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小児がんについて

小児がんは、小児がかかるさまざまながんの総称です。一般的には15歳未満にみられるがんのことです。

1.小児がんの種類

小児がんの主なものについて表1にまとめました。

それぞれの病名は一般的なもので、白血病、リンパ腫、脳腫瘍のうしゅようには多くの種類があります。ほかの腫瘍も全身のあらゆるところで発生するため細かく分類されています。治療法も、がんの種類や場所、広がりによって、それぞれ異なります。

表1 主な小児がんの発生場所など
表1 主な小児がんの発生場所など

神経芽腫、腎芽腫(ウィルムス腫瘍)、肝芽腫など「芽腫」と呼ばれるがんの原因は、胎児の体の神経や腎臓、肝臓、網膜もうまくなどになるはずだった細胞が、胎児の体ができあがった後も残っていて、異常な細胞に変化し、ふえていった結果と考えられています。大人のがんとは異なり、生活習慣にがんの発生原因があると考えられるものは少なく、網膜芽腫やウィルムス腫瘍のように、一部遺伝するものもあります。

関連情報
それぞれの小児がんに関して、がんが疑われたときから治療後の生活に至るまで、その時点で必要と思われる情報を紹介しています。
小児がんの患者数などを掲載しています。

2.小児がんの症状

小児がんの症状に特別なものは、ほとんどありません。風邪のような症状や痛みが続くといった一般的な理由で医療機関を受診した際に検査した結果、がんと診断されるケースも少なくありません。

しかしその一方で、患者である子ども自身や家族が気づかないでがんと診断された場合でも、さかのぼってよく考えると、およそ2カ月以前からがんに関連する何らかの症状があったと思いあたることがあります。

小児がんは特定の年齢で患者が集中する傾向があります。がんの種類によって症状が異なることはもちろんですが、年齢による症状の違いも生じます。また、乳幼児は自分の症状を訴える表現方法が限られていることや、年⻑児は必ずしもすべての症状を両親に相談しない傾向にあることなども、年齢による症状の違いに関係すると考えられます。

小児がんは急激に進行して症状があらわれる場合があります。重篤じゅうとく(病状が重いこと)な症状、長く続く症状、進行する症状がみられる場合には、必ず医療機関に相談してください。

1)発熱

小児がんは、しばしば発熱をきっかけに診断されます。必ずしも39〜40°Cなどの高い発熱とは限らず、発熱と解熱を繰り返すこともあり、通常は発熱にほかの症状も伴います。一般的に原因がはっきりせずに発熱が続くことを不明熱ふめいねつと呼び、子どもの不明熱の原因のうち、10%未満は小児がんが原因であるとされています。

2)頭痛

ほかの病気が原因となる場合もありますが、嘔吐おうとを伴う頭痛は、脳腫瘍の症状としてもよく知られているものです。頭痛のある脳腫瘍は、脳神経の異常に関連したほかの症状を伴うことがあります。

3)リンパ節の腫れ

首のまわり、耳の後ろ、顎の下、足の付け根にあるリンパ節がれることがあります。原因ががんであることはまれですが、痛みを伴わない症状のため注意が必要です。なお、リンパ節の腫れの原因ががんかどうかは、手術により腫れているリンパ節の一部またはすべてを摘出し、がん細胞があるかどうかを調べること(病理組織診断びょうりそしきしんだん)が必要です。このような診断のための手術を生検せいけんと呼びます。

4)骨や関節の痛み

骨や関節の痛みは小児がんでは多い症状です。睡眠を妨げるほどの強い痛みを訴えることもあります。骨や関節の痛みは、白血病や骨肉腫などが原因で起こります。神経芽腫の転移でも、肩から腕の骨の痛みなどを訴えることがあります。痛みがずっと続く場合には注意が必要です。我慢せずに専門医(小児科)の診察を受けましょう。

