私を喰べたい、人でなし:第4話『 泡沫の結び目』感想ツイートまとめ
明るく優しく私を照らす、偽物の太陽。
さらば負け幼馴染ポジション、美胡ちゃん大爆裂のわたなれ第3話である。
「このまんま人外価値観で希死念慮に寄り添ってくる新参者に、油揚げかっさらわれちまっても良いのかい!?」と思っていた美胡ちゃんが、獣の正体さらけ出し執着バトルに参陣堂々カマしてきて、大変いい気分である。
比名子が抱え込んだ影の重さを思うと、フツーの幼馴染のまんまじゃ勝負になんない所だったので、愛する人の記憶を書き換えてでも守りたいと願った、重たい親愛の情は良い刃だ。
次回明らかになるだろう、バケモノとしての汐莉との違いと共通点が一つの眼目...かなぁ?
汐莉は比名子を一番美味しい贄に育てるべく、「死ぬ前に生ききってみよう!」というヘンテコポジティブを手渡しているわけだが。
美胡ちゃんもおんなじように料理人目線なのか、それともより人間的(あるいは人外的)な立場なのかが、毛だらけの巨体顕にした後大事になってくると思う。
これを隠したまんま、乳母日傘で死にたがりを守っていても全然人生好転しない様子は、強引に手を引いてより深い影の中へと引っ張っていった、ぽっと出のマーメイ野郎が示しているわけで。
人外バトル要素が濃かろうが、やっぱ女と女の感情綱引きでは、心の根っこを剥き出しにしねーと馬力が出ねぇんですわ。
なので今回汐莉がブッかました、強制真実暴露はいい仕事だったと思う。
口で言ってるおどろおどろしい人喰価値観は勿論本当のことなんだろうけども、食べたい食材の理想があまりに高いので、危険因子は積極的に排除するし、魂が美味しくなりそうなハッピーイベントには積極的だし、怪しい嘘はバンバン暴いて風通しは良くする。
家族を失ってしまった比名子にとって、汐莉はようやく戻ってきてくれた"保護者"であり、バケモンの長い手に抱きとめられることでようやく、人間に必要なものを思い出している感じがある。
でもさぁ...それと同じことを、美胡ちゃんもひっそりやってきてたらどうする!!?
...って状況に、人外探偵・近江汐莉が謎を暴いて、強引に持っていったわけだが。
美胡ちゃんが秘密裏に守りたかった、穏やかで幸せで動きがない人間としての幸せは、それを既に燃える海に飲み込まれてしまった比名子にとっては、やっぱ嘘でしかなかったのだろう。
太陽に守られるより暗い月に抱かれる方が、死んで家族のもとに帰りたいメソメソ女にはシックリ来るのだ。
人間の情や令和のコンプラ意識なんぞ投げ捨て、あっけらかんと真実に踏み込める汐莉の強さが、美胡ちゃんの臆病な優しさを突き飛ばしたわけだが、このまんま鱗くせー新参者にやられっぱなしなのか。
それとも獣の牙に情愛を乗っけて、自分だけの真実を吠えるのか。
次回伊予の夕暮れに描かれるだろう、陸と海の大決戦は大変見ものである。
というわけで露骨に撒いてた伏線を回収し、"こっち"側であることを暴かれた美胡ちゃん。
名前とのダブルミーニングで戦闘巫女かな〜とも読んでいたが、バッチリ人外でした!
でも明るく楽しく振る舞うコミカルなSDも、そういう陽性の努力が生み出す比名子の笑顔も、ただ嘘と切り捨てるには眩しいもので、「大事にしてやんなね...」って感じ。
唐突にぶっこまれたゆるふわ番外編+電波EDと合わせて、偽りの日常において美胡ちゃんがどんだけ比名子の太陽だったか、ここで書き直すのは良いなぁと思う。
嘘が暴かれ、顔が見えなくなっても、それが消えるわけじゃないのだ。
そんな汐莉がブン回す真実の刃は、人間の心が解んないバケモンだからこそ鋭い。
ここは美胡が真逆に足踏みしてたところで、多分比名子の痛みが解ってしまうからこそ、彼女は嘘であの子を包んだ。
明るく楽しい人間らしさを演じ、過去を忘れるぐらいの眩しさで何もかもかき消そうと足掻いた過去。
しかしそれは、魂の根本に暗黒をねじ込まれた比名子には、クリティカルな処方箋ではなかったのだ。
海に惹かれる死への意志は、失われてしまった家族への愛と深く結びついて、比名子の根幹をなしている。
その陰りを消すことは、比名子自身を消し去ることにもつながる。
だから汐莉の背負った影が、するりと比名子の胸に深く入った。
「んじゃあ自分も比名子と同じく影の住人であることを顕にして、離れたその手をもう一度繋ぎ直すしかないじゃんね〜〜ッ!」という状況に、一気に話が転がっていくぞ!
泣きじゃくる子どもに手を差し伸べたバケモノの優しさは、汐莉が突きつける真実によって引き剥がされ、哀しみから比名子を遠ざけようとついたエゴが、美胡ちゃんのエゴでしかない現状も暴かれた。
比名子自身は暗く死を弄び、それによって死せる家族を近くに感じたかったのに、眩しい光の中ではそれも叶わない。
だがそれは、確かに少女の手を現世に繋ぎ止める、大事な楔にもなっていた。
毛むくじゃらの身体を人の皮に包み、比名子の隣りにいても良い幼馴染の形を保つ、呪の籠もった存在証明。
それが黒い欠片に砕かれていく時、汐莉の繊手は比名子を守るように...あるいは縛り付けるように、靭やかに構えられている。
この指先だけが比名子を守りうるのかと問われれば、美胡ちゃんが積み上げてきた嘘もまた、同じ仕事を果たしてきたのだと、画面は答えてくる。
...正体判明の衝撃を次回に引くために、余った時間をほんわか番外編でウメた構成だと思うんだが、そこで描かれる当たり前な日々の尊さが、シリアスな本編を後ろから補強してもいたな。
前回電波なEDと合わせて、魔球でストライク取ってくるのズルくて良い。
色んなモノを暴き、痛みの奥にあるものをえぐり出さないと、死にたがりがなんで死にたがっているのか...その先にどんな生を望んでいるかは、見えてこない。
そういう真実探求物語もこのお話の顔の一つだと思うが、汐莉が遠慮なく踏み込む真実と、美胡ちゃんの優しい嘘が対置されていることで、なかなか立体的な構図になってきた。
その嘘の奥に一体何があるのか、美胡ちゃんを突き動かす比名子LOVEはまだまだ暴かれていないわけで、バトルの勢いでそこに踏み込み突き崩すことで、見えてくるモンは大きいんじゃないかな〜と思ってます。
やっぱよ〜、底抜けの太陽気取って泣いてる女の子を包み込みたかった嘘つきが、心臓に秘めた湿り気をぶっ放す瞬間ほど気持ちいいもの、世の中にないからな!
それが美胡ちゃんの中の真実だってんなら、今までの関係を壊すとしてもぶっ放して、その爆心地から新しく始め直すしかないじゃんねぇ...人生の結構な部分、比名子を守るための白々しい嘘のために、注ぎ込んでくれてるのは事実なんだし。
そういう好みの食材を手渡してくれたって意味でも、汐莉の容赦ない真実探求主義はいい仕事したと思う。
死にたがりな思いを隠して暗く生きてきた、比名子の嘘。
それは暴かれるべき矛盾であると同時に、そうならざるを得なかった事実の一部でもあって、複雑に絡み合ってあの子を支えている。
「その生きたがりな嘘に寄り添う仕事は、ぽっと出の海産物じゃなくて嘘つき狐がになってきたでしょ!」つう話でもある。
こういう込み入った事情を暴き立て、捻れた感情を素直に戻すには、ちょっと暴力的な踏み込みも必要だよね!!
...汐莉さんはもうちょい、生き延びるためには時に嘘を必要とする人間存在の機微ってのに、丁寧に寄り添ってみるのもいいと思うよ。
生と死、日常と非日常が背中合わせに絡み合って、簡単には切り離せない場所で、この物語は進行している。
その真ん中に立つ比名子の明暗は前回、汐莉によって深く踏み込まれ晒されたわけだが、嘘で日常を満たしてでも比名子を守りたかった、美胡ちゃんのねじれは、一体どんな業と愛に満ちているのか。
そこが汐莉との超常バトルの果て、しっかり見えてきそうで次回、大変楽しみです。
血腥い戦いを作品の中に練り込むことで、日常ではめんどくさく抱え込んでる感情を暴くだけの熱を生み出しているのは、面白い作りだなぁ...。
太陽小町の湿った感情、たっぷり食えるだろう次回...とっても楽しみです!