相当にハード。かつ、冗談抜きで熊が出没しますから気軽に行くことは出来ません。
現地までハイリスクな行程となりますが、敷地内は立入禁止なので、ダムを観る事が出来るのは下の写真のアングルのみとなっています。
これをハイリスク・ローリターンと思うか、それでも行くぞ!と、思うか、悩ましいダムかもしれません。
この真川調整池が、僕にとって初バットレスダムでした。
で、おまけのおまけ。
怪しいダム「無関係者」。
指差し確認ヨ〜シ!
この写真を撮る為に、自宅からヘルメット持参&ダム関係者コスプレで来て、ダムまで登山しました(笑)。(写真撮影 ひろ@様)
おしまい。 -
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