5)筋肉のしこり

皮下や筋肉にできるしこりは、しこりや腫れの症状としてあらわれますが、痛みがないため大きなしこりになってから気づくことがあります。また、大腿だいたい(ふともも)などの筋肉の厚い場所に発生すると、大腿全体が大きく腫れたようになる場合もあります。手足のほかにも、鼻やのどなどの顔面、生殖器せいしょくき(男児の睾丸こうがん、女児のちつなど)にしこりを生じることがあります。

腫瘍が大きくなると、関節が曲がらなくなったり、座ることができなくなったりします。しこり自体に痛みがある場合や、しこりが大きくなって神経を圧迫し間欠的な痛み(一定の時間を隔てて痛みが起こること)を伴うこともあります。また、発熱を伴ったり、皮膚の色が変わったり、潰瘍かいようができることもあります。

6)胸のしこり

白血病、リンパ腫、神経芽腫などでは、胸の中、特に左右の肺の間であるじゅうかくと呼ばれる部分にしこりを生じることがあります。このしこりが、気管(口から肺につながる空気の通り道)や心臓、脊髄せきずいなどを圧迫することや、きょうすい(肺、心臓の周囲に水がたまった状態)を伴うことで、息苦しさ、咳、顔のむくみ、動悸どうき、下半身の麻痺まひなどの強い症状を生じることがあります。

7)おなかのしこり

おなかのしこりを伴う小児がんは、1歳から5歳に多くみられ、がんの種類や進行によりさまざまな症状があらわれます。特別な症状がない状態で、偶然おなかのしこりを指摘されることもあります。一方、急速に大きくなるしこりによって、腸や尿路にょうろ(腎臓から始まる尿の通り道)の圧迫、腹水ふくすい(腸のまわりに水がたまる状態)などを生じて重い症状があらわれることもあります。

8)血液細胞の異常

白血病では、健康な血液細胞が大きな影響を受けることがあります。健康な白血球が減少すると、重篤な感染症や特殊な感染症を生じたりします。また、貧血により、顔色が悪い、元気がない、疲れやすいなどの症状を生じます。血小板が減少して、皮膚や粘膜に出血斑しゅっけつはん紫斑しはんなどのあざができたり、鼻血や出血した血液が止まりにくくなったりすることもあります。

9)そのほかの症状

脳腫瘍では、腫瘍の種類や場所によって、よろける、歩行がおぼつかない、顔面がゆがむ、眼の動きがおかしい、視力の低下、異常に水分を欲しがり尿が多い、けいれん発作、話をすることが不自由になる、などの症状があります。脳の中の髄液が頭蓋腔内にたまり、頭囲が拡大することもあります。

網膜芽細胞腫もうまくがさいぼうしゅでは、眼球の中で白い腫瘍が大きくなり、瞳を通して白く光ってみえる、白色瞳孔という症状がみられる場合があります。また、斜視(2つの眼球の向きが合っていない場合)になったり、まぶたが腫れたりすることもあります。

以上のような症状のほかに、単に食欲が低下したり、突然嘔吐したり、不機嫌であったりするだけのこともあります。また、体重減少がみられることもあります。

気になる症状が続いたり、いつもと違う様子が認められたりするときは、すみやかに医療機関を受診しましょう。

作成協力

更新・確認日:2023年04月14日 [ ]
履歴
2023年04月14日 「表1 主な小児がんの発生場所など」の内容を更新しました。関連情報に「小児がんの患者数(がん統計)」を追加しました。
2023年03月22日 関連情報を更新しました。
2023年03月10日 「がんの基礎知識」から「世代別の情報」へ移動しました。
2021年12月24日 「2.小児がんの症状」を追加して全体の内容を更新しました。
2021年07月01日 小児がん情報サービスから移動し、内容を再編して、タイトルを「小児がんについて」とし、「がんの基礎知識」に掲載しました。
2020年03月31日 主な小児がんの内容を更新しました。
2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、「小児がんとは」「小児がんの症状」を小児がんサービスに掲載しました。
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