抄録
瀬戸内海など閉鎖性海域の流動シミュレーションでは,陸域,とくに中小河川からの淡水流入量を如何に与えるかが常に問題となる.本研究では,瀬戸内海流域圏全体を対象とした陸域降水流出-海域流動モデルを構築し,2007〜2015年の再現シミュレーションを通じて,一級水系・中小河川からの淡水流入量を明らかにするとともに,中小河川が海域流動シミュレーションの再現性に及ぼす影響を評価した.その結果,上記期間の陸域から瀬戸内海への年間淡水流入量は平均53.0km3/yr,その内訳は一級水系が68%,中小河川が32%と算定された.また,一級水系のみの河川流量を与えた海域流動シミュレーションは全体的に表層塩分を過大評価するが,全水系で与えた場合はその誤差が大きく軽減されることが確認された